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ネオニコチノイド系農薬の子供らへの神経毒性① 受容体 追記① [農薬ー害]

ネオニコチノイド系農薬は、2000年頃を境に日本では使用量が激増し、2011年には有効成分換算で約400トン、2000年比で2.8倍です。これは、それまで殺虫剤の王様であった有機リン系農薬が米国で子供への毒性が問題になり1997年には子供が多く食べる桃など食物での残留基準値の強化、2000年には家屋内や庭での使用禁止やなどがはかられました。日本では1995年に有機リン系薬剤であるサリンが使われ13人死亡約6,300人負傷する地下鉄サリン事件がおきています。こうした影響で日本でも有機リン系に替わる殺虫剤として拡がったと思われます。

有機リン系は、神経伝達物質アセチルコリンを分解する酵素、この伝達物質が結合た受容体で興奮状態になっている神経細胞でこの伝達物質を分解して神経興奮を終わらせ沈静化する働きの酵素を阻害します。その結果、不安、興奮、集中力欠如、持続力欠如、多動といった中枢神経性の中毒症状がおきます。昆虫(害虫)も哺乳類(人)も神経の仕組みは同じですが、分解する酵素の量が昆虫は少ないので人よりも少ない量で中毒症状を起こし死に至るという選択毒性を持つので重宝されました。1971年に禁止されたDDTなど有機塩素系に替わる農薬として拡がりました。

しかし、出生前の(つまり胎内での)曝露によって、広汎性発達障害、2~3歳時点での知的な発達の遅れ、知能テストのような検査では分からないが、高度なメンタルテストで発見される知能の発育の際立った遅れ・異常があらわれるリスクが増える。出生後の曝露では、問題行動、短期記憶や運動能力の低下、反応速度の遅れを伴なうなどの調査結果がでてきました。それで、米国の規制が行われました。


この神経伝達物質アセチルコリンが結合する細胞から出ている受容体(アンテナ)は2種類あります。一つは呼び鈴タイプで、伝達物質が受容体の細胞外の部分に結合すると細胞内の受容体の尻尾が伝令の蛋白質を刺激するものです。この受容体は下痢や幻覚を起こす毒キノコ・ベニテングタケのキノコ毒のムスカリンが特異的に結合するのでムスカリン性受容体といいます。

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一つは自動扉タイプで、結合されると構造が変化して細胞外のカルシウムイオンなどを細胞内に通過させるものです。これはニコチンが特異的に結合するのでニコチン性受容体といいます。
1383569692.jpg広汎性発達障害などの影響に、①この二つのタイプの受容体が関わる、②ニコチン性受容体だけが関わる、③ムスカリン性受容体だけが関わるの3つの場合が考えられます。
 ニコチン性受容体は自律神経、交感神経・副交感神経に顕われています。神経から筋肉への刺激(指令)を伝える受容体です。脳では小脳、大脳皮質、情緒に関連する扁桃(アーモンド)体など広く発現しています。妊娠3ヶ月の胎児で既に発現し成人脳に比べ胎児脳できわめて多く高いレベルで顕われており、脳の発達に重要です。誕生後も青年期まで小脳、大脳皮質などの中枢神経系に発現し、その正常な発達に関与しています。神経だけでなく、免疫系、皮膚・肺の細胞、卵巣、精巣など広範囲の組織に認められ、細胞同士の情報交換に関わっているとされています。
 ネオ(新しい)ニコチノイドの言葉が示すように、ニコチンの急性毒性、タバコを1本食べると死んでしまいますがそうした急性毒性がでないようにニコチンの化学的構造に手を加えた薬剤です。細胞レベルの研究では、ニコチン性受容体に与えるニコチンの影響とネオニコチノイド系農薬の与える影響は有意の相同性が認められています。遺伝子発現解析からは、ニコチンと重なる変動影響とネオニコチノイドに特異的な変動が見られています。ですから、ニコチンで顕われる影響はネオニコチノイド系農薬でも顕われ、かつネオニコチノイド特異的な影響が加味されると見られます。
ニコチンといえばタバコですが、喫煙で出生時の低体重、早産、乳児突然死症候群、注意欠陥多動性障害・ADHDのリスクが高まることは疫学的、社会的よく知られています。ADHDリスクが高まりますから、③ムスカリン性受容体だけが関わるという仮説は棄却、考慮から外してよいことになります。そして、神経毒、特にヒトの発達神経毒性(Developmental neurotoxicity, DNT) を明らかにする必要性があることも示しています。これらの影響はニコチンが胎盤を通過し、胎児がニコチンに曝されたからと考えられますが、それだけでは無いようです。
 参照 臨床環境21:46~56,2012 http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/healthy/jsce/jjce21_1_46.pdf

疫学研究からは、母親の特定の遺伝子多型のタイプでみるとハイリスクグループが見出されています。この北海道スタディという疫学研究では、妊娠中の母親の喫煙で出生時体重は平均では135g低下です。母親が遺伝子多型αのグループは211g、遺伝子多型βのグループは170g、α&βでは315g。妊娠中喫煙しなかった母親では遺伝子多型によって出生時体重が低下することはなかったのです。(記号は仮)

これは、ネオニコチノイド系農薬の影響、とくに子供らに対する影響の顕われ方で考慮しなければならない遺伝的要因、体質的背景として、本人のみならず母親も見なければならないことを意味します。
これらを食品における農薬残留をコントロールする立場でまとめると次のようになります。 (続く)

PN2014060701001227.-.-.CI0002.jpgネオニコチノイド系農薬の一種、イミダクロプリドの影響が懸念されるマルハナバチ(英サセックス大提供)
 ミツバチの群れの消失との関連が指摘されているネオニコチノイド系農薬の一種、イミダクロプリドを摂取したマルハナバチは、巣に持ち帰る餌の花粉の量が減るなど、餌を集める能力が低下するとの研究結果を、英サセックス大と同スターリング大のグループが7日までに生態学の専門誌に発表した。
 イミダクロプリドは、ミツバチへの悪影響などを理由に欧州連合(EU)が昨年、2年間の使用禁止にした3種類のネオニコチノイド系農薬の一つ。グループは「与えた量は欧州の農場で実際にハチが摂取するレベルに近く、禁止措置の正しさを裏付ける結果だ」とした。
2014/06/07 05:18【共同通信】
http://www.47news.jp/smp/CN/201406/CN2014060701001183.html


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