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天敵活用、あなたは虫食いリンゴを年に何個、許せますか? [農薬を減らす工夫]

№08-33 、 2008年8月4日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

 天敵不在の今、殺虫剤の散布をやめるとリンゴの被害率は90%に及ぶ

 もう直ぐお盆、青りんごが出てくる時季です。普通栽培のりんごは農薬を多数大量に使用します。「今、殺虫剤の散布をやめるとリンゴの被害率は90%に及ぶといわれる。しかし、有機殺虫剤のなかった戦前ではリンゴ被害は10~15%だった。それは果実内部にいて天敵にやられないハリトーン(モモシンクイガ)によるものだ。この『難防除害虫』を薬剤で防除した代償に蜘蛛や寄生蜂などの天敵が絶滅してしまった。

  そのために幼虫が野外にいて多くの天敵にやられていた害虫、なかでも世代が短くて繁殖力が強い小型な害虫のダニ、カイガラムシ、アザミウマなどが現在『難防除害虫』となり農薬防除の対象となり、これが被害率90%の内実だ」

  つまり『難防除害虫』の天敵生物の活用が農薬を減らして、環境と健康を護るには重要です。一番手軽なのは、畑の周辺に住んでいる天敵を使うこと、無料で手に入るし、市販されている天敵資材は大半が外国産の生物で生態系を乱す恐れがありますが、土着なら地域の環境にも合っています。しかし、現在の農薬取締法(農取法)では、この地元にすみ着いている「土着天敵」を捕まえ、その土着天敵を増殖して、畑に放して防除に使うことはできないのです。小3の娘は学校でアゲハチョウの幼虫を飼育しています。昆虫マニアはしばしば、捕まえた虫を飼育、繁殖し、自然に放ち増やすことを試みています。しかし、農家が土着天敵で同じ事、増殖し防除に放つと違法行為になる恐れがあるのです。

  農取法を所管する農水省によれば、「野外にいるから土着なのであって、人工の環境下で増殖した虫は、土着と判断されない可能性がある。土着でない虫に農薬的な効能をうたえば、無登録農薬とみなされる。」「土着とは同一県の範囲、県境近くにいる農家が県境を越えて天敵を捕まえた場合、その虫は土着と判断されない可能性がある。」従って、触法、無登録農薬の使用になるぞ!というのです。

ああ弟よ君を泣く

君の心、死にたまふことなかれ

親は筆をにぎらせて

屁理屈こねよと教えしや

民を苦しめて保身せよとて

二十四までをそだてしや

農水の城はほろぶとも

 ほろびずとても何事か

君知るべきや民びとの

収めし税の重みを

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 高知県の天敵特区 

  高知県土佐市のピーマン生産農家は、「農薬をまったく使わないことはできなくても減農薬にはこだわり、安全で安心できるピーマンを消費者に届けていきたい」と天敵昆虫を利用した害虫防除に取り組んでいます。平成14年に2戸の生産者が、天敵昆虫を試験導入しました。農薬の効果が低く広範囲で被害を及ぼす難防除害虫、アザミウマ類、アブラムシ類、ハスモンヨトウなどに天敵農薬のタイリクヒメハナカメムシ、コレマンアブラバチを導入し、これらの天敵に影響の少ない殺虫剤を組み合わせることで、殺虫剤の散布回数を慣行の1/7~1/4に少なくすることに成功。平成17年度には天敵導入が全戸約60戸に広がりました。 

 同年頃から、「タバココナジラミ」が侵入し、深刻な被害が発生しました。この害虫は農薬に抵抗性のある、農薬が効かない系統でした。農家は、被害状況の観察し、試行錯誤を繰り返した結果、ハウス周辺の棲息する虫・クロヒョウタンカスミカメ、この土着天敵の導入が最も効果的であることが判りました。ハウス周辺の草木の下に網を入れて、後は大人数人が一匹一匹探し、採取してハウス内に放すのです。安定的に確保するために、共同でハウス一棟を犠牲にして、中でピーマンを栽培し、「タバココナジラミ」を付け、クロヒョウタンカスミカメを棲息させて、確保することも始めました。

  高知県では天敵を利用する防除がナス栽培面積の29%、ピーマン・シシトウの58%、天敵などの生物農薬の使用量(金額ベース)は日本で第一位です。農薬登録され市販されている土着天敵の代表種タイリクヒメハナカメムシの場合、10a当たり1000頭放飼が基本とされて、購入費がかさみます。
このカメムシに見合う土着のカメムシ類をこの数だけ農家が栽培現場周辺・野外で採取することは困難。それで農家らがつくる「エコ研究会」が昨年、「土着天敵を人工増殖させて使えないか」と高知大学農学部に相談。「実験室等で維持している土着天敵を施設園芸害虫防除のために農家に無償で配付し、天敵増殖キットなどを用いて農家の手で増殖する事ができれば、防除に必要な個体数を確保でき、農家の防除資材購入費用の削減にも繋がる。」として高知県を農取法の例外、天敵特区とするよう申請を6月に出しました。屁理屈こねの農水官僚がどう答えるでしょうか? 

虫食いの防除水準は適正か? 

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さて、天敵活用の障害は農水省だけではありません。天敵による防除はおのずから限界があります。天敵は害虫の幼虫を捕食したり、寄生したりしますが翌季の幼虫を確保するため、全部を食い尽くしてしまうことはありません。必ず、幾らかの幼虫が生き残り、虫食いの作物がある程度は出ます。
 外国の消費者はリンゴの害虫被害を1000個に10~20個は許容していますが(防除水準1~2%以下)、日本の消費者の皆さんはどうでしょうか?毎日リンゴを朝昼晩と3個食べたとして、年間約1000個、虫食いリンゴが許せるのは1回?2回?

 


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