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有機リン殺虫剤で1300人が健康被害、出雲市 [農薬を減らす工夫]

№08-36 、 2008年9月2日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

2008年5月26日の出雲市

 今年5月26日(月)の朝、出雲市の浜山中学校。4から5名の生徒が職員室の前に集まっていました。
 8時25分、朝の職員朝礼が終わるのを待って、養護教諭に口々に目のかゆみ等を訴えました。診たところゼリー状の結膜浮腫などがありました。

 30分からの学級朝礼で調べたところ全校828名中、87名が異常を訴えました。目を水で洗い流しそれでも良くならなければ保健室へ来るよう指導、40名あまりがきました。養護教諭は45分に学校医に連絡、教頭は教育委員会と市の農林政策課に連絡を入れました。

  ”農林政策課”この日の朝、松枯れ対策でヘリコプターによる殺虫剤の空中散布が行われていたのです。使われたのは有機リン系のスミパインMC。

 出雲市は30年余り、松枯れ対策で殺虫剤空散を約2000㌶に毎年6月に実施。胸が苦しくなる、目の奥がチカチカするなどで、毎年この散布時期には市外へ避難する人やアレルギーが酷くなり家族と別れて暮らす子供などの健康被害が問題化。それでも昨年は、出雲大社での空中散布で課外活動中の高校生が農薬を浴びてしまいました。連絡を受けた市は翌27日以降、空散を中止しました。

  この26日の空散で、児童生徒1057名、成人245人など1300人以上、うち入院2名、約300人が病院通いの健康被害が確認されています(8/24現在)。出雲市は原因調査委員会を発足させ、9月1日に6回目の会合が予定されています。

参照  日記・・・・身近な暮らしの中で(島根県出雲市から)  http://kao326.jugem.cc/

出雲市の原因調査委員会 

   この委員会で空散擁護派は「空散直後の直下に人がいて、その人の目に散布農薬が落ちてきたとしても、標準的条件で計算すると、その目に侵入する農薬量は極少ない。目に影響が出るはずがない。(県農業技術センター資源環境部長)」汚染量は環境影響評価指針値以下、影響が出るはずがない(島根大学副学長)」などと主張。
直ぐさま中立派の島根大学の眼科の委員が「それよりもはるかに少ない量を目薬で点眼しただけで卒倒する人もいますよ」、「(空散された)農薬が原因でアレルギーが起きるかどうかはハッキリしないが、アレルギーの子が(この農薬に)被爆すれば症状が悪化しやすい」と教示。
  目の痛みなどを訴えた1300人は現実。「出るはずがない」は観念論。観念と現実、科学者ならどちらを重視すべきでしょう?
 極めつけは

空中散布の農薬毒性に誤記述(NHK8/20、23報道)

 =19日開かれた出雲市の調査委員会で農薬の毒性に詳しい元大阪大学助教授の植村振作委員は、農薬メーカーの「住友化学」から委員会に提出された毒性に関する説明資料の記述に虚偽があると指摘しました。
この資料は、今回空中散布された「スミパインMC」という農薬に関して平成9年に作成されたものです。住友化学が農薬を国に登録するために実施した、ウサギを使った毒性試験で、目に軽度の結膜の充血が確認されたにも関わらず、説明資料では、農薬の成分に「目に対する刺激性はない」と誤った記述をしていました。
 住友化学は、この資料を農薬を販売する際など毒性を説明するために自治体や代理店に約1万部配付して使っており、委員会に出席した住友化学の担当者は、不正確な表現であることを認めました。=

スミパインMCは有機リン系の殺虫剤

スミパインMCは有機リン系の殺虫剤(MEP・スミチオン)を合成高分子膜で包んで微小のマイクロカプセル化し、水に懸濁させた製剤です。カプセルが虫の体内などで弾けて、中身の殺虫剤が出るわけです。耐雨に優れ、散布・乾燥後の降雨による影響

ha_083601.jpgもより受けにくくなって8~10週間程度はカプセルが残留し、殺虫剤としても 残効性が高くなっています。松枯れの病原センチュウを媒介するマツノマダラカミキリを殺虫剤で駆除するには、羽化し成虫となって出てくる発生初期、その約2週間後の中期、この2回が散布のチャンスです。8~10週間程度の残効性があるので、発生初期に1回散布ですむ手間が省けるのです。

  有機リン系の神経毒です。昆虫などの我々動物の神経を阻害する毒です。哺乳類はこれを解毒する能力が高いのですが、解毒能力が低い昆虫などでは呼吸を停止させるなどして死に至らしめます。

 使用マニュアルでは①養蚕、養蜂に影響を与えないよう②水産動物、特に甲殻類に影響を及ぼす恐れが示されています。

 教示から分かるのは、この殺虫剤は選択的にマツノマダラカミキリを殺すものではなく、昆虫など節足動物に全て毒性、殺作用を持つ。例えばこのカミキリムシの天敵も殺してしまう、つまり森林の生態系を構成する昆虫に8~10週間程度は殺作用を顕しその森林の生態系を脆弱にするのです。 河川に流入すると、甲殻類、例えばミジンコなどの動物性プランクトンを殺します。この殺虫剤は直接には魚を殺しませんが、餌の動物性プランクトンを殺すことで飢えさせるわけです。

  松枯れと病原センチュウとカミキリムシの関係は、マラリヤと病原寄生虫と蚊に似ています。詳しくは別の機会にしますが、マラリヤがDDTなど殺虫剤散布で根絶できないように、松枯れも殺虫剤でなくせるとは思えません。農薬空中散布・地上散布の中止し、農薬の人体への健康被害、地域生態系への影響の観点から松枯れ対策の再評価が必要です。少なくとも林野庁は西尾・出雲市市長の、もっと安全な農薬を研究、開発してほしい、と自ら出向いての申し入れには応えるべきでは

 imagesCAGZANJ7.jpg

 

 


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