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クリタマバチ・・日本人が持ち込んだ害虫と天敵 [農薬を減らす工夫]

先日、虹屋の店裏にアシナガバチが巣を作りを駆除しました。蜂の中で人に影響を及ぼす毒をもつのは哺乳類に幼虫や蜜が狙われるような巣をつくる社会性を持ったグループ(ミツバチ、スズメバチなど、大部分のグループは、植物や無脊椎動物(昆虫・クモなど)に対しての毒です。

 狩人蜂は幼虫のエサとして狩ってきた獲物が腐らないようにするための生かさず殺さずの麻酔液、寄生蜂は、確実に産卵するための寄主を眠らせる麻酔液、特に、内部寄生をする寄生蜂の毒液は、寄主の体内に産みつけた卵が異物として排除されないように寄主の免疫をごまかしつつ、寄主が外部からの病原菌にやられないための免疫を温存させる、という毒液です。ビックリです。
 
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植物食のハチは、卵の産卵と共に親の体内で共生している菌も植物体に移し、その菌の働きで肥大したり腐朽した部分を幼虫は食べて大きくなります。ある寄生蜂がお茶に寄生するとお茶の木がつくる防御物質により最高品質のお茶ができるということもありますが、栽培植物につく寄生ハチは害虫。栗にはクリタマバチがいます。
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タマバチの類が産卵した植物の場所の組織が大きく変形して玉状の瘤(虫コブ・虫えい)を作り、その中に幼虫は隠れて肥大した部位を食べながら成長します。クリタマバチはクリの新芽に産卵し、4月上・中旬の発芽期に芽は異常に肥大して、赤みをおびた虫コブができます。そして新梢の発育が止まり、樹勢が弱くなり収量が減ります。日本での発生は、1941に岡山県で初めて確認された新参者です。1950年代中盤になると全国に拡大しました。
 
これを迎え撃ったのは日本土着の在来種のクリマモリオナガコバチ・栗護尾長小蜂です。もともと、コナラ、ミズナラ、クヌギなどに虫こぶを作るタマバチ類に寄生していた、タマバチの幼虫に卵を産みつけ食糧にしてきた寄生ハチです。クリタマバチにも寄生する、食域を広げたのです。ただ、それまで餌にしてきたコナラなどにつくタマバチよりも、新参者のクリタマバチは幼虫が大きくなる時期、虫コブが発達する時期がずれている、産卵管が幼虫に届くまで長くないため天敵としての効果が小さいのです。コナラなどブナ林が近くにないと、そもそもいません。困った!
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 クリマモリオナガコバチ・栗護尾長小蜂
 
 日中国交回復後に中国に派遣された果樹の天敵調査団が、クリタマバチが中国の在来種であること、天敵のチュウゴクオナガコバチを発見。チュウゴクオナガコバチを1979年、81年に輸入し放飼し生物的防除が試みられ、成功しています。そして、今はチュウゴクオナガコバチと在来のオナガコバチ類の交雑個体が出ているそうです。
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 左・・チュウゴクオナガコバチ
      中・・交雑
       右・・クリマモリオナガコバチ
 
人類が出現してから、植物の分布の拡がり速度が増したといわれます。平らな足裏などに種をつけて運ぶからだそうです。人類は、生態系の厚みを増す働きをしてきました。クリタマバチ騒動もその一つといえます。人間の作るものは、必ず壊れ、事故ります。原発は事故ると地域の生態系全体を長く損傷します。原発は、人類の生態的役割に相応しくない「文明の利器」だと私は思います。


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