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アメリカの医療保障制度、サプリが大量・多種使われる背景・・アベノミクスが招く未来図② 2013年 [サプリメント・健康食品]

2013年10月28日、ぷららプログ掲載の加筆再録

サプリメントを過半数の人が摂っているアメリカ。その背景にある、アメリカの医療保障制度を調べてみました。米国では1965年に65歳以上の高齢者・障害者向けのメディケアと低所得者・身障者向けのメディケードという公的医療保険制度がうまれていますが、これらと公務員向の公的保険で人口の約40%がカバーされています。民間の医療保険で約45%がカバーされています。残り15%程度が無保険、今は約17%、6人に一人が無保険状態です。

このように米国には日本のような公的な国民皆健康保険制度がありません。そして保険料が高い。家族を対象とする民間保険の代金は、だいたい、年間100万円程度(2007年頃)。勤め先の企業が福利厚生の一環として、保険を提供してる、保険料の一部を負担してのでもなければ、この保険料はかなりの負担です。アメリカ政府の統計によれば、「従業員25人以下」の企業の7割は、保険を提供していません。アメリカでは、企業による医療保険提供が「優秀な人材をスカウトするための手段」として成立したという経緯もあり、企業での地位が上がるほど(つまり、収入が増えるほど)保険料が安くなる、という「負担の逆進性」があります。

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日本のフリーアクセス、米国の マネジドケア

日本では行きたい病院を患者が選びます。これが「フリーアクセス」と呼ばれますが、アメリカでは「マネジドケア」(Managed Care・管理された医療ケア)と呼ばれる方法が一般的です。

管理者は保険会社で、その医療管理は典型的には

①加入保険会社が指定している病院で、指定している医者(主治医・プライマリケア医)からしか診察を受けることができない。
②標準的な治療方法で治癒できず、専門医師による診察・治療や専門病院への転院など”特別な治療”が求めれる場合は、担当医者がその患者が加入している保険会社に相談する。保険会社が指定する専門病院・専門医師から選び、事前に承認を保険会社からえる。患者や、最初に担当した医師(主治医)の自由意志で選ぶ事はできない。
③手術で入院という場合、管理者の保険会社が決めた期間、例えば盲腸の手術なら1日、脳卒中で1日、肺炎で2日、乳がん手術で1日。出産は正常分娩で2泊3日、帝王切開で4泊5日が保険で入院費が支払われる。

領事館員の盲腸手術実例??
 在ニューヨーク日本国総領事館は、「マンハッタン区の医療費は同区外の2倍から3倍ともいわれており、一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日約2千ドルから3千ドル程度の請求を受けます。一日の入院室料だけで、ニューヨーク圏中間給与所得者の一ヶ月分の月給(税込み)またはそれ以上に相当する訳です。処置・手術では急性虫垂炎で入院・手術(1日入院)を受けた場合は、1万ドル以上が請求されていますし、歯科治療では、歯一本の治療につき約千ドルと言われています。」 領事館のページ http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/g/01.html

このマネジドケアの医療では保険会社の用意した治療メニューなら、わずかな自己負担で済ませることができます。たとえば、乳がん患者は、手術翌日にはドレーンをつけたまま退院して、患者や家族が術後のケアする。自己負担するなら保険適用外の医療や入院もできるようになっているタイプの医療保険でも、1日入院料が日本の8~20倍、月収の半分位で普通の人は払いきれないので、退院せざるをえない。

無保険者の日米差 米国は医者・病院が診療を拒否できる法体系

日本の場合は、無保険者でも「医療」を受けることはできます。これは、法で医者に「医療」を提供することを義務づけているからです。「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と医師法第19条で規定しています。

 しかし、アメリカでは、そのような法律はないのです。アメリカ医師会倫理綱領は「医師は、患者関係に入るか否かを選択する職業上の特権を有し、」「医師には患者を選ぶ権利がある。」「しかし救急処置が決定的な意味をもつ緊急時には、能力の最善を尽くさなければならない。また医師は、一旦引き受けた患者を遺棄してはならない」「治療を提供する責務を果たし続けなければならない」としています。

それでアメリカの民間病院では、無保険者の診察はまず拒否されます。アメリカでは、「医師は、患者関係に入るか否かを選択する職業上の特権を有し」てますから「無保険者の診察は赤字を増やすだけ、診察はしたくない」と「救急処置が決定的な意味をもつ緊急時」以外の場合は、患者の診察を拒否します。無保険者が頼れるのは、公立病院のER(緊急救命室)だそうです。

医療価格は医師、病院の言い値 

また、治療費は病院や医者の“言い値”です。日本国領事館は「実際の急性虫垂炎・腹腔鏡下手術例(合併症なし、入院2日間)でみてみましょう。医療機関側からの請求総額は1万3千ドルでした。」アメリカの治療費は、病院の施設代と医師らの技術料の二本立てで「医療費の請求書は、医師、検査所、病院等より別々に送られてくることが多く、忘れた頃に届くことも稀ではありません。また、請求額や請求明細が誤っていることもしばしばみられますので、支払い前には十分な確認が必要です。(領事館)」

 日本人旅行者や無保険者には、治療法の適切性や明細を厳しくチェックできません。日本国領事館は「医療費だけを考えても、航空運賃を負担したとしても帰国した方が経済的負担はかなり少なくすみます。」とアドバイス。

米国の無保険者は、結局、病院や医者の“言い値”を支払う。持っている車、土地、家を売り、親戚縁者にも借金を頼み支払う、それでも払えない場合は自己破産。

アメリカの医療費は、国民総生産GDP比でも、国民一人当りでも、世界一であり、しかも上昇率も極めて大きいのです。GNP対比で2006年頃で米国は約16%、日本、英国は約8%。他の欧米諸国の1.5~2倍。

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高齢者・障害者向けのメディケアは、1965年発足時に比べ1995年には一人当たりでは25倍以上になっています。公的医療保険は、人口の約34%に相当する1億人が利用しています。それでも、医療費全体での公的負担、公的医療支出の割合は全体の45.8%と圧倒的に小さい。

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さるぐつわ条項と病院株式会社化

その医療費の高騰抑制策で1972年に医療標準に照らして医療機関からの請求が適正か審査する組織・PSROを設置。1982年に診断内容や診断行為の妥当性、適切性を厳しく審査する「医療警察」PROを設置。その結果、例えばニューヨーク市では、入院の14%が支払いを拒否され、わずか数ヶ月で平均在院日数が13日から8.7日にまで短縮されたそうです。

領事館の虫垂炎手術例の1万3千ドル請求は「保険会社から医療機関への支払いは、約4千5百ドル(請求額の3割)であり、患者本人の自己負担は数十ドル程度でした。」

このような医療の供給側、病院・医師の管理だけでなく、需要側の人々の受診に「適切な医療にだけ保険で支払」という管理を加味して1990年代から導入された仕組みが、「マネジドケア」です。例えば、救急車を呼ぶにも保険主治医の了解が必要。医師と保険会社との契約に、「さるぐつわ条項」医師が患者に保険会社の給付しうる内容以外の治療方法の選択肢を説明することを禁じた条項が盛り込まれています。

また、病院を株式会社にすれば、医療サービスの効率化が達成され、より良いサービスがより安く提供されるとして、営利の株式会社で病院を経営できるようにしました。米国では約1割が株式会社化しています。最大手のHCAは約350の病院の平均利益率が18%と高利益をあげる優良企業です。しかし例えば非営利病院が株式会社病院に変わると、平均死亡率が50%も増加(0.266から0.387)、逆に株式会社から非営利に変わった病院は死亡率が下るそうです。

13-10-28_03.jpg米国は最先端の高度医療技術では世界をリードをしていますが、平均寿命や乳児死亡率などの保健指標先進国の中でも最低レベルです。

米国は医療技術水準は高い(高水準)が医療制度は、医療費コストが高い(高コスト)、医療費支出の効率性が低い(非効率)、医療サービスのアクセスの公平性が確保されていない(不公平)が特徴です。

 このように、FFSという医療費を全額カバーする保険加入する地位や収入のある約3%ほどの人を除けば、進んだ医療技術の恩恵を受けられない米国社会です。多くのアメリカ人は病院に医者にかからぬ様に体調にあわせて複数のサプリメントを効果を信じて用いるのも肯けます。

 2013年10月28日、ぷららプログ掲載の加筆再録

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