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食品照射から被曝影響を考える ②有害生成物 [放射能汚染]

1953年に米国のアイゼンハーワー大統領は "Atom for Peace"「核の平和利用」 の政策を大々的に打ち出しました。この「平和利用」の一環として放射線照射・照射食品を原子力委員会や米国陸軍が本格的に研究を始めました。1952年にSparrow がジャガイモの発芽防止効果の発見を報告していました。陸軍は兵士に補給する食料の保存を冷凍設備なしに行えるようにすることを目的としていました。殺菌や害虫の防除、発芽防止などを目的にし、核が兵器だけでなく平和利用できることをアッピールする社会政治的目的を持った研究です。
核の平和利用としての食品照射
主な課題、解明すべき点として、①照射食品中に生成する物質に発癌物質、その他の毒物があるか、その量と②新たな放射能、誘導放射能が生成しふくまれないか③栄養的損失④微生物学的安全の問題が上げられています。ガンマ線やベータ線の放射線による食品成分の分解、および生成物の種類と量、陸軍は食品中の水が放射線分解されて生成する過酸化水素など活性酸素によって色・味・においなどが変化して酸味がでる食品の酸敗に関心を寄せています。
 放射線の線源候補は、使用済み核燃料(ゴミを宝に)、コバルト60(半減期5.27年、β線、γ線を出しニッケル60)、セシウム137、X線照射装置、人工的に電子を加速する電子線装置(実質的には高エネルギーのベータ線)が上がっていました。使用済み核燃料からは自発核分裂で中性子がでていますから、原子核にあたり捕獲されるとその物質を放射性物質・放射能に変える反応、放射化が起こりえます。
参照・・使用済み核燃料の使用 国立衛研報 第125号(2007)
http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2007/107-118.pdf
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 コバルト60、セシウム137からはγ線がでます。X線照射装置からのX線、γ線は高エネルギーの電磁波=光です。高エネルギーの光が原子核を照らすと、物理学的には光核反応がおき、次いで放射化が起こりえます。電子線装置でつくられる高エネルギーの電子線も、放射能を作り出す反応を起こしえます。理論的な考察から、放射化が起きにくいとの結論されていましたが、実証的に検証せねばなりません。日本の原子力や放射線被曝の科学ではシュミュレーションなどが好まれますが、米国では実証的な検証を重んじます。シュミュレーションは前提・設定が変われば、結果も変わります。導きたい結論が出るように設定を操作できます。実証的な検証が欠かせません。
被曝で変性し、有害物が生成 ・・50年代研究
 タンパク質、脂質、炭水化物、肉類、ビタミン類、酵素類に対する照射効果について、たとえば、照射によるタンパク変性は熱や紫外線、過酸化物によるものと異なる性質の変性であること、牛乳に照射すると多くの種類のビタミン類が失われること、臭いが付くことなどが既に報告されてました。糖、アミノ酸、脂肪酸エステルなどの食品成分の溶液を照射した実験から様々な有害物質がその中に生成することが分かり、照射食品には潜在的な危険性があるとされました。
 1963年の研究では、放射線照射により、当時その作用が十分分かっていないビタミン E、Kなどがえさの中から失われることが判らず、発ガン性など調べる長期毒性試験の多くが失敗に終わっています。このため発ガン性などは十分に検討できなかったようです。(ビタミン Eは、強い抗酸化作用があり、活性酸素の害からからだを守る。ビタミンKは、出血した時に血液を固めて止血する因子を活性化し、骨にあるたんぱく質を活性化し、骨の形成をうながします。)
米食品医薬品局FDAの対応
 このような状況から、米食品医薬品局FDAはいったん63年に出した照射ベーコンなどの許可を68年に取り消しています。 米食品医薬品局FDAは、放射線分解生成物の量を個別に照射食品ごとに推定し、それら放射線分解化合物の一人あたりの摂取量から安全性を確認する方法をとりました。ただし、その当時の分析測定法では有機溶媒で分解物を抽出し、その危険性を評価しています。これでは、有機溶媒で抽出できなかった不揮発成分の評価はできません。不完全です。
 それでも、1997年にFDAは、四半世紀の間に問題が起きなかった「基本的に照射食品は安全」。そうなので、その検知法は不要であるとして開発も検知も行わない方針を出しました。
EUの対応
 欧州EUはドイツ、デンマーク、イギリスの学者を動員し照射食品の健全性について調査を行い1987年に報告書をまとめました。それでは照射直後、高線量照射したあと時間が経過してない照射食品では、変異原性が見られた。しかし、適正に照射したあと、保存したり、あるいは加熱すると変異原性が見られない。殺菌などの目的を果たす有効で最小の線量でも照射すれば、生理活性のある成分が生成する。食品によってはそれが生物学的に問題になる量に達しないか、あるいは他の食品成分のために急速に分解してしまうためだろうと推定しています。
 これは、照射量が多かったり、食品によっては問題になる量まで生成する。他の食品成分で分解する時間、保存などの時間が短いとか、生鮮野菜果実など加熱しない食品では変異原性など生理活性を残している場合があるという心配がでてきます。それで、EUは検知法を開発し、検査を行っています。 それで食品中の脂質から生じる放射線特異的分解物質のアルキルシクロブタノン(ACB)を見出しています。
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生きている状況では
 食品では放射線を浴びた後に、生成した生理活性成分や活性酸素、フリーラジカルが他の食品成分で無害化する十分な保存時間を置いたり、加熱調理する、ビタミン類が壊されても他の食品で摂取する、照射食品を摂りすぎないといったことで、FDAのいう「基本的に照射食品は安全」な状況を保てると思います。その変質する食品成分、それや活性酸素などを無害化する他の食品成分は、生きている生物では生存・活動に欠かせないタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン類、酵素類などです。活性酸素は他から電子を奪うことで安定化しますが、奪われる相手がDNAならDNAが傷つく事になります。生鮮野菜果実は照射障害の現れやすい。

 生体ではDNAは修復する仕組みがあります。酵素タンパクなどは修復ではなく、プロテアソーム(proteasome)やオートファジー(Autophagy)などで分解され、再合成で補充される。その間は、その酵素などが担っていた機能は低下せざるを得ない。またその分解や合成でエネルギーを使うことになる。
参照・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-21
東電核災害で追加被曝する地域に居住する人や生物は、そうした負担を東電によって背負わされている。そうした負担が強いられている。それを意識する、自覚症状として認知するとか、他者が調査して検出しないとわからない。

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