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たけのこ筍あれこれ [作物あれこれ]

タケノコ栽培はマツタケ栽培と同じ、林を手入れしないとおいしい物は採れない

2005年4月小針店で印刷・配布したものに加筆

  タケノコは、タマネギ、アスパラガス、セロリー、花野菜などとほぼ同等の栄養価を持っています。独特の旨味は、チシロン、アスパラギン、ベタインなどの成分によるもので、歯応えはセルロースによるものです。

 竹の本数を調整したり施肥をするような栽培された竹林は、日本、中国、台湾のほかは、あまり見られません。 

日本の竹林は人工造成された竹林

  ひと口にタケといっても種類は多く、タケ・ササに属するものは世界で1、200余種、日本では600余種が知られています。ちなみの、笹と竹は、竹の子・筍が生長してタケの皮(葉鞘ヨウショウ)が脱落するものがタケ、ササは何時までも着いて残っている点で便宜上は区別しますが、和名とちがうことも多い。ササもタケも、分類学的にはイネ科という大きなグループの一員です。日本以外の外国では、これら全てをタケ類(Bamboos、バンブー)とよびます。熱帯地方のとくに雨の多い地帯に豊富で、タケの仲間が多いのは、温暖なアジアの東南部、アフリカ、南アメリカで、ササの仲間は熱帯に少なく、むしろ温帯を中心にサハリンや千島列島にまで分布します。
 
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 タケノコは収穫の早い順にモウソウダケ孟宗竹、ハチク淡竹、マダケ真竹があります。地方によっては、その他にも食用にしてますが、肉厚で歯ごたえが良く、用途が広く、おいしく、早い時期から食べられるのは断然モウソウダケです。孟宗竹が江戸期にも中国からたらされたということは定説になっていますが、真竹、淡竹については、古い時代に持ち込まれたという人もいれば、日本の自生種だという人もいます。
 
 つまり、私たちがよく目にする竹林は、孟宗竹は人間が栽培して広めた竹林です。竹は開花すると枯れ上がりますが、マダケ真竹、ハチク淡竹は開花してもほとんど種子をつけません。地下茎の断片的な部分が数年間生きていてそこから小さなタケがはえ、これが元になって新しい地下茎と若竹を増やし、開花後10年もたたぬうちに元の竹林に回復てしいます。この事から、淡竹、真竹の竹林も人間の手が加わって全国に拡がったことがわかります。
 日本の竹林は、竹材とタケノコを目的に農家の近くや里山丘陵地に造成された竹林です。竹材は農業用資材、日用のさまざまの器具類、家具や建築用材などで、タケノコはもちろん食用です。竹の本数を調整したり施肥をするような栽培された竹林は、日本、中国、台湾のほかは、あまり見られません。
 
今や幻の「目黒のたけのこ」

 タケノコはその漢字「筍」が示すように、一旬(10日間)でタケになるというほど成長が速いのです。タケを含むイネ科の植物は、細胞分裂が稈の頂端の成長点だけでなく、各節のすぐ上の成長環(分裂組織)の両方で細胞分裂が行なわれ、細胞数が増えて成長が進みます。タケの仲間は、この節、成長環の数が非常に多いのです。稲は10数の節ですが、孟宗竹や真竹では60~70節もありますから、特に速いのです。
 
 お米のイネは1年草ですが竹は多年にわたり生えています。しかし太ったり伸びたりの成長は、1年でおしまいです。杉や松などの樹木には毎年、細胞分裂して太ったり、伸びたりさせる「形成層」と呼ばれる組織があります。これが年輪を作ります。竹はどんなに太くても年輪はありません。形成層がないからです。成長は、1年でおしまいですから竹の年齢を見分けることは、大変むずかしい。

 竹は生えた年内に自分の体を完成させ、翌年からは同化作用を営んで、作り上げた養分を地下茎に蓄え、タケノコや新たな地下茎の生長へ回します。タケノコの発生は、親の竹が3~4年目がピークです。竹材としても3~4年で成熟し、以降は硬くなり価値が落ちます。このため1本の竹の寿命は15年程度ですが、出てから5年目、6年目で竹は伐採するのです。正確な年齢がわかるように竹栽培農家の皆さんは、タケノコから竹に成長した年号を1本、1本の竹に墨で黒々と書いて、一目で年齢が分かるようにしています。

 タケノコは放っておいても10a当り200~300kgの収穫があります。しかし肥料を施せば、多く取れます。10a当りタケノコ100kg増産するには肥料成分量はチッソ2.7kg、リンサン1.2kg、カリ1.7kg、ケイサン2.1kgとされています。また有機質の腐植が減少したり、土壌の物理、化学性を悪化するとタケノコの量質とも落ちますので、有機質肥料は必らず併用しなければならりません。

 東京の目黒は、江戸の寛政から昭和の初めまで“太く、柔らかく、おいしい”と三拍子そろった“目黒のタケノコ”の産地でした。目黒不動前の料亭で出される“名物筍飯”は多くの客を呼んでいました。目黒式という独特の栽培法が行われていました。孟宗竹の地下茎は大部分は地表に近い深さ20センチ以内にあります。タケノコは日が当たる乾燥して味が落ちますから、食用のタケノコの多くの長さが地面下にある20センチ程度なのです。目黒式は、関東ローム層の軟らかい土質を利して地下茎を掘り起こして、深く掘った溝に埋め直し肥料を施すのです。肥料を吸い込み、深いところから出てきますから、大きく、軟らかく、美味しいタケノコがとれる理屈です。目黒のタケノコは、関東大震災後に宅地化して姿を消してしまいました。
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 京都などでは、地下茎が成長をする梅雨、6月前に肥料を施します。雨水とともに肥料分が土中深くしみこみます。夏以降に、敷き藁、保水力のある赤土など客土を3~5センチ重ねてフカフカの布団をかけた様にします。敷き藁が腐れば有機肥料ですし、地下茎は上に乗った敷き藁や客土の分だけ深いところから出てくることになります。京都のタケノコ栽培は明治には一時、衰退しそうになりましたが、いち早く京都のタケノコの良さを全国にPRし販売促進が行われました。その結果、当時の流通方法で品質が維持できる期間内に食卓にのせることができたのは東京から広島まででしたが、消費量が格段に伸びて、栽培面積も拡大し、現在では、ブランド京野菜のなかでも最も人気の高い品目の一つとなっています。
 
タケノコ用竹林は背が低く疎林

 もっぱら竹の子をとる竹林と竹材用の竹林は一目で違いがわかります。竹の子は地下茎でつながった竹(親竹)の光合成・同化作用によって作られた栄養分によって生育します。したがって、京都などにあるタケノコ専用竹林は、親竹に十分に陽光があたるように間を空けるようにして竹林を作ります。これに対し、竹材はその年に伐り出す分だけ竹の子が出て来れば良いのです。
 
 タケノコの太さと親竹の太さはおおむね比例し、竹の子の親竹は眼の高さの太さで9センチ程度、節間中央の周囲が26から38センチが一番良いとされています。この太さの竹が10a一反で200~300本が竹の子用の竹林、竹と竹の間に畳が敷ける位離れています。竹材用では同じ太さなら600~700本で、密生しています。
 
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 また、竹の子を早出し出来れば、高値で売れます。そのために親竹が5~6mに成長した頃、タケノコ採取が終わった5月頃に先端を伐採する、芯止め、ウラドメという作業があります。竹は節が60~70できますが、それを17~18節で竹の生育をとめるようにする作業です。竹は生えた年内に自分の体を完成させ、翌年から作り上げた養分を地下茎に蓄え、タケノコや新たな地下茎の生長へ回します。先端を伐採することで、早めに切り替えを起こしタケノコの早出しに効果があります。それと風で竹が折れるのを防ぐ効果があるという作業です。ですから、芯止め、ウラドメされたケノコ用の竹林は背が低い竹林になります。
 しかしこの先端伐採で、竹に破断面、傷がつきます。竹材用では伐竹の時期は、防虫および生理的面から検討すると、春より夏にかけての伐採はさけた方がよく、適期は10月から翌年1月までとされています。タケノコ用の竹林の親竹更新の伐採も、適期は10月~12月です。ですから、春より夏にかけての行われる芯止め、ウラドメは病虫害を呼び寄せる心配があります。竹林は林野地に分類されます。林野地における農薬使用は、松くい虫防除の例を見ればわかるように、我々の眼からは規制があってないがごときです。
 
「自生」タケノコを食べて里山を維持しよう

   さお竹といいいますが、今や竹製にお目にかかるでしょうか?竹材の価格は低迷し、タケノコは外国から安い加工品が輸入されるようになり、農家の近くや里山丘陵地に造成された竹林の管理が放棄されるようになりました。
 地下茎から新しい芽を伸ばし貯蔵された栄養だけで短期間に高く伸びる性質をもつタケは、樹高が十数メートルしかない里山や二次林などには侵入すると、ひと夏の内に既存の樹木の上に葉を広げることができます。タケの陰になった既存の樹木は衰えていき、そのうちに竹林に取って代わられます。そして自然の力でその土地の気候にあった自然性の高い、多くの生物種が生息する林相に向かって推移していこうとする生態遷移を完全に止めてしまい、遷移の方向とは逆行する竹林という単純な林相を作って長期に安定してしまいます。竹林になってそのまま放置されると細いタケが密生する文字通りの竹薮になり、林内は暗くなって中に生育できる植物種は限られてしまい、生物の多様性は極端に低下します。
 虹屋のタケノコは「自生」物ですが、このように管理が放棄された竹林に再び手入れをするという効用もあるのです。
 


タグ:たけのこ
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