生態系・・ハイブリッド生態系モデル note [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
2013年6月16日、畑の便りの再録
岩波書店の「科学」2013年3月号の「種間相互作用の多様性は自然のバランスを支えるかー複雑生態系のパラドクスとその解消ー」
北里八雲有機牛 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
有機ミートソース 140g ※北海道で有機飼料をエサに育った"有機牛”を使用しています。
- 出版社/メーカー: ヒカリ
- メディア: その他
英国でのオーガニック食品と通常食品の時代遅れな比較研究 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№09-34 2009年8月小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録
7月、英国の食品規格庁(Food Standards Agency、FSA)が公表した研究結果が、海外では話題を呼んでいます。それは、オーガニック食品と通常生産された食品とを比較した研究で、重要な栄養成分含量では大きな差がないという内容です。
随分、時代遅れの評価法だと思います。車、自動車を加速性能などの乗り心地だけで評価しているようなものです。今は、二酸化炭素CO2の排出量など環境への影響、環境負荷も大きなポイントです。製造での排出量、使用時の排出量など環境負荷も大きな評価項目です。乗り心地に大差なければ、環境に与える悪影響が少ない方が選ばれる時代です。
環境負荷の評価・・将来世代への責任
私たちは、この地球にしか生きれません。その環境が人間が生きていけない、生き難い環境になったら大変です。ですから、オーガニック食品と通常生産された食品とを比較するなら、両方の環境負荷も比較すべきです。オーガニック・有機農法と通常生産の環境に与える影響も比較するのが今の時代感覚ではないでしょうか。
環境負荷の中でも、着目点は二つあると思います。一つは、農薬の生態系への影響です。第二次大戦後に普及した合成農薬は、特定の病害虫を殺傷するだけでなく、同種の無害な生き物や鳥などの捕食=天敵生物を殺してしまいます。病害虫だけでなく広く多くの生き物を殺してしまいます。環境・生態系を脆弱にしてしまう悪影響です。
もう一つは、化学肥料の多用による土壌の劣化です。土壌中に滞積した化学肥料が、地上に白く噴出す塩害。有機物・堆肥など有機肥料を施さない田畑の土壌は、ミミズなどの土壌生物がいなくなります。ミミズは土壌ごと有機物を食べて、丸めて排出します。団粒になった土壌は、内部に水分や作物が根から吸収する栄養分、肥料分を蓄える貯蔵庫です。ほかの土壌微生物たちも、こうした土壌の団粒構造をつくります。その結果、旱魃などに強い、生産力の高い土壌になります。化学肥料だけに頼ると、こうした土壌中の生き物たちの餌を与えないので、土壌が劣化します。
この生態系が脆弱になり土壌が劣化するほど、農業が持続しにくくなります。将来世代が食い物に困る可能性が高くなる。今日明日の問題ではないし、自分が困る問題でもないけど、私たちの命が繋がっていく将来世代の問題。
安全性は既に明確??
また「農薬はこの研究の対象からは除外されている。」のです。「なぜならば我々FSAは農薬の安全性については既に厳密に評価され明確であるという立場であるからである。」「オーガニックでも通常生産でも全ての農薬の使用は残留農薬によるリスクが概念上ゼロであるように規制され監視されている。」「概念上ゼロというのは毎日一生涯にわたって摂取しても検出できる影響はない量のADI以下の摂取量であるということである。」
“既に厳密に評価され明確”と言い切れるのでしょうか。例えば農薬とパーキンソン病の関連。手足の振るえや転びやすくなるなどの神経疾患、パーキンソン病と農業従事者など職業的農薬使用の関連は、2000年頃から言われていました。「今回のコホート研究の結果、農業あるいは園芸農業従事者におけるパーキンソン病発症のリスクの増加が示唆されたが、これはデンマークでは、安全な農薬の使用が行政による規制と労働者の訓練によって保たれてきたと一般的に信じられている事と対立する知見であり、パーキンソン病の発症に、農薬が重要な危険因子であるとする仮説に根拠を与えるものである.」食品・薬品安全性研究ニュース第37号
この関連性が再度確認され6月に公表されました。フランス国立衛生研究所とピエール・エ・マリー-キュリー大学の疫学的研究で、若い農業者よりも高齢の農業者で強く、農薬への暴露量と関連し、また有機塩素系殺虫剤に暴露された人の発病リスクは、普通の人に比べて2.4倍も高かったそうです。
有機塩素系殺虫剤は50年以上前から使われている農薬。その人の健康への影響、神経疾患との関連がようやくわかってきた。これまでの経験では、こうした毒性などは、職業病として発見され、一般公衆に検出が広がっていきます。 今、厳密に評価され明確に安全として使われている農薬、50年後にも、安全、人の健康への悪影響なしといわれているだろうか??厳密に評価しているのは確かだろうけど、明確に安全というのは言いすぎだと思います。
BSEの教訓・・命の繋がりの中の食物
狂牛病BSE、1980年代に英国で狂ったように暴れて死んでいく病気が牛に顕れました。1986年、死んだ牛の脳が海綿状になっていることがわかりました。英政府は、1988年、「人間の健康に影響を及ぼすことを示唆するものはない」
89年、BSEによる 「危険はない」
90年、「脅威を感じる理由はまったくない」
92年には「危険はまったくない」
94年には、イギリスの牛肉はただ安全なだけでなく、「まったく安全」。
96年3月、10万頭以上のBSE感染確認牛が出た後、この疾病による人間の犠牲者が10人出ており、彼らがすでに死亡、あるいは死にかけていること、犠牲者の数がどこまで増えるのか見当もつかないことを議会で報告
この10年間政府が安全を保証してきた後にどんでん返しの歴史を省みると、厳密に評価し明確に安全という姿勢は、科学者の傲慢とおもえます。人間・ホモサピエンス「知恵のある人」の知恵は、無知の知ではないでしょうか。
英国で有機的に飼育された牛、草食動物の牛には草や穀物しか与えない飼育法の牛には全くBSEが発生していないという事実に英国民は学び、約20億ポンドの有機食品を消費するようになりました。
あらゆる生物は、食物連鎖という命の繋がりの中で生きています。牛は草の命を頂き、私たちは牛の命を牛肉や牛乳で頂いて生きています。牛の排出物は、畑に帰り多くの土壌生物の食物となり、団粒構造の土壌のなかで肥効成分になり蓄えられ、根から吸収され、草をかたちづくり、牛に食べられる。その繋がり方の詳細は不明だが、繋がり方の添った農業、畜産での命の育み、作物栽培、家畜飼育が良い。
それに逆らったやり方では、BSEのようなことが起こる。その繋がりを絶つやり方、農薬散布・化学肥料多用などでは生態系が脆弱・劣化して農業が持続しにくくなり、将来世代が、私たちの命が繋がっていく将来世代が食い物に困る可能性が高くなる。食物を命の繋がりの中に位置付けてみる認識の枠組みの変化、フレームシフトがBSEの教訓だと思います。
その認識フレームでの比較が求められているのではないでしょうか。
英国の食品規格庁の比較研究は、旧来の枠組みでの、それもかなり傲慢な姿勢での比較であり、これでは差異が見えてこないのだと思います。普通栽培の雑草対策での、除草剤だけのやり方と、総合的雑草管理=作物のローテーションや質の高い種子を使う、ポリエチレンシートを使う、天敵利用などと除草剤を組み合わせるやり方の差異が、この評価法では見えません。
水耕栽培、養液栽培と農薬//有機農法的水耕栽培、養液栽培 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№09-08 2009年2月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
スーパーでは、ミズナなど様々な養液栽培の野菜が売られています。温室ハウスなどで植物の生長に必要な養分は化学肥料を溶かした液肥・培養液で、それを循環させて与える栽培方法です。
発泡スチロールの板、スポンジなどの根を張るための培地を用いた固形培地耕と培地を用いない水耕栽培、噴霧耕とがあります。培地に土を用い、液体肥料をチューブなどで補給するものは、養液土耕といい養液栽培には含めません。
なぜなら、作物と土、根と土壌微生物が織り成す生態系が、培地栽培や水耕栽培にはなく、養液土耕にはあるからです。化学肥料の養液栽培では水中の根に根毛が見られません。
根に取り付く病害虫に脆い
養液栽培は土作り、施肥の技能・手間が省けるとか、冷暖房をすれば一年中栽培できて計画的販売が可能とか、外食のファミリーレストラン内に装置を設置して店内で、お客さんの目の前でレタスなどを栽培できるとか、閉鎖性が高いので病気が出にくく無農薬栽培が可能などの利点もありますが、多くの欠点もあります。その一つが、病原菌が入ると蔓延、慢性化しやすい。
栽培前にハウス内や栽培装置の消毒をおこなう。床をコンクリ張りにしたり、施設に入るには着替えるなど土ぼこりなどで病原菌を持ち込まないようしています。そのように密閉度をたかめ消毒して、無菌状態を保とうとしています。が、栽培施設がいったん病原菌に汚染されると入られると、天敵生物もいないので、非常にもろい。
葉や茎を外から食べ荒らす病菌、害虫は、普通と同じ農薬散布で対処できますが、最大の弱点は根に取り付く土壌性のもの。病原菌、その胞子などが循環する培養液に混じって、作物だけでなく栽培装置、施設全体を循環し広がり発病・汚染します。根腐病の発生は80%以上だそうです。
そうなると殺菌消毒しますが、至る所に広がった病原菌を全滅させることは難しい。例えばスポンジ状の培地を完全に消毒することは不可能です。それで、しばしば、病害発生を繰り返します。
つまり養液栽培の要点は、培養液の殺菌です。その方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
銀で殺菌
つまり養液栽培の要点は、培養液の殺菌です。その方法にはどのようなものがあるのでしょうか?草刈真一さん(大阪府環境農林水産総合研究所)の資料などを基にまとめてみました。
加熱殺菌は安全性、殺菌効率、確実性は高いのですが、燃料代がかさむ。資材の殺菌には使われていますが、培養液消毒では少ない。
紫外線は、安全性、病原菌の種類を問わず効果がありますが、培養液が濁りが多いと効率が低下します。紫外線ランプの電気代もかさみます。オゾンは上水道でも用いられている、安全性、殺菌効率、確実性は高い方法で、塩素より殺菌力、安全性が高いのですが、装置が高く、高額の設備投資が必要です。
砂を使った緩速ろ過が一部で用いられています。砂による濾過作用と砂中に棲息する微生物の作用で病原菌が抑制され発病にいたりません。しかし大量の培養液に処理にはむきません。砂の代わりフィルターを用いる、フィルターは銀でコーティングして銀の殺菌力も利用します。これは、安価で導入も簡単ですが、フィルター交換の手間が新たに生じ、多発する施設や病気によっては効果がない。
最も普及しているのは、オクトクロスという農薬。培養液に使える(登録してある)たった一つの農薬です。ポリエステル製に布に銀を結合してあり、1トンの培養液に30cm×100cmのこの褐色の布を浸します。
銀は金属元素中最大の殺菌力をもち30~50ppb(十億分の一)濃度で効果を発揮します。液に浸すと銀が放出され、約16時間後にこの濃度になります。使いやすいし、多発する根腐病に有効で、合法的に使える農薬なので多用されています。ただ頻発する施設や発生すると全滅に近い被害になる青枯病や軟腐(なんぷ)病などには効果がありません。
無農薬が可能といわれてますが、青枯病や軟腐(なんぷ)病などが発生したら①その時栽培していたものは廃棄し、施設全体を隅々まで消毒して、新たにやり直す②普通栽培で使われているが、水耕栽培では合法的には使えない農薬を使い、栽培終了後に念入りに消毒などなど、どちらにせよ完全に殺菌はできません。つまり、新規就農者が飛びつきやすい敷居の低さがあるが、潜在的にリスキーで、借金をせおって撤退する例が多いのです。
蓼・タデ食う虫も、好き好き 医食同源と害虫 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№08-06 2008年2月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
虹屋は取り扱っている野菜の、一般的な慣行栽培での農薬の使用を、生産地の都道府県が制定した防除の標準をもとに表示しています。ある方から、「私は玉葱のあの臭いが嫌いで食べられない。玉葱に虫がつく、そして農薬をあんなに多く使うなんて信じられない」と言われました。
玉葱のあの香り、血液サラサラ効果があるそうですが、切っていると涙が出たりして嫌いな方も居ます。この方のご家族には玉葱の好きな方がいて「蓼食う虫も好き好き」と笑い話でその場は済んだのですが、これは食物の薬理効果、医食同源と関わっています。
貧すれば鈍す?鈍すれば貧に耐えられる? 中国産餃子 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№08-06 2008年2月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録。
先週来、中国産餃子で大騒ぎになっています。動物は縄張りのなかで食物を探します。いわば、彼らは何処の何を食べたかは知っている。人間と家畜は知らない。他の動物のように縄張り=餌場のものだけを食べているような食生活を送っていれば今回のようなことは起こらなかったのでは?動物としての基本線を外れた人間のあり方が根底にあると思えます。
人間にも縄張り感覚はあります。動物には各個体がコアの核心的な狭い縄張りと共有する領域を含む広い縄張りなど様々な縄張りを持っていますが、人間では国民国家が広い縄張りと言えます。動物には縄張りは自己の支配・管理が及ぶ領域で、人間も同様です。ですから、食べ物例えば餃子の件で言えば、自己の支配・管理が及ぶと観念される自国のものなら安心できるわけです。実際今回のような件が日本産の餃子で起きれば、日本政府・厚労省や保健所などの迅速な調査・原因究明が期待できますが、中国では他国ですから日本の調査権限は及ばない。まして春慶節。この時季の中国は、国家機関も開店休業状態ですから動き反応が鈍い。
それでは、どんな対策が可能でしょうか
私と隣人、男と女の見ている「赤色」は違うらしい? [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№08-30 2008年7月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
人間は視覚でえる情報に頼っています。私たちは三原色、赤・青・緑を識別できます。昆虫や鳥、魚はより多くの色で区別しています。昆虫や鳥は紫外線を見ることのできるので,花々は驚くほどの彩りに溢れていて、空の色は目まぐるしく変化し続けて見えているでしょう。ヒトの視覚はひどくお粗末で、人間の視覚世界はとても狭い。
また、同じ人間同士でも、視覚でとらえた世界は微妙に異なります。赤色覚は、哺乳類では霊長類で発達した感覚ですが、この赤色感覚は他人と違う場合が多いのです。夫婦で我が子、赤ちゃんの顔を見ても夫と妻では色合いが微妙に異なる別の表情像で見ている可能性が8割、同じ表情像で捉えているのは2割程度。これが赤ちゃんへの対応の夫と妻の違いに直結するわけではありませんが、夫婦でも感覚世界は別なのです。
赤色覚がヒトの社会を創った
哺乳類、鳥類などの脊椎をもつ動物の色覚は、5億年前の共通祖先では、視物質・光を吸収し反応する感知物質が明暗のみを感知するロドプシンと残りの4つの視物質グループが波長別に光を認識して色覚としています。色覚は四原色性が基本なのです。
進化上ずっと昼行性動物であった多くの魚類、鳥類、ハ虫類はこの4つの視物質を失うことなく、四原色です。しかし、ハ虫類・恐竜全盛時代を哺乳類は夜行性動物として生き延びました。夜では色覚を失っても問題はないでしょう。むしろ余り役に立たない色感覚器を作り維持に栄養を費やすより、色覚を無くす方がより「適応」=「進化」というべきでしょう。ジュラ紀、白亜紀の夜行性時代に哺乳類は1色や2色性の色覚しか持たなくなってしまいました。
赤型 (M/LWS) |
緑型 (RH2) |
青型 (SWS2) |
紫外線型 (SWS1) |
桿体型 (RH1) | |
魚類 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
両生類 | ○ | ? | ○ | ○ | ○ |
爬虫類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
鳥類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
哺乳類 | ○ | × | × | ○ | ○ |
高等霊長類 | ◎ (赤・緑) |
× | × | ○ (青) |
○ |
夜行性霊長類* | ○ | × | × | × | ○ |
恐竜がいなくなった後、約6400万年前、哺乳類は爆発的に放散進化を始めます。そのうち、森林に住み昼行性となった霊長類は、緑と赤を弁別するようになりました。三原色の色覚を手に入れました。森林は明るさが常にちらちらと変動し、緑陰のように環境光の波長がある色に偏っているような環境です。明度の変動に影響を受けない色度や波長が偏っていても色恒常性によって食物や敵を同定できる色覚は有用で威力があります。
この三原色、赤色の獲得で森林で熟し赤い果実や食べ易い赤い若芽を見つけ易くなったといわれています。しかし赤緑色覚異常が食物獲得の点で不利かといえば、迷彩や昆虫の擬態のような「色カモフラージュ」を見抜いて雑食のサルが昆虫など食物を得るには、赤緑色覚異常が有利だそうです。
また赤色覚の獲得で、表情によるコミュニケーション(顔色をうかがう)が発達したともいわれています。イヌなど他の哺乳類の顔は、強力な顎、非常に良く発達した嗅覚の大きな鼻腔、外に突出する耳が特徴で、目を閉じたり口を開いたりするための筋肉は表情を作るほど細かく発達していません。臭覚・匂いが重要で、また目も広い視界を確保できる側方視です。
サルで完璧になった前方立体視は、視界は減りますが他の個体の表情を立体的に細かく捉えられます。目を閉じたり口を開いたりするための筋肉を発達させ(表情筋)細かく動かし様々な表情をつくる能力とそれで感情や意思伝達をする能力は三原色を獲得したしたサルで発達しています。「真っ赤になって怒る」「頬を染める」「血の気が引く」といいますが、情動での血流の変化による顔の赤色は重要な表情情報です。赤色覚の獲得で、霊長類は細かな顔の表情による情動や意志のコミュニケーションとそれによる社会形成が可能なったといわれてます。
トリやハチの色受容体は複数で可視光領域全体をまんべんなく感知するのに対し,ヒトや旧世界ザルが持つ3種類の色受容体のうち2種類はいずれも波長約550nmあたりの赤色光を最も強く感じる。血中ヘモグロビン濃度の変化によって起きる肌の色の微妙な変化を感知できるのはこのためだと,カリフォルニア工科大学の神経生物学者たちは考えている。配偶者候補が健康な血色をしているか,敵が恐怖で青ざめているかなどを判別するのに役立つだろう。旧世界ザルの顔や尻に毛がなく,皮膚が露出していて血色がわかりやすいという事実が,この説を支持している。
Biology Lettres誌6月22号に掲載予定。NEWS SCAN 2006年7月号:日経サイエンス
錐体細胞 | 名称 | 症状 | 頻度 | ||
---|---|---|---|---|---|
青 | 緑 | 赤 | |||
○ | ○ | ○ | 正常色覚 | 症状はない | 多数派 |
○ | ○ | × | 第一色覚異常 | 緑~赤の色の見分けに問題が生じることがある | 男性20人に1人 女性500人に1人 |
○ | × | ○ | 第二色覚異常 | ||
× | ○ | ○ | 第三色覚異常 | 正常色覚とほとんど変わらない | 稀 |
× | × | ○ | 全色盲 | 色は識別できないが視力は良好 | 稀 |
× | ○ | × | |||
○ | × | × | 色が識別できず視力も低い | ||
× | × | × |
人間の「自己家畜化」の深化と食 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№07-50 2007年12月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
「家畜」は、人間によって、野生から切り離され、形や習性を変えられた動物。そうだとすると、自ら作った社会制度や文化的環境によって飼い慣らされ、それに適応して自らを変えてきた人類も、「家畜の一種」と見なされる。そういう発想で我々の人類の社会や生活の姿を考察する人類学のやり方が「自己家畜化」。人類は自らつくる環境によって身体的にも特異な進化を遂げ、あたかも家畜のごとく自己を管理する動物であり、家畜に見られる特徴があるとの認識です。
人間はもともと群居して家族、部族などの集団をつくって暮らしてきました。食料の調達、分配、配偶者の獲得、天敵や干ばつなどに戦ってきました。そして、人口が増えるほど町や都市を作り群居する動物です。それは、家畜の暮らしと似ていますから、家畜に見られる性質が人間にあってもおかしくはありません。
その証拠として、人間の身体の形態に、ちょうど家畜と同じような独特の変化が起きている、たとえば野生のイノシシとブタとを比べると、明らかにブタはイノシシよりも顔面部が小さくなっています。人類と猿では人類の方が顔面部が小さくなっています。巻き毛・縮れ毛、椎骨数や四肢骨の変化、皮膚の色素の増減など、人間と家畜だけにかぎって顕著に見られる形態変化がおきています。人間社会にも、何か家畜と同じ現象が起きているのではないかというわけです。
食での家畜化は、自分で餌を探してこなくても、飼い主である人間から毎日餌を与えられる。自分で餌を探す能力も使わなくていいという特徴があります。
野生と家畜化の特徴
①、家畜は多かれ少なかれ、人間が管理している空間のなかに囲い込まれて、生活をする。
②、家畜は、自分で餌を探してこなくても、飼い主である人間から毎日餌を与えられる。自分で餌を探す能力も使わなくていい。
③自然の脅威から遠ざかる。たとえば、天敵の襲来や、干ばつや、気候の変動などから守られる。家畜が死んでしまったら人間にとっても大損害だから、人間は家畜をできるかぎり守ろうとする。
④、家畜は人間によって品種改良(人為淘汰)させられていく。より役に立つような家畜へとたえず改良されるのが、家畜の宿命である。
⑤家畜は人間によって繁殖を管理される。人間は家畜を品種改良するときに、優秀なオスとメスをかけあわせて子どもを作る。そうやって、子供をたくさん産むブタを作り出したり、乳がたくさん出るウシを作り出したりする。このような生殖の管理こそが、家畜化の本質であるとも言える。
⑥、家畜にされると、その動物は身体の形が変わる。たとえば、イノシシを家畜化したものがブタなのだが、ブタは家畜になって身体の形が変わった。くちさきが短くなり、身体から毛が抜けて脂肪が付いた。牙は退化した。イヌもオオカミに比べて変化している。性周期も変化する。
⑦、家畜は死のコントロールを受ける。つまり、人間は家畜が予定外のときに死なないように全力でコントロールし、死ぬべきときが来たら強制的に殺す。
⑧、家畜と人間のあいだには独特の共犯関係が成立する場合がある。人間が家畜を餌付けするときのことを考えてみれば分かるように、家畜は餌をもらうことと引き替えに、労働をしたり、従順になったり、逃げ出さなかったり、芸をしたりすることを覚える。家畜は、自発的服従の状態にみずから身を置くことがある。いったんそうなってしまえば、そこから抜け出すのはとても難しいだろう。
無痛文明論 森岡正博著 より
火を使って調理するという点は今も昔も変わりがありません。昔の肉屋では、豚の背骨つきの半身がぶら下がっていて、職人技を駆使して塊肉を取っている、その塊肉を切り身に切り分けている光景が見られました。それが今はスチロールのトレイに入れられ、ラップにくるまれているという「ないないづくし」なのです。それは、電気を使った冷蔵庫の普及がもたらした近年になって現れた状況です。
低価格米のひみつ [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№07-43 2007年10月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
新潟「コシヒカリ」5kg1980円、秋田「あきたこまち」1580円・・スーパーではこんな安い価格で新米が売られています。今年の新米、平均では60kgで14397円、つまり5kg当たり1200円で、卸業者に売られています。卸の業者の袋代や配送など手間代などのマージンや小売段階のマージンを考えると、この消費者価格では、完全な赤字です。またドラッグストアやディスカウントストアではもっと安い、5kgで1300円程度のお米もあります。
こうした安売り米では、一部の米業者の偽装表示も起きています。以前、中国からの輸入ホーレン草の残留農薬検出で名を上げた農民連食品分析センターは、安売りの米にどんな米がどのくらい入っているのか分析しました。粒径の小さいくず米や古米がゾロゾロ検出されました。
世界的な穀物不足のなか、広がる日本の耕作放棄農地 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№07-39 2007年9月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
世界の穀物の貿易価格が上昇を続けています。このため欧州EUは、今秋と来春の穀物作付けに当たっての強制減反率をゼロにして増産(穀物収穫量1000万トンから1700万トン増える見込)を図るそうです。そして現在の輸入分の価格をやすくするためにに、輸入関税ゼロを当面継続する事を検討しています。中国も不足する大豆油、菜種油などの食用油で同様の政策をとっています。大豆輸入税を3%から1%に引き下げる予定で、来年度から、13億元(1億7300万㌦)の追加補助金を出し油料作物の栽培面積拡大、改良品種の普及など11の措置をおこなうと24日に発表しています。