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農薬を減らす工夫 ブログトップ
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クリタマバチ・・日本人が持ち込んだ害虫と天敵 [農薬を減らす工夫]

先日、虹屋の店裏にアシナガバチが巣を作りを駆除しました。蜂の中で人に影響を及ぼす毒をもつのは哺乳類に幼虫や蜜が狙われるような巣をつくる社会性を持ったグループ(ミツバチ、スズメバチなど、大部分のグループは、植物や無脊椎動物(昆虫・クモなど)に対しての毒です。

 狩人蜂は幼虫のエサとして狩ってきた獲物が腐らないようにするための生かさず殺さずの麻酔液、寄生蜂は、確実に産卵するための寄主を眠らせる麻酔液、特に、内部寄生をする寄生蜂の毒液は、寄主の体内に産みつけた卵が異物として排除されないように寄主の免疫をごまかしつつ、寄主が外部からの病原菌にやられないための免疫を温存させる、という毒液です。ビックリです。
 
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植物食のハチは、卵の産卵と共に親の体内で共生している菌も植物体に移し、その菌の働きで肥大したり腐朽した部分を幼虫は食べて大きくなります。ある寄生蜂がお茶に寄生するとお茶の木がつくる防御物質により最高品質のお茶ができるということもありますが、栽培植物につく寄生ハチは害虫。栗にはクリタマバチがいます。
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タマバチの類が産卵した植物の場所の組織が大きく変形して玉状の瘤(虫コブ・虫えい)を作り、その中に幼虫は隠れて肥大した部位を食べながら成長します。クリタマバチはクリの新芽に産卵し、4月上・中旬の発芽期に芽は異常に肥大して、赤みをおびた虫コブができます。そして新梢の発育が止まり、樹勢が弱くなり収量が減ります。日本での発生は、1941に岡山県で初めて確認された新参者です。1950年代中盤になると全国に拡大しました。
 
これを迎え撃ったのは日本土着の在来種のクリマモリオナガコバチ・栗護尾長小蜂です。もともと、コナラ、ミズナラ、クヌギなどに虫こぶを作るタマバチ類に寄生していた、タマバチの幼虫に卵を産みつけ食糧にしてきた寄生ハチです。クリタマバチにも寄生する、食域を広げたのです。ただ、それまで餌にしてきたコナラなどにつくタマバチよりも、新参者のクリタマバチは幼虫が大きくなる時期、虫コブが発達する時期がずれている、産卵管が幼虫に届くまで長くないため天敵としての効果が小さいのです。コナラなどブナ林が近くにないと、そもそもいません。困った!
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 クリマモリオナガコバチ・栗護尾長小蜂
 
 日中国交回復後に中国に派遣された果樹の天敵調査団が、クリタマバチが中国の在来種であること、天敵のチュウゴクオナガコバチを発見。チュウゴクオナガコバチを1979年、81年に輸入し放飼し生物的防除が試みられ、成功しています。そして、今はチュウゴクオナガコバチと在来のオナガコバチ類の交雑個体が出ているそうです。
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 左・・チュウゴクオナガコバチ
      中・・交雑
       右・・クリマモリオナガコバチ
 
人類が出現してから、植物の分布の拡がり速度が増したといわれます。平らな足裏などに種をつけて運ぶからだそうです。人類は、生態系の厚みを増す働きをしてきました。クリタマバチ騒動もその一つといえます。人間の作るものは、必ず壊れ、事故ります。原発は事故ると地域の生態系全体を長く損傷します。原発は、人類の生態的役割に相応しくない「文明の利器」だと私は思います。


農薬を半減できる二つの新技術  果樹の樹形、温湯散布 [農薬を減らす工夫]

№10-12 2010年3月小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

IPM(総合防除)と生物農薬

  果樹栽培では、多くの消費者が好む見た目が良い果実を収穫するために、農薬を多用しています。この農薬を50%、約半分減らせる技術が開発されました。高価な機械を買ったりする必要はありません。果樹農家は冬が終わりを告げる時季に、剪定(せんてい)、枝を切り落とし樹形を整える作業をします。その樹形を工夫することで、農薬を50%、約半分減らせると農研機構・東北農業研究センターが発表しました。
bouzyo_rinngo0109.jpg果樹園の農薬散布には、スピードスプレヤー(SS)、農薬を溶かした水を納めるタンクに散布ノズル、タイヤ、エンジン、運転台を取り付けた散布専用の車を使います。これで、果樹の間を走りながら、タンクの農薬を天辺に届くように一面に散布します。人が散布ノズルを散布したい葉々に近づけて散布するやり方に比べ、手間がかかりません。

その代わりに、面状に噴霧された農薬の霧滴流は葉に衝突・付着しないかぎり、しばらく漂い、やがて地面に落下して全て無駄に、つまり環境を汚染するだけ。その果樹にかからない農薬量は散布量の約80%

これを減らす薬剤到達性の良い樹形を考案して、農家で試してもらったところ、りんごでは50%、洋ナシでは40%の農薬を減らせました。その分、環境汚染、先週の畑の便りで取り上げたような水質汚染などが減らせてます。

 収穫量がりんごでは1割ほど減るといったデメリット、作業時間は2割程度削減し、農薬代も減るメリットがあるそうです。また、農薬散布では減らせない樹木中にいるシンクイムシなどの被害も減ったそうです。

  樹高を切り下げる剪定などで良い樹形にするには、早くて3年ほどかかるそうです。今の形が手直しできないほど悪ければ、植え直して骨格になる枝配置から育て直しが必要です。時間はかかりますが、こうした減農薬技術が拡がると良いですね。 

栽培中のイチゴに、週一回、温湯をかける

 55℃前後のお湯を散布すると、農薬が半分くらい減らせるそうです。茨城大学農学部の佐藤達雄准教授らが、取り組んでいる研究で22日に発表されました。
 作物に熱ショックを与えると、その後、さまざまな病原菌の感染に対する抵抗性があらわれます。高熱で、サリチル酸や感染特異的タンパク質の集積などがおこるからです。全身獲得抵抗性(SAR)といいます。この現象、熱ショック誘導抵抗性は、トマト、キュウリ、イチゴ、メロンなどさまざまな作物でおきます。高温そのものによる病害虫防除効果も期待できる。

hsant1.jpg佐藤准教授らは、栽培される作物の中でも特に農薬使用量が多い施設イチゴで、温湯の散布によって主要病害虫・うどんこ病、炭疽病、灰色かび病、ハダニ類など抑制し、農薬使用量の削減を目指して2008年から研究して来ました。

  農薬は周辺環境への負荷・悪影響や薬剤耐性病害虫の出現、生産コスト、作業労力など、化学合成農薬一辺倒の病害虫防除は様々な問題を抱えているので、クリーンな防除手段として「お湯」に着目しました。作物に悪影響がなく病害虫のみを抑制する温度域、全身獲得抵抗性(SAR)を誘導する温度域を明らかにする。必要な水量や散布方法や道具の開発です。

その結果、週一回、葉先がかかる位の55℃前後のお湯を散布すると、農薬が半分くらい減らせるとの結果が出たそうです。経費は農薬散布とほぼ同じですが、手間が6倍。実用的な自走式の散布装置を開発して、これを減らすことを目指して研究を継続するそうです。早く実用化されること、トマト、キュウリ、メロンなどさまざまな作物でも、研究・実用化されることを待ちたいです。

新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「温湯散布による施設イチゴの農薬使用量削減と保鮮技術の確立」のホームページ

消費者の選択が開発、普及を支える
 私たち消費者が、減農薬・有機栽培の農産物を購入すれば、それが生産農家に伝わり、こうした防除資材の開発、普及につながります。

京都府キュウリモザイク病を予防する植物ワクチンが製剤化されました 

ワクチンについて ベジタブルガーデン 日本デルモンテ

 



植物・作物用のワクチン [農薬を減らす工夫]

№09-12 2009年3月小針店で印刷・配布した「畑の便り」に加筆

 作物にもワクチンが、人間の予防接種と同様に病気の感染を防ぐワクチンがあるんです。 

IPM(総合防除)と生物農薬

  世界の農作物の収量の3割は病害虫と雑草で失われているといわれます。農業は、基本的に自然の原野を切り開いて、一種類の作物(植物)を広大な面積で栽培します。従って耕地の生態系・生物相は非常に単純なので、ここに作物の病原微生物が繁殖する条件が整うと、病害はあっという間に広がります。古来、人間は様々な病害虫対策を行ってきました。

  農薬は、日本では1670年に鯨油(げいゆ)を水田の水面に注ぎ、稲を揺らして害虫をその上に落として、その油膜で虫体を包んで動けないようにするとともに気門をふさいで窒息させる方法が記録されています。
享保17年(1732)西日本でウンカが大発生により飢饉がおこり、百万人近くもの餓死者がでました。それ以来、徳川幕府はウンカが大発生すると各地の代官にたいし鯨油による注油駆除を教示、つまり、当時は鯨油は幕府お墨付きの唯一の農薬でした。(これが、日本で捕鯨が盛んに行われていた理由の一つです。欧米では鯨肉をたべないで、もっぱら鯨油などの利用でしたが、日本では肉、脂はむろん捨てる部分がないほど利用されました)。

  この注油法は、明治維新後、鯨油が石油に変わったり、誘蛾灯で集めて下に油をはった容器の上に落とすなど改善されて、約280年間にわたり不可欠のウンカ防除技術として主食のお米の生産に貢献してきました。戦争中は空襲の目印になるなど理由で中止されました。敗戦後、再開しようとしたときに誘蛾灯の電気がもったいないなどの理由をつけて、DDTなど合成殺虫剤が「これを使いなさい」と占領米軍からお下げ渡しになりました。これが日本で、広く大量の合成農薬が使われるようになったきっかけです。
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  こうして現在、主流になった化学合成農薬は非常に効果がありますが、一方、正しく使わないと作物に残留したもので人間に直ちに、慢性的に害を起こしたり、また害虫以外の生物など環境に大きな影響を与え、残します。

  病害虫は、大きく害虫(昆虫)、病原菌(カビなどと細菌)、ウイルスがいます。農作物のウイルス病を治す農薬はありません。アブラムシは体長1~2mmほどで吸汁による食害よりも、その際に様々なウイルスを作物に持ち込む、ウイルス病にかかった作物でウイルスの入った汁を吸う→別の植物に移って吸汁の際にウイルスに感染させる害が甚大です。そのためアブラムシの防除するために殺虫剤が多用されています。植物ウイルスは特効薬がないので、媒介する昆虫や菌類、線虫類を駆除する農薬を使用します。

  それで現在IPM(総合防除)という考えかたが提唱されています。化学農薬だけに頼らず、いろいろな防除をしつつ環境を守り、かつ、生産が安定し、農家も十分な収入が得られるようにするという考えです。例えば、耕作方法や品種を変えたり、黒いシートをしいて雑草を防いだり、防虫ネットをかけ、ハエとり紙のような黄色や青色の粘着シートで害虫を取る。そして、今、注目されているのが、生物の知恵を利用する「生物農薬」です。

植物ウイルスと「干渉効果」

 植物・作物はウイルスの攻撃を一度受けると、同じ種類のウイルスへの抵抗力を持ちます(干渉効果)。そこで病原性の弱いウイルス(弱毒ウイルス)を植物に人工的に感染させて、植物に抵抗性を持たせる研究が行われています。

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  750種以上の植物に感染するキュウリ・モザイク・ウイルス(CMV)、アブラムシが媒介しトマトでは葉を縮らせ実が熟す頃になると亀裂が入り、腐らせたり、枯らしたりします。自然にあるCMVから分離した性質の弱い弱毒CMVを予防接種したトマトやキュウリ、ピーマンの苗が販売されています。
キュウリモザイク病は感染すると葉は激しく縮れてモザイクに、実も凸凹に変形し、急激に萎れて枯れてしまう。特に症状が激しいズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)を弱毒化した生ワクチン、苗に予め接種して予防する農薬が昨年から販売されています。

これらを使えば、ウイルスを運ぶアブラムシに対する殺虫剤も撒かなくて済むわけです。

ジネンジョに予防接種 モザイク病防ぐ 山口県(日本農業新聞) 
 
 山□県農林総合技術センターは、ジネンジョのモザイク病の防除に植物ウイルスワクチンが有効であることを明らかにした。病気にかかった芋に比べ、重量が2倍程度に増え、ポリフェノールなどの機能性成分の増加も期待できる。今年1月に特許を申請し、中山間地域を中心に普及に移していく。 ワクチンは、ウイルスフリー苗に傷を付け、弱毒系統のウイルスをすり込んで接種する。植物内にワクチンが入れば、人間の予防接種と同様に病気の感染を防ぐ。収穫芋から種芋を切り取る時もワクチンの効果を引き継ぐため、毎年苗を購入する必要がない。 病気を防ぐことで、ジネンジョ本来の収量や機能性成分の含羞が回復する。発病した芋の平均重量は1本300gだか、ワクチンを接種した芋は500~700gになる。試験では、ビタミン類の含有は2倍に増え、ボリフェノール類は100g当たり17ミリグラムと、従来より同4ミリグラム増えた。

  ピーマンのモザイク病も、葉が縮れ実が変形します。これはトウガラシ・マイルド・モットル・ウイルス(PMMoV)による土壌伝染性ウイルス病です。その防除には、臭化メチル剤による土壌くん蒸が最も効果的でしたが、オゾン層保全のため2005年に使えなくなりました。対策として抵抗性新品種の開発されましたが、敵もさる者、それら新品種の抵抗性を打破して感染する新型ウイルス系統が各地の生産圃場で発生しています。このような悪循環を回避するために、ワクチン(弱毒ウイルス)の開発がおこなわれ、現在、農家が安心して利用できるよう、生物農薬登録のための試験が実施されています。
 
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ブドウ根頭がんしゅ病は、地上部や根に「こぶ」(がんしゅ、腫瘍)を形成して生育不良や枯死の原因となる難防除病害です。世界中で発生しています。しかし、これまで診断や効果の高い防除方法はありませんでした。

そこで、ブドウから分離された病原細菌(Rhizobium vitis)の同定とその病原性の有無を同時に判定する、簡易で正確な遺伝子診断法を開発。これを用いて非病原性で病原細菌の抑制効果が高い菌株(拮抗細菌)を発見しました。

発見した拮抗細菌を生物農薬として使用法は「株浸漬法(培養液へのブドウ根の浸漬処理)」「灌注処理法(培養液を株周囲の土壌に潅注処理)」が開発。特に株浸漬法では、本病の発病株数を80~100%抑制することに成功。さらに、防除効果の安定性に必要な本拮抗細菌のブドウ樹への定着性と防除効果の持続性があり、、本拮抗細菌はブドウ以外の各種農作物の根頭がんしゅ病に対しても高い防除効果があることを明らかになっています。 ⇒http://www.s.affrc.go.jp/docs/mg/mg130501/contents_01.htm

 
  このように病気ごと作物ごとに、海外の微生物は、日本の微生物相を乱す恐れもあるから、地元の生物から選んで開発するのが原則ですから、手間がかかります。
 逆にいえば、全部殺す、防ぐというのではなく、個別対応だから人間など他の生き物には安全。元々すんでいた微生物から選ばれた、特定の病原微生物をえさにする微生物だから、病が癒える=食い物・えさの病原微生物がいなくなるから、撒いた農薬の微生物も自然に死に絶えてしまうか、ごく低濃度になるから環境を悪くしないのです。

  ウイルスの干渉効果などその仕組みは、よくわかっていません。こうした病原微生物が感染する植物・宿主決定する仕組み・病原性・植物側の抵抗性・耐性の仕組みといった基礎的な事柄の解明、その知見の蓄積が生物農薬の開発を加速します。地道な研究、開発に取り組んでいる人々に感謝です。

消費者の選択が開発、普及を支える

 私たち消費者が、減農薬・有機栽培の農産物を購入すれば、それが生産農家に伝わり、こうした防除資材の開発、普及につながります。


江戸時代に無農薬で野菜がとれたわけ・・里山 [農薬を減らす工夫]

№08-35 、 2008年8月26日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録
 
110万種もいても地球上の生態系の中では存在感が薄い昆虫類

 現在知られている生物種は約170万種、そのうち65%が昆虫。しかし、地球上の生態系の中では存在感が薄いのです。一つ一つの種の生物量が少ないうえに、種の多さにより昆虫の個々の種が絶滅したとしても環境には大きな影響が及ばない、ある種(蝶や蛾など)が絶滅してもそれに変わる種が生き残る、約5億4400万年まえの古生代から変幻自在ぶりを発揮して、昆虫は生き延びてきたのです。
  
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  昆虫は種全体としては目立ちません。「生態系の血液」とも言われる、その重要な働きが、知られていません。例えば、鳥類のえさの50%が昆虫類。多くの植物は花粉の運搬を昆虫に委ねています。森林の落葉や倒木などは、食物繊維・セルロースが多く難分解です。シロアリの仲間は体内でセルロース分解性微生物を共生させており、その微生物がセルロースを分解し蟻が吸収できる栄養素とし、蟻はそのため落葉や倒木を食べて生きてゆけ、糞などでセルロースに閉じ込められていた元素が大地に大気に帰り、ふたたび木々が利用出来るようになります。川や池など水系に落ちた落葉などは、まず水生昆虫が小さく刻んで消化し糞として排出する。この糞を水系の微生物が分解することで水の浄化が能率よく進む。河川に殺虫剤を流し水生昆虫を減少させると、微生物の働きが悪くなり浄化能力が低下します。環境における物質循環、物質移動の貢献度では昆虫の働きは非常に大きいのです。

  草食の昆虫は一つの種の植物だけが繁栄する事を妨げ、結果的に多種の植物で生物多様性のある草原や森がつくられる手助けしてます。その上、植物Aが大量にある時には、それを食べる昆虫が大発生して植物Aを食べつくすしておかしくありませんが、実際には起きません。昆虫の中で捕食者(肉食昆虫)と被捕食者(草食昆虫)の仕組みが、天敵の関係が昆虫間に備わっており、植物を食べつくさない仕組みが内在してあるのです。
 
里山は天敵の供給基地 

   田圃は稲だけ、小松菜畑は小松菜だけの歪な人工的な生態系ですが、それでも、昔はほとんど農薬無しで、収穫があったのも、天敵生物のおかげです。例えばリンゴ。
 化学合成農薬があまり使われていなかった戦前。リンゴの害虫被害果実は約1割でした。現在、化学合成農薬をいきなり止めると約9割が被害にあうといわれています。この差は天敵生物の有無、害虫を餌にする肉食昆虫や害虫の幼虫に卵を産みつける寄生蜂などの活躍によります。戦前の約1割の被害果実は天敵のいない害虫によるもので、この害虫を駆除するために農薬を使い出したら、それまでいた天敵生物も駆除されてしまい、その結果、その天敵に抑えられていた害虫がはびこり、また使用農薬が増えるという悪循環。

  化学合成農薬は安全性や環境への影響、経済性(原油高→価格上昇)から減らす方向に変わりつつあります。そのためには天敵生物に頼らざるを得ませんが、その天敵は何処から畑にやってくるのでしょうか。これまでの調査で、ずばり農地周辺の里山。害虫を捕食する肉食昆虫の一大供給基地になっていることや、間伐や下草刈りなど適度な管理が有益な天敵昆虫を増やすことが分かってきました。

①果樹園と里山林の境界付近に捕虫器を設置してオサムシ類(肉食)の行動を調査したところ、オスは林の縁に集中して分布、一方、果樹園の中にいた成虫はほとんどがメス、幼虫は農地・果樹園との境界から30~40㍍の林内に集中していた。メスは産卵に備えて大量の餌となるムシ・虫を必要とするので「里山林を交尾や産卵の拠点としながら、餌を求め農地に頻繁に進出していることが裏付けられた」(前藤薫 神戸大・大学院准教授)

②農作物の害虫・夜ガ類に卵を産む寄生蜂の生息数を見ると、伐採後10年程度の林では高い密度で、放置したまま樹齢を重ねた林では急速に密度が減ることが分かった。「草原を好む昆虫にとって、手入れされず木が生い茂る森は住みにくいため。間伐や下草刈りなど、(バイオマス・エネルギー源などに)里山利用が適度な管理になり天敵蜂をふやすことになる」(前藤)
  戦前は、炭や薪、肥料にする落葉集め、山菜・キノコ採取などが適度な管理になっていて、知らず知らずに天敵を最大利用していたのです。今日、光制御など天敵と協働可能な多くの技術が実用化しています。そうした個別技術を各々の農耕地環境に応じて適切に組み合わせる智恵の成熟が望まれます。
 


病原昆虫の天敵療法 ウイルス農薬 [農薬を減らす工夫]

№05-14 2005年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

人間が、農作物を病害虫から護る手段として農薬は必要です。しかし現在主流の化学合成農薬は、人や環境への悪影響、破壊力が大きく使用量や使用場面を極力減らすべきです。我々市民が消費者として、そうして栽培された農作物を選ぶこと=購買すれば、そうした減農薬、有機農業を支える農業技術が生み出され、普及します。その実例を、ハスモンヨトウと核多角体病ウイルスをつかった農薬で見てみます。 

ヨトウムシと浸透移行性殺虫剤

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 家庭菜園やベランダ菜園をなさっている方は、収穫しようというその日の朝みると、丹精込めたトマトやホーレン草などが丸裸になっていて、どこにも虫の姿は無く不思議な思いをなることはありませんか。夜に見に行くとお食事中というこの犯人は、夜盗虫(ヨトウムシ・ヤガ類)。卵からかえった幼虫、小さい青虫は鳥のエサにならないように葉裏に隠れて葉裏から食害し、やや大きくなると幼虫は昼間は土のなかに潜み,夜になると出てきます。
  夜盗虫の中でも、ハスモンヨトウはその発生面積は年間12万ヘクタールにものぼる重要な害虫です。非常に雑食性で、里芋、長イモ、キャベツ、ナス。白菜、大根、ネギ、トマト、ピーマン、人参、イチゴ、大豆(特に多い)。菊、ダリア、キンセンカ、カーネーション、シクラメンなど食害します。
  5回脱皮しますが、孵化後7日ほどの2回目の脱皮をすると殺虫剤が効きが悪くなり(感受性が低下し)さらに大きくなると、昼間は地中に潜みますから殺虫剤がかかりにくくなり農薬による防除が難しい害虫で、孵化した幼虫が食べて葉が葉脈だけを残して白く見える白変葉が出てきたら、農薬を散布するのが最も一般的な防除法です。
  しかし、この時期の青虫は鳥のエサにならないように葉裏に隠れています。殺虫剤は、虫に薬が触れないと効き目の無い接触性の農薬と、植物の根や葉等から薬がしみこんで植物全体が農薬になり、その植物を食べた虫がころりといく効き目の長い浸透移行性の農薬があります。ハスモンヨトウの幼虫は葉裏に隠れているから、接触性の農薬は散布に手間がかかり難い、しかし浸透移行性の農薬では、葉物やナス、胡瓜、イチゴ等花が咲けばすぐに収穫できる野菜では、薬がしみこんでいる野菜を食べることになり、これもまた使い難い。さらに、長年農薬を使い続けたため、様々な薬剤に対する感受性が低下しており、殺虫剤の効きが悪い難防除害虫となっています。
 
特定の害虫だけを狙い撃ち、ウイルス農薬

 それでハスモンヨトウの幼虫を狙い撃ちするウイルス農薬を開発されました。東京農工大学と日本化薬が共同で開発し、化学農薬に比べ殺虫力と即効性に優れ、一度散布すれば1シーズン持続します。化学農薬の使用を減らせるため、天敵生物や環境への負荷も少ないものです。

  まず全国各地からハスモンヨトウの幼虫を病死させる核多角体病ウイルスを採取しました。その中から殺虫力が強く、致死までの時間が短いものを選び、ハスモンヨトウを大量飼育してウイルスを量産し、粉末状のウイルス農薬を作り出しました。幼虫の発生初期に、水で1000倍に薄めて散布すれば、ウイルスが幼虫の体内で腸から侵入し増殖し殺虫します。2003年に大学農場で行われた実証試験では、化学農薬の区は散布後7日目の幼虫の生存率が22.0%だったのに対し、ウイルス農薬では11.4%と高い殺虫効果を示しました。そのうえ、感染し死亡した幼虫が次世代への感染源となり、その後も効果を顕しました。

  昆虫ウイルスは人や家畜には感染しません。ウイルス農薬は、人畜に対する安全性が高いうえ、化学合成農薬のように対象害虫以外の生物、クモや蜂など天敵を殺すことなく悪影響を及ぼしません。このため天敵の活動が増大し、対象害虫のみならず、それ以外の害虫も減少することが期待されます。すなわち、化学合成農薬使用量の著しい低減が期待できます。
  ただし、ほとんどの蝶や蛾の幼虫は、発育齢が進むとウイルスに感染しにくくなります(成熟免疫)そのため、ウイルス殺虫剤の散布は適期を逃さず極めて短期間に行なう必要があります。欧米においては、約20種類のウイルス農薬が登録されていますが、日本では1種類(2商品)が農薬登録されているだけです。

   欧米では昆虫病原微生物の害虫防除への利用研究ともに農業分野の昆虫学が発展してきましたが、日本では長い間「お蚕様」を対象とし蚕病防除研究に昆虫病理学の主眼が置かれてきたことが影響していると言われています。今回のウイルスは、4月に農薬登録申請が予定されています。
 
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消費者の選択が開発、普及を支える

 現在のウイルス農薬は、お茶のハマキ害虫を対象とするものです。(商品名 ハマキ天敵、カヤクハマキ天敵)鹿児島県でこれを使った防除が定着しています、その理由の一つは、お茶が嗜好品で消費者の健康志向に応じて農家がこうした資材を導入する事に関心が高かったことがあげられています。私たち消費者が、減農薬・有機栽培の農産物を購入すれば、それが生産農家に伝わり、こうした防除資材の開発、普及につながります。


天敵活用、あなたは虫食いリンゴを年に何個、許せますか? [農薬を減らす工夫]

№08-33 、 2008年8月4日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

 天敵不在の今、殺虫剤の散布をやめるとリンゴの被害率は90%に及ぶ

 もう直ぐお盆、青りんごが出てくる時季です。普通栽培のりんごは農薬を多数大量に使用します。「今、殺虫剤の散布をやめるとリンゴの被害率は90%に及ぶといわれる。しかし、有機殺虫剤のなかった戦前ではリンゴ被害は10~15%だった。それは果実内部にいて天敵にやられないハリトーン(モモシンクイガ)によるものだ。この『難防除害虫』を薬剤で防除した代償に蜘蛛や寄生蜂などの天敵が絶滅してしまった。

  そのために幼虫が野外にいて多くの天敵にやられていた害虫、なかでも世代が短くて繁殖力が強い小型な害虫のダニ、カイガラムシ、アザミウマなどが現在『難防除害虫』となり農薬防除の対象となり、これが被害率90%の内実だ」

  つまり『難防除害虫』の天敵生物の活用が農薬を減らして、環境と健康を護るには重要です。一番手軽なのは、畑の周辺に住んでいる天敵を使うこと、無料で手に入るし、市販されている天敵資材は大半が外国産の生物で生態系を乱す恐れがありますが、土着なら地域の環境にも合っています。しかし、現在の農薬取締法(農取法)では、この地元にすみ着いている「土着天敵」を捕まえ、その土着天敵を増殖して、畑に放して防除に使うことはできないのです。小3の娘は学校でアゲハチョウの幼虫を飼育しています。昆虫マニアはしばしば、捕まえた虫を飼育、繁殖し、自然に放ち増やすことを試みています。しかし、農家が土着天敵で同じ事、増殖し防除に放つと違法行為になる恐れがあるのです。

  農取法を所管する農水省によれば、「野外にいるから土着なのであって、人工の環境下で増殖した虫は、土着と判断されない可能性がある。土着でない虫に農薬的な効能をうたえば、無登録農薬とみなされる。」「土着とは同一県の範囲、県境近くにいる農家が県境を越えて天敵を捕まえた場合、その虫は土着と判断されない可能性がある。」従って、触法、無登録農薬の使用になるぞ!というのです。

ああ弟よ君を泣く

君の心、死にたまふことなかれ

親は筆をにぎらせて

屁理屈こねよと教えしや

民を苦しめて保身せよとて

二十四までをそだてしや

農水の城はほろぶとも

 ほろびずとても何事か

君知るべきや民びとの

収めし税の重みを

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 高知県の天敵特区 

  高知県土佐市のピーマン生産農家は、「農薬をまったく使わないことはできなくても減農薬にはこだわり、安全で安心できるピーマンを消費者に届けていきたい」と天敵昆虫を利用した害虫防除に取り組んでいます。平成14年に2戸の生産者が、天敵昆虫を試験導入しました。農薬の効果が低く広範囲で被害を及ぼす難防除害虫、アザミウマ類、アブラムシ類、ハスモンヨトウなどに天敵農薬のタイリクヒメハナカメムシ、コレマンアブラバチを導入し、これらの天敵に影響の少ない殺虫剤を組み合わせることで、殺虫剤の散布回数を慣行の1/7~1/4に少なくすることに成功。平成17年度には天敵導入が全戸約60戸に広がりました。 

 同年頃から、「タバココナジラミ」が侵入し、深刻な被害が発生しました。この害虫は農薬に抵抗性のある、農薬が効かない系統でした。農家は、被害状況の観察し、試行錯誤を繰り返した結果、ハウス周辺の棲息する虫・クロヒョウタンカスミカメ、この土着天敵の導入が最も効果的であることが判りました。ハウス周辺の草木の下に網を入れて、後は大人数人が一匹一匹探し、採取してハウス内に放すのです。安定的に確保するために、共同でハウス一棟を犠牲にして、中でピーマンを栽培し、「タバココナジラミ」を付け、クロヒョウタンカスミカメを棲息させて、確保することも始めました。

  高知県では天敵を利用する防除がナス栽培面積の29%、ピーマン・シシトウの58%、天敵などの生物農薬の使用量(金額ベース)は日本で第一位です。農薬登録され市販されている土着天敵の代表種タイリクヒメハナカメムシの場合、10a当たり1000頭放飼が基本とされて、購入費がかさみます。
このカメムシに見合う土着のカメムシ類をこの数だけ農家が栽培現場周辺・野外で採取することは困難。それで農家らがつくる「エコ研究会」が昨年、「土着天敵を人工増殖させて使えないか」と高知大学農学部に相談。「実験室等で維持している土着天敵を施設園芸害虫防除のために農家に無償で配付し、天敵増殖キットなどを用いて農家の手で増殖する事ができれば、防除に必要な個体数を確保でき、農家の防除資材購入費用の削減にも繋がる。」として高知県を農取法の例外、天敵特区とするよう申請を6月に出しました。屁理屈こねの農水官僚がどう答えるでしょうか? 

虫食いの防除水準は適正か? 

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さて、天敵活用の障害は農水省だけではありません。天敵による防除はおのずから限界があります。天敵は害虫の幼虫を捕食したり、寄生したりしますが翌季の幼虫を確保するため、全部を食い尽くしてしまうことはありません。必ず、幾らかの幼虫が生き残り、虫食いの作物がある程度は出ます。
 外国の消費者はリンゴの害虫被害を1000個に10~20個は許容していますが(防除水準1~2%以下)、日本の消費者の皆さんはどうでしょうか?毎日リンゴを朝昼晩と3個食べたとして、年間約1000個、虫食いリンゴが許せるのは1回?2回?

 


天敵昆虫を利用して農薬を減らすには? [農薬を減らす工夫]

№03-23 、 2003年5月27日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

 耕作地は病害虫、雑草には人間が用意してくれた快適空間

  耕作地、田畑は生態系という点で見れば、肥沃な土壌に大根やキャベツなどの少い種類の作物植物が大量に生えているきわめて単純な構成です。ですから、その作物植物を食べる、寄生する青虫などの虫や菌・微生物には「美味しい食卓」です。また作物が植わっていない地面は、ほかの植物にも肥沃で陽光がよくあたる空き地です。人間は彼らを病害虫、雑草と呼びますが、耕作地は人間が用意してくれた快適空間です。

  彼らが耕地で繁殖すると、今度は彼らを食べ物とする生物が入ってきます。天敵です。例えば露地にナスを植えると、ナスに害虫のスリップス(ミナミキイロアザミウマ)がつき、実や葉に口を差し込んで汁を吸い増えます。すると畑の周囲のシロツメクサなどの雑草から天敵(ヒメハナカメムシ類)がナス畑に飛んできて、害虫を食べ発生を少なくしてくれます。

しかし、この天敵だけでナスの被害を十分に防げません。なぜなら、天敵のカメムシ類は餌の害虫のスリップスが増えた後に増えはじめ、それから害虫が減ります。また病害虫や雑草がそれまでその地域にいなかった外来性の種では、有力な天敵がいないこともあります。それで、化学合成した農薬に替わる防除方法として天敵を利用をする際には、自然に任せたのでは病害虫が大量発生してから天敵が現われますので、予め人間が天敵を用意して放す、棲息させることが行われています。 

「除草虫」を放して雑草を抑える 

米国フロリダ中部で、熱帯ソーダアップル(TSA)という外来雑草の拡散を南米産の甲虫を放って防ぐ生物学的防除が行われています。

  TSAは、ブラジルとアルゼンチンが原産の雑草で、背が高く、とげたらけが特徴。白い花をつけ、その実は小さいが、果皮はスイカに似ています。多湿で肥えた台地、水辺、かんきつ類の果樹薗、野菜畑に拡がり、フロリダでは百万エーカー(四十万㌶)、生育すると土着の植物を駆逐し重大な経済的損害を与えています。例えば牧場では種が牛のふんで運ばれ、牧場全体がたちまち雑草で覆われ、牧草が生えなくなります。牧場主にとっては大問題となっています。

  フロリダ大学のジュリオ・メダル助教授が六年間にわたる原産地調査、研究で見出した南米産の甲虫を使います。この虫はTSA(熱帯ソーダアップル)の葉を落とす葉きり虫で、切り落とされたTSAは衰弱してしまいます。フロリダで雑草TSAが侵入したところに、この甲虫を放つのです。フロリダ農務・消費者保護局、米国農務省、フロリダ大学の共同事業としで行われてます。

研究では他の作物への悪影響はありませんでしたが、実際に放してみないとフロリダのほかの植物、作物にどのような影響を与えるか分かりません。TSA(熱帯ソーダアップル)が南米原産のように、この除草の甲虫も南米原産ですから北米のフロリダの生態系にどのような影響を与えるのか調べて上で、悪影響が見出せなければ、大規模に実用化されることになります。(5月25日、日本農業新聞 日本では、雑草対策に天敵を使うことは、研究されていますが、実用化されていません。)

 なぜ、天敵利用なのか 

自然に現われる天敵では、被害を十分に防げません。それで、これまでは化学合成した薬剤、農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤)を散布してきました。しかし病害虫の薬剤耐性やその残留性や環境に与える悪影響から使用を減らすことが求められています。

  殺虫剤を例に取れば、多くの殺虫剤は害虫だけでなく天敵をより強力に殺します。すると、殺虫剤散布後に生き残った害虫は、天敵の減少で散布前よりも急速に増加します(リサージェンス)。そして、再度殺虫剤の散布が必要になりますが、殺虫剤に強い害虫が生き残った畑では、殺虫剤の効果が弱まっていて(薬剤抵抗性)、さらに強力に殺虫剤の散布が必要となります。こうした農薬は大概は残留性や環境影響に問題が多いものです。また終には、農薬がまったく効かない害虫が現われます。

  例えば、コナガ。キャベツや白菜、チンゲンサイなどにつき葉を食べて穴を開けてしまう害虫です。コナガの天敵は、クモやアリ、ゴミムシ、寄生バチ、スズメや蛙、カビやウィルスなどたくさんいます。それで、もともとは目立たず害も多くはない平凡な虫でした。しかし、消費者は葉に穴の開いてない見栄えの良いキャベツや白菜を求めます。市場価格も高い。それで最初は神経系を乱す農薬を使いました。数年のうちに抵抗性を獲得して死ななくなったコナガが生き残ります。天敵が少なくなっていますから、以前よりも急速に増加します。すると、別種の神経系農薬をまき始めました。同じようにして消化管を侵す農薬、さらに脱皮に関わる農薬へと、次から次に新しい農薬を繰り出し、コナガも次々に抵抗性を獲得していきました。「今では、殺虫剤をまくのも水をまくのもあまり違わない状況」になっています。この数十年でどの農薬も効かない野菜害虫の「王者」になってしまいました。

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  このように、人の病原菌の薬剤耐性、MRSAと同じ問題が農業の病害虫に起きています。そのうえ合成化学農薬では残留や環境への悪影響があります。それで農薬に替わる防除技術として天敵利用が行われています。(天敵利用は有機農業で推奨されている防除技術です。天敵農薬は有機農業で使える、使用が許されている農薬です。)また天敵を使うと、省力化の効果も大きいのです。「農家は高齢化も進んでいるでしょう。農薬をまんべんなく散布していくのは、大変だし時間もとる。その点、天敵を使えば作業量がうんと減って、栽培面積を3~4割増やせる(大阪府立食とみどりの総合技術センター、田中寛)」。この点からも天敵利用が進められています。 

天敵利用の課題 

 天敵利用にはア)病害虫・雑草の防除のために天敵を繰り返し放飼する生物農薬的利用、イ)天敵を放飼して生態系に定着させ、繰り返し放飼することなく長期間にわたって害虫等を抑制することを目的とした永続的利用、ウ)すでにその環境に生息する土着天敵を保護することにより病害虫、雑草の防除を期待する土着天敵の保護利用に大別できます。
 
 今、日本で主に行われている天敵利用は、ハウスなど施設園芸でのア)病害虫の防除のために天敵を繰り返し放飼する生物農薬的利用です。現在、国内で販売されている生物農薬(天敵)は十三種類ですが、ほとんどが欧米からの輸入品です。天敵は生きた生物ですから、移動し増殖します。天敵農薬には、化学合成農薬とは異なる形で、有害な環境影響が生じる可能性があります。その天敵が、生態系のまったく違う海外から来る外来種ではその懸念が強いのです。それで国産の天敵での天敵農薬の開発が進められています。沖縄県農業試験場は、施設園芸の重要害虫スリップス(ミナミキイロアザミウマ)の天敵で、沖縄に棲息する捕食性昆虫のアリガタシマアザミウマの人工増殖法を開発し、4月22日にナスとキュウリで農薬登録を取得しました。このように有害な環境影響を生じない、少ない天敵の発見、選定が課題の一つです。

  また天敵農薬は化学農薬とは異なり、その使用環境によって効果が安定しないことがあります。これは栽培条件や地域性などによって温度・湿度条件や害虫の生息状況などが異なるためです。天敵農薬を効果的に利用するためには、天敵の生態を十分に把握するとともに、畑、施設での害虫の発生状況を小まめにチェックして、放飼時期、害虫初期密度、天敵活動適温の確保、農薬散布との体系化などを考慮して応用的に利用することが求められています。その技能の農業者への普及、向上が2番目の課題です。

  最大の課題は、消費者の理解を得ることです。天敵を上手に利用しても、害虫・病害虫をゼロにすることはできません。害虫が天敵の餌なのですから、害虫がいなければ天敵生物は生きていけないからです。例えば、イチゴのハダニは、まず畑のあちこちにツボ状に発生し、次第に畑全体に拡がって行きます。天敵を用いると、小さいツボ発生はありますが、広がりません。そのツボは天敵に食い尽くされます。ただし、そこから逃亡したハダニが別の場所で再び小さいツボを作ります。天敵はそれを追いかけて、なにせ大切な食べ物ですから追いかけて再び食い尽くします。天敵の効果はこの繰り返しによって現われます。

  つまり、ハダニに多少はやられたイチゴ、スリップスに舐められた痕のある茄子、胡瓜、コナガで多少の穴が開いた白菜、キャベツが出来ます。このような青果物を買うように消費者の理解が得られるのか、それが天敵利用が広がり、化学合成農薬の使用が減少、無くなるようになるための最大の課題です。

飛べないテントウムシでアブラムシ退治 
2008年12月小針店で配布した「畑の便り」再録

アブラムシ・カイガラムシなどを食べるテントウムシ。日本では現在172種類いて、ナナホシテントウやナミテントウなど159種は成虫、幼虫ともにアブラムシなどをよく食べる肉食。5種類が菌食、キイロテントウはウドンコ病の菌を食べる。8種類が草食、ニジュウヤホシテントウはトマトやナスなどを食べる草食で、害虫扱いです。

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←ナミテントウは、普通の(並の)天道虫という意味で、斑紋の遺伝による変化が甚だしく、まだこの他にも多くの形状のものが存在しています。
ナミテントウは、幼虫から成虫までの一生の内に、5千~1万匹のアブラムシを食べると言われています。
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キイロテントウ、体長5~6mmほどの、可愛らしい天道虫

 環境問題や残留問題のある殺虫剤に替わって、この肉食のテントウムシをハウスや畑に放って防除に利用しようとすると、飛んで他所へ行ってしまう性質、飛翔分散能力が高いためにハウスや畑での定着率が低い=防除効果が持続しないという問題があります。そこで、成虫になるまで飼育し羽を折って物理的に飛翔不能化されたナミテントウが国内で販売(生物農薬ナミトップ)されていますが、成虫になるまで飼育する必要があるためコストが高く高価です。
  それで、遺伝的に飛べない、飛翔不能化された系統であれば、成虫、幼虫および卵塊のいずれの段階でも利用可能で低コスト化が可能と考えられ、2003年から遺伝的に飛翔不能な系統を確立し、最適放飼技術の開発が進められてきました。

  成虫のナミテントウ雌雄50頭ずつの飛翔距離を測定し、その中で飛翔距離の短い個体を30%選抜し、次世代を得るという操作を約20世代行いました。成虫の飛翔距離は世代を経過するにつれて低下して20世代めでは、およそ70%の成虫が飛翔できなくなりました。卵の孵化率が低いものの成虫のアブラムシ捕食数は実験室段階では変わりませんでした。

 実際に胡瓜の栽培に使われているハウスや露地の畑に成虫を放してみたところ、約一月後でも半数以上が定着していて、盛んにアブラムシを食べていました。生物農薬ナミトップと防除効果は同じ程度でした。今後は、幼虫および卵塊での利用や効率的な増殖法の開発、天然のナミテントウなど環境への影響など実用化へ研究が続いています。
また、トマトなどを食べるニジュウヤホシテントウはトマトよりもイヌホオズキなどの雑草を好むことがわかりました。イヌホオズキを全部抜いてしまうと、ニジュウヤホシテントウがトマトに集中するので、適度にイヌホオズキを残すとトマトへの被害が格段に減ると報告されています。 

ニームとは [農薬を減らす工夫]

 №03-25 、 2003年6月17日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録
 
 ニーム(インドセンダン)とは...

ニーム(インドセンダンまたはマルゴッサ)はインドの原産で、インドでは古代から土壌と作物の防除、家畜や人間の病気の治療に使用してきました。種から油を絞り、インドの農民は殺虫剤として使用していました。万病に効く民間医薬として、皮膚病、解熱、泌尿器官の病気、糖尿病などあらゆる病気に使われてきました。この木が、二つの点で注目を集めています。一つは、その病害虫の防除への有効性からで、もう一つは生物特許をめぐる争いからです. 

インドというからには、ただのセンダン、日本に自生するセンダンがあるのです。

このセンダンにも薬草学、薬理学的には、ニーム同様の薬効・虫除け効果があるといわれています。

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日本のセンダンは主に西日本の暖かい海岸地方で自生しています。北限は福島県付近です。ヒヨドリが種を食べ、それで拡がるといわれてます。

 センダン科に属する高さ10数メートルになる木で、公園や学校、それにお墓の中などで大木になっています。若い幹や枝は紫色を帯びた褐色ですが、太い幹では縦にすじが入り、大きなものでは直径30~40cm、高さ10数メートルになります。樹冠を大きくひろげ、5月の中旬頃、複散形花序にたくさんの花が咲きますが、よく見ますと花弁は5~8枚あり、外側が淡紫色、おしべはお互いにくっついて筒状になり濃い紫色になっています。
葉はふつう2回羽状の複葉で、葉の量も多くないので明るい樹陰をつくり、威圧的な感じはありません。直径2cmほどの花は比較的早く落ちてその後に親指ほどの緑色の果実がたくさんでき、秋には黄白色に熟して、葉の落ちた冬まで残ります。 あなたの身近に生えていませんか?

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古名、おうち(楝)といいます。奈良時代から建築・器具の材木で使われてきました。果実や樹皮は生薬として用いられてきました。

s_y_100_outiiro.jpgおうち(楝)色

 

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←ニーム(インドセンダン)

日本のセンダン→

葉のつき方が違いますが、さすが近縁だけあってよく似た姿をしています。センダンの方は春先から新芽を伸ばしていましたが、ニームの方は真夏になるまで成長がいまいちだったそうです。ニームは南九州以南、沖縄では栽培可能といわれています。
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薬草学、薬理学的には、センダンにもニーム同様の薬効・虫除け効果があるとのこと。つまり、四国や九州、関西などセンダンが自生している地域では、農家がインドの農民と同様に自分の手で実や葉から防虫効果のあるオイルなどを取り出して使えることを意味しています。

 

ニーム(インドセンダン)はインドから広まり、現在ではアジア、アフリカ諸国、オーストラリア太平洋諸島、中央アメリカ、南アメリカなどで栽培されています。露地栽培・自生には暖かな気候が必要で、日本では南九州以南で可能といわれています。日本では、苗木を販売していますが、本州などではうまく育たない、枯れることが多いようです。

農薬として効果、害虫への毒性...


ニーム(インドセンダンまたはマルゴッサ)はインドの原産で、インドでは、古代から土壌と作物の防除、家畜や人間の病気の治療に使用してきました。樹木のほとんどの部分か苦く、種子の仁がもっとも苦く、その種から油を絞り、インドの農民は忌避剤、殺虫剤として使用していました。生葉からの抽出液(5リットルの水に1kgの生葉を入れて1日たったもの)を葉面に散布しても同様の効果があり使われました。乾燥させたインドセンダンの葉は貯蔵穀物や羊毛の衣服の防虫に使われています。油をしぼった後の粕、ニームケーキは窒素分が豊富な肥料で、絞り残された油分が土壌線虫などの害虫を防ぐので畑に施されてきました。 

古代からインド人には自明なニームの病害虫に対する殺虫・忌避効果が、最初の文書報告は1928年インドで発表されました。この効果を欧米人が発見したのは、1959年スーダンで若いドイツ人科学者(昆虫学、植物病理学)ハインリッヒ博士が、偶然にもイナゴ、バッタの大襲来を目の当たりにし、全ての野菜類、緑の木葉類が食い尽くされ破壊してしまった光景のなかで、僅かに緑の木が残っていた。その木がニームでした。彼が研究し、欧米人に広めていったのです。アメリカ農務省は1975年より研究開始しました。

合成殺虫剤の害が認めらてくると、天然殺虫剤の原料としてニームが脚光を浴びるようになりました。米国では、1985年にEPA(アメリカ環境保護庁)が正式に生物農薬として認可し、天然のニームオイルを原料とした多様な薬剤が農薬登録されており、98年には50州で、1000億円売れたそうです。IFOAM(国際有機農業運動連盟)、BCS (欧州共同機構有機認証団体)は、ニームオイルを「有機農法に使用できる病害虫防除用資材」として認めて、広く有機農法の一環として使用されています。

アメリカ大手化学会社グレース社は、特許を取得し南インドバンガロールに日産20トンのニームオイル生産工場を建設しました。この特許をめぐって、騒動がもちあがり2000年に取り消されたのですが、それは別項で。

さて、ニームの成分で殺虫剤、忌避剤として有効な成分は、アザディラクチン(アザジラクチンAzadirachtin)という窒素ふくむ化合物です。アザディラクチンの作用は、一つは草食昆虫=害虫の食欲の減退、摂食阻害物質としての作用。微量でも摂取した虫は、活動をやめ、餓死にいたる。7~10日間程度有効だそうです。また昆虫の変態(脱皮や形態形成)にかかわるホルモンと構造が似ており、このホルモンの働きを阻害すると考えられています。この結果、昆虫はうまく脱皮ができず、3~14日で死亡します。

散布後に、かなり強いニンニク臭(くさったネギ臭ともいう?)がします。この臭いを嫌って虫が寄り付かない忌避効果があります。(インドでは、ニームオイルをココナッツオイルに1~2%混ぜた物で、マラリヤを媒介する蚊を寄せ付けない様にしているそうです。)

  害虫を捕食する天敵、肉食性昆虫や鳥には害、殺虫作用は認められていません。ミツバチはニームの着いた花粉を幼虫に食べさせてしまうために、若齢幼虫に影響が出ます。うどん粉病、黒点病、さび病等、広範囲な病害に有効とされています。

ニームは、即効性がありません。効果が現われるのに平均して3日かかります。また光(紫外線)などによる分解が非常に速い(約100時間以内)のです。そのため、毎週散布することになります。日中、太陽が高いとき畑にニームを散布したら効果がすくなく、夜明けや夕方(西日が当たらなくなった頃)に散布することが薦められています。雨によってニームエキスが流されてしまうので、効果がなくなります。

  作物によっては一部に落葉や新芽の萎凋などの薬害が現われます。魚に対して毒性があるので、池や川に直接流れ込まないようにするなどの注意が必要です。 13℃以下では固まってしまう油ですので、乳化剤などを使う必要がありますし、散布時の気温が散布に影響します。

医薬としての効果、人間への毒性...

センダンは、漢方では生薬です。その種子を「苦楝子」(くれんし)、樹皮と根の表皮を「苦楝皮」(くれんぴ)という生薬です。『漢方診療医典』(南山堂)などによれば、種子の「苦楝子」は鎮痛剤で、腹痛に10グラムを適量の水で煎じて服用します。樹皮と根の表皮の「苦楝皮」は解熱、駆虫剤で、回虫、蟯虫、条虫に、6~10グラムを煎じて、1日2回朝夕の空腹時に服用します。大量に用いると顔面が紅潮し眠気をもようしたりする副作用があります。民間では、ひび、あかぎれ、しもやけに黄熟した生(なま)の果実の果肉の部分をすりつぶして、患部に塗布します。

  またインドでは万病に効く民間医薬として、皮膚病、解熱、泌尿器官の病気、糖尿病などあらゆる病気に使われてきました。小枝を解してブラシ状にして歯磨きにも使ってきました。

薬として有効な物は、同時に毒となります。摂取量が10gで薬で、毒となるのは100gの物と15gの物を較べるとどちらが、使いやすく、安全といえるでしょうか。一般論、原則論的には薬として有効な濃度、摂取量と毒となる濃度、摂取量が離れているほど、使いやすく安全な物質といえます。この点ではセンダン、ニームはきわめて安全の物質といえます。

 ただ、センダンの苦楝皮(くれんぴ)を大量に用いると顔面が紅潮し眠気をもようしたりすることからわかるように、完全に無害というわけではありません。ニームオイルは目に刺激性が強く、動物実験では、ラットを対象にした90日間の慢性毒性試験では明瞭な毒性の兆候は見られませんでした。遺伝子に対する毒性・変異原性は認められません。(エームス・テストは陰性。マウスのリンパ腫試験も陰性。)しかしオスの不妊化への影響が見られました。

  マウス、ラット、ウサギ、ハムスターに、ニームの葉の抽出物を与えて不妊化の効果を調べたところ、オスのラットで、6週目で66.7%、8週目で80%、12週目で100%の繁殖率低下が見られました。精子の生成量には影響しないものの、精子の死亡率が顕著に上昇したためとみられています。なお、この効果は永続的ではなく、4~6週間で回復してます。マウスでも同様の効果が観察されました。なお、ハムスターとウサギには、ニーム抽出物は毒性を示すと報告されています。このように、小型のほ乳類に対して環境ホルモン様の影響力をもつ恐れがあります。農薬として用いた場合は、光などによる分解が非常に速い(約100時間以内)ので、すでに環境ホルモンと考えられている一部の化学農薬のように、作物や環境に長期にわたって残留する恐れはないと思われます。

しかし、医薬で直接とった場合はどうでしょうか。長年にわたる虫下しとしての利用の実績や環境ホルモン効果が永続的でないことを考えると、実質的に不妊をもたらしているとは見られませんが、未解明です。逆にインドでは、避妊薬としての開発が進められています。残念なことに、ニームの安全性を強調する余り、「人間には無害」という表現がされています。例えば「インドのアーユルベーダ(紀元前から続くインドの伝承医学)には欠かせない神秘の薬として古くから珍重されている。・・人間が生葉で食べたり、お茶にして飲んでも害がないどころか、薬効に優れている万能薬。」こういうのを「ひいきのひき倒し」というのでしょうね。

また、これまでは殺虫成分のアザディラクチンだけに注目されていますが、他の成分geduninという成分はマラリアに感染した細胞組織に対してキニーネと同じほど効果的だと言われています。センダンから作られる生薬、「苦楝子」(くれんし)、「苦楝皮」(くれんぴ)の鎮静、解熱といった薬効を見ても、有効成分はアザディラクチンだけと思えません。センダン科の植物の持つ成分の特定と薬理作用の研究が行われています。

農薬ではなく土壌改良剤で売られているのはなぜか、特定農薬の問題点

ニームオイルは、米国では1985年に正式に生物農薬として認可し、天然のニームオイルを原料とした多様な薬剤が販売されています。98年には50州で、1000億円売れたそうです。IFOAM(国際有機農業運動連盟)、BCS (欧州共同機構有機認証団体)は、ニームオイルを「有機農法に使用できる病害虫防除用資材」として認めており、海外では広く有機農法の一環として使用されています。しかし、日本では防除のための農薬ではなく、土壌改良剤とか植物活性剤という名目で販売されています。

 農薬登録がありませんし、特定農薬「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」にも入っていません。もっとも、2003年6月現在で特定農薬に指定されているのは食酢と重曹と栽培地付近の天敵だけです。「ニーム」が特定農薬に指定されてないのは、「薬効が確認されない」という理由だからそうです。したがって使用者が自分の判断と責任で使うことは可能ですが、農薬効果を謳って販売することはできません。それで、土壌改良剤とか植物活性剤という農薬としてはアンダーグラウンドな売り方がされています。

 そもそも特定農薬とは、2002年に起きた無登録農薬使用問題をきっかけにできた法律の枠組みです。ダイホルタンなど発がん性が問題な薬物が、農薬として使われていました。以前は農薬として販売使用されてこれらの薬剤が、発がん性やダイオキシン含有などが問題となり、農薬登録がなくなり販売できなくなりました。しかしこのことが農家には周知徹底されなかったため、海外から輸入し販売されていたのです。
  農水省は、病害虫の防除に使われる薬剤、資材など全てに法の網をかけ規制することにして、特定農薬という法律の枠を新設したのです。

 大雑把な分け方ですが、薬剤・物質をイ、農薬としてa有効、b無効、ロ、人や環境にc有害、d無害という視点で分けると「a有効でc有害」、「a有効でd無害」、「b無効でc有害」、「b無効でd無害」の4つに分けられます。農薬取締法は、そもそも農薬として無効な物は販売させないことが目的の法律です。当初は農家に農薬としてb無効なものが売るつけられない、農家が騙されない様にするための法律でした。つまり「a有効でc有害」か「a有効でd無害」のものでした。そののち、発がん性とかが問題になり「a有効でc有害」なものは排除するようになりました。注意しなければならないのは、規制されるのは販売で、使用ではないことです。

  そして2002年の改正では、人や環境にd無害な物だけに使用と販売を規制することにしたのです。「b無効でd無害」や農薬としては販売されていないが使われている「a有効でd無害」な物を特定農薬に指定して囲い込むことにしたのです。農水省は初め「防除効果の程度は問わない」という方針でした。農産物・食品への消費者の不安を沈静化しようと、登録農薬と特定農薬だけに、国が人や環境にd無害と認めた物だけに使用を制限しました。

 しかし、そもそもが農薬取締法は防除効果のない物は販売から排除することが目的の法律です。「b無効でd無害」な物をこの法律の枠の中に取り入れることに無理、矛盾があるのです。案の定、特定農薬の審議会で「効果としてはっきりしないものは、農薬として認められないのではないか」という意見がでたのです。効果のないものでも、特定”農薬”となれば、国が効果を認めたと受け取られかねない、それを利用して農薬として売る業者が現れて、農薬としてb無効なものが農家に売るつけられ本来の目的が損なわれるという指摘がされて、防除の効果があるもの限ることに方針が変わったのです。特定農薬に指定された天敵は明らかに防除効果があります。重曹は、それを主成分の農薬があって、現にウドンコ病の防除などに使われています。食酢も現在は登録がなくなってしまったのですが、種子消毒などに使われる農薬としてかつて登録があり、効果がはっきりしています。

 ニームに話を戻せば、農水省の言うとおり「薬効が確認されない」のでしょうか。1985年にEPA(アメリカ環境保護庁)が正式に生物農薬として認可しています。現在、有効成分のアザディラクチンを精製したアザチン水和剤を丸紅が日本植物防疫協会に委託して試験にかけています。薬効が無いとわかっている物を、多大な費用をかけて毒性、発癌性、作物残留、防除効果試験などするでしょうか。試験にクリアーし、農薬登録されれば、農薬として丸紅が販売する運びになります。その前に特定農薬とされれば、丸紅も丸紅以外の業者も大手を振って、特定”農薬”として販売できます。今、行われている試験は何なのか、それに何故お金をかけなければならないのかということになります。
  また、特定農薬の指定は、現に販売されているものから順に客観的に効果を証明するデ-タを集め、安全性もチェック検討することになっています。その際要求されるデータ、試験が先ほどの農薬登録の際に行われる物と同じものなら、本来は販売・製造業者がやるべき試験を国が行うことになります。今後、業者は試験費用が惜しければ特定農薬に申請すればよいのです。防除効果や安全性の試験は国がやってくれるのですから。表立って農薬効果を謳わなければ、販売できます。ラベルに防除効果、除草効果があると書くのでなく、販売時に口頭で説明するとか、病虫害に効いた、雑草が抑えられたという使用者の声、体験談という形で宣伝すれば取り締りを受けません。

  逆に、農薬登録の際に要求される水準以下のデータや試験ならば、特定農薬には有効性や安全性に疑問がまとわり着くことになります。それでは今回の改正の目的である農産物・食品への消費者の不安を沈静化できませんし、元々の防除効果のない物は販売から排除することもできません。

 農薬業界関係者の話では、ニームオイルは丸紅以外の数社が同じように試験をしていたが採算性に問題がある、つまり儲けが見込めないということで途中で撤退したのだそうです。農薬取締法では、販売される物に農薬登録を求めています。つまり、販売・製造業者が儲けが見込める物だけが農薬として販売されるのです。2002年の無登録農薬騒ぎで明らかになった無登録農薬には、販売・使用量がすくなくて儲けが少ないので製造されなくなった農薬がありました。必要な農家に密かに輸入して販売した業者がいたのです。個人輸入した農家もいました。また新薬を開発すると、それを売るために同じ効果を持つ安い農薬の製造・販売をやめることが多いのです。特許が切れて製造や販売が独占できなくなって、採算が取れない、儲けが薄いということで姿を消す農薬もあります。こうした事情が登録農薬以外の物を農家が求めることにつながっています。

  ニームオイル、その有効成分のアザディラクチンを人工合成しても合成品は薬効が小さいのです。多分、化学式は同じでも立体構造が違うのでしょう。それで今のところ、昔ながらにニームの実を絞って取り出しています。インドでは生葉からの抽出液(5リットルの水に1kgの生葉を入れて1日たったもの)も使われています。日本にはニーム(インドセンダン)は自生してませんが、薬理学的は同じ成分を含むといわれるセンダンが自生しています。このセンダンからニームオイルや葉から抽出物を農家が自作できる可能性が高いのです。それで余り売れない、採算性に問題がある、つまり儲けが見込めないということではないかと思われます。

 米国では、1985年に農薬として認可されていますが、同年にアメリカ大手化学会社グレース社(W. R. Grace)、米国農務省等が抽出法などの十余件の特許を取得しています。特許によって、業者は製造・販売の独占権を持ち、儲けを確保できる体制をつくってから農薬として認可されたわけです。この特許、インドの伝統的な抽出法と根本的に大きく違わず新奇性が乏しく問題な代物で、インドの訴えでEU欧州では2000年に取り消されています。日本がニームオイルを特定農薬と認めれば、そのインドと米国の争いが日本でも再現されることになります。検討中とすることで問題を先送りにした格好になります。
 
 今後、合成農薬にかわる生物的農薬が多数出てくると予想されます。それは、第三世界や世界各地で農民が行っている合成農薬以外の防除法、ニームのような防除法から探すのが手っ取り早いのです。それは、その知恵、知識を本来持ってる農民ではなく、研究室で白衣を着た研究者が専門的用語を用いて論文をかいて発表することになります。それに対し特許、知的財産権を認めるのが世界的な流れですが、それはニームでインドと米国で起きている争いのような争い事の種を蒔くという事でもあります。ニームで見られたことは、日本では、日本の農水省は、それを特定農薬には認めない、有効性と危険性を検討中とお茶を濁しておくということです。

 ともあれ、ニームオイルは、特定農薬としては認められていませんから、農薬効果を謳わずに土壌改良剤といった名前で販売されています。そして、そこでは販売に不都合な魚に対する毒性などの情報は隠されています。特定農薬はたった3件しかないのですから、ニームオイルに限らず、ほとんどの品物、登録農薬以外の防除資材がこのような状態です。以前とほとんど変わりがないのです。危険な品物は使わせない、消費者の食に対する不安を解消するという目的を達成する事ができず、特定農薬という制度は立ち往生しているのが現状です。


有機リン殺虫剤で1300人が健康被害、出雲市 [農薬を減らす工夫]

№08-36 、 2008年9月2日小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

2008年5月26日の出雲市

 今年5月26日(月)の朝、出雲市の浜山中学校。4から5名の生徒が職員室の前に集まっていました。
 8時25分、朝の職員朝礼が終わるのを待って、養護教諭に口々に目のかゆみ等を訴えました。診たところゼリー状の結膜浮腫などがありました。

 30分からの学級朝礼で調べたところ全校828名中、87名が異常を訴えました。目を水で洗い流しそれでも良くならなければ保健室へ来るよう指導、40名あまりがきました。養護教諭は45分に学校医に連絡、教頭は教育委員会と市の農林政策課に連絡を入れました。

  ”農林政策課”この日の朝、松枯れ対策でヘリコプターによる殺虫剤の空中散布が行われていたのです。使われたのは有機リン系のスミパインMC。

 出雲市は30年余り、松枯れ対策で殺虫剤空散を約2000㌶に毎年6月に実施。胸が苦しくなる、目の奥がチカチカするなどで、毎年この散布時期には市外へ避難する人やアレルギーが酷くなり家族と別れて暮らす子供などの健康被害が問題化。それでも昨年は、出雲大社での空中散布で課外活動中の高校生が農薬を浴びてしまいました。連絡を受けた市は翌27日以降、空散を中止しました。

  この26日の空散で、児童生徒1057名、成人245人など1300人以上、うち入院2名、約300人が病院通いの健康被害が確認されています(8/24現在)。出雲市は原因調査委員会を発足させ、9月1日に6回目の会合が予定されています。

参照  日記・・・・身近な暮らしの中で(島根県出雲市から)  http://kao326.jugem.cc/

出雲市の原因調査委員会 

   この委員会で空散擁護派は「空散直後の直下に人がいて、その人の目に散布農薬が落ちてきたとしても、標準的条件で計算すると、その目に侵入する農薬量は極少ない。目に影響が出るはずがない。(県農業技術センター資源環境部長)」汚染量は環境影響評価指針値以下、影響が出るはずがない(島根大学副学長)」などと主張。
直ぐさま中立派の島根大学の眼科の委員が「それよりもはるかに少ない量を目薬で点眼しただけで卒倒する人もいますよ」、「(空散された)農薬が原因でアレルギーが起きるかどうかはハッキリしないが、アレルギーの子が(この農薬に)被爆すれば症状が悪化しやすい」と教示。
  目の痛みなどを訴えた1300人は現実。「出るはずがない」は観念論。観念と現実、科学者ならどちらを重視すべきでしょう?
 極めつけは

空中散布の農薬毒性に誤記述(NHK8/20、23報道)

 =19日開かれた出雲市の調査委員会で農薬の毒性に詳しい元大阪大学助教授の植村振作委員は、農薬メーカーの「住友化学」から委員会に提出された毒性に関する説明資料の記述に虚偽があると指摘しました。
この資料は、今回空中散布された「スミパインMC」という農薬に関して平成9年に作成されたものです。住友化学が農薬を国に登録するために実施した、ウサギを使った毒性試験で、目に軽度の結膜の充血が確認されたにも関わらず、説明資料では、農薬の成分に「目に対する刺激性はない」と誤った記述をしていました。
 住友化学は、この資料を農薬を販売する際など毒性を説明するために自治体や代理店に約1万部配付して使っており、委員会に出席した住友化学の担当者は、不正確な表現であることを認めました。=

スミパインMCは有機リン系の殺虫剤

スミパインMCは有機リン系の殺虫剤(MEP・スミチオン)を合成高分子膜で包んで微小のマイクロカプセル化し、水に懸濁させた製剤です。カプセルが虫の体内などで弾けて、中身の殺虫剤が出るわけです。耐雨に優れ、散布・乾燥後の降雨による影響

ha_083601.jpgもより受けにくくなって8~10週間程度はカプセルが残留し、殺虫剤としても 残効性が高くなっています。松枯れの病原センチュウを媒介するマツノマダラカミキリを殺虫剤で駆除するには、羽化し成虫となって出てくる発生初期、その約2週間後の中期、この2回が散布のチャンスです。8~10週間程度の残効性があるので、発生初期に1回散布ですむ手間が省けるのです。

  有機リン系の神経毒です。昆虫などの我々動物の神経を阻害する毒です。哺乳類はこれを解毒する能力が高いのですが、解毒能力が低い昆虫などでは呼吸を停止させるなどして死に至らしめます。

 使用マニュアルでは①養蚕、養蜂に影響を与えないよう②水産動物、特に甲殻類に影響を及ぼす恐れが示されています。

 教示から分かるのは、この殺虫剤は選択的にマツノマダラカミキリを殺すものではなく、昆虫など節足動物に全て毒性、殺作用を持つ。例えばこのカミキリムシの天敵も殺してしまう、つまり森林の生態系を構成する昆虫に8~10週間程度は殺作用を顕しその森林の生態系を脆弱にするのです。 河川に流入すると、甲殻類、例えばミジンコなどの動物性プランクトンを殺します。この殺虫剤は直接には魚を殺しませんが、餌の動物性プランクトンを殺すことで飢えさせるわけです。

  松枯れと病原センチュウとカミキリムシの関係は、マラリヤと病原寄生虫と蚊に似ています。詳しくは別の機会にしますが、マラリヤがDDTなど殺虫剤散布で根絶できないように、松枯れも殺虫剤でなくせるとは思えません。農薬空中散布・地上散布の中止し、農薬の人体への健康被害、地域生態系への影響の観点から松枯れ対策の再評価が必要です。少なくとも林野庁は西尾・出雲市市長の、もっと安全な農薬を研究、開発してほしい、と自ら出向いての申し入れには応えるべきでは

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病原菌の天敵療法 ファージセラピー(3) [農薬を減らす工夫]

水稲の病原細菌を殺すバクテリオファージ、石川県農総研が発見 農薬削減に期待
 日本農業新聞2009年3月15日

 石川県農業総合研究センター(金沢市)は、水稲のもみ枯細菌病と苗立枯細菌病の両方の病原菌を攻撃するバクテリオファージ(ウイルスの一種)を見つけた。実験段階では、化学農薬以上の発病抑制効果を見せた。同センターでは、水稲の種子消毒で化学農薬に代わる生物防除資材として期待している。
  バクテリオファージは、ウイルスが植物や動物に病気をもたらすように、細菌に感染して死滅させる。ファージは、それぞれの株が特定の細菌にしか感染せず″好き嫌い″が激しいのが一般的で、複数の病原菌を攻撃するファージは珍しいという。

  化学農薬を使わずに水稲育苗時の病気を防ごうと、同センターで有効なファージを探していた。県内の水田土壌やイネ科雑草の根などから採取したり、ほかの研究機関から譲り受けたりして、10種類ほどのファージを確保した。
  病気の抑制効果を実験室内で確認したところ、茨城県つくば市で見つけたファージー株と、同センター近くの水田で見つけたI株に、もみ枯細菌病と苗立枯細菌病の両方に効果のあることが分かった。 30度の温湯1ミリリットルにファージー1000万個ほどの割合で入れた液で種もみを催芽させる。実験では、化学農薬を使った方は少し病害が出たが、ファージ液で処理した方は全く病気が出ないものもあり、高い防除効果があることが分かった。

  苗立枯細菌病を攻撃するファージはこれまでもあったが、もみ枯細菌病に効果のあるファージは見つかっていなかったという。水稲の育苗時には、ほかにも褐条病が問題になっており、これも細菌が病原になる。同センターではこの病原菌にも効果のあるファージを探す。
  今回見つかったファージは、今年は野外で試験をする予定。実際の苗代を使って病気の防除効果を試す。同センターではさらに、1つの株で育苗時の3つの病気に効果のある「スーパーファージを見つけたい」としている。

ファージを用いたイネもみ枯細菌病、苗立枯細菌病の同時防除
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/noken/noushi/kenkyu_happyou/20/documents/kaga03.pdf

バクテリオファージを用いた植物病診断・予防・防除システム
 
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