SSブログ
穀類の栄養、防除、扱い方 ブログトップ

大豆 米国の豆腐と日本の豆腐の違い? 2004年 [穀類の栄養、防除、扱い方]

2004年3月23日小針店で印刷・配布した「畑の便り №04-13」に加筆再録

米国在住の知人が「BSEなどで肉を食べないようにして、豆腐とかを食べるようにしているのだけど、大丈夫だろうか?」と聞かれました。日本と米国、欧州では大豆の地位が違います。そのため、残留農薬などで日本に比べ問題が多いのです。例えば、除草剤グリサホートの残留基準値が以前の約3倍、6ppmから20ppmになっています。これは遺伝子組み換え大豆では、この除草剤の使用量がふえ残留がふえます。栽培国の米国の圧力を受け変わったのです。日本では遺伝子組み換え大豆は豆腐、納豆、味噌などには使われていません。米国ではどうでしょう。? 

オスカルも醤油を使っていた!? 

日本や中国では、古来大豆は五穀の一つで「食品用」ですが、海外では、大豆は油を採るための豆、家畜の飼料用という食文化の違いが背景にあります。大豆の英名のSoy-beanのSoyは醤油のことです。
shouyu1.jpg欧州でも昔から醤油は食べられていました。1765年にフランスで刊行された『百科全書』(ディドロ編纂)では「これは日本でつくられた一種のソースで、同時にアジア各地で非常にもてはやされているものである。フランスには、オランダ人によってもたらされた。・・何か特殊な風味が秘められており、・・ごく少量を加えることによって料理のベースとなるソース、またルルヴェと呼ばれるメイン・ディッシュに、深い味わいを与えてくれる。・・このソースは、すべての肉料理の風味を引き立たせ、特にベルドリおよび骨付きハムに素晴らしい味をもたらす。・・中国産の醤油もあるが、日本産のものがはるかに優れている。肉料理にとって、日本産の方は中国産にくらべ、深く豊かな滋味を付与してくれるからである」
長崎の出島からオランダ、そこからフランス、ドイツに輸出されていました。ルイ14世が醤油を愛用していたそうです。

参照⇒出島と醤油
http://www19.big.or.jp/~higashi/nagasaki/inoue/europe.html 

 欧州では大豆は育たない

最初に大豆をヨーロッパに伝えたのは、オランダの植物学者ケンペルです。彼は1691年(元禄4年)から2年間日本に滞在し、帰国後1712年に大豆を紹介しました。出島の医師シーボルトもオランダに持ち帰っています。幾たびか、栽培が試みられました。なかでもドイツは、大豆が肉に匹敵する高い栄養素を含んでいることから「畑の肉」と名づけ、栽培を幾度も試みましたが、残念なながら失敗に終わりました。その理由は、大豆の発育に不可欠な根粒菌が、ヨーロッパの土には存在しなかったからです。

 大豆は、わずかの肥料でよく育ち、しかも大量に生産することができます。その秘密は根にあるコブで、ここに根粒菌と言うバクテリアを共生させ、生育に必要な窒素を自給しています。この根粒菌がヨーロッパの土には居ないのです。今では根粒菌を栽培地に持込む技術が確立し、大豆は冷涼な風土を好むものの、北緯50度の寒冷地から赤道沿いの熱帯まで栽培が可能となりました。また日本や中国、アメリカの土壌には元々この根粒菌が存在しています。

 また醤油の製造も試みられましたが、湿度の低いヨーロッパでは麹菌が知られていないため成功しませんでした。大豆が広く世界的に食用として認識されたのは、1873年(明治6年)のウィーン万国博覧会に日本が食用大豆を紹介してからです。

 現在、世界最大の大豆栽培国になっているアメリカで最初に大豆を試作されたのは、1804年(享和4年)にペンシルバニア州です。しかし、大豆を本格的に栽培し始めたのは20世紀に入ってからです。アメリカ農務省が音頭をとりアジアから約2,000種以上の品種を取り寄せ、機械化農業のもとで栽培できる品種を選抜、育成してきました。始めは飼料や緑肥がおもな用途でした。今では米国の重要な輸出品です。カナダ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアなどは、いずれも20世紀に入って栽培が始まりました。

 欧米人と日本人の摂取量の差が大豆の安全性に影響

 世界的にみれば大豆は採油用の、飼料用の豆であって、世界各国を見渡しても、大豆をそのまま、もしくは加工食品(油を除く)として食べる民族は、日本を始めアジア諸国に限られています。これが、大豆の摂取量の差に顕れます。米国人は日本人の13分の一しか大豆食品を食べないという調査もあります。大豆イソフラボンの摂取量でみるとアメリカ白人は日本人に比べて700分の1という報告もあります。このことが、許容できる残留農薬など大豆の安全性への感覚の差になって顕れます。私たちだって、家畜の食べるものと人が食べるものでは扱いが違いますから、これは当然です。仮に残留量が10倍でも食べる量が10分の1以下なのだから、人の摂取量はほぼ同じになります。豆腐などでも安全に関する気遣いは、同じではないでしょうか?

2004年3月23日小針店で印刷・配布した「畑の便り №04-13」に加筆再録 


穀類の栄養、防除、扱い方 ブログトップ