SSブログ
サプリメント・健康食品 ブログトップ
前の10件 | -

アメリカの医療保障制度、サプリが大量・多種使われる背景・・アベノミクスが招く未来図② 2013年 [サプリメント・健康食品]

2013年10月28日、ぷららプログ掲載の加筆再録

サプリメントを過半数の人が摂っているアメリカ。その背景にある、アメリカの医療保障制度を調べてみました。米国では1965年に65歳以上の高齢者・障害者向けのメディケアと低所得者・身障者向けのメディケードという公的医療保険制度がうまれていますが、これらと公務員向の公的保険で人口の約40%がカバーされています。民間の医療保険で約45%がカバーされています。残り15%程度が無保険、今は約17%、6人に一人が無保険状態です。

このように米国には日本のような公的な国民皆健康保険制度がありません。そして保険料が高い。家族を対象とする民間保険の代金は、だいたい、年間100万円程度(2007年頃)。勤め先の企業が福利厚生の一環として、保険を提供してる、保険料の一部を負担してのでもなければ、この保険料はかなりの負担です。アメリカ政府の統計によれば、「従業員25人以下」の企業の7割は、保険を提供していません。アメリカでは、企業による医療保険提供が「優秀な人材をスカウトするための手段」として成立したという経緯もあり、企業での地位が上がるほど(つまり、収入が増えるほど)保険料が安くなる、という「負担の逆進性」があります。

13-10-28thumb1382979141.jpg

日本のフリーアクセス、米国の マネジドケア

日本では行きたい病院を患者が選びます。これが「フリーアクセス」と呼ばれますが、アメリカでは「マネジドケア」(Managed Care・管理された医療ケア)と呼ばれる方法が一般的です。

管理者は保険会社で、その医療管理は典型的には

①加入保険会社が指定している病院で、指定している医者(主治医・プライマリケア医)からしか診察を受けることができない。
②標準的な治療方法で治癒できず、専門医師による診察・治療や専門病院への転院など”特別な治療”が求めれる場合は、担当医者がその患者が加入している保険会社に相談する。保険会社が指定する専門病院・専門医師から選び、事前に承認を保険会社からえる。患者や、最初に担当した医師(主治医)の自由意志で選ぶ事はできない。
③手術で入院という場合、管理者の保険会社が決めた期間、例えば盲腸の手術なら1日、脳卒中で1日、肺炎で2日、乳がん手術で1日。出産は正常分娩で2泊3日、帝王切開で4泊5日が保険で入院費が支払われる。

領事館員の盲腸手術実例??
 在ニューヨーク日本国総領事館は、「マンハッタン区の医療費は同区外の2倍から3倍ともいわれており、一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日約2千ドルから3千ドル程度の請求を受けます。一日の入院室料だけで、ニューヨーク圏中間給与所得者の一ヶ月分の月給(税込み)またはそれ以上に相当する訳です。処置・手術では急性虫垂炎で入院・手術(1日入院)を受けた場合は、1万ドル以上が請求されていますし、歯科治療では、歯一本の治療につき約千ドルと言われています。」 領事館のページ http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/g/01.html

このマネジドケアの医療では保険会社の用意した治療メニューなら、わずかな自己負担で済ませることができます。たとえば、乳がん患者は、手術翌日にはドレーンをつけたまま退院して、患者や家族が術後のケアする。自己負担するなら保険適用外の医療や入院もできるようになっているタイプの医療保険でも、1日入院料が日本の8~20倍、月収の半分位で普通の人は払いきれないので、退院せざるをえない。

無保険者の日米差 米国は医者・病院が診療を拒否できる法体系

日本の場合は、無保険者でも「医療」を受けることはできます。これは、法で医者に「医療」を提供することを義務づけているからです。「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と医師法第19条で規定しています。

 しかし、アメリカでは、そのような法律はないのです。アメリカ医師会倫理綱領は「医師は、患者関係に入るか否かを選択する職業上の特権を有し、」「医師には患者を選ぶ権利がある。」「しかし救急処置が決定的な意味をもつ緊急時には、能力の最善を尽くさなければならない。また医師は、一旦引き受けた患者を遺棄してはならない」「治療を提供する責務を果たし続けなければならない」としています。

それでアメリカの民間病院では、無保険者の診察はまず拒否されます。アメリカでは、「医師は、患者関係に入るか否かを選択する職業上の特権を有し」てますから「無保険者の診察は赤字を増やすだけ、診察はしたくない」と「救急処置が決定的な意味をもつ緊急時」以外の場合は、患者の診察を拒否します。無保険者が頼れるのは、公立病院のER(緊急救命室)だそうです。

医療価格は医師、病院の言い値 

また、治療費は病院や医者の“言い値”です。日本国領事館は「実際の急性虫垂炎・腹腔鏡下手術例(合併症なし、入院2日間)でみてみましょう。医療機関側からの請求総額は1万3千ドルでした。」アメリカの治療費は、病院の施設代と医師らの技術料の二本立てで「医療費の請求書は、医師、検査所、病院等より別々に送られてくることが多く、忘れた頃に届くことも稀ではありません。また、請求額や請求明細が誤っていることもしばしばみられますので、支払い前には十分な確認が必要です。(領事館)」

 日本人旅行者や無保険者には、治療法の適切性や明細を厳しくチェックできません。日本国領事館は「医療費だけを考えても、航空運賃を負担したとしても帰国した方が経済的負担はかなり少なくすみます。」とアドバイス。

米国の無保険者は、結局、病院や医者の“言い値”を支払う。持っている車、土地、家を売り、親戚縁者にも借金を頼み支払う、それでも払えない場合は自己破産。

アメリカの医療費は、国民総生産GDP比でも、国民一人当りでも、世界一であり、しかも上昇率も極めて大きいのです。GNP対比で2006年頃で米国は約16%、日本、英国は約8%。他の欧米諸国の1.5~2倍。

13-10-28_01.jpg

高齢者・障害者向けのメディケアは、1965年発足時に比べ1995年には一人当たりでは25倍以上になっています。公的医療保険は、人口の約34%に相当する1億人が利用しています。それでも、医療費全体での公的負担、公的医療支出の割合は全体の45.8%と圧倒的に小さい。

13-10-28_02.jpg

さるぐつわ条項と病院株式会社化

その医療費の高騰抑制策で1972年に医療標準に照らして医療機関からの請求が適正か審査する組織・PSROを設置。1982年に診断内容や診断行為の妥当性、適切性を厳しく審査する「医療警察」PROを設置。その結果、例えばニューヨーク市では、入院の14%が支払いを拒否され、わずか数ヶ月で平均在院日数が13日から8.7日にまで短縮されたそうです。

領事館の虫垂炎手術例の1万3千ドル請求は「保険会社から医療機関への支払いは、約4千5百ドル(請求額の3割)であり、患者本人の自己負担は数十ドル程度でした。」

このような医療の供給側、病院・医師の管理だけでなく、需要側の人々の受診に「適切な医療にだけ保険で支払」という管理を加味して1990年代から導入された仕組みが、「マネジドケア」です。例えば、救急車を呼ぶにも保険主治医の了解が必要。医師と保険会社との契約に、「さるぐつわ条項」医師が患者に保険会社の給付しうる内容以外の治療方法の選択肢を説明することを禁じた条項が盛り込まれています。

また、病院を株式会社にすれば、医療サービスの効率化が達成され、より良いサービスがより安く提供されるとして、営利の株式会社で病院を経営できるようにしました。米国では約1割が株式会社化しています。最大手のHCAは約350の病院の平均利益率が18%と高利益をあげる優良企業です。しかし例えば非営利病院が株式会社病院に変わると、平均死亡率が50%も増加(0.266から0.387)、逆に株式会社から非営利に変わった病院は死亡率が下るそうです。

13-10-28_03.jpg米国は最先端の高度医療技術では世界をリードをしていますが、平均寿命や乳児死亡率などの保健指標先進国の中でも最低レベルです。

米国は医療技術水準は高い(高水準)が医療制度は、医療費コストが高い(高コスト)、医療費支出の効率性が低い(非効率)、医療サービスのアクセスの公平性が確保されていない(不公平)が特徴です。

 このように、FFSという医療費を全額カバーする保険加入する地位や収入のある約3%ほどの人を除けば、進んだ医療技術の恩恵を受けられない米国社会です。多くのアメリカ人は病院に医者にかからぬ様に体調にあわせて複数のサプリメントを効果を信じて用いるのも肯けます。

 2013年10月28日、ぷららプログ掲載の加筆再録

サプリで肝炎・・アベノミクスが招く未来図① 2013年 [サプリメント・健康食品]

2013年10月14日、ぷららプログ掲載の加筆再録

アベノミクスの第三の矢、成長戦略の一部に、健康食品の機能性表示の解禁・容認が含まれました。現行のトクホは費用がかかりすぎ、中小企業の参入障壁となっているからだそうです。そして、閣議決定された規制改革の内容には、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にすると記載されています。

ダイエタリーサプリメントとは、直訳すると、「日常的に不足する栄養分を補うもの」という意味になりますが、次に示す成分を1種類以上含有するものをいいます。それは、ビタミン、ミネラル、ハーブまたはその他の植物、アミノ酸、栄養を補助する通常の食事成分、上記の成分の濃縮物、代謝物、構成成分、抽出物、混合物です。

 そのアベノミクスのお手本になっている米国のダイエタリーサプリメントが原因と思われる急性肝炎が発生して問題になっています。

13-10-24thumb1381786289.jpg

2013年5月10日から10月3日までの5ヶ月間にハワイでは29人が原因不明の急性非ウイルス性肝炎よび肝障害、食欲減退、淡色便、暗色尿、黄疸などを訴えて受診。そのうちの11例が入院、2例は肝臓移植、1例は死亡と報告されています。入手できている患者10人の肝生検データでは、3人は自己免疫性肝炎などの他の病因による急性肝炎の知見ですが、7例は薬物誘発生肝障害の肝細胞壊死や胆汁鬱滞などがみられた。24例が病気になる前にダイエタリーサプリメントのOxyElite8Proを使用していた。2人以上の患者で共通する医薬品やサプリメントは他にはない。

それで、FDA・米国食品医薬品局は消費者に対し、OxyElite Proと表示されているどのようなダイエタリーサプリメント製品も使用を中止するよう呼びかけています。医者などには、減量または筋肉増強目的のサプリメントの使用後に急性肝炎や肝障害になった患者に注意し、急性肝炎患者を診たときにはダイエタリーサプリメントの使用について尋ねることを薦めています。

日本では、オキシエリートプロという名でアマゾン、楽天、ヤフーショッピングなどで入手できます。 

 「アメリカでは、国の認定を受けていないことをしっかりと明記すれば、商品に機能性表示を行うことができます。国へは事後に届出をするだけでよいのです」(安倍首相、5/6の演説)

 血圧が下がる、体重が減るか、免疫力が上がるなど機能性を表示したい場合、規制官庁である米国食品医薬品局(FDA)の事前許認可は不要で、販売後30日以内にFDA・米国食品医薬品局に届けるだけで良い。

当初は、どのような科学的証拠が必要なのかも明示されておらず、動物実験データしかないものでも表示でき、また、事業者が証拠資料を持っていれば、証拠を公表する義務もない。つまり、社内実験だけでも、それを根拠に機能性表示ができてしまう。さらに、有害情報の報告義務も2007年までありませんでした。
 
製品に目立つ形で「当該表示は、FDAによる評価を受けたものではない。本製品は、何らかの疾患の診断何らかの疾患の診断、処置、治療又は予防を目的とするものではない。」と断り書きを入れれば、企業の責任で「心臓、血管、循環器、関節の健康を増進する 」「男性の前立腺の健康を増進する」といった自由度の高い表現が可能です。

日本では「栄養機能食品」は許可不要ですが、ビタミン、ミネラル(17成分)に限定されています。予め定められた定型文のみ表示可能です。

米国では、日本で認められている[ミネラル]カルシウム、亜鉛、銅、マグネシウム、鉄、[ビタミン]ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D、E)、葉酸の17成分だけでなく、コエンザイムQ10、イチョウ葉、ノコギリヤシなどが、先ほどのレベルの根拠があれば、企業が好き勝手に追加して、表示をつけて販売する(30日以内に届出)ことができます。

13-10-241381787416.jpg
イチョウ葉は「脳機能の健康をサポートする」「認知症の予防に効果がある」と表示されていますが、国の研究機関がそうした効果なしという結果を出しています。それでも効能表示が許され販売継続されています。先ほどの肝炎のダイエタリーサプリメントのOxyElitePro・オキシエリートプロでは「1.食欲の緩和2.エネルギーレベルをアップ3.代謝率をアップしてカロリー消費量をアップ」「米大学が効果を検証済み、薬剤師が調合したダイエットサプリ」とうたわれています。そして肝炎です。こうしたものが市場にでないようにするのが国の責務ではないでしょうか。
 
現在の日本では、こうした成分を売りにしたくても「○○に効く」という直接的な効能表示が許されておらず、「アクティブな生活をサポート」といった曖昧な表現しかできません。安倍首相は「国の認定を受けていないことをしっかりと明記」して、後は企業の自由にして個々人が選べば良いといいますが、この表示は国の責任逃れに過ぎないと思います。
 
 
日本トクホの有効無害主義を捨てる
 
 安倍首相は「現在は、国から『トクホ』の認定を受けなければ、『強い骨をつくる』といった効果を商品に記載できません。お金も、時間も、かかります。とりわけ中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされていると言ってもよいでしょう。」だから「健康食品の機能性表示を、解禁いたし」アベノミクスの第三の矢、成長戦略の一部にすると言うわけです。米国では、2億人の人口の半分、1億人以上の人がこうしたダイエタリーサプリメントに対して毎年1000億ドル(約8兆円)以上を使っているから、日本の約1.2兆円をもっと増やせる、売れるぞというわけです。
 
米国はトクホのように「特定の疾病のリスクを低減する」疾病リスクの低減といった効能を表示するのには許可必要で、FDAが科学的根拠を審査します。4段階に分け、レベルに応じた効果表示ができます。

13-10-24-1381785746.jpg
最下級のDレベルは「極めて限定的な予備的な研究において…を示唆している。FDAは、表示を支持する科学的根拠は殆ど無いと結論した」。
最上級のAは「栄養表示教育法(NLEA)に基づく、科学的同意(Significant Scientific 
Agreement)が得られている。」です。栄養表示教育法(NLEA)を熟知していないと意味不明です。
Bレベルは「…を裏付ける科学的根拠は有るが、その根拠は決定的ではない」、
Cレベルは「…を示唆する幾つかの科学的根拠は有るが、FDAは、この根拠は限定的であり、決定的ではないと結論した」

消費者にとってB、C、Dレベルは意味があるでしょうか。「溺れる者は藁をも掴む(おぼれるものはわらをもつかむ)、藁にも縋る (わらにもすがる)」といいますが、ワラの良し悪し、切れ易さを区別して消費者に何の意味があるのでしょうか。最上級のAだけが意味がある。必要なのはワラではない証明です。
 
日本のトクホ・特定保健用食品は、製品ごとに許可が必要です。許可を得るには科学的根拠を添えて申請しなければなりません。その根拠は「使った、治った、効き目がある」レベルではダメで、医薬品の効能試験に準じた試験、実験レベルの根拠、証拠が必要とされます。医薬品の治験には数億~数十億円かかりますが、そこまでの証拠のレベルは求めていないので、数千万~数億円ほどかかります。米国でも最上級のAをえようとしたら、同様な経費が掛かるのではないでしょうか。

これを安倍首相は「中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされている」と批判していますが、数10万、数百万円ですむ試験なら「使った、治った、効き目がある」レベルになります。米国ならD、Cレベルです。こうした物は、市場に出てくる道を閉ざしておくことが国民の健康財産を護る政府の責務ではないでしょうか。
 
この日本のトクホも、科学的根拠が弱い、疑問があると批判されています。花王のエコナという食用油のトクホ・特保を覚えていますか?発がん可能性成分が多く含まれているとの研究が出て2009年に販売を中止していますが、体に脂肪が付き難いをセールポイントに一時は売上高が数百億円に達した花王のヒット特保です。
 2013年10月14日、ぷららプログ掲載の加筆再録

生薬と健康食品、サプリメント 2007年 [サプリメント・健康食品]

2007年11月小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-47」の加筆再録

11月23日は勤労感謝の日、もともとは戦前は新嘗祭(にいなめさい)。天皇家でこの日、その年にとれた新米を神に供え、召し上がる収穫を祝う神事が行われます。また大阪の菅原神社など各地で医薬と農業を司る神・神農(しんのう)のお祭りが行われる日です。 

07-47-sinnnousann.jpg

 

生薬・防已(ボウイ)と発がん性物質

  神農は古代中国の伝説に登場する皇帝。百草を嘗めて効能を確かめ、諸人に医療と農耕の術を教えたという、中国では“神農大帝”と尊称されています。伝説によれば、神農氏の頭に角が生えていて、体は脳と四肢を除き透明で、内臓が外からはっきりと見えたと言う。薬草の葉っぱの服を着、手には赤い鞭(赭鞭)を持ち野山を旅して薬草を見つけては自分で嘗めて、毒か薬かを調べた。毒があれば内臓が黒くなり、これで毒の有無および影響を与える部位を見極めたといいます。その後、あんまりに多くの毒草を服用したために、体に毒素が積もり、そのせいで最終的に亡くなったとか。漢方の三大古典の一つ「神農本草経(しんのうほんぞうきょう、中国最古の漢方書)」はこの神農大帝が著したということになってます。
神農本草経解説

神農本草経解説

  • 作者: 森 由雄
  • 出版社/メーカー: 源草社
  • 発売日: 2011/12
  • メディア: 単行本
 
 「防已(ボウイ)」は、神農本草経にもある主に駆水や抗炎症効果を目的に方剤中に処方される重要な生薬です。わが国の薬局方の第二部医薬品に収載される「医薬品」です。防已が含まれる漢方に「防已黄耆湯」(ボウイオウギトウ)という有名な煎じ薬があります。色白で疲労感があり、多汗で筋肉が柔らかく水太りの傾向にある人の肥満改善や、水分停滞が原因で起こるリュウマチ、関節痛、関 
節炎、むくみ、多汗症などに適用します。「防已」の役割は、身体の中の余分な水分の排泄を促し、痛みを止める作用です。したがって、いわゆる虚弱体質の水滞(むくみを伴う)による肥満にはこれを緩和する作用、痩身効果があるといえます。
 
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)350錠(水太り、汗かき、むくみ、関節の腫れ)

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)350錠(水太り、汗かき、むくみ、関節の腫れ)

  • 出版社/メーカー: 一元製薬
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 
 
 ダイエット、痩身効果をうたったサプリメント・健康食品のなかには、この「防已」による水太り解消の薬効をうたい文句にしたものがあります。その痩身サプリによる腎臓障害がベルギーで1992 
年に起こり、日本では1997年に起こっています。1990年~92年、ベルギーにおいて出回った漢方薬入り痩せ薬を摂取した人の中で腎臓に重大な障害を起こし、透析や腎移植を受ける人が出ました。その後、被害者には尿路系のがんの発生が報告されています。日本においても1996年から97年に関西において中国製生薬を配合した痩身の健康食品を摂取した人に腎炎の発生が報告されています。
 
07-47-saisin.jpg
その後も、19歳女性が約20種の自然薬草よりなる「中国製のいわゆる漢方薬」を個人輸入し、約3年にわたりアトピー性皮膚炎に使用したところ腎障害を起こした例や33歳女性が不妊症に対して、医師の指示で中国ハーブから抽出した「いわゆる漢方薬」(当帰四逆加呉茱萸生姜湯)を服用していたが、5ヵ月後から腎不全になり18ヵ月後血液透析を始めた例など報告されています。問題の痩せ薬や漢方薬には腎毒性や発がん性があるアリストロキア酸を含む「生薬」が添加されており、それが健康障害の原因と考えられています。
 
 アリストロキア酸は植物に含まれる化合物、アルカロイドの一つです。この物質は動物実験や腎臓の細胞を用いた実験で強い腎毒性と発ガン性があることが既に証明されています。ヒトにおそらく発がん性がある(グループ2A)と評価されています。正常な腎臓の細胞のなかに入り込んで遺伝子(DNA)と結びつき障害を起こす作用があることが明らかとなっています。
 
日本と中国では異物同名・・ 防已(ボウイ)としている薬草が違う
 
 わが国の薬局方で防已(ボウイ)としているのはツヅラフジ科のオオツヅラフジの茎および根茎を乾燥して刻んだものです。これには問題のアリストロキア酸は含まれていません。
 
しかし中国では防已には様々な多数の薬草が含まれています。「防已」を冠する生薬には「広防已」「漢防已」「粉防已」「漢中防已」「木防已」など様々な種類があります。これらの中にはアリストロキア酸を含む薬草が多くあります。
 
生薬はなんといっても天然品、収穫量も少なく貴重な生薬は偽物が出回り、また一方で、地域によっては正規の薬草が入手できず、やむを得ずこれに類似した植物で代用となるケースもあり、種々の理由から代用が生じ、「異物同名」の混乱を招いています。中国では宋の時代までに生薬の編纂を行いましたが、その中でも異物同名の生薬の鑑別が載せられるなど、古より生薬の混用の問題点が指摘されています。この問題が今なお尾を引いているのです。
 
  中国国家食品薬品局(SFDA)は、アリストロキア酸を含む一部の生薬の利用を禁止する通知を出したり、医師の処方が必要とされる生薬に指定しています。それでも中国では1988年から2004年3月までこれら生薬により起こった腎障害の事例は31例あります。
 
  さてオオツヅラフジの茎および根茎を乾燥して刻んだものを用いた痩身サプリ・健康食品は、アリストロキア酸という点では安全ですが、わが国で医薬である防已を用いたことになります。医薬品にしか使えない成分が入っているので、その健康食品は「違法医薬品」という取り扱いになり、即回収、販売禁止です。
 
それでは、日本では危険で医薬品に用いられないアリストロキア酸を含む生薬を含有した痩身サプリ・健康食品、例えば1996年から97年に関西において被害者を出した中国製生薬を配合した痩身の健康食品は、どのような扱いになっているのでしょうか?
 
効能効果をうたわない限り、取締りされません。回収、販売禁止措置はとられないのです。被害を受けてから事後的に販売者、輸入業者に製造物責任法に基づき、損害賠償を求めることができるだけです。この事情は諸外国でも同様で、米国始め英国やドイツ、カナダ、オーストラリアでは使用禁止になっていますが、米国ではアリストロキア酸を含む可能性のある植物を含んだ製品を販売している業者は100以上、合法的に販売されていてインターネットなどを介して購入できるのです。潜在的な被害を考えて、米国は来年1月に対策会議を開くそうです。  
 

厚生労働省の姿勢は?

 今年、2007年3月にウスバサイシンとケイリンサイシンという植物が、それまでは根、根茎だけが医薬品扱いだったものが葉や茎など地上部まで医薬品に編入されました。
この二つの植物から「細辛」(サイシン)という生薬が作られます。細辛は慢性気管支炎・気管支拡張などで大量の稀薄な痰がでる場合、風湿やインフルエンザによる頭痛・関節痛などに使用などに鎮痛,鎮咳,去痰に用いられています。葉や茎など地上部にはアリストロキア酸が含まれているため、これまで日本では医薬としての使用を禁止していました。
 
ある成分・原材料が、医薬品専用か食品成分としても使用可能かは、厚生労働省が「食薬区分」の成分リストで分類しています。医薬品にしかつかえないリスト(医薬リスト)と食品に使っても良い成分(効能効果をうたわない限り医薬品とみなさない成分)のリスト(非医薬リスト)に分類されてます。
 
 
07-47_01.jpg
 ウスバサイシンとケイリンサイシンの地上部は、2001年から非医薬品リストに掲載されていました。法律上では、医薬品以外は食品なのですから、今の法律では、医薬品から外せば、即食品になり健康食品に使われています。このサプリメント・健康食品は、直ちに薬事法違反にはならない、腎臓を傷害する成分が含まれていても、医薬品的効能効果を標ぼうしない限り、取り締まれないのです。
  
  この地上部の危険性については、厚生労働省自身が、医薬安全局安全対策課が医療関係者向けに定期発行している「医薬品・医療用具等安全性情報」の中で2000年7月と2004年4月の2度にわたり、注意を喚起しています。しかし同じ医薬安全局の監視指導・麻薬対策課は、所管する「食薬区分」のリストで、食品に使えるようにしていたのです。これを知った市民団体が去年2006年10月に指摘、改善を求めた結果、本年2007年3月にようやく食品に、「健康」食品に使えなくなったのです。
 
 
 
   アリストロキア酸は植物に含まれる化合物、アルカロイドです。アルカロイドは総じて激しい生理作用や生物活性を持っています。生薬、医薬品として利用されるものも多い一方、強い生物活性の故、有毒物質、致死性成分も多く、生薬でアルカロイドを多く含むものは使用に細心の注意が必要とされています。 
 
  東京大学薬学部名誉教授の齋藤洋氏は、厚生労働省の「一般用医薬品としての生薬製剤(西洋ハーブを含む)の審査のあり方に関する検討会」の座長も務められた生薬の専門家です。2003年に齋藤氏は次のように語っています。食薬区分の審議に「生薬の専門家なんか誰も入っていない。アリストロキア酸の危険性は薬学部での教科書にすら載っている常識的な問題。私が気づいた段階で、数年前から指摘しているのに、一向に訂正しようとしない」
 
  「食薬区分」の医薬リスト、非医薬リストに掲載されている成分・原材料は、何らかの生理作用や生物活性を持っていて身体・健康に益や害を及ぼします。医薬リストのものは、病気の時に薬を飲む期間だけ、投薬量に応じた量しか体に入ってきません。非医薬リストのものは、サプリや健康食品に使われ病気の有無にかかわらずその人の好きな期間、好きな量、身体に入ってきます。
 
 生薬の成分・アルカロイドは使用に細心の注意が必要とされています。多くのサプリ・健康食品は、この非医薬リストの成分・原材料を使うことで何らかの効能があるのです。サプリ・健康食品での摂取につながる非医薬リストへの掲載には管理する国に細心の注意が求められます。
しかし、食薬区分の審議に「生薬の専門家なんか誰も入っていない。」し、教科書にすら載っている常識的なサイシンの地上部の危険性の扱い、医療関係者には危険性を警告、周知を図りながら一般国民は自由に摂取できるようにしておく、をみると、非医薬リストはかなり杜撰に管理されています。その危険性(安全性)に国が責任を果たしていると言えるでしょうか??
 

カワカワ

 逆に、
「カワカワというコショウの仲間の植物をポリネシアの人たちが使っている伝統的な飲み物があります。これは年に1 度、1 週間ぐらい祭礼をしたりするときにカワカワの根を絞って、それを飲むわけです。成分はカバラクトンという化合物が入っていまして、いろいろな薬物の作用も懸念されるような化合物だった。
 
1994年以来・・カワカワの濃縮物がダイエットサプリメントで出回りました。2000年前後からいろいろなものに関して障害を起こし出しまして、特に肝臓障害のことが大変多く知られておりまして・・ 
 
 現地のポリネシアの人たちは年に1 度、1 週間ぐらいだけ、その液を煎じて飲むというだけなのに、サプリメントにしてしまいますと毎日毎日それを飲んで、大変濃度の高いものになってしまう。それで肝臓障害を起こしてしまったということで、世界的にこの販売が自粛されるようになった。 --佐竹元吉(お茶の水女子大学教授)」
 
  日本では、カバラクトンの毒性などを懸念して、医薬リストに掲載しサプリの販売できなくしたので被害が起きていませんが、常にいつも予防できるとは限らない。このように未知な害作用を受けても、国や業者に責任は問えません。
 
  食品に薬効までも求める姿勢にも問題があるのではないでしょうか?食品は身体を養う栄養と農薬や添加物など有害な物がないこと、それを満遍なく食べるのが健康には一番では?
 

カワカワの有害情報
財団法人国際医学情報センター
 
 2007年11月小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-47」の加筆再録
 
 
怖いもの見たさの人は
HTP・カーム 60カプセル

HTP・カーム 60カプセル

  • 出版社/メーカー: NATURAL BALANCE社
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
サウンド・スリープ   60 カプセル

サウンド・スリープ   60 カプセル

  • 出版社/メーカー: GAIA HERBS社
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 


有機のゲルマニウムを含んだ1本5000円の“何とか水”の効き目? 2007年 [サプリメント・健康食品]

2007年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-13」の加筆再録

  有機のゲルマニウムを含んだ何とか水、1本5000円なりを毎日4本飲んでいたと力説された永田町の大尽(大臣)さまが話題になりましたが、ホンマに効き目があるのでしょうか?

07-13Germanium-01.jpg

ゲルマニウムは、灰色ががかった物質で、トランジスタ・半導体製造やペットボトル樹脂製造の触媒として用いられています。比重5.32で重金属(比重4~5以上)です。重金属には一般に高血圧、腎機能障害、気管及び皮膚障害、発癌性といった中毒、毒性があります。


80年代の無機ゲルマニウム中毒

  ゲルマニウム中毒は、これまでも30例ほど知られています。最初の1979年の38歳主婦例など、ほとんどが日本で起きています。例えば1988(昭63)年2月3日の毎日新聞によれば
 「死亡した男の子は一歳四カ月だった昭和59年3月、鹿児島大医学部付属病院で小児糖尿病と診断され、インシュリン投与による治療が始められた。ところが症状に著しい回復がないため、『糖尿病の80%は治る』などの“ゲルマニウム療法”を書いた本を読んだ父親が60年5月から35ミリgのゲルマニウムを含むカプセル状の食品を、インシュリン治療と並行して1日当たり一つずつ飲ませた。62年1月ごろになって足がふらつくなどの症状が出始めたが、父親は糖尿病の悪化と考え、1日の服用量を倍の2カプセルに増やした。
 
  この男児は同3月ごろになって糖尿病が治らないばかりか、筋肉の衰えや呼吸障害もあらわれはじめ、5月には全く歩けなくなり同病院に入院した。入院時にはじん臓や肝臓などの内臓障害のほか、人工呼吸器なしでは呼吸できないほど症状が悪化、昨年末じん不全で死亡した。同小児科が男児の遺体を解剖した結果、じん臓や肝臓をはじめ、ほとんどの臓器から通常は存在するはずのない多量のゲルマニウムの蓄積が認められた。
 
  同医学部小児科の宮田晃一郎教授は『糖尿病が悪化すれば、たしかにじん臓や心臓に障害が出ることはある。だが、この患者のように筋肉が衰え、呼吸にまで支障を来すということは、糖尿病では考えられない。臓器へのゲルマニウムの蓄積を考えれば、ゲルマニウム中毒による死亡としか考えられない。ゲルマニウムは体内に入ると排せつされにくく、大量に長期間服用するのは非常に危険だ』と話している。
 
 一方、厚生省は『ゲルマニウムそのものは大量に摂取しなければ実害はない』としている。同省によると、健康食品と銘打って販売すること自体は違法ではない。しかし何らかの薬効があることを容器などに表示すれば製品そのものが薬事法違反になり、また表示がなくても『〇〇に効く』と説明して販売すれば、その販売行為が同法違反に問われる。このため、こうした問題食品も健康食品である限りチェックを受けないことになり、販売行為が薬事法違反で摘発されても『販売禁止』などの措置は取られていない。」
 
  この中毒は、腎障害,消化管病変,貧血,筋力低下,末梢神経障害などの症状が現れます。原因食品の多くは「有機ゲルマニウム含有」をうたっていたものの、ほとんどが無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)のことが多く、動物実験でもそれで中毒が再現されたため、二酸化ゲルマニウムが原因とみられました。
 
 88年10月に、旧厚生省は次のような通知(行政指導)を出しました。
①酸化ゲルマニウムを含有させた食品を継続的に摂取することは避けること。
②食品関係事業者に対しては、ゲルマニウムを食品の原材料として使用する場合は、予めその長期健康影響等安全性を確認して使用するよう指導すること
 

参照  ゲルマニウムを含有させた食品の取扱について(昭和63年10月12日衛新第12号)
 

 有機ゲルマニウムの効能と安全性

   さて現在、”体内のフリーラジカルを消去し、免疫細胞を活性化して、成人病に打ち克つ身体をつくる”などと有機ゲルマニウム含有の健康食品が販売されてます。これを扱う業者は、先の通知②「ゲルマニウムを食品の原材料として使用する場合は、予めその長期健康影響等安全性を確認して使用する」を守っているでしょうか?

  有機ですから炭素(C)とゲルマニウムの化合物全てが”有機ゲルマニウム”ですが、様々調べてみましたが、その安全性の資料は、浅井ゲルマニウム研究所のものだけで発見しました。
 
 参照 浅井ゲルマニウム研究所

 この会社は、有機ゲルマニウムの人工合成に1967年に成功した浅井一彦氏が設立した会社です。浅井氏が合成したものは、国際一般名は レパゲルマニウム、通称はアサイゲルマニウムやGe-132、 化学名はポリ‐トランス-〔(2‐カルボキシエチル)ゲルマセスキオキサン〕。
 
07-13-02.jpg
 浅井氏は、1950年代に石炭からの無機ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウムの抽出に成功し、67年には有機物の合成に成功し67年に合成に成功してから、彼は無機・有機のゲルマニウムの医薬品としての研究開発に、多くの学者を引き込み取り組みます。
彼自身は、ナチス下のドイツに留学した石炭岩石学の専門家で、その分野では当時の第一人者で、工学博士でしたが、薬理や生物・医学系には素人です。石炭から抽出したゲルマニウムから医薬を製造する話で、業界から研究資金を集めることは出来ても、彼自身が研究できる素養がなかったし、その発表が信頼されないからです。
 
  58年の「酸化ゲルマニウム果糖錯塩溶液のX線による放射線障害予防効果」を嚆矢に70年代、80年代の研究から抗癌作用、免疫調節作用、血圧降下作用、臓器保護・抗酸化性作用といった効果が動物実験で明らかになり、学術誌や雑誌等で公表されました。79年には、協力研究者らを組織してゲルマニウム研究会を立ち上げています。つまり70年代からのゲルマニウム健康食品ブーム(それによる中毒死亡)の仕掛け人です。浅井氏は82年(昭57)に永眠しました。
 
  88年の厚生省の通知は、名指しこそしていないものの浅井一彦氏とゲルマニウム研究会の研究者に長期健康影響等安全性を確認を求めたと読めます。80年代に多発したゲルマニウム健康食品中毒死は、多くが「有機ゲルマニウム含有」をうたっていたものの、ほとんどが二酸化ゲルマニウムのことが多く、このため「有機ゲルマニウムは薬効があるが、無機ゲルマニウムは中毒を引き起こす」との風評もありました。現在でも、「有機ゲルマニウムは、心ない業者による不幸な事件によってその有用性がスムーズに認識されなかった」とする人もいます。
     
体重1kgあたりどのくらいの量を摂取すると死亡数・生存数が半々になるかという数値をLD50といい急性毒性を表す値で、小さいほど急性毒性が強いのです。経口摂取での無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)のLD50は1250mg/kg(ラット)、有機(レパゲルマニウム)のは11950mg/kg(マウス)。このだけ見れば、有機の方が急性毒性が弱い。しかし、経口LD50が50mg/kg以下が毒物、50~300以下が劇物ですから、無機も有機もゲルマニウムは普通物です。その普通物の無機ゲルマニウムの長期摂取で中毒死が起きていますから、LD50の値は長期健康影響等安全性とは別物です。
  
  厚生省が88年に注文した「その長期健康影響等安全性の確認」はどうでしょうか。
こうした慢性毒性は「投与は少なくとも2種の動物種で行われ(1種が非げっ歯類)、通常、動物の寿命が尽きるまで続くが(げっ歯類では2年、非げっ歯類ではさらに長期)」で検査・試験されます。その結果を、20年たっても浅井ゲルマニウム研究所は公表していません。「安全性の高い化合物であることが推察されました」という会社の見解だけです。慢性毒性試験が行われ、毒性が認められなかったのなら、国立健康・栄養研究所の健康食品の安全性・有効性情報で「サプリメントとしての経口摂取は恐らく危険と思われ、末梢神経や尿路系の障害を起こし、重篤な場合には死に至ることがある。」と警告を出すでしょうか? 

参照 国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報 

 
 人での有用性について、国立健康・栄養研究所の健康食品の安全性・有効性情報では、「ヒトに対する信頼できる有効性のデータは得られていない。」「ある研究で、三酸化第2ゲルマニウム(無機物)の経口投与で肺紡錘体細胞癌が完全に寛解したという報告があるが、第1相や第2相の臨床試験(少数の志願者に投与する)に携わった多くの研究者達は、ゲルマニウムは多くの生死にかかわる副作用があるために、安全ではないと示唆している。この用途にはさらなる知見が必要であろう」
 
 ゲルマニウムの医薬品・ヒトでの有効性の研究を浅井氏が始めて半世紀、医学研究者らのゲルマニウム研究会の発足が79年。それでも「信頼できる有効性のデータは得られていない。さらなる知見が必要」のです。

  このように安全性が不明なまま、有機ゲルマニウムのカプセル錠、注射剤、外用剤、点眼剤を無許可で医薬販売した件で、浅井ゲルマニウム研究所は、97年(平成9年)に厚生省から行政処分と刑事告発されています。
 
  その発表を要約すると、
96年夏以降、(株)浅井ゲルマニウム研究所が治験薬を医師グループに提供し「寄付」の名目で対価を受け取っているのではないかという情報があり、同研究所から事情聴取するとともに、12月に立ち入り調査を行った。調査の結果、(株)浅井ゲルマニウム研究所は、81年(昭和56)頃から、有機ゲルマニウム化合物(Ge-132)のカプセル剤、注射剤、外用剤、点眼剤を、同社自らその運営に深く関与している医師グループ(ゲルマニウム臨床研究会)及び診療所に反復継続して販売してきたことが判明した。
 
 本件事案は、無承認無許可医薬品の製造販売が組織的かつ全国規模で行われており、これに対する厚生省の過去数度の指導に改善を約束しながら守られず、今日に至っている。ことに94年(平成6)3月以降は治験も全く行われておらず、有機ゲルマニウム化合物を無承認、無許可の医薬品として製造し、販売のみを行っている。 

参照 (株)浅井ゲルマニウム研究所の薬事法違反に係る告発及び製品の回収について 
 
 有機水銀や無機ゲルマニウムの二の舞の懸念

  私は有機水銀や無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)の二の舞にならないか心配です。有機水銀は、殺菌剤、消毒剤として広く使われました。赤チンは1919年に開発されたマーキュロクロム(赤緑色の有機水銀化合物)の粉末を水に2%溶かしたもので、皮膚・キズの殺菌・消毒に家庭の常備薬の一つとして長く使われていました。水虫などの治療薬にも有機水銀軟膏が使われてきました。稲の種籾など種子消毒に重宝されました。その慢性毒性がわかったのは、熊本県の水俣、新潟の阿賀野川流域で、工場廃水に含まれていた有機水銀を蓄積した魚介類を多食した地域住民に中毒=水俣病=が発見されるまで分からなかったのです。その後、赤チンも水銀軟膏も、殺菌剤も姿を消しました。
 
  無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)については、「ゲルマニウム中毒という新しい型の重金属中毒について、不幸な事件をきっかけにしてではあったが、日本人が短期間に世界の医学に決定的な貢献をしたことになる。」と評価されています。有機ゲルマニウムでも、同じことにならないか、タミフルの毒性・副作用を日本で明らかにしたように、世界に貢献しないか心配です。
 
  ゲルマニウム温浴やブレスレットなどは、例えば工学博士の浅井一彦氏を「ゲルマニウム療法の第一人者」と医学の権威と持ち上げたり、効能や安全性の根拠としている厚労省の文書がゲルマニウムを医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分とした通知だったりして、考える気力さえ湧かなかったので、採り上げませんでした。  

 

2007年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-13」の加筆再録

怖いもの見たさの人には
 
純度100% 【飲用100g】有機ゲルマニウム粉末 水溶性Ge-132 日本食品安全センター

純度100% 【飲用100g】有機ゲルマニウム粉末 水溶性Ge-132 日本食品安全センター

  • 出版社/メーカー: 有機ゲルマニウム粉末 飲用
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

花粉症対策の健康食品で死にかけた和歌山の女性 2007年 [サプリメント・健康食品]

2007年3月5日小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-10」の加筆再録

  花粉症の時季になりました。杉の花粉や葉を使用した花粉症対策健康食品が売られています。虹屋にも連日のように売込みがあります。その一つで、和歌山の40代女性が飲用した30分後に重いアレルギー症状を起こし、一時意識不明になったとして、厚生労働省が予防の観点から製品名を公表しました。この商品名は「パピラ」で、山形県西蔵王の杉の若い雄花の芽を採取し、蒸気殺菌、乾燥、粉砕し、ゼラチンと共にカプセルに積めた物です。案の定というか予想された事態が起きた、幸い回復して良かったです。

厚労省いわゆる健康食品「パピラ」に係る薬事法上の対応について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/02/h0228-2.html

花粉(エキス)を食べて服用して花粉への抵抗力が作れるのか?

  この商品名は「パピラ」で、山形県西蔵王の杉の若い雄花の芽を採取し、蒸気殺菌、乾燥、粉砕し、ゼラチンと共にカプセルに積めた物です。「体の中に花粉を入れて花粉への抵抗力を作るという健康食品」「奇跡の花粉対策商品と呼ばれる『パピラ』で毎年悩まされ続けてきた花粉症にさようなら~。それはまさに奇跡!モニターによる症状改善率91%の実力派花粉対策商品パピラ。花粉に悩まされている男女100名に「パピラ」を摂取していただいたところ、有効回答中91%の方々に症状の消失、または改善が見られました。(2001年調査)今までに6千人以上の人にお飲みいただいた実績があります。」と花粉症に効くと宣伝、0.2g×20カプセルで8000円程度で販売されていました。山形県の調査では、2005年9月頃から販売となっていますから、2001年の100人試験は本当にあったのか、これまで2000箱程度を出荷したそうですから6千人以上の使用者がいるのか、など?が付く点が多々あります。

  最大の?は、花粉(エキス)を食べて服用して花粉への抵抗力が作れるのか?と言う点です。他の花粉症対策健康食品にも当てはまる疑問です。

07-10-02.gif

  細菌やウイルスなどの異物を撃退する免疫で作られる抗体は、5種類(クラス)あります。外に分泌されるIgA型は鼻、眼、肺、消化管などの粘液中に分泌され、微生物や異種タンパク質にタックルし接合してこれらから侵入するのを防ぐ働きをします。母乳中にもあります。

  IgM、IgGは血流中や体組織中にあり侵入してきたウイルスや異種タンパク質に対処します。毒素に接合して働けなくしたり、病源体に付着して白血球が活性酸素で殺す目印・きっかけになります。IgGは母体から胎盤を通じて胎児に移行する唯一の抗体で、新生児の免疫システムが自分で抗体をつくり出す時期まで、母体のIgGが胎児や新生児を保護します。

  IgD抗体は血流中に少量あります。その機能はよくわかっていません。
  IgEは、白血球の1種である好塩基球や組織の肥満細胞と結合します。寄生虫が侵入を図ると結語した好塩基球や肥満細胞からヒスタミンなど炎症、かゆみなどを引き起こす物質を放出させます。腸でそうなれば下痢が起きて、寄生虫の侵入を防ぎます。皮膚でおきればかゆみ、炎症となり多くの白血球があつまり、寄生虫を撃退する。IgE抗体は進化的には哺乳類で顕れる抗体で、寄生虫の蔓延に備えて、哺乳類はIgEを作って寄生虫をマークし、体内で寄生虫が増えるのを防いでいると考えられています。

  花粉症などのアレルギー、直ぐに症状が出るアレルギーは、このIgE抗体が主役です。花粉の成分や卵などの未消化タンパク質を抗原とする抗体が出来て起こります。本来、花粉は無害ですし、卵は栄養です。IgE抗体を作る必要がありません。私たちの体の免疫組織では、こうした異物にはIgE抗体を作らないトレランス(免疫寛容)というコントロールが効いています。アレルギーでは、トレランスが破綻している、不寛容になっている状態です

  例えば、マウスに、卵のタンパク質(アルブミン)を千分の一mgを注射すると、免疫(アレルギー)反応を起こします。ところが、卵を食べると遥かに多い量が未消化タンパク質で入ってきますが、反応はおきません。免疫寛容になります。

07-10_05.gif

つまりどの経路で身体に取り込まれたのかが大きく影響します。からだの表面は皮膚か粘膜で、皮膚は角質の層で覆われていて微生物などの侵入から守られています。粘膜は侵入しやすいので、眼、鼻、口、のど、腸管、気管、気管支、生殖器などの粘膜には、特別な防御のしくみが備わっていいます。特に大きいリンパ組織は腸管関連リンパ組織、気管関連リンパ組織、鼻咽頭関連リンパ組織で相互に関連して働くので、共同粘膜免疫システムと総称されます。その中でも腸管のリンパ組織が影響力が大きい。最も大きい。また腸は異物である食物を栄養として積極的に取り込む働きをします。そして血流にのせて全身に送り出します。また例えば、眼に着いた花粉は、涙液と共に鼻に排出され、その奥から食道に落ちていきます。鼻についたのも同じルートで消化器に達します。呼吸と共に肺に吸い込まれた花粉は繊毛の働きで食道へ排出されます。最終的に腸管に行き着きます。

  多くの花粉症では、目や鼻の症状です。つまり眼や鼻に付着した花粉が、水分で発芽し花粉管を粘膜内に伸張します。それで入り込んだスギ花粉のタンパク質の刺激で、鼻咽頭関連リンパ組織では免疫寛容が破綻しているのでアレルギー反応がおき、腸管や気管では免疫寛容が持続しているので反応が起きてません。免疫寛容を復活させれば、根治することになります。

07-10keikou.jpg

 

 減感作療法と健康食品

  その療法の一つが、杉花粉症なら杉の抗原液(トリイ薬品から作られてる杉抗原液、エキス液ともいいます)を薄くからしだいに濃くして、皮内に注射して最終的にIgE抗体ではなくIgM抗体を作るように誘導して症状をでなくする皮下減感作療法です。反応が出ないぎりぎり薄い濃度から始めて、ジンマシンや発赤などが起こらないぎりぎりの濃い濃度・維持量に達するまで、週1-2回休まずに通院して少しずつ注射します。それから徐々に間隔をあけていって最終的には月1回に維持量注射にもっていきます。それで、約2~3年の通院がかかります。
 
 
07-10-03.jpg
 杉花粉症では、秋口に始めて年内に維持量に達して、春の杉花粉の時季に備えるようにします。つまり、時季や体調によって同じ濃度の注射投与でもアレルギー反応が起こる(約1割でおきている)、場合によっては重篤なショック反応が起きることがある(200万回注射で1回くらい)ため投与時の医師の診察が欠かせません。あまりにも週2回の通院が苦しいというので急速減感作療法といてその注射量を急速に増加させる施設もありますが、急速な増加で重篤なショック反応の可能性が高く入院など厳重な医師の管理下での元でされています。
 
  もう一つが、舌下減感作方法、舌下免疫療法と言うものです。舌の下にパンくずを置き、そこに杉の抗原液を滴下します。口の粘膜から吸収する方法です。このパンくずを2分間舌下に保持し、その後吐き出します。厚生労働省の研究班などが試験研究で行い、最適な投与量などを調べている段階です。
 
07-10-2p_4.jpg
「舌下から抗原エキスを吸収させると、あごの下の左右にあるリンパ節にエキスが届きやすいのです。リンパ節はアレルギー反応に関係の深い免疫機能を持っています。さらに症状の出るのが目と鼻というように顔に集中しています。その点でも近くに位置する〝舌下〟という方法が有効なのです」(研究班の日本医科大の大久保公裕助教授)。多くの花粉症では、目や鼻の症状ですから鼻咽頭関連リンパ組織に直接働き掛ける療法です。
欧米ではブタクサの花粉症で最も一般的には飴玉の形をした製剤を舌下投与する方式でまたは点鼻で、1990年代後半から広く行われています。
 
 最初の3~4週間は滴下量を徐々に増やし毎日1回行います。その後は花粉飛散期終了まで週2回します。花粉飛散後は月2回します。滴下は自宅で行います。毎日の通院は不要ですが、最初の1ヶ月は月2回程度、その後は月1回(花粉季節)から2-3ヶ月に1回(花粉飛散期以外)程度の通院となります。治療期間は2年以上です。
 
  「体の中に花粉を入れて花粉への抵抗力を作る」という杉の花粉や葉を使用した花粉症対策健康食品は、上記の減感作療法と似ていますが、免疫寛容がある腸管リンパ組織に対して働き掛ける、急速短期の摂取、パピラでも類似品でも、含まれている花粉の量、濃度が不明で投与量・摂取量のコントロールが出来ないという点が異なっています。
 
  食物アレルギーの誘因の一つは、牛乳なり卵の過剰な摂取です。免疫寛容が過剰な摂取で破綻してしまうと考えられています。花粉症対策健康食品で、免疫寛容になっている腸管にわざわざ過剰な花粉摂取を強いる事になります。
それで腸管の免疫寛容が強化され、共同粘膜免疫システムの一員の鼻咽頭関連リンパ組織に波及して免疫寛容が復活するというのが「体の中に花粉を入れて花粉への抵抗力を作る」ということでしょうが、そんなにうまくいくでしょうか?逆に、過剰な摂取で免疫寛容が破綻するのではないでしょうか?免疫寛容が破綻しても本人に自覚症状が顕れない限りアレルギー体質に変わったことは分からないでしょう。
 
  減感作療法のポイントは、ジンマシンや発赤などが起こらない免疫寛容が維持されるぎりぎりの濃い濃度・維持量を2年から3年投与することです。この維持量は個人で、時季で、体調で異なり、皮下と直接血流に投与し全身に行き渡る=全身で反応が起き得る場合は医師の管理が行われています。
腸管を経る食物アレルギーでは、FEIAnという重篤な時には死に至るアレルギー反応があります。原因となる食物を摂取した上で、直後に運動をするという二つの条件が重なると、口内や唇のしびれ、異常感覚、のどや胸部の狭窄(きょうさく)感などがおき皮膚の紅潮、じんま疹、冷汗、血圧低下、意識障害、呼吸困難、気道狭窄による窒息がおきる全身性のアレルギー反応・アナフィラキシーショックがおきることが知られています。
 
 
0710-06.jpg
 パピラは「1日1~3カプセルを目安に、・・晩秋~2月にかけてひと月1箱を・・(花粉が飛ぶ)心配な時期の2~3週間前に1箱を」摂取とあります。和歌山県の花粉症の女性は、昨年から摂取を始めていました。
和歌山の女性は、2月23日(金)19時頃、1カプセル飲用後、友人とテニスを行っていたところ、約30分後に全身に蕁麻疹が出現し、息苦しくなったため医療機関に受診。診療中、口腔内が腫脹して気管が閉塞し、意識不明状態に陥ったため、気道確保と対症療法が行われ25日15時頃に意識を回復し一命を取り留めました。
 
  1カプセルと最低量でもこの方の免疫寛容が維持されるぎりぎりの濃い濃度、維持量を超えていたのです。それで昨年からの摂取で腸管での免疫寛容が破綻していたのです。23日は摂取と運動が重なったためアナフィラキシーショックが起きてしまったのです。
 
  杉の花粉や葉を使用した花粉症対策健康食品は、食品と言うよりも薬です。また適正な摂取量かなど医者でない虹屋には判断できませんから、私は扱っていません。
  ところが、農水省はスギ花粉の一部のタンパク質を作るよう遺伝子組換えをした米を「スギ花粉症緩和米」と称して育種を進めています。2001年には実験栽培に取り組み、2003年頃から「お米を食べて花粉症を防ぐ」といった新聞記事が出るようになりました。現在、パック型に加工して医者から供給する形を想定しパック型加工米を動物に投与して安全性試験を行っているそうです。
 
”日の丸”健康食品・・農水省のスギ花粉症緩和米
 

 農水省はスギ花粉の一部のタンパク質を作るよう遺伝子組換えをした米を「スギ花粉症緩和米」と称して育種し実用化を進めています。2001年には実験栽培に取り組み、2003年頃から「お米を食べて花粉症を防ぐ」といった新聞記事が出るようになりました。現在、パック型に加工して医者から供給する形を想定しパック型加工米を動物に投与して安全性試験を行っているそうです。

07-10_09.jpg

  スギ花粉のタンパク質から免疫寛容を誘導する部分だけを見つけ出し、7つあるそれを一つのタンパク質に再構成しているそうです。その再構成タンパク質を作る遺伝子を合成しイネ(キタアケ・道北38号)に組み込んだものです。パピラなどスギ花粉の健康食品を摂取すると、アレルゲンタンパク質そのものを摂取することになるが、この組換え米では再構成されたものを摂取することになり農水省らは安全性が高いとしています。

  まず効き目、マウスに食べさせた実験では免疫寛容が誘導されマウスに花粉を噴霧してもアレルギー反応が起きないことが確認されています。しかし、これを実際の治療であてはめれば、非花粉症患者(?)があらかじめこのコメを食べておけば花粉症になりにくい、という結果です。それに私たちの身体でも花粉が飛ぶ時季には、鼻や肺から食道に排出された花粉を無意識に食べて免疫寛容がおきてアレルギー反応が起きません。わざわざ食べる必要があるでしょうか?

  問題なのは、ある日突然、寛容が目や鼻で破綻することです。このように花粉症になってから治療的に摂取させても、マウスでは効果があるとしています。しかし、この花粉症マウスは、まず腸管内にスギ花粉の抗原タンパク質の一部を精製したものを反応増強剤と共に投与して免疫(アレルギー)反応を起こさせてから、鼻に再注入して花粉症にしています。(マウスにいくら花粉を浴びせても花粉症にはならない)人間とは花粉症のなり方が違います。こうした花粉症マウスで効果があっても、人間で同じように効き目があるとは思えません。

  この組換え米を食べて、パピラをとってショック反応を起こした和歌山の女性のように気付かぬうちに免疫寛容が破綻する危険性はないのでしょうか。まずこの再構成タンパク質が新たなアレルゲンとなってアレルギーを起こす可能性がありますが、その点は調査研究されていません。また、組換え米では、遺伝子操作の結果、腎臓病患者やコメ・アレルギー患者にとっては有害なタンパク質グルテリンが増えていることがわかっていますが、これも無視されています。

  和歌山の例では摂取量が問題でしたが、この組換え米はどれ位食べれば効果があり、どれ位食べると危険なのでしょうか?農水省は2003年当時は「健康機能性食品」として自由に生産、販売を目論んでいましたが、厚生労働省の反対(食品ではなく薬)で諦め、現在の医者から供給するルートに変更し安全性試験を行っています。それで分かったのは、腸管での免疫寛容の誘導に必要な再構成タンパク質の量は、マウスで1日当たり100マイクログラム以上でした。組換え米1粒に50マイクログラム、コメ1gに2.5mg、コメ1合で約500mg、100マイクログラムの約5000倍含まれています。マウスと人間の体重差を考えても、1合食べて5000倍では摂り過ぎではないでしょうか?

  農水省は、このほかにも、生活習慣病の2型糖尿病に効き目があるというインシュリン分泌促進作用を持たせた組換えイネ・米、内臓脂肪の蓄積を抑制する効き目があるという機能性共役脂肪酸を産出するようにした組換えイネ・米やナタネなどの開発を進めています。今の遺伝子組換えは生産者サイドのメリットが大きい。消費者へのメリットを訴えるので遺伝子組換えでも受け入れられやすいのではないかという理由からです。健康機能性作物と称し、食品として大々的な販売を目的に国費を投じて開発を進めています。このような”日の丸”健康食品には、健康食品としての問題点、医薬との境目が曖昧で、効果の有無や安全な摂取量などが不明などの問題があります。さらに、遺伝子組換えの危険性、例えばスギ花粉症緩和米で増えたコメ・アレルギー患者にとっては有害なタンパク質グルテリン、があります。

  つまり、遺伝子組換え作物・食品としての安全性評価と医薬品としての安全性評価の二段階が必要ですが、現状では安全性評価の仕組みすら整備されていません。薬をつくる植物の研究・開発は米国など世界各国で進んでいます。

  3月3日に米農務省は、抗菌作用のある人間のタンパク質ラクトフェリンやリゾチームをつくる人間の遺伝子を組み込んだコメの商業栽培を基本的に認めました。収穫したコメはその場ですりつぶして有用成分を抽出、ヨーグルトなどの健康食品への添加用や下痢止めの薬として利用する計画で、食品としては当面販売しないようです。米国は、食品としての安全性評価を先送りにして、とにかく実用栽培化を図るようです。

  こうした医薬系の遺伝子組換え作物の安全性評価の仕組みを作ることが急がれます。

2007年3月5日小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-10」の加筆再録

 

花粉症は治せる! 舌下免疫療法がわかる本

花粉症は治せる! 舌下免疫療法がわかる本

  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: Kindle版
 
花粉症は治せる!  舌下免疫療法がわかる本

花粉症は治せる! 舌下免疫療法がわかる本

  • 作者: 大久保 公裕
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/01/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

オメガ3脂肪酸の欠乏、ジャンクフードが暴力的犯罪行為を増やすー英米の研究 2006年 [サプリメント・健康食品]

2006年10月23日小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-43」の加筆再録

  先週10月17日の英国の高級紙「ガーディアン」に、人の攻撃的行動、犯罪において栄養の欠陥が中心的役割を演じている事を示唆する幾つかの調査や英国と米国の犯罪者での研究が紹介されました。研究者の一人は、「先進国社会での暴力の大流行は我々が何を食べるか、あるいは食べないかに関連しているかもしれない。ジャンクフードは、我々を病気にするだけではなく、狂わせ、悪行も働かせるかもしれない」と言っています。その栄養は多様なビタミン、ミネラル、必須脂肪酸のオメガ-3系脂肪酸(n-3系)です。  

油脂の分類 特徴 主な脂肪酸 代表的食べ物 代表的な油
飽和・一価不飽和系油 エネルギー源
細胞構成成分
パルミチン酸
オレイン酸など
  ラード油
オリーブ油
オメガ-6系油(n-6系) 体の成長に必須
リノール酸
γ-リノレン酸
バター、肉 紅花油
コーン油
ひまわり油
オメガ-3系油(n-3系) 脳・神経系に必要 α-リノレン酸
EPA、DHA
 海藻、葉菜、根菜、青魚、クルミ、大豆 シソ油
魚油

 

刑務所での摂取試験

  英国と米国の刑務所は満杯状態。定員オーバーも珍しくありません。狭い場所にすべてすし詰めにされ受刑者と受刑者、受刑者と刑務官との暴力、攻撃的行為が多く発生しています。それで、英国の刑務所で総合ビタミン剤、ミネラル、必須脂肪酸を摂らせて見ました。そうしたら彼らが獄中で犯す暴力的攻撃の数が37%減りました。

それらの栄養素を含まない偽薬を与えた受刑者は、相変わらずでした。また摂取試験がおわると元に戻ってしまいました。米国の研究は、オメガ3脂肪酸サプリメントの魚油のピルが攻撃的行動を奇跡的に改善しました。現在、オランダ政府が、こうした栄養剤で受刑者に同様な影響を与えるかどうか大規模な試験を行っています。

  英国の刑務所での試験を主導した監督官は、貧しい食事だけで犯罪という複雑な社会問題が説明できるとは誰も考えないが、今や、「食事と反社会的行動の間には直接的関連がある、悪い食事は悪い行動の原因になり、良い食事はそれを防ぐと絶対的に確信した」そうです。  

 ガーディアン紙 Delayed: the food study that could cut prison violence by 'up to 40%',Guardian,10.17
http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1924017,00.html

 教育改革で荒れた学校を建て直した?魚油

 英国では、学校が荒れています。サッチャー政権の推し進めた教育改革で、「全国統一学力テスト」と国の監査機関による「学校評価制度」、「学校選択制」などが導入されました。安倍首相が高く評価し、教育再生の鑑と考えている改革です。しかしその結果の一面は、義務教育修了資格を持たずに学校を去る子どもが約8%、英語の16歳試験の合格率は41%、怠学(truancy)は毎年100万人以上、学業態度や非行を理由にした期限付き放校処分10万人以上、退学処分1万人以上、さらには、退学処分された者による犯罪の増加など、様々の問題が教育の荒廃として顕れてきています。全国統一テスト(ナショナルテスト)の成績を公表することで学校間を競争させ、教育水準局の査察で学校を格付けした結果、学校が「勝ち組」と「負け組」に分かれ、成績優秀校の周辺には裕福な中産階級家庭が次々と引越してきて学校を独占する一方で、成績の悪い学校が、低所得者層や移民・難民家庭などが集まる地域に取り残されているそうです。地方教育局(教育委員会)の中には、域内の成績の悪い小学校に「6年生(ナショナルテストを受ける11歳児の学年)には一年間、テスト科目以外の授業はしないように」と指導したところもあるという。

  「失敗校」とランク付けられた学校は、「特別措置」下に入り、大量の教師が解雇・辞職し、さらには中央の教育水準局と地方教育局の監視・指導の下で再生計画を提出し、新たなスタッフを雇用するという大混乱状況に追い込まれるのだという。サッチャーを党首に仰いだ保守党でさせ「学校は生きた機関であり、[成績の悪い学校を]名指してさらし者にするとすれば、それは、その学校の子供たちに恐ろしいことを告げることであり、教師のこともまったく無視することです。それは事実上、彼らは敗残者だというに等しいのです。」と今になって批判しています。 

 こうした教育改革で敗残者とさらし者にされた学校、学童が荒れないはずがありません。こうした学校荒廃も一因になって、1997年の総選挙でサッチャー政権は退陣にさせられますが、一度荒れた学校は簡単には元には戻りません。

努力を重ねる校長の1人が、オメガ-3脂肪酸の欠乏が攻撃性と憂うつにはたす役割に関して知り、それ多く含む魚油を使った栄養剤を20週間生徒たちに摂らせてみました。暴れる生徒を拘束する回数が46%下がり、拘束されてから落ち着くのに要する時間が42%下がりました。この摂取試験に参加した全ての子供に、小さいが、しかし、顕著な改良がありました、彼らの慢性的な緊張状態が和らぎ「子供の人生を緩和するように思えました。」

ガーディアン紙
 Omega-3, junk food and the link between violence and what we eat,Guardian,10.17
http://www.guardian.co.uk/science/story/0,,1924153,00.html
'John was very aggressive. The change in him was marked',Guardian,10.17
http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1923949,00.html 

 生化学的なメカニズム
 
06-43professor06_i01.gif

 米国の研究者Hibbelnは、脳の生化学と脳細胞膜の生物理学を理解しているならば予想できる結果だといっています。

オメガ3系脂肪酸(n-3系)は必須脂肪酸と言われています。脂肪は脂肪酸とグリセリンが結合して出来ています。人間を含めて動物は、自身の生理代謝過程に必須であっても、自身で合成できない脂肪酸を幾種類か持っています。そのため、多くの動物がそうした脂肪酸を合成できる植物、菌類などを食物として摂取したり、これらを食べて含んでいる動物を食べて必要を満たしています。欧米では必須脂肪酸を分子構造で区別して、オメガ-6、オメガ-3と呼びます。『ω・オメガ』とはギリシャ語アルファベットの最後の文字ですから、オメガ-3とは脂肪酸の端から数えて3番目の炭素に2重結合があるという意味です。リノール酸の系列がオメガ-6で、アルファ・リノレン酸系列の脂肪酸がオメガ-3です。日本ではn-6系、n-3系と言います。

脳は脂肪を60%(乾重量)含み、それにはオメガ-3系列の脂肪酸が多く存在しています。脳は神経細胞の塊ですが、その神経細胞の細胞膜にこのオメガ-3系列の脂肪酸が多く含まれています。体内のオメガ-3系列とオメガ-6系列のバランスが崩れ、オメガ-3系列の脂肪酸が不足になると、オメガ-3系列の脂肪酸が少ない細胞膜が作られます。そうした神経細胞では、機能に変化が見られます。神経の末端から神経伝達物質が分泌され、それが他の神経に結合して神経細胞間のコミュニケーションが行われています。それに変化が見られます。動物実験研究で、オメガ-3系脂肪酸が親と仔の2世代にわたって与えられなかった仔は効果的に伝達物質のドーパミンとセロトニンを神経分泌できなくなることが知られています。

06-43hosyuu-s.jpg

神経伝達物質システムが効率的に動作しないと何が起こるかを調べた多くの研究から、セロトニンの低レベルが自殺、憂うつ、および激しくて衝動的なふるまいの増加を招くことが知られています。ドーパミンは脳で報酬(快状態)系の過程に関わり、学習の強化因子として働いています。私たちは周囲の環境にに適応し、学習しながら、生活するすべを会得していきます。言ってみれば人生は学習の連続です。ドーパミンを使う神経はニューロンは大脳基底核とそれに指令を与える大脳皮質で働いています。そこでは技能を磨いたり、次第に行動を習慣化したり、そのような個々の行動をどのような順番に組み合わせて行動を起こすかを企画したり、戦略を練ったりする働きをしています。

幼子の成長を顧みれば、駄々をこねたりする攻撃的行動で不快な状態を解決しようと行動から、言葉を使ったりするなど攻撃的行動に頼らずに問題(不快状態)を解決する行動を学習していきます。攻撃的行動をとると罰則が与えられ不快になるからやらない方が快適という報酬(快状態)系が関わる学習と言葉など非攻撃的行動で問題(不快状態)を解決し快状態になれる学習が必要です。ドーパミンが低レベルだと集中力や注意力も失われ、無力感、無気力になったりします。また、次第に人と交わるのも嫌になり、社会から離れていきます。

米国の研究者Hibbelnは 「セロトニンのレベルが低いなら、衝動を抑えることができないか、彼らの感情的な反応を規制することができません。同様に、ドーパミンが低レベルなら報酬を経験することができないで、彼らが賞罰から学ぶことができないということです。」と指摘しています。彼は、オメガ-6系の消費が増え、オメガ-3系列の脂肪酸が不足になっているとも指摘します。

  米国では、2000年にはオメガ-6系の油脂が摂取カロリーの20%。イギリスでは1960年代前半に1%、2000年およそ5%でした。彼と彼の米国国立衛生研究所 (NIH)の同僚は世界38カ国のオメガ-6系の消費と殺人発生率の相関関係を調べ不気味なほど同調している事を発見しました。

魚を食べるのでオメガ-3系の摂取が多い日本などでは殺人とうつ病が低率を保っていると指摘しています。これらのオメガ-6系は主にテイクアウトや出来合いの惣菜などのスナック、チップ、ビスケット、アイスクリームとマーガリンから摂取されています。それで、こうした「ジャンクフードは、我々を病気にするだけではなく、狂わせ、悪行も働かせるかもしれない」と指摘しています。また動物実験から脳が急成長する子宮と人生の最初の5年と思春期でのオメガ-3系列とオメガ-6系列のバランスの崩れ、オメガ-3系列の脂肪酸の不足が永久的に影響するのでは?とも指摘しています。

どう摂取すればよいのか?

この見解を多くの研究者が受け入れ同意しているわけではありません。亜鉛やBビタミンなどは脂肪の代謝に不可欠なので、これらの欠乏が重要な役割を果たしているかもしれません。植物油を固形化する水素添加で作り出されるトランス脂肪酸は、胎児と幼児の脂肪の代謝・合成を阻害しているようなので、そちらを問題視する専門家も多くいます。

これまで解明された食事と攻撃性との生化学と生物物理学的メカニズムは、オメガ-3系脂肪酸の関わりを強く示唆しますが、十分に完全にわかっていません。調査、研究が進められています。疫学的データも、英国の刑務所での試験は信頼性の高い二重盲検法ですが、米国の例や英国の学校での摂取試験は投与したらこうなったという予備試験レベルです。もっと大人数での信頼性の高い疫学的栄養介入試験データを積み重ねる必要があります。

06-43images4.jpg

一部のサプリメント会社はオメガ-3系脂肪酸を含んだサプリメントの摂取で「子供の頭が良くなる、問題行動が減少する」と宣伝しています。しかしそういった薬のような効果の確証はありません。私は、オメガ-3系脂肪酸を摂取させれば子供の頭が良くなる、問題行動が減少するという直線的で短絡的な見方で子供に接する事が問題に思えます。貧しい食事だけで犯罪という複雑な社会問題が説明できないように、オメガ-3系欠乏の食事だけでこうした子供たちを理解できません。例えば学校・教育荒廃を招いたサッチャー政権下の教育改革をお手本に、安部政権が打ち出そうとしている日本の教育改革は子供らにどう影響するでしょうか? 

06-43images2.jpg

オメガ3系脂肪酸は必須脂肪酸ですから、オメガ-3系列とオメガ-6系列(これも必須脂肪酸)のバランスの崩れ、オメガ-3系列の脂肪酸の欠乏が身体の変調、特に脳の構造に変調をきたすであろうと言えます。魚を食べる日本の食生活は、オメガ-3系列の摂取が英米に比べ多く、欧米の摂取基準を上回っています。英米を他山の石に、ジャンクフードなどからのオメガ-6系列の過剰な摂取に注意し、海藻、葉菜、根菜、青魚、ナッツ類などからのオメガ-3系列摂取に心がける。青魚などが食べれない方や調査では摂取量が少ない外食の多い方はオメガ-3系列の多いエゴマ油、亜麻仁(あまに・フラックス)油を食生活に取り入れるなどで十分ではないでしょうか。オメガ-3は中性脂肪を下げ、血圧を安定させて血管を健康にしてくれます。血液を固まりにくくする働きがあるので、心臓病の多いアメリカではサプリメントとして取ることがあります。ただし、多量に取ると人によっては出血が多くなることが起り得ます。

日本人の脂質摂取基準

独立行政法人国立健康・栄養研究所 江崎 治さん

日本人の平均的な摂取量をみると、n-3系(オメガ-3系)脂肪酸のうち、α-リノレン酸が60%、魚由来のEPA, DHA, DPAが40%摂取されています。α-リノレン酸は、しそ油、大豆油、菜種油に多く含まれています。オメガ-3系脂肪酸摂取の下限オメガ-3系脂肪酸も必須脂肪酸であるため目安量の設定が必要となります。日本人の平均的な摂取量の中央値を目安量としています。

  オメガ-3系脂肪酸摂取量が増加すると、虚血性心疾患の罹患率が少なくなることが予想されますが、平均的な日本人のオメガ-3系脂肪酸摂取量は、欧米人で虚血性心疾患の罹患率が最も少くなる最大摂取量より多く、このため、18歳以上男女のオメガ-3系脂肪酸摂取量の中央値を生活習慣病などの疾病罹患率や疾病による死亡率を低くすることができると考えられる摂取量=目標量の下限値としています。

この目標量(下限)は、目安量と同じ値になることから、18歳以上のオメガ-3系脂肪酸食事摂取基準は、目安量として活用しないで、目標量(下限)として用いることとしています。

 06-43hy04.gif

オメガ-3系脂肪酸摂取の上限

  この設定に当たって、出血時間、LDL-コレステロール、血糖値、免疫能、過酸化脂質、PAI-1値のそれぞれに対するオメガ-3系脂肪酸の影響について検討を行ったところ、出血時間の延長と血中LDL-コレステロール値増加の危険があることが推定されました。しかし、人における疾病罹患に関する根拠(エビデンス)は十分ではないことから、目標量(上限)は設定されていません。

2005年版「日本人の脂質摂取基準」の読み方 http://www.oil.or.jp/info/html/43/index.html 

2006年10月23日小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-43」の加筆再録

 


コエンザイムQ10の安全性論議から、医者がサプリを売る時代の自衛策は? 2006年 [サプリメント・健康食品]

2006年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-13」の加筆再録

  先日、15日に食品安全委員会は「コエンザイムQ10」の安全性、摂取量について審議しました。健康食品として人気の「コエンザイムQ10」、例えばサントリーは4に、コエンザイムQ10を配合したお酒を新発売とか。摂取して腹痛や下痢などの症状が起きたという 報告が厚生労働省に寄せられたため、同省が食品安全委に安全性評価を昨年夏に諮問したのです。諮問に先立ち厚労省では、日本健康・栄養食品協会に対して、コエンザイムQ10含有食品に対する基準設定を依頼。同協会から1日の摂取目安量を300mg以下と設定したいとする中間報告を待って、食品安全委員会に評価を依頼しました。 

06-13images.jpg

エンザイムが酵素で、その働きを補うもの(Co-)として見出されたのが補酵素・コエンザイムです。ですから補酵素Q10とも呼ばれています。この補酵素は1957年、フレデリック・クレインによって発見され、1978年にピーターD.ミッチェルがその機能を明らかにしてノーベル賞を受賞しました。

補酵素Qとは、酵素が正常に作用するために不可欠なもので、自然界に存在する一群の化合物を言い、ヒトではQ10が特に必要な形態で、「ユビキノン」とも呼ばれています。コエンザイムQ10は脂溶性で、生体膜中で活性を発現し、水に溶けないため、血液より組織中に存在しています。高濃度部位は心臓、肝臓、腎臓、および膵臓で、低い部位は肺です。


薬としての処方量の10倍でも安全??

   厚労省によれば国内で販売されているコエンザイムQ10サプリメント(いわゆる健康食品)には、1日推奨摂取量が30mgを超える製品が8割以上を占め、60mgのものが最も多いのだそうです。

06-13_a.jpg

コエンザイムQ10は日清製粉(株)が1967年に世界初の量産化技術を確立。1974年から心不全治療薬としてノイキノンという内服薬で登場しました。薬としての処方量が一日で30mgですから、サプリメントでの上限300mgというのはどうかなと思います。

  業者が集まっている日本健康・栄養食品協会が300mg以下というのも、販売に支障は出ない数字という穿った見方もあります。ノイキノンという内服薬の錠剤は10mgで薬価が23円。これがサプリメントとして売られると50mgのコエンザイムを含有した錠剤が30錠で6000円。一錠当たり200円で10mg当たりでは40円となります。それほど高い感じはしないかもしれませんが、「心不全の治療法に対しては・・推奨できない」(米国心臓学会/米国心臓協会・心不全治療ガイドライン2005)というわけで、売れない薬であるというところがミソです。「笑いが止まらないということはまさにこのこと」という医者もいらしゃいます。

  医薬品として認可されていますから、毒性(副作用)や摂取量を明らかにする動物や人間での検査、試験データは十分にあるはずです。しかし17日の食品安全委員会の議論は、「科学的データが不足しているため、摂取の上限値などを示す健康影響評価を行うことは困難」(報告案)にまとまりした。  

 医者がサプリメントを売る時代

06-13_c.jpg
  サプリメントが大流行です。薬局では店頭にさまざまな薬効を謳うサプリメントが並んでいます。今では大衆薬の売れ行きは低下し、サプリメントに切り替える製薬メーカーが急増しているのだそうです。元々アメリカでは開業医がサプリメントを販売しても良いのだそうで、売り上げの伸びない開業医が手を出し、今ではインターネットなどで大量にサプリメントが売られているそうです。日本でも2月にサプリメント大手のファンケルが、京都府立医科大から生まれたベンチャー企業と組み、医療機関を通じたサプリメント販売を始めています。その効き目や安全性はどう見極めればよいのでしょうか

一つは、理屈に合わない物は疑わしい。人気のヒアルロン酸。サメから抽出したヒアルロン酸を食べればヒアルロン酸は増えるのでしょうか。もし外から取り入れた蛋白質がそのまま体に入ってしまえば、豚肉を食べ続ければ豚に、牛丼やハンバーガーを食べ続ければ牛になってしまいます。一方皮膚にヒアルロン酸を塗れば浸透するのでしょうか。もしそれほど皮膚が巨大な蛋白分子を透過させるのであれば洗顔や入浴で逆にヒアルロン酸も流れていってしまいます。温泉やプールは中華の白湯スープの状態になってしまうでしょう。皮膚の働きが正常であればそのようなことは起きません。

  実際にヒアルロン酸を取ったら関節痛が良くなった、肌の張りが戻ったという体験談が言われますが、そのほとんどはプラセーボ(偽薬)効果、「イワシの頭も信心」効果です。騙す人間、騙されたい人間がいる限りそのような体験談はうまれます。

 「話題性より確実性
 

 国立がんセンターの予防研究部長、津金昌一郎医師は提言しています。

 『健康に関する情報が、新聞・テレビ・雑誌など洋々なメディアを通じて、毎日のように私たちの目や耳に入ってくるようになった。 ニュースとして流れる医学情報の大半は新しい発見だ。話題性はあるが、確実性の点から見るとその後の追試が必要な段階である。

  このタイプの情報は、その後の追試で確認されないことも多い。新発見が他の研究でも確認されたかどうかの情報の方が実生活への応用には役に立つ。

   「ある食べ物がある病気を予防した」という内容でも、様々な研究対象や方法が用いられている。ヒト細胞を使った試験管内実験や動物実験の場合もあるが、こうした実験結果がそのまま人間にもあてはまるわけではない。

  人間集団を対象とした疫学研究の方法では、無作為化比較試験が最も信頼性が高い。

 次にコホート研究、(コホート(cohort)は元来古代ローマ軍の一連隊をさす言葉、曝露・摂取した集団(コホート)と曝露していない集団の2つの集団の間で、例えば10年間の死亡数で、曝露された人々の死亡率を曝露されていない人々のそれと 比較するような研究方法)

06-13_e.jpg 

 症例対照研究、地域相関研究と続く。同じ方法でも研究の質が異なる場合もある。対象も欧米人だったり日本人だったりする。

  一つの研究結果だけを根拠に予防のための行動をとるのは危険だ。われわれは、疫学研究の専門家として、一つの研究からの知見を科学論文として発表するが、予防医学の専門家の立場からは、自分たちの研究を含めた複数の研究を総括して予防情報の確からしさを評価し、情報提供する作業も行っている。

  例えば「いくつかの疫学研究で予防効果が一致しており、その中には複数のコホート研究、できれば無作為化比較試験かなまれていて、その作用メカニズムも生物学的に説明できる場合に限り、予防効果を確実」と評価する。現段階で予防効果が確実と判断されたものは、まだそう多いわけでない。』

 06-13_d.jpg

  なかなか、そうした情報は入手しにくいのですが、(独立行政法人)国立健康・栄養研究所のhttp://hfnet.nih.go.jp/ の「健康食品」の安全性・有効性情報 が役に立ちます。こうした処から情報を得て、ご自分で考えて下さい。

2006年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-13」の加筆再録

食べ物とがん~がんを遠ざける食生活~ (健康とくすりシリーズ)

食べ物とがん~がんを遠ざける食生活~ (健康とくすりシリーズ)

  • 作者: 津金 昌一郎
  • 出版社/メーカー: 薬事日報社
  • 発売日: 2010/02/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 


抗がん剤はがん予防につかえるか? アガリスク回収から読み解く 2006年 [サプリメント・健康食品]

2006年小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-06」の加筆再録

  厚生労働省は2006年2月13日、健康食品「アガリクス」を原材料とする「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒(かりゅう)」に発がんを促進する作用(プロモーション作用)が認められたとして、自主的な販売停止と回収を要請し、食品安全委員会に安全性、販売停止の可否を諮問しました。販売していたキリンウェルフーズは同日、顆粒だけでなく、全アガリクス商品の販売の中止、回収を始めました。厚生労働省には13日だけで3000件あまりの問合せがあったそうです。 

06-06rawagaricus1.jpg

 アガリクスはカワリハラタケ(ヒメマツタケ)と呼ばれるブラジル原産のキノコ。現在、30種栽培されているそうです。がんの予防効果があるとされ、健康食品として広く販売されています。アガリクスが肝障害を引き起こす疑いが学術誌で報告され、国立医薬品食品衛生研究所で三社の製品の毒性を調べていました。残る二社の製品から発がん促進作用は未確認ですが、厚労省は食品安全委に、念のため安全性に関する意見を諮問を行いました。

  がんの予防効果があると宣伝されていた物が、実は発ガンを促進するとはとんでもない話です。がん治療の現場では、様々な抗がん剤ががん細胞をやっつけるために使われています。脱毛などの副作用がありますが、がん細胞をやっつける効き目は保証書付です。不快な副作用が顕れないよう少量を摂取・投与すれば、がん予防ができるのとは思いませんか。

抗がん剤を取り扱う医療従事者の健康リスク

  抗がん剤は、通常は点滴の輸液の中に調製されて使用されます。この準備、投与や廃棄の際に、取り扱う薬剤師や看護師さんは、抗がん剤を極少量ですが摂取します。エアロゾル化、気化した薬剤を吸入する、しぶきやはねによって薬剤が皮膚や目に付着する、薬剤に汚染された手指から食物などに付着して薬剤を経口摂取するといった経路で摂取します。その量は、患者に治療のために投与される量の約千分の一、0.1%程度といわれています。 

06-06_02.jpg

 1979 年にFalck らが、がん病棟に勤務する看護師の尿から遺伝子に変異を引き起こす変異原性物質が検出されたと報告しました。これを皮切りに、80 年には、抗がん剤を取り扱う看護師に染色体異常が増加している。81 年には、抗がん剤を長時間取り扱う看護師が短時間しか取り扱わない看護師、事務職員と比較して染色体断裂や姉妹染色分体の交換頻度が高かったと報告されています。Falckめらの報告は、各国で追試が行われました。遺伝子に変異を引き起こす変異原性物質が検出されたという結果もあれば、いやいや検出されなかったという報告もありました。

  最終的な結論はでていませんが、抗がん剤を取り扱う看護師らの健康を危惧するに十分な報告がでたため、欧米で安全に扱うためのガイドラインが作成されています。1986年には米国労働省安全衛生局・OSHAが、他にもオーストラリア、カナダ、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、イギリスでも1980ま

年代から1990 年にかけて策定されています。そして、そのガイドラインを守る法的義務が課せられています。 

 そのガイドラインでは、点滴の輸液の中に調製などは周辺から隔離された安全キャビネットでおこなったり、看護師さんらは手袋、マスク、ゴーグルなどを着用して扱うことを求めています。日本も1991年に日本薬剤師会が策定していますが、ほとんどの守られていません。図の様な姿で抗がん剤を扱う看護師さんを見たことがありますか??国、厚生労働省が、なんの強制力も付与していないからです。

 発ガンの仕組みと抗がん剤

 なぜ抗がん剤で、極微量でも遺伝子や染色体に異常が起きるのでしょうか。

  発がんの過程はいくつかのステップを踏んで、多段階的に進行していると考えられています。まず遺伝子のDNAが化学物質や放射線などによって、また細胞分裂の際の複製ミスでDNA損傷を受けます。細胞にはDNA損傷を修復する機能が働き出し、修復を試みます。修復に失敗し、引き起こされたDNA損傷が突然変異として遺伝子に固定されることがあります。そして、DNA損傷とそれの当然変異での固定化が腫瘍発生に関与する遺伝子に及ぶと細胞ががん細胞に変身します。

06-06_03.gifガン細胞では最低7~8の遺伝子が異常を起こしているそうです。この最初のステップをイニシエーション(Initiation)といい、イニシエーションを起こす物質をイニシエーターと呼びます。

  ガンを引き起こす物質には、DNAを傷つけ、遺伝子に異常をおこす性質があります。その遺伝子に変異を引き起こす性質を変異原性と言います。変異原性があっても、もたらすDNA損傷が細胞の修復機能で簡単に修復できる程度なら、問題はありません。イニシエーターにはなりません。ただ修復機能の強さは人それぞれですので、変異原性物質は要注意です。

  がん化した細胞は、自ら細胞死(アトポーシス)に導く働きや、キラーT細胞という免疫細胞を呼び寄せてその働きで死んでいく防御機能が働きます。アトポーシスを不活性化したりして、この防御を掻い潜ってがん細胞が増殖する段階、異常増殖により腫瘍が顕在化する段階をプロモーションといい、これに関わり促進するものをプロモーターと呼びます。一部のアガリスクは、このプロモーターであったわけです。アガリスクそれ自身が発がんを引き起こすものではなく、他の発がん物質による発がん作用を促進する作用を持っていたわけです。

  発がん性をDNA損傷でとらえれば、発癌物質はイニシエーターでプロモーターは入りません。しかし、ガン腫瘍形成でみれば、イニシエーターもプロモーターも発癌物質です。また癌に対する物質、薬物の作用は極めて多彩で、ある臓器では制癌作用を示すものが他の臓器では発癌性があったり、同一臓器でもイニシエーション期とプロモーション期で相反する作用を示す場合があります。それで、通常は発がん性、発癌物質とはイニシエーターとプロモーターの両方をいいます。

 抗がん剤は発癌物質だから効く

   多くの抗がん剤は国際癌研究機関(IARC)によって、発癌物質とされています。ヒトに対する発がん性ありと認められた第1 群やヒトに対する発がん性の可能性の高い第2 群に分類されています。
抗がん剤は、DNAを損傷したり、染色体を損傷したり、発がん性の細胞毒性を持っています。正常な細胞にもがん細胞にも同じ作用を及ぼします。がん細胞は、元々損傷している細胞です。その損傷がさらに酷くなり、アトポーシス(細胞自死)の不活性化がはずれ自死します。キラーT細胞を呼び寄せて死んでしまいます。正常細胞も同じように損傷します。それで例えば毛根細胞がアトポーシスを起こして死んでしまい脱毛が起きたりします。中には、損傷を修復してしまう正常細胞もありますし、がん化してしまう細胞も出ます。これが、抗がん剤の多くが、発癌物質である理由です。
 

 がん患者はすでにガン腫瘍がありますから抗がん剤=発癌物質で新たなガン細胞ができ2次発ガンしてもその不利益より、治療対象のガン腫瘍が消失しての延命効果の利益が大きいといえます。しかし、ガン腫瘍のない人には何の利益もありません。

細胞毒性によるDNAや染色体の損傷、発ガン、催奇形性という不利益だけです。様々なエキス剤、健康食品ががんに効く効果をうたっています。それが、本当にそのような効果があるのなら、少なからぬ部分が細胞毒性・発がん性を有しています。それら細胞毒性のある物質”食物”を長期にわたって摂取すれば何が起こるかは、ここまで読まれた方は想像がつくでしょう。

06-06_c.jpg 

  抗がん剤を取り扱う看護師などには治療のために投与される量の約千分の一、0.1%程度でさえ、DNAや染色体の損傷がみられます。Valanis らは、妊娠前、もしくは妊娠期間中に、母親、もしくは父親が抗がん剤を取り扱っていた曝露群と、抗がん剤を取り扱っていない非曝露群の、自然流産と死産の出現率を比較して、母親の妊娠期間中の抗がん剤曝露に関しては、自然流産のリスクは1.5倍、自然流産と死産の複合リスクは1.4 倍、父親が曝露を受けたことによる妻の妊娠への影響に関しては、増加傾向が認められたと報告しています。 

 抗がん剤を取り扱う医療従事者の健康リスク
http://joh.sanei.or.jp/pdf/J47/J47_5_01.pdf
http://sc.chat-shuffle.net/paper/uid:110004045975

食品を商う扱う者の責任とは

  厚生労働省は、今回のアガリスクの件で「アガリクスは、『抗がん効果がある』、『免疫力を高める』などといわれていますが、一般の食品として販売されており、医薬品等とは異なり効能効果を標榜することはできず、また、国が事前に審査を行う仕組みではないことから、厚生労働省では、ヒトに対する有効性について確認しておりません。・・食品関係事業者は、自らの責任において、販売する食品の安全性を確保する必要があります。」としています。

  販売する食品の安全性を確保するのは当然ですから、私は、虹屋はアガリスクのような安全性に疑問を持つ物は扱っていません。しかしキリンビールは子会社キリンウェルフーズで販売していました。学会誌で疑いが指摘されても試験しなかったのです。「(米国産牛肉のBSE安全性に)疑問があるが、(輸入)ルールが決まったら守るべき」と大手外食産業が公言する業界です。疑問があるなら質して販売する食品の安全性を確保する必要はないのかね・・吉◎家さん。

  国が効能を審査する健康食品、特定保健用食品(トクホ)。一番人気は花王のエコナ・クッキングオイルですが、エコナには発ガン性(プロモーション作用)がある疑いが指摘され、花王は認可後に追加試験を命じられ実施中です。

2006年3月小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-06」の加筆再録

 

看護師だからできる抗がん剤曝露対策

看護師だからできる抗がん剤曝露対策

  • 作者: 照井健太郎
  • 出版社/メーカー: 日総研出版
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本

 


三年番茶の由来  2011年 [サプリメント・健康食品]

2011年1月小針店で印刷・配布した「畑の便り№11-05」の加筆再録

 昔、ある村で中国から渡来した僧が、村人のために寒中、野生の茶の木を伐採されました。太い枝のところはナタで割って、焙じたのち茶つぼに入れ、口を和紙でふさいで紐で結わえました。そして納屋や物置の上に三年以上放置し、順に使いました。これが三年番茶の由来だとされています。

茶壷に入れて3年以上放置・・後熟(こうじゅく)

 茶道では「「口切(くちきり)」「炉開き」という大切な茶事があります。毎年、初冬の11月ごろに行われ、この日をもって、茶道においては、新しい年がはじまり「茶の正月」と呼ばれます。
抹茶が大好きな徳川家康は、静岡の駿府の大日峠など3ヵ所にてん茶(抹茶にひく前のお茶)を貯蔵する氷室(氷で冷やした倉庫)=お茶壷屋敷をおいて、毎年お彼岸のあと、11月ごろに山から降ろしてきたそうです。そのお城に降ろしてくる行事が遊び歌(ずいずいずっころばし)で知られる「お茶壷道中」で、最初に殿様がお茶壷の「封切り」をしました。それで、秋になってはじめて飲むその年のお茶を「封切り茶」と言います。
なぜ、わざわざ貯蔵して秋に抹茶を飲んだ、飲むのか?それはもちろん、秋に飲んだ方がおいしいと思った、思うからです。温度管理をきちんとしたら、色と香りは別にして味は抜群だそうです。新茶特有の新鮮香(若葉の香)に代わって、後熟香(すずらん・バラ・果実のような甘い芳香)が強くなります。味は旨みと甘みを伴ったコク味が生じ、角の取れた深みのある味に変化するのだそうです。この初夏に摘まれた新茶が茶壷で保管中におこす変化を、茶業界では後熟(こうじゅく)といいます。 

 11-05-kutikiri.jpg11-05-kutikiri-2.jpg

中国茶の黒茶は、麹菌により数ヶ月以上発酵させますが、これはそうではありません。茶葉中にある酵素が働き(お茶の発酵)お茶が褐色になるようにしたお茶が紅茶です。緑茶は、この酵素をお茶の葉を加熱して働きを止めています。ですから、どういう仕組み、原因で後熟が起きるのかは分かっていませんが、とにかく美味しくなります。今では、低温保管で新鮮な状態を保つ技術が進んだために、後熟したお茶はなくなりました。その変わりに登場したのが深蒸し茶だそうです。蒸しを深くし、製茶の段階で後熟したような風味を引き出すのです。

 「焙じたのち茶つぼに入れ、三年以上放置」という由来から、三年番茶は後熟させたお茶です。

 4番茶(秋冬番茶)・・冬に摘んだお茶

  お茶は新芽で作ります。栽培地の気候によって違いがありますが、概ね年4回の新芽の伸びる時期があります。

・4月~5月にかけて摘採製造されるお茶を1番茶(新茶)

・6月に摘採製造される2番茶

・7月~8月にかけて摘採製造される3番茶

・9月~10月にかけて摘採製造される4番茶(秋冬番茶)

その中でも、柔らかな新芽でなく、硬化が進んだ茶葉(コワ葉)や収穫した後、遅れて伸びた茶葉(遅れ芽)を使ったお茶を特に番茶と区別するようです。3番茶、4番茶(秋冬番茶)は、夏の太陽を浴びて丈夫に硬くなっている葉が多いので、番茶になりやすい。 

11-05_aki.jpg11-05_haru.jpg

 番茶はプロビタミンC、体内でビタミンCに変わる成分が含まれていて、これが熱に強く、ぐつぐつ炊いても分解しません。ビタミンC源として最適です。また、血糖降下作用のあるといわれるポリサッカライドを多く含みます。この物質、富山医科薬科大学の動物実験で効果が見出され、秋冬番茶に多く含まれています。これは熱に弱いので、水出し茶で多く摂取できます。

  お茶の渋み成分のカテキンは、癌に対抗する作用や血中コレステロール、血圧、血糖値を下げる作用、体脂肪を低減する効果、抗菌作用などがあるといわれます。この成分は日をよく浴び、成長した茶葉に多い。つまり番茶にする硬化が進んだ茶葉(コワ葉)や茎に多く含まれています。

 「寒中に採った茎も含まれた野生の茶」という三年番茶の由来は、このような様々な健康的な効果・効能をもった秋冬に摘採された番茶ということです。

お茶の分類

人工的な日陰で栽培* 碾茶(てんちゃ) 遮光期間30日。挽いて抹茶にする。蒸し機(高温蒸気で15~20秒)→散茶機(高さ5~6m 、一枚毎バラバラになるよう露を切る)→乾燥炉(180度の高温で乾燥)→荒碾茶→仕上げ(切断、選別・乾燥)→ 碾茶→挽く→抹茶
玉露 遮光期間20日。1835年失敗した碾茶を販売したところ好評で普及といわれる。製造法は煎 茶とほぼ同じ。新茶より熟成した方がよいという考え方があり、何年産などを表示したものも。
かぶせ茶 遮光期間茶摘み前3~10日。煎茶として販売。7~10日、長めにかぶせた茶は玉露としても 販売。
日光の下で栽培 釜煎り茶 発酵酵素の働きを止める方法として煎茶の蒸しでなく、釜で炒る方法を採用したお茶。中 国など世界の緑茶生産の80%は釜煎り茶だが、日本では反主流。
煎茶(普通蒸し) 南北が原則のかまぼこ型の畝で栽培。
(機械荒茶製法)生葉コンテナー→蒸し機→冷却機→葉打ち機(送風で水切り)→粗揉機(焙炉上で 回転揉み)→揉捻機(力を入れ葉の中心の水分を押し出して乾かす)→中揉機(玉解き熱風乾燥)→精揉機(尖っ た形に整えながら乾かす)→乾燥機
深蒸し煎茶 標準蒸し時間30秒に対して60~120秒くらい蒸す煎茶。
蒸し製玉緑茶(蒸しグリ茶) 煎茶の簡易型。戦前ソ連南部イスラム圏へ輸出しようとして中国産釜煎り茶に似せた煎茶 として開発されたもの。精揉工程をなくし仕上げ乾燥で整形。
番茶 最初に摘採する4月下旬~5月上旬の一番茶でなく、6月中旬に摘む二番茶以後のかたい茶 葉で製茶

*覆い下(おおいした)茶園でつくるお茶(化学繊維の寒冷紗(かんれいしゃ)による遮光 が主流、従来は葦簾(よしず)と藁(わら)の本簾(ほんず)作り)。日光を遮ると光合成のため不足する日光を 有効に使おうとして、茶樹が葉緑素を増やす。また、日光を浴びると茶樹が合成するアミノ酸からカテキンが生ま れるが、覆い下茶園では日光が余り届かないのでアミノ酸が多く含まれたお茶となる。

副産物茶 茎茶、芽茶、粉茶
加工茶 抹茶 12C末栄西が伝えた古くからのお茶であり中国で滅びた後、日本だけで受け継がれた。
ほうじ茶 大型の番茶を強火で狐色になるまで炒って製造。色は茶色だが発酵を止めているので緑茶 の仲間。茎茶を混ぜて、あるいは茎茶だけ焙じるものもある。
玄米茶 煎茶や番茶をベースに炒ったお米やはぜたもち米(白花)を混ぜたお茶。茎茶、抹茶を加 えたものも。
お茶は世界をかけめぐる

お茶は世界をかけめぐる

  • 作者: 高宇 政光
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 単行本

2011年1月小針店で印刷・配布した「畑の便り№11-05」の加筆再録

虹屋小針店で扱っていた三年番茶

  虹屋の三年番茶の「無双番茶」は、静岡県、滋賀県、三重県、奈良県などの生産農家が十分に成熟した茎と葉を9月から10月に摘採し、選別して蒸して揉んで乾燥させ「荒茶」にして、仕上げ加工をする近江製茶に出荷します。

  近江製茶では、木箱に入れて半年から1年寝かせて、後熟させます。近江製茶は、明治4年創業の近江茶の老舗。近江茶は、「宇治茶」として販売されてきました。その経験、伝統で培った目で、風味がまろやかになったものを選び出します。そして茎が7割以上になるように葉と茎を合組(ブレンド)して、培った技能で鉄釜で丁重に焙じます。「一般の焙茶は2~3分で仕上げますが、無双番茶はじっくり15分焙じます。茎が多い分、芯まで焙煎したいので」(川崎社長)

このようにして、どんな食事にも相性の良い、毎日飲み続けても飽きがこない無双番茶になります。 

ムソー 有機無双番茶(三年番茶)150g (MUSO)

ムソー 有機無双番茶(三年番茶)150g (MUSO)

  • 出版社/メーカー: ムソー
  • メディア: その他
ムソー 無双番茶 450g (徳用) 国産有機栽培 無双番茶 ティーバッグ 5g*40包
 

茶カテキンでダイエットはできるのだろうか!? トクホ② 2005年 [サプリメント・健康食品]

2005年3月8日小針店で印刷・配布した「畑の便り№05-11」の加筆再録

  今日、様々なハーブテーや健康茶が飲まれていますが、お茶、緑茶もお茶が日本に入ってきた頃は「飲み物」というよりは「薬」でした。それが、江戸時代を経て、お茶は当たり前のように身近かにある「日常の飲み物」に変わりました。そして、今日また「薬としての飲み物」として注目されいます。

  抗癌などいわれていますが、茶カテキンのダイエット効果が最もはやっています。「体脂肪が気になる方に適しています。」という特定保健用食品へルシア緑茶で、本当にやせるのでしょうか?

お茶、ハーブティー、健康茶

  今日、様々なハーブテーや健康茶が飲まれていますが、ハーブとは西洋の薬草や香草(木の葉や、樹皮も含む)の総称で、ハーブを乾燥して茶のように煎出して飲むものが、ハーブティー。日本のハーブの「ドクダミ茶」「ハトムギ茶」「ゲンノショウコ茶」などが健康茶。古来、生活が安定すると最も気になるのが健康です。
江戸時代には健康法-養生に人々の関心が向き、古文書などには家々の庭の片隅にこうした日本のハーブ・薬草や薬木を植えていた様や家々で融通しあう様、領主が他国から買っている薬草を領地内で栽培を奨励する様、村人や医師が山野で薬草を探す様が書かれています。柏崎の米山の山頂には、薬師神社がありますが、山頂付近に自生していた薬草を参詣者に分け与え信仰を集めていました。

tokuho_images.jpg

  お茶、緑茶もお茶が日本に入ってきた頃は「飲み物」というよりは「薬」でした。中国・宋からお茶を持ち帰った栄西は、鎌倉幕府の第3代将軍、源実朝が体調をくずしていた時にお茶を進呈して、すっかり良くなったという話が伝えられています。当時、禅宗の僧侶は修行の妨げである眠気を防ぐために流行したという話も伝わっています。伝来当初、お茶は薬でした。それが、江戸時代を経て、お茶は当たり前のように身近かにある「日常の飲み物」に変わりました。そして、今日また「薬としての飲み物」として注目されいます。

  抗癌などいわれていますが、「茶カテキンを豊富に含んでいるので、体脂肪が気になる方に適しています。」という特定保健用食品へルシア緑茶がもっとも飲まれているようです。 

茶カテキンはタンニンの一種

   茶カテキンは従来、タンニンといわれてきました。苦渋味があり、緑茶の味のベースになる成分です。茶葉に含まれるタンニンの85%以上が、カテキンに属する物質ですので、茶では、タンニンといえば、カテキンのことであるといっても、ほとんど同じです。茶葉には、10~20%程度含まれており、茶の水溶性成分の中で、最も含有量が多い物質です。

05-11c02.gif

 春、お茶の新芽が5枚ほどでると葉が成熟へと生育ステージが変わります。その代わり端の頃が新芽(葉)が軟らかくしかもおいしさの成分が新芽(葉)に移った時期で、摘み取りはこの時期に行われます。摘み取った新芽を薄く広げて日陰(室内)に半日ほど置いておくと、やや萎れた状態(萎凋という)となり、花のような香りができます。さらに時間がたつと、色も変わってきます。
これをお茶が「醗酵」すると言います。味噌や醤油お酒などの醗酵は、酵母菌などの微生物の働きによるものですが、お茶の醗酵は、茶葉が本来持つ酵素の働きによるものです。酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)がカテキンに働いて、酸化や重合(結合してより大きな別の物質になる)させます。この醗酵を、最後まですすめると紅茶、3割程度がウーロン茶、摘んだ葉を直ぐに加熱処理して止めるたが緑茶です。(この緑茶の製法が、ブレンドや産地偽装などの原因ですが、それは別の機会に)

  酵素の働きで、カテキンが酸化・重合して新たにできた物質が、紅茶のきれいな色や香りを生みます。抗がん性などの機能性ですが、酸化・重合したカテキンでは弱いそうです。

  茶カテキンは、従来はタンニンといわれていました。カテキンは緑茶タンニンとも言われます。柿渋もタンニンの一種でタンニンは多種ありますが、共通して蛋白質を凝集させる、結合して沈殿を作る性質(生体高分子成分の塩基性官能基に結合し収斂させる作用)があります。タンニンは語源的にはこれと同じで「皮をなめすために使われる鞣皮剤」です。皮の主成分であるコラーゲン繊維(タンパクの一種)にタンニンを結合させ、蛋白質を凝集させる性質を利用して、皮の安定性と強靱さを高めています。
下痢止めの生薬のゲンノショウコは、ガロタンニン(ゲラニイン)を重量比で約20%ほど含み、その強力な収斂作用で下痢を抑えます。逆に過剰に摂取すると便秘を起こします。茶カテキンもタンニンの1種ですから、蛋白質を凝集させる、結合して沈殿を作る性質を持っています。(ついでながら、多くのハーブにもタンニンが含まれています。)
タンパク質だけでなく他の体内の物質に働いて、結合してしまうことがが予想されます。案の定、2003年9月には、高濃度のカテキンは、銅と結びついてDNAを損傷することが明らかになりました。2002年には、緑茶カテキンをラットに高用量投与すると甲状腺腫が発現することが公表されています。東京都の研究所でも同様の結果が出ています。

  ただ、甲状腺に異常が顕れる量は、人間に換算すると煎茶を湯飲みで、 一日233.6 杯も飲む量ですし、遺伝子DNAを損傷する濃度は、通常の約40倍ですから、普通に急須でお茶をのんでいては摂れる量、濃度ではありません。へルシア緑茶を花王が勧めるように毎日1本350ml飲んでも、摂れる量では有りません。問題なのは、茶抽出物などを使っているサプリメントです。(多くのハーブにもタンニンが含まれていますから、同様の注意が必要です)

東京都の研究所の結果 http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/08/08.pdf 

静岡大・・グルコン酸銅の発がん促進作用並びにカテキンとの複合影響による発がん修飾作用 http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/handle/10297/6466

国立がん研究センター・・緑茶摂取と甲状腺がん発生との関連は、閉経前と閉経後の女性で異なった(2011年)  http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2829.html 

 どれ位、体重が減るのだろうか

さて、「体脂肪が気になる方に適しています」カテキンがダイエットに効くという効果のほうはいかがでしょうか。特定保健用食品・へルシア緑茶の解説を見ても、効果があると認めた審査の際の資料や解説が出ていません。つまり、厚生労働省が、どれ位の効果が有ると認めたのかは不明です。

  特定保健用食品は、その効果を無作為比較対照試験(RCT)でしらべ有意水準5%以下なら効果ありと認められる仕組みです。有意水準5%以下というのは、この場合、「へルシア緑茶を飲んでも、体脂肪の増減には影響しない」という確率が5%以下であるという意味です。厚生労働省が、特定保健用食品で認めたということは、「へルシア緑茶を飲むと、体脂肪の増減に影響がある」ことです。肝心のそれくらい影響するか、メーカーの花王が言うように毎日1本350ml飲むと飲まない場合に比べて、どれ位体脂肪が減るのかは、国はノーコメントです。関知しないので、「体脂肪を減らす」ではなく「体脂肪が気になる方に適しています」という奥歯に物が挟まったような表現しか国は許していないのです。

 

 tokuho.jpg

 花王のへルシア緑茶の解説には、臍周りの体脂肪の面積が半分以下になるというデータが効果として例示してあります。そのデータの大本の試験データを見ると、サプリメントの広告ではこのデータから「1日1本、12週間飲み続けると体重が約1.69kg減少する」と紹介されていますが、かなり、限定的な結果です。

  まず、試験の規模が80人と小さく、かつ被試験者サンプルに偏りがあります。例えば、女性は閉経後だけで、平均年齢が54.8歳。医薬では、3段階の有効性(危険性)を調べる人体試験が行われます。動物実験など見つけた候補物質を3回ふるいにかけて、効果のないニセ薬などを除いています。80人の試験規模では、第一回目の最初の試験規模でしかありません。三回目の最終の試験では、4桁の人数が必要です。
この数千人規模の試験でチェックしていても、実際に病院で使ってみると、効果が少なかったり、重大な副作用が出たりしていますから、この偏ったサンプルの80人程度の試験の結果では、体脂肪が低減するという定性的なことはいえますが、それが約1.7kgという効果の大きさ、定量的な点はかなり不確実です。それで、試験をした医師たちも、「71.8
%のヒト(人数)の体重が0.5kg 以上減少しました。」、花王も「ただし、(へルシア緑茶は)美容・痩身を目的としたものではありません。」とトーンダウンした言い方なのです。

  用量と効果は比例すると考えられますから、高濃度・大量に含有し錠剤など手軽に飲みやすい茶カテキンサプリメントが、花王のCMに便乗してダイエット効果をセールスポイントに氾濫するわけです。そうして摂取量や濃度が危険レベル、先ほどの遺伝子DNAを損傷したり甲状腺に異常が顕れるなどの危険レベルに達する恐れがあるのです。

  このように、厚生労働省認定の健康食品「特定保健用食品」は、効き目はあるでしょうが、どれ位あるか、量的に消費者が期待するほど有るかといえば???です。そして、この4月には「条件付き特定保健用食品」が新設されますが、それはどうなのでしょうか。 続く 

2005年3月8日小針店で印刷・配布した「畑の便り№05-11」の加筆再録

虹屋小針店で扱っていたハーブティー 

オーガニック レモンバームティー (アンデスシリーズ) オーガニック レモンバーベナティー (アンデスシリーズ) アンデス・オーガニック カモミールティー

 


前の10件 | - サプリメント・健康食品 ブログトップ