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沖縄での有機塩素化合物・PCPによる地下水汚染=中の壱(POPs条約) [農薬ー害]

沖縄での有機塩素化合物・PCPによる地下水汚染=中の壱

この1971年の事件から30年近く経つ2009年には,1月に沖縄本島南部の糸満市域で採石場46か所(採石自体が不法なもの24か所を含む)のうち、8か所で廃棄物の不法投棄が見つかっている。そのうち1か所については約2,000トンもの産業廃棄物を深夜に不法投棄されていた。お金になる石灰岩を地下からどんどん掘り取り、できた巨大な穴には今度はゴミを詰め込んで、後は埋めでしまえば誰にも見つからないというわけです。地表に降った雨水が地下にどんどん浸透し、サンゴ石灰岩の地層に注がれた有害物質を、溶かし込んで地下水脈に入って広範囲に広がっている


「残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)」・POPs

商業的に生産されている化学物質は6万から7万といわれ、毎年、1000を超える化学物質が新たに市場に出ていると言われている。


化合物としての安定性が高く環境中で難分解性で㋐長く環境中に残留㋑空気中に蒸発し拡散した場合、大気循環で極地方に移動し、冷たい空気によって冷やされて凝縮、地上に降下する。化学物質がバッタが飛び跳ねるように長距離を移動することから「バッタ効果」と呼ぶ。例えば、赤道地方で環境中に放出された農薬がバッタ効果により日本(中緯度)や極地方に拡散していく。低水溶性で脂肪に溶けやすい高脂溶性であるため、生物の脂肪組織に濃縮されやすい。女性で溜まりやすく、母乳を介した次世代への影響が懸念される。殺菌・殺虫作用といった有用性≒生物への有毒性といった環境汚染、哺乳類=家畜・人間での汚染につながっている。


こうした性格の化学物質の地球環境・人体汚染の防止には、一部の国々の取組のみでは不十分であり、国際的に協調して廃絶、削減等を行う必要がある。このためこうした化学物質を「残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)」・POPsと名付け、排出の廃絶・低減等を図る国際条約が策定され、2001平成13年5月にストックホルムで開催された外交会議において「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が採択されている。その後締約国数が50に達し2004年5月17日に条約が発効した。


日本国内では「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画」を定め(2003年、2012年、)、法規制は、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)、農薬取締法、薬事法(医薬品医療機器等法、薬機法とも呼ばれる;医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)、及び外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づき、所要の措置が執られている。

 2007平成19年のPOPs条約第3回締約国会議(COP3)で、最初のPOPs・12物質が決められている。その後は残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)で専門家検討を経て、締約国会議COPにおいて新たにPOPsに指定された物質が随時追加されている。製造・使用、輸出入の原則禁止する廃絶リストの附属書A、制限するリストの附属書B、排出の削減及び廃絶をする非意図的生成物の附属書Cに追加する。
2019年5月現在
附属書A (廃絶)28
附属書B (制限)3
附属書C (非意図的生成物)7
その多数を有機塩素化合物が占める。最初のPOPs・12物質は、全て有機塩素化合物だし、素後も多く追加されている。
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除草剤PCP(ペンタクロロフェノール)は有機塩素化合物であり、2015年5月開催のCOP7(POPs条約第7回締約国会議)で、附属書A(廃絶)及び附属書C(非意図的放出の削減)に追加された。日本では、2016年4月1日、化審法に基づく第一種特定学物質(製造又は輸入は原則禁止、手持ち分は使用を研究目的に制限など)として指定された。具志頭村内の採石場跡のサトウキビの絞りかす(バガス)捨て場に、廃棄されたドラム缶5千本分ものPCP。そのPCPが染み込んだ,300トンの除去されたバガスは、今どこに在るのだろうか。
  続く

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沖縄での有機塩素化合物・PCPによる地下水汚染=上 [農薬ー害]

沖縄での有機塩素化合物・PCPによる地下水汚染


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 遙か以前の沖縄が日本に復帰する前年の1971年5月21日、南部地区東部上水道組合が水源としていた3つの湧水が同時に汚染され、水道水から異臭がしました。こ の水道は沖縄本島南部の4村約2万人に給水されていたものです。水源の水を分析したところ6ppmという高濃度の除草剤PCP(ペンタクロロフェノール) が検出され、この水に金魚を入れると30~45分ですべて死んでしまいました。

 この原因は、米軍払い下げ物資を扱う業者が、具志頭村内の採石場跡のバガス(サトウキビの絞りかす)捨て場にPCPを不法に投棄したためと分かりまし た。この業者はPCPを防腐・防虫剤として転売するために米軍から大量に買い取ったのですが、思ったようには売れず、屋外に放置しているうちに容器も腐食 し、処置に困ってドラム缶5千本分ものPCPを、バガスが捨てられた穴にこっそり投棄したのでした。掘削されほとんどむき出しになっていたサンゴ石灰岩の 地層に注がれた有害物質は、沖縄本島南部の豊富な地下水を蓄える地下水脈に入って広範囲に広がり、最も遠いものでは2kmも離れた水源まで汚染してしまっ たのです。この業者は、目に見えないところでまさかこんな深刻な事態が起ころうとは思いもよらなかったのでしよう。

 現地4村では翌朝から水道の供給が全面的にストップされました。民家の井戸も汚染されて使えません。汚染発覚直後には、生活になくてはならない水が全く 使えないという状態になりました。人々は、1戸当り20Lというわずかな水の配給を受けるため、給水車が来るのを道端にしゃがみ込んで長い間待ったそうで す。こうした中、汚染が分かっていながら、井戸や湧水の水を洗濯などにはやむなく使う人もいました。沖縄本島中北部から水をひく水道公社からの配管が急遽 つながれるまでのおよそ20日間、水道が全く使えない生活が続きました。
 さらに、PCPが染み込んだ300トンものバガスを除去するのもたいへんな作業で、米軍の火炎放射器を借りて現場で燃やしてしまえというとんでもない案 まで真面目に検討されました。当時の新聞を見ると、風邪をひいた時に使うような白いマスクにゴム手袋をつけただけのたくさんの作業員が、汚染されたバガス をビニール袋に詰めている写真が載っています。この作業の現場では、「シンナーのような刺激性の強いにおいがぷんぷん」し、「フラフラ目まいがするので1 時間ことに交替」して作業したと書かれ、今の感覚からすればとても危険な作業だったようです。報じられる範囲では住民や作業員の健康被害は起こらなかった。
 続く

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ネオニコチノイド系農薬の子供らへの神経毒性① 受容体 追記① [農薬ー害]

ネオニコチノイド系農薬は、2000年頃を境に日本では使用量が激増し、2011年には有効成分換算で約400トン、2000年比で2.8倍です。これは、それまで殺虫剤の王様であった有機リン系農薬が米国で子供への毒性が問題になり1997年には子供が多く食べる桃など食物での残留基準値の強化、2000年には家屋内や庭での使用禁止やなどがはかられました。日本では1995年に有機リン系薬剤であるサリンが使われ13人死亡約6,300人負傷する地下鉄サリン事件がおきています。こうした影響で日本でも有機リン系に替わる殺虫剤として拡がったと思われます。

有機リン系は、神経伝達物質アセチルコリンを分解する酵素、この伝達物質が結合た受容体で興奮状態になっている神経細胞でこの伝達物質を分解して神経興奮を終わらせ沈静化する働きの酵素を阻害します。その結果、不安、興奮、集中力欠如、持続力欠如、多動といった中枢神経性の中毒症状がおきます。昆虫(害虫)も哺乳類(人)も神経の仕組みは同じですが、分解する酵素の量が昆虫は少ないので人よりも少ない量で中毒症状を起こし死に至るという選択毒性を持つので重宝されました。1971年に禁止されたDDTなど有機塩素系に替わる農薬として拡がりました。

しかし、出生前の(つまり胎内での)曝露によって、広汎性発達障害、2~3歳時点での知的な発達の遅れ、知能テストのような検査では分からないが、高度なメンタルテストで発見される知能の発育の際立った遅れ・異常があらわれるリスクが増える。出生後の曝露では、問題行動、短期記憶や運動能力の低下、反応速度の遅れを伴なうなどの調査結果がでてきました。それで、米国の規制が行われました。


この神経伝達物質アセチルコリンが結合する細胞から出ている受容体(アンテナ)は2種類あります。一つは呼び鈴タイプで、伝達物質が受容体の細胞外の部分に結合すると細胞内の受容体の尻尾が伝令の蛋白質を刺激するものです。この受容体は下痢や幻覚を起こす毒キノコ・ベニテングタケのキノコ毒のムスカリンが特異的に結合するのでムスカリン性受容体といいます。

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一つは自動扉タイプで、結合されると構造が変化して細胞外のカルシウムイオンなどを細胞内に通過させるものです。これはニコチンが特異的に結合するのでニコチン性受容体といいます。
1383569692.jpg広汎性発達障害などの影響に、①この二つのタイプの受容体が関わる、②ニコチン性受容体だけが関わる、③ムスカリン性受容体だけが関わるの3つの場合が考えられます。
 ニコチン性受容体は自律神経、交感神経・副交感神経に顕われています。神経から筋肉への刺激(指令)を伝える受容体です。脳では小脳、大脳皮質、情緒に関連する扁桃(アーモンド)体など広く発現しています。妊娠3ヶ月の胎児で既に発現し成人脳に比べ胎児脳できわめて多く高いレベルで顕われており、脳の発達に重要です。誕生後も青年期まで小脳、大脳皮質などの中枢神経系に発現し、その正常な発達に関与しています。神経だけでなく、免疫系、皮膚・肺の細胞、卵巣、精巣など広範囲の組織に認められ、細胞同士の情報交換に関わっているとされています。
 ネオ(新しい)ニコチノイドの言葉が示すように、ニコチンの急性毒性、タバコを1本食べると死んでしまいますがそうした急性毒性がでないようにニコチンの化学的構造に手を加えた薬剤です。細胞レベルの研究では、ニコチン性受容体に与えるニコチンの影響とネオニコチノイド系農薬の与える影響は有意の相同性が認められています。遺伝子発現解析からは、ニコチンと重なる変動影響とネオニコチノイドに特異的な変動が見られています。ですから、ニコチンで顕われる影響はネオニコチノイド系農薬でも顕われ、かつネオニコチノイド特異的な影響が加味されると見られます。
ニコチンといえばタバコですが、喫煙で出生時の低体重、早産、乳児突然死症候群、注意欠陥多動性障害・ADHDのリスクが高まることは疫学的、社会的よく知られています。ADHDリスクが高まりますから、③ムスカリン性受容体だけが関わるという仮説は棄却、考慮から外してよいことになります。そして、神経毒、特にヒトの発達神経毒性(Developmental neurotoxicity, DNT) を明らかにする必要性があることも示しています。これらの影響はニコチンが胎盤を通過し、胎児がニコチンに曝されたからと考えられますが、それだけでは無いようです。
 参照 臨床環境21:46~56,2012 http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/healthy/jsce/jjce21_1_46.pdf

疫学研究からは、母親の特定の遺伝子多型のタイプでみるとハイリスクグループが見出されています。この北海道スタディという疫学研究では、妊娠中の母親の喫煙で出生時体重は平均では135g低下です。母親が遺伝子多型αのグループは211g、遺伝子多型βのグループは170g、α&βでは315g。妊娠中喫煙しなかった母親では遺伝子多型によって出生時体重が低下することはなかったのです。(記号は仮)

これは、ネオニコチノイド系農薬の影響、とくに子供らに対する影響の顕われ方で考慮しなければならない遺伝的要因、体質的背景として、本人のみならず母親も見なければならないことを意味します。
これらを食品における農薬残留をコントロールする立場でまとめると次のようになります。 (続く)

マルハナバチは、巣に持ち帰る餌の花粉の量が減る


ネオニコチノイド系農薬の子供らへの神経毒性を考慮した規制 [農薬ー害]

ネオニコチノイド系農薬の影響、とくに子供らに対する影響の顕われ方を考慮した食品における農薬残留をコントロールをまとめると次のようになります。

従来のやり方は、動物実験などで動物での影響が出ない一日当りの摂取量、無影響量・無毒性量(NOAEL)を割り出します。それを人間と実験動物との主の間の格差として10分の一、人での個人差として10分の一にする、安全係数100で無毒性量(NOAEL)を割り算して人での無毒性量(NOAEL)を算出します。(「不確実係数1/100をかける」とも言います。)それが人のADI・一日許容摂取量、一生毎日摂取しても毒性が現れないと考えられる摂取量を設定します。

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農薬によっては、同じ薬物が家庭用の殺虫剤や家庭用品にも使われています。ネオニコチノイド系は農薬以外にも防虫剤として建材、ガーデニング、シロアリ駆除、家庭用殺虫剤、ペットの蚤駆除などに多用されています。これらのルートによる摂取・被爆量などを勘案し、ADIの50%とか80%を食品残留での摂取上限として農薬残留基準値を設定する、コントロールしています。

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まず、遺伝子多型による高感受性、ハイリスクグループは、従来の人での個人差として10分の一の枠内に収まるかの検討が必要です。北海道スタディは遺伝子多型の個人差で約3倍、他の疫学研究では、喫煙量が1日10本までの場合では、胎児の体重は約90グラム減少で20本以上で533グラム減少と6倍差が出ています。これを合わせると20倍近くの個人差がありえます。

神経毒、特にヒトの発達神経毒性(Developmental neurotoxicity, DNT)の検出は、米国環境保護庁・EPA (1998年、OPPTS 870.6300) と経済協力開発機構OECD (2007年、TG 426) の二つの公式のDNT 試験ガイドラインがあります。OECDは10年ほど後に制定されていますから、その間の進歩を取り入れ、現時点では化学物質の発達神経毒性を検出する試験法としてはEPA ガイドラインよりもOECD ガイドラインの方がより優れているとされています。

米国では97年4月に大統領令(クリントン)「私は子供に安心して食事をあげられるようにしたい。・・子供たちは自分で考え自分たちを守る術を知りません。・・使用される農薬が子供を危険にさらす可能性があるのであれば,これを使用するべきではありません。信頼できるデータがない場合には(従来のやり方で出された基準値は使わず、その)基準値の10分の1以下とします」を出しています。
発生毒性 (催奇形性) 試験や繁殖毒性試験データにより乳幼児・子供への影響が示唆された場合には、まず通常の安全係数 100に、さらに10の不確実係数 (Uncertainty factor) を掛け1000で実験動物での無毒性量(NOAEL)を割り算して、乳幼児および子どもと13才から50才の女性(妊娠可能ということで胎児の保護を目的とする区分)でのADI・一日許容摂取量とします。

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大統領令にあるように信頼できるデータがあれば、10の不確実係数 (Uncertainty factor) を見直します。そのデータを得る方法として98年に制定されたのが米国環境保護庁・EPAのDNT・発達神経毒性試験ガイドラインOPPTS 870.6300です。
そのデータでヒトへの安全性 (特に乳幼児・子供に対する安全性) が担保できると判断される場合には、その内容に応じケースバイケースで3 倍あるいは1倍に追加係数が軽減される方向で運用されているそうです。

この二つのDNT試験ガイドラインでは、親動物数は80匹以上(20匹以上/群、4群)の実験動物を一定期間飼育し640匹を上回る児動物を行動観察した後、解剖し病理検査を行って調べます。約1億円と高価で、約1年と時間がかかり、および多数の動物の必要とします。実施されたDNT試験は約110程度です。それで、優先順位付けするための初期スクリーニング用の代替試験管内試験の開発が急がれています。

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脳の機能発達には、多種類のホルモンやアセチルコリンなどの神経伝達物質により、莫大な数の遺伝子発現が時空間的に精微に調節され、神経回路が形成されることが必要です。実験動物と人間では神経発達の次元が機能的あるいは構造的 (形態的) にも著しく異なるでしょう。行われた発達神経毒性DNT試験が少ないことと相まって、この試験での病理検査や行動観察結果、そこで見出された神経発達の異常が、ヒトのでみられる注意欠陥多動性障害・ADHD、学習障害あるいは自閉症などの発達障害との関連を十分に評価することはできていません。

参照 化学物質の発達神経毒性評価手法に関する情報収集調査報告書

1383575330.jpg「遠山千春(東京大学)らは、マウスを用いて脳高次機能に関わる社会的な行動を自動解析できる“インテリケージ”(TSESystems GmbH、ドイツ)システムを開発し、ごく低用量のダイオキシンを母胎経由で曝露したマウスが、行動に柔軟性がなく社会性行動にも異常がおきることを明らかにした。“インテリケージ”は全自動コンピュータ管理されたマウスの集団飼育ケージで、検査対象のマウスにチップを埋め込み、集団の中でのマウスの行動を終日コンピュータ管理できるシステムで、脳高次機能への環境化学物質の多様な影響を調べることが可能となる、画期的なシステムといえる。化学物質のリスク評価や農薬の毒性評価には、このような最新の行動奇形学の実験システムを取り入れていく必要がある。」 引用元 http://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2012/02/Kagaku_201307_Kimura_Kuroda.pdf

日本では2000年に農薬の試験ガイドラインが見直され、新たに急性および亜急性の神経毒性試験ガイドラインが追加されたが、発達神経毒性のガイドラインは未だない状態です。
ネオニコチノイド系農薬では、妊娠中の女性での喫煙影響の研究でニコチンが胎児の発達に対し影響して注意欠陥多動性障害・ADHDのリスクを高めることが判明しています。この結果はそのままネオニコチノイド系農薬に当てはまらないといった異論もあります。
2013年10月にパブコメにかかったネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンでは、田中豊人博士(東京都健康安全研究センター)の研究では仔の神経発達行動に影響が及んでいるという結果が出ています。
「農薬クロチアニジンのマウスへの給餌投与による生殖系及び神経行動系への影響」

ですから、日本の農薬の試験に発達神経毒性DNT試験が取りいれられ、その結果信頼できるデータを元に判断ができるようになるまでは、10の不確実係数 (Uncertainty factor) を掛け、従来のやり方でのADI・一日許容摂取量の10分の一で規制を行うべきです。

例えば、資料の26ページ別紙(3)の1~6歳の幼少児、妊婦さんの摂取量(TMDI・理論最大1日摂取量)は、子供ら幼少者に対する悪影響、注意欠陥多動性障害・ADHDといった発達障害リスクを考慮して一日許容摂取量・ADI比で5%以下になるように規制すべきです。食品での残留基準だけでなく、家庭用殺虫剤などの用途も対象に規制すべきです。

またネオニコチノイド系農薬は同じ作用ルート、ニコチン性受容体に働くメカニズムは同じですから、ADIを合算するネオニコチノイド系で合算したADI、クロチアニジン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムを合算した総合的なADIと残留基準の設定が必要だと思います。

そして有機リン系農薬もニコチン性受容体をターゲットの一つにしています。有機リン系は今も多用されています。有機リン系とネオニコチノイド系の複合毒性も研究を進め、その神経毒性を見極める、解明する必要があります。



間違えました。ー クロチアニジン・ネオニコチノイド系神経毒に関するパブコメ [農薬ー害]

食品中の農薬(クロチアニジン)の残留基準設定に関するパブコメ で間違えた記述をしました。

「今回提案された残留基準を緩める改定で生じる摂取量の変化予測が示されていない。摂取量がADI・一日許容摂取量を越えないようにすることは、残留基準設定の基本であるから摂取量試算値があるはずだが、パブリックコメントに供された資料にはない。厚生労働省は、大半の国民である消費者の被るデメリット、潜在的不利益を開示することに無関心と疑わざるを得ない。今回の改定の目的は何なのだろうか。」とありますが、資料の26ページ別紙(3)に試算がありました。この記述は間違いです。削除して、お詫びいたします。
その別紙(3)をみると、1~6歳の幼少児、妊婦さんの摂取量(TMDI・理論最大1日摂取量)は、子供ら幼少者に対する悪影響、注意欠陥多動性障害・ADHDといった発達障害を考慮すると一日許容摂取量・ADI比で少なく見ても一桁高いと判断します。それで「(3)神経毒である農薬を摂取量を増える消費者のデメリットが示されていない。」の他の部分、主張はそのまま、撤回しません。

有機リン系農薬の子供への毒性、注意欠陥多動性障害・ADHDといった発達障害リスクを高めることが明らかになった1990年代後半、、「私は子供に安心して食事をあげられるようにしたい。・・子供たちは自分で考え自分たちを守る術を知りません。・・使用される農薬が子供を危険にさらす可能性があるのであれば,これを使用するべきではありません。信頼できるデータがない場合には(従来のやり方で出された基準値は使わず、その)基準値の10分の1以下とします(クリントン大統領)」という政策を米国は打ち出しています。(96年の食品品質保護法・FQPA、97年4月大統領令)
この政策は、欧州でも受け入れられています。日本は一部の基準値の引き下げは行っています。

クロチアニジンは、田中豊人博士(東京都健康安全研究センター)の研究では仔の神経発達行動に影響が及んでいるという研究結果が出ています。http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bdrb.20349/abstract
またネオニコチノイド系はネオ(新しい)ニコチノイドの言葉が示すように、ニコチンの急性毒性、タバコを1本食べると死んでしまいますがそうした急性毒性がでないようにニコチンの化学的構造に手を加えた薬剤です。妊娠時の喫煙影響の疫学研究では、ニコチンでの注意欠陥多動性障害・ADHDのリスクが高まることがわかっています。
こうしたこの農薬、クロチアニジンの毒性、摂取量が増える基準改定によって生じうる消費者のデメリットが、今回のパブコメでは開示されていない、示されていません。
また、こうした神経毒性、ヒトの発達神経毒性(Developmental neurotoxicity, DNT)検出は、米国環境保護庁・EPA (1998年、OPPTS 870.6300) と経済協力開発機構OECD (2007年、TG 426) の二つの公式のDNT 試験ガイドラインがあります。その試験データでヒトへの安全性 (特に乳幼児・子供に対する安全性) が担保できると判断される場合には、その内容に応じケースバイケースで3 倍あるいは1倍に下げ幅(追加係数)が軽減される方向で米国では運用されているそうです。
しかし、日本では2000年に農薬の試験ガイドラインが見直され、新たに急性および亜急性の神経毒性試験ガイドラインが追加されましたが、発達神経毒性のガイドラインは未だない状態です。制度的に客観的で信頼できるデータの入手ができないので、論議もやりにくい状況です。

私はこの毒性から、1~6歳の幼少児、妊婦さんの摂取量を低くする規制政策を求めます。日本の農薬の試験に発達神経毒性DNT 試験が導入され、客観的で信頼できるデータをもとに判断できるまで、緊急的に大幅に基準値を下げることを求めます。

引き下げ幅は10分の1以下が妥当なのか、100分の一が良いのかは判断に迷うところですが、1~6歳の幼少児、妊婦さんの摂取量を低くする厳格化が必要だと考えます。間違っても三つ葉の残留規制値は1000倍、蕪の葉は2000倍に上げるなどの今回の規制値改定案は、容認できません。

「一旦、緩められた基準を再度厳しくすることは難しい。この農薬の子供ら幼少者に対する悪影響、神経毒としての毒性が明らかになってから規制の再厳格化となるであろうが、それはそうした被害者が発生し社会的に認知され問題となるまでは放置するということでもある。この農薬の残留基準を緩める改定の必要性が日本農業ではないのだから、そのような反倫理的な道を拓く改定は許されない。」私の送付意見
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食品中の農薬(クロチアニジン・ネオニコチノイド系神経毒)の残留基準設定に関するパブコメ [農薬ー害]

食品中の農薬(クロチアニジン)の残留基準設定に関するパブコメ
案件番号・・495130138
今、改定を行う必要が無い。
理由
(1)必要性が無い
食品添加物と違い、農薬は消費者に直接的メリットがない。専ら農業、生産現場におけるメリットだけである。しかし今回のクロチアニジンの残留基準の改定は、農業、生産現場での必要性が全く示されていない。
三つ葉の残留規制値が1000倍、蕪の葉で2000倍に上がる規制を緩める、日本の生産現場、農家での必要性がまったく示されいない。従って、日本の農業現場では残留基準を緩める改定の必要性がないと判断をせざるを得ない。
(2)農業に不利益を及ぼす可能性
この農薬は、多くの国でミツバチ大量死の原因と疑われているネオニコチノイド系農薬である。ミツバチは花粉を媒介する農業では重要な要となる昆虫である。今回の改定案で我が国でこれ以上のミツバチ大量死が発生する可能性を持つ農薬の使用量は増大するであろう。その農業への悪影響が示されていない。
事前警戒原則(予防原則)を適用して、EUではこの農薬を2013年12月から2年間使用停止にする措置を採っている。このEU規制は大陸規模で行われるから、その結果はミツバチ大量死の原因判断に資するであろう。この農薬の残留基準を緩める改定の必要性が日本農業ではないのだから、改定を遅らせても不利益はない。今、改定を行う必要が無い。
(3)神経毒である農薬を摂取量を増える消費者のデメリットが示されていない。
今回提案された残留基準を緩める改定で生じる摂取量の変化予測が示されていない。摂取量がADI・一日許容摂取量を越えないようにすることは、残留基準設定の基本であるから摂取量試算値があるはずだが、パブリックコメントに供された資料にはない。厚生労働省は、大半の国民である消費者の被るデメリット、潜在的不利益を開示することに無関心と疑わざるを得ない。今回の改定の目的は何なのだろうか。

この農薬は神経シナプス部分に存在する神経伝達物質アセチルコリンの受容体に結合し、神経を興奮させ続ける神経毒である。昆虫では死に至るから、殺虫剤として有効である。人など哺乳動物の受容体への親和性が昆虫の受容体への親和性よりも低いため、昆虫に選択的な毒性を発揮するといわれている。
このような神経毒として選択毒性があるから多用された有機リン系農薬は、子供ら幼少者に対する悪影響、神経毒としての毒性が明らかになって、残留濃度や使用場面の規制が厳しくなった。この農薬も同様の懸念が持たれている。一旦、緩められた基準を再度厳しくすることは難しい。この農薬の子供ら幼少者に対する悪影響、神経毒としての毒性が明らかになってから規制の再厳格化となるであろうが、それはそうした被害者が発生し社会的に認知され問題となるまでは放置するということでもある。この農薬の残留基準を緩める改定の必要性が日本農業ではないのだから、そのような反倫理的な道を拓く改定は許されない。
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中国産の輸入野菜から残留農薬を検出 2002-08 [農薬ー害]

2002年2月に小針店で配布した畑の便りの再録です。



中国産の輸入野菜から残留農薬を検出
6種、最大で基準の4.3倍


 昨年2001年から、輸入の中国産野菜の農薬の残留、それも日本の基準値の3倍とか検出され問題となっていました。大手スーパーや商社の輸入元は、あわてて自主検査をはじめたりしました。
 厚生労働省は「中国政府に問合せ・・(中国)国内流通野菜の50%近くから残留農薬が安全基準値を超え、その結果、多数の中毒患者が発生している等の事実が判明しました。このため、本年1月4日から1月31日までを「中国産野菜検査強化月間」として・・100%のモニタリング検査を実施。」

食品衛生法に基づき全国十三力所の検疫所が、一月に輸入届け出のあった二千五百十五件についてサンブル検査を実施。その結果が、オオバやニラ、プロッコリー、ケール(青汁の原料)など六種類の野菜から最大で基準値の四・三倍に当たる残留農薬が、フェンバレレートやクロルピリホスなどいずれも殺虫剤が検出されました。これらは神経毒で、ヒトに対しても、例えば子供の神経・精神の発育に悪影響をあたえる恐れから、クロルピリホスは家庭内(シロアリ駆除剤)では使わない規制がかけられようとしています。

 中国では、①使用される農薬は一千種類以上、年間二十数万トン、化学肥料は四千二百万トン。農薬には猛毒の有機リン系殺虫剤メタミドホスなど国際的に使用が禁止・制限されている農薬があり、それによる汚染が確認され、

②中国本土で「問題菜」(香港では「毒菜」)と呼ばれるこれら汚染野菜や果物で、中毒患者が中国国内だけで年間十万人に上り、呼吸困難などの急性中毒症状で死亡するケースが相次いでいる。

③農薬のほか、化学肥料の過剰使用による土壌、水質汚染が生じているが、④農業省などの全国規則は劇薬の新規登録の規制のみ。

 米国の食品医薬品局による中国食品の輸入差し止めが、2000年八月から2001年一月の間に634回など中国産野菜・食品が安全性に問題があることは国際的に周知のこと。それを今まで日本政府は黙認。「貧乏人は麦を食え」精神は脈々と受け継がれ、今は「貧乏人は毒菜・問題菜を食べよ」のようです。ともあれ、「中国政府の調査では、夏から秋に出回る野菜、果物の農薬汚染がより深刻だ」です。


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