反射と電界 電磁波めも(2) [放射能汚染]
電磁波の反射
なみの反射
音、音波の反射は日常的に体験します。窓閉めれば、外の騒音は、窓のガラスで大半は反射してしまいます。一部が窓ガラスの震えと成ります。そのガラスの震えが内側の空気を振動させて音に成ったりします。また窓の隙間から、音が入り込んだりします。
カーテンを引くと音の大半はカーテンの内側の空気を振動させることはありません。カーテンの布地が振動を吸収している。音・音波は空気の振動です。空気の密度の振動が伝播するもの(疎密波)であり、振動が波の進行方向に対して平行な縦波ですから、振動が空気から窓ガラスやカーテンに伝わる、その伝わり方が物によって違うことは直感的にわかります。隙間が有れば、一部が伝わってくることもわかります。
電磁波・光は、物がない真空も伝わっています。そして音・音波と同様に、跳ね返される反射、隙間から回り込んで入り込む回析、中に浸透して、一部が吸収されます。Why?How to?
電磁波( electromagnetic wave)は、空間の電場と磁場の変化によって形成され、振動が波の進行方向に対して垂直である横波です。電気現象を司る電場(電界)と磁気現象を司る磁場(磁界)の振動方向は互いに垂直に交わり、電磁波の進行方向もまた電磁場の振動方向に直交しています。
電場と物質
乾燥時、手指からパチッと静電気の火花が飛びます。静電気も電場を作ります。電磁波と違い時間的に強さが波打ちません。静電場です。
物質は、分子、原子から成ります。原子では、真ん中にある原子核が陽子でプラスの電荷をもち、周囲にマイナスの電荷の電子があってこれを打ち消して、±ゼロになっています。身の回りの物質は、様々な化合物ですが、電気的には全体としては±ゼロになっています。静電場に曝されると、その電気的力を受けます。電子はプラスの電場ではそちらに引かれ、マイナスの電場では反発します。電場を打ち消す方向に動きます。電子が移動して、物質内部にマイナスの強い部分(極)とプラスの強い部分(極)が顕れます。
この電場で極が顕れることを分極と言いますが、大きく4種類の形があります。一つは、電子分極。原子核の周りに電子は雲の様に分布しています。電子は原子核に束縛されていますから、自由に移動することはできませんが、電場がかかるとごく限られた範囲内で、ちょっとだけ偏ります。電子の分布にズレが生じて、プラス/マイナスの偏りが発生します。これが電子分極です。
一つはイオン分極。物質中の、原子間、イオン間の距離が電場がかかると変わるもの。塩化ナトリウム(食塩)の中ではプラスのナトリウムイオンとマイナスの塩素イオンが規則正しく配列しています。ここに電場がかかると、ナトリウムイオンはほんの少しマイナス側へ、また塩素イオンはプラス側へ動きます。その結果、プラス電荷の重心とマイナス電荷の重心がズレで極が顕れます。
よく混ざっていない、不均質な物質では、その境目に電荷が溜まる、電子が溜まったような状態になり分極が顕れることがあります。これを界面分極という。
一つは配向分極。分子の中には、元々電荷の偏りを持っているものがある。例えば水分
子では、電子を引っ張る力が強い酸素原子が少しマイナスに、電子を出しやすい水素原子が少しプラスになっています。このような分子は、電場がかかると分子全体がくるりと回って電場の方向に向こうとする性質を持っています。また、初めは電荷が偏っていなくても、電場に中に置かれると特定の方向に分極を起こす分子もあります。この特定の方向が電場の方向とズレている場合、やはり分子自体がくるりと回って電場の方向に向き直ろうとします。これが配向分極です。
この項目は続く 電子レンジの加熱の原理
γ線・ガンマ線は電磁波 電磁波めも(1) [放射能汚染]
γ線・ガンマ線は電磁波
電磁波は、波長で10km ~ 10-6nm の波である。長い方から電波、光、X線、γ 線という。
ナノメートル(nanometre、記号nm)は、国際単位系の長さの単位。10-9メートル=10億分の1メートル。 1 nm = 0.001 µm (マイクロメートル)= 0.000001 mm、 1 nm =1000pm(ピコメートル)= 10 Å (オングストローム) 、1pm=1兆分の1メートル
電波には低周波、超長波、長波、中波、短波、超短波、マイクロ波がある。電波がテレビ・ラジオなどの無線通信に用いられるのは、進行方向に障害物があっても電波が伝わりやすいという性質による。
光は数mm から数nm の範囲の波を指し、波長の順に赤外光、可視光、紫外光と呼ぶ。
X線は波長が1nm 以下の波、γ 線はさらに短い10pm 以下の波を指すが、厳密にはその発生メカニズムで区別する。X線撮像(レントゲン写真やX線CT)に用いられる。X線、γ 線の物質を透過しやすい性質による。
このように、原子・分子・高分子など、ある大きさを持った物質に、ある波長の波を当てることによって生じる物質と波との相互作用は、大きく、反射・透過・吸収の3 通りである。見方を変えると、①散乱・回折・干渉・屈折などの波としての応答と、②熱・化学反応・イオン化・光電効果など、物質が波のエネルギーを吸収して生じる応答、の2つに分けられる。
新潟県の東電核災害での汚染状態 2014年 (加筆④) [放射能汚染]
福島第一原子力発電所事故に伴う新潟県内の放射線等の監視結果(2014年版)(PDF形式 4743 キロバイト)
委員長の今泉・新潟大学教授から湖沼の湖底土の放射性セシウムについて発表がありました。新潟は鳥屋野潟と佐潟、福島県は猪苗代湖や五色沼など8地点です。湖沼の泥のセシウム134の調査結果が示されました。それでは、佐潟では検出されず、鳥屋野潟では2013年9月に約20Bq/kg、2914年5月10月に数Bq/kgでした。福島県側はいずれも2014年10月でも数十Bq/kg以上でした。
これで森林生態系でのセシウムの循環や挙動を示したということなのでしょう。
竹林は林野地に分類されます。そしてタケノコは栽培されています。勝手に自生してはいません。タケノコ栽培は林業の「特用林産」ではなく「耕種農業」として行政的には農業扱いです。
タケノコは収穫の早い順にモウソウダケ孟宗竹、ハチク淡竹、マダケ真竹があります。地方によっては、その他にも食用にしてますが、肉厚で歯ごたえが良く、用途が広く、おいしく、早い時期から食べられるのは断然モウソウダケです。孟宗竹は江戸中期にも中国から薩摩にもたらされたものです。タケは地下茎の断片的な部分から貯蔵された栄養だけで小さなタケがはえ、これが元になって新しい地下茎と若竹を増やし、10年もたたぬうちに竹林になります。この性質から、瞬く間に各地にモウソウダケの竹林が造成されました。
竹は、樹高が十数メートルしかない里山や二次林などには侵入すると、ひと夏の内に既存の樹木の上に葉を広げることができます。竹の陰になった既存の樹木は衰えていき、そのうちに竹林に取って代わられます。そして自然の力でその土地の気候にあった自然性の高い、多くの生物種が生息する林相に向かって推移していこうとする生態遷移を完全に止めてしまい、遷移の方向とは逆行する竹林という単純な林相を作って長期に安定してしまいます。
キノコは学問的には糸状菌のつくる子実体の比較的大きなものです。子実体は菌の胞子を散布するためのものです。糸状菌は光合成によって養分を作る能力はなく従属栄養で暮らします。動植物の遺骸や落ち葉、倒木などを栄養源とする腐生性の腐朽菌、菌根菌など腐朽菌と植物の生きた根が必要な菌、冬虫夏草菌など昆虫類に寄生する菌等に分かれます。
共生が必要な菌は病気を起こす「寄生菌」と植物と利益、有機物や水分を分かち合う「共生菌」(菌根菌・VA菌)です。我々が日常的に食べるキノコ、シイタケやナメコなど栽培されているキノコは、「腐生菌」です。マツタケなど菌根菌のキノコは、植物の生きた根が必要ですから栽培は困難です。森林の地上に発生するキノコは、採取キノコの多くが菌根菌です。
根の先端に菌類がつくる「菌根」からは菌糸(外生菌糸)が伸びて水を吸収し、根を通じて植物に送ります。菌糸は、酵素を外部に出して養分を分解し、植物に送るし、有機酸を出して鉱物を溶かし、ミネラル分を植物に送ります。逆に、植物から光合成でつくられた栄養分などを得ます。植物から100mも離れた地点でキノコが見つかり、そこまで菌糸が延びている例が発見されています。セシウム吸収の点では、腐生菌のキノコに比べ菌根菌のキノコは植物(樹木)との関係、ワンクッションあります。腐生菌よりも広い面積から九州もしています。この二つを混ぜて扱うと間違えてしまいます。
田上恵子委員(放射線医学総合研究所、放射線防護研究センター)は、森林から採取される野生キノコと一緒に十把一絡げ(じっぱひとからげ)にしています。地下の菌糸からキノコが生える図と共に「まれにスケールオーバーする場合もある←元になる落葉等を分解中」と記してあります。森林の地上に発生するキノコは、採取キノコの多くは菌根菌です。セシウム吸収の点では、菌根菌のキノコは植物(樹木)とワンクッションあります。スケールオーバーする場合、どちらの種類なのか、腐生菌か菌根菌のキノコかは大きな問題です。キノコと言ったらシイタケ・ナメコのように枯れ木・倒木を腐れせて分解して養分とするキノコしか思い浮かばない町の人を相手にしているから手を抜いたわけでもないでしょうから、論議の道筋が粗雑です。
タケノコといい野生キノコといい田上恵子委員の論は、道筋が良く見えないものでした。
了
γ線より波長がはるかに長い=低エネルギーの可視光の青色の光を当てると昆虫が死ぬ 放射線被曝と生命の進化(断章) 2014/12 [放射能汚染]
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2014/12/press20141209-02.html
●ショウジョウバエで440nmと467nmの波長が高い効果を示し、467nmの光は卵、幼虫、蛹さなぎ、成虫に対しても殺虫効果を顕し、たとえばさなぎは羽化できずに死亡した。(光の強さは直射日光に含まれる青色光の 3 分の 1 程度)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20141209_02web.pdf
2014 年12月9日付、英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された英語論文
http://www.nature.com/srep/2014/141209/srep07383/full/srep07383.html
昆虫の種により有効波長が異なることから、その殺虫効果はヒトの目に対する傷害メカニズムに似ていると推測しています。すなわち、種によって吸収しやすい光の波長が異なり、これによって、種により異なる波長の光が昆虫の内部組織に吸収され、UVA間接損害脂質、タンパク質、およびDNA反応性酸素種(ROS)、活性酸素、フリーラジカルが生じ、細胞や組織が傷害を受け死亡すると推測していいます。
γ線の被曝でも、DNA反応性酸素種(ROS)、活性酸素、フリーラジカルが生じ、それでDNAが損傷する。我々の細胞核内のDNAが損傷すると健康への直接的影響が顕れる場合がある。核外のミトコンドリアのDNA損傷では、エネルギー生産というミトコンドリアの機能が損なわれ、細胞のエネルギー不足、活力低下や早期老化現象が起きると言われる。γ線がコンプトン散乱でエネルギーを失い波長が長くなり、内部組織に吸収されやすい波長、UVAやUVBになると同様のことが起きるのではないか。
ショウジョウバエでは、緑色(508nm、532nm)や赤色(657nm)では生存率が高くなっているけど。
食品照射から被曝影響を考える ③食中毒、微生物と異臭 [放射能汚染]
朝鮮戦争休戦後、米軍はアイゼンハーワー大統領による "Atom for Peace"「核の平和利用」 の政策のもと、1953 年から照射食品の開発研究を開始。陸軍は、照射食品・兵糧が(1) 缶詰よりも優れた味と風味をもつこと、(2) 保存や輸送などの費用の削減につながること、(3) 冷凍設備なしで冷蔵設備もその必要性を低減する事を目標に掲げています。具体的には、朝鮮半島の前線にいる兵士に牛ステーキを補給する、ステーキ肉を冷凍設備なしで少ない冷蔵設備で安い経費で前線にとどける。この目標の(3)と(2)は殺菌・滅菌の効果と強く関連します。放射線照射を、殺菌・滅菌に利用する際に、照射線量と効果の関係や照射殺菌食品の微生物学的な安全性を確保する研究が行われました。
1866年にフランスのルイ・パスツール Louis Pasteurとクロード・ベルナールが食品の栄養価や風味を落とさないで、腐敗菌、食中毒菌の大部分を殺菌・滅菌する100℃以下の加熱殺菌技術を開発しました。パスチャライゼーション(Pasteurization)といいます。この原理自体は日本では酒の火入れとしてありましたが、それを加熱温度と時間、菌数の減少と関連させて定式化しました。杜氏が酒の表面に「の」の字がやっと書ける熱さといった職人の技能から、誰もが学び習得でき温度計などがあれば実行可能な技術にしました。日本では、牛乳での、特に牛と人の共通感染症の牛結核菌を死滅し牛乳の栄養価や風味を落とさない、パスチャライズ牛乳で名が知れています。
放射線により、微生物を殺滅させ得ることは、レントゲンがX線を発見した1895年直後から知られていました。1921年には、食肉中に潜む寄生虫を殺滅するためにエックス線を使う特許がとられています。当時は、放射線源や発生装置が高価でした。非実用的なアイデアと見られていました。核兵器開発によって放射線源となるコバルト-60やセシウム-137などの放射性同位元素が容易に入手出来たり、高出力電子加速器など発生装置が安価になりました。"Atom for Peace"「核の平和利用」政策には、核兵器開発・生産が一段落ついて、それに携わっていた産業の不況救済という側面があります。それに合致した市場開発・創出でもあります。また、この頃から水爆実験が大気圏内で盛んに行われました。放射能が大量に大気中に漂い降下しました。その悪いイメージを覆う”イチジクの葉”でもあります。
温度上昇が少ない
食品照射は、食品の加温が非常に少ない、1kgに1000Gy(グレイ)の照射で0.24℃位しか加温されないという特徴があります。つまり、熱による変質が少ない。その線量と殺菌効果を、菌数が10分の一になる値D値でまとめたのが下の表です。半数致死線量(60日以内に50%死亡)はヒトでは4Gy(グレイ)、ラットは8Gy位ですから、単細胞の細菌たちはキロ(千)Gy単位です。
参照・・http://foodirra.jaea.go.jp/dbdocs/002041000001.html
放射線の殺菌作用
この殺菌作用は、放射線(高エネルギーのγ線、β線)による水分解で生成する活性酸素や放射線それ自体によるDNA損傷によると考えられました。「標的はDNAである。普通の起きるのはDNAの塩基損傷と一本鎖切断であるが、この場合は健全な-本を元に修復することは可能であろう。しかし二本鎖が同時に切断された場合は一般的に修復困難で、どんな生物でも一発で死んでしまうように思える。生物間で塩基配列などに多少差違はあっても塩基の構造は変わらず放射線化学的には同一線量では同一損傷ということになり、損傷数は生物間であまり差が無く抵抗性には大差は無いものと考えられていました。
その後我々は色々な食品の放射線殺菌の実験をして、各種微生物の殺菌効果を調べている中に、酸素や水など環境条件とは別に、菌によって感受性が違うことが分かりましたが、桁違いというものは見られませんでした。(並木満夫)」参照・・http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~food/Dr.Namiki%20Review.pdf
死亡率約 20%の ボツリヌス菌 (Cl.botulinum)
表を見ると、猛烈な毒素を算出するボツリヌス菌(Cl.botulinum)が照射に強い放射線感受性が低いことが判ります。ボツリヌス菌はどこの土壌中にもいる嫌気性の菌です。酸素がない缶詰、ビン詰などの状態で繁殖する菌なのです。欧米では古くから「腸詰め中毒」として恐れられています。死亡率は約 20% と言われてます。
このボツリヌス菌を完全に殺す滅菌するなら50KGyの照射になります。滅菌にはD値の12倍量で4.0×12で48Gyです。この線量を照射すると、肉など食品の脂肪分やタンパク質が分解し、照射臭またはケモノ臭とも呼ばれる食欲を減退させる臭いが猛烈に発生します。
「照射臭が発生しやすいのは牛乳と卵であり、室温下での照射では1kGyでも明確に認められる。牛肉、豚肉、鶏肉、ソーセージ、生鮮魚介類などでは室温・空気共存下で2~3kGy照射すると照射臭が認められはじめ、5kGy以上で明確に認められる。一方、真空包装や抗酸化剤共存下など酸素の少ない条件下で照射すると照射臭の発生は抑制され、5kGyでも照射臭はほとんど感知できない。」http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/020230.html
米航空宇宙局NASAは、1972年に宇宙飛行士向け食品に照射を認めていますが、その後、宇宙飛行士が照射臭によって食欲を落とすという理由から、ほとんどの食品について食品照射を取り止めて、メニューの数が少なくなっています。
放射線パスチャライゼーション
それでパスチャライズ牛乳のように、食品の栄養価や風味を落とさないで、腐敗菌、食中毒菌の大部分を殺菌・滅菌ように照射することが試されました。食中毒菌の指標には、サルモネラ菌(S.typhimurium)が使われています。滅菌にはD値の12倍量ですから0.7×12で8.4Gyの線量を照射すれば滅菌できます。10KGy程度の照射で食中毒菌の大部分を殺菌・滅菌できます。放射線パスチャライゼーション、電磁的パステリゼーションelectric pasteurization ということもあります。
参照・・照射食品の微生物学
http://foodirra.jaea.go.jp/dbdocs/001005000006.html
放射線パスチャライゼーションでは、ボツリヌス菌は10分の一以下に減りますが、全滅はしません。ほとんどすべての照射食品は不浸透性の容器または包装剤に封じ込まれているので、ボツリヌス菌が活動できる嫌気的状態になります。酸素がない缶詰、ビン詰などの状態で発生しているボツリヌス菌の繁殖は「ボツリヌス菌単独で食品を腐敗することはまれで、たいがい消費者に危険だとわからせるようなにおいを発生したり汚染したりする腐敗菌とともに生育するか、食品の嘔吐を起こさせるような腐敗菌と共生している。」それで、膨らんでいたり、開封して気づいて食べられずに捨てられる、吐き出される。
放射線パスチャライゼーションではそうした腐敗菌は全滅しています。特に問題視されたのは蛋白非分解性の株です。蛋白分解性 A、B、F 型のボツリヌス菌は、増殖が進むと悪臭を出てきて包装が膨らみます。非蛋白分解性 B、E、F 型はそのような悪臭を発生しないので「消費者は容易にこれらの菌の汚染を見逃す」危険があるからです。
人間に対する毒性は E 型がもっとも強く、冷蔵温度でも増殖し毒素を作ります。 一般に魚から検出されるボツリヌス菌は E型なので、魚で集中的に研究されています。米国原子力委員会AECによる研究では、1)異臭等腐敗の兆候が先か毒素の産生が先かは保存条件、魚の種類による。つまり、身がグズグズになっているなどでは消費者はわからない。2) 照射によって、かびが生えやすくなる。3)非照射より短時間でボツリヌス菌は照射魚体内に毒素を産生する高い可能性がある、4)照射、非照射に関わらず、魚介類の長期保存によって非特異的な毒性により、実験動物が死亡するケースが目立ったこと。
IAEA、WHOの勧告
IAEA の勧告では「他の殺菌手段例えば、加熱殺菌、置換ガス充填包装などと比べて、照射はボツリヌス菌の潜在的な危険性を増大する可能性がある。ボツリヌス E 型菌の危険を避けるための GMP (Good Manufacturing Practice) にしたがって加工したとしてもこの危険を避けることができないだろう。」
「照射後製品は必ず 3℃ 以下で無くてはならない。ボツリヌス菌が原料に存在すると、照射後も生残する可能性がある。照射した魚やエビを 3℃ 以上にするとボツリヌス菌の増殖と毒素の産生を招く可能性があるだろう。特に高線量照射したり、酸素不透過性の材料で包装した場合、このような 3℃ 以上での保存で菌の増殖と毒素産生の可能性が高くなる。」
WHO も照射魚介類を保存するときは常時 3℃ 以下で行うように改めて勧告しています。
つまり、流通の過程は簡素化されません。1998 年ころの EUの各業界調査では、漁業業者は現在の技術で十分に安全は確保されており、費用をかけて照射しても保存条件が従来と同じだから、消費者は新鮮な製品を求めているから要らない。
放射線照射はよい衛生法の代用として使用されるべきではないが、、
米国のNASA の宇宙食を作っていた食品照射業者への訪問記では「照射室や保存区域には冷蔵設備がなく、温度管理といえば断熱シートをかけるだけだと責任者は説明してくれた。工場は亜熱帯のフロリダの中央にあり、外気の暑さと崩壊熱とで、照射室は 40℃ 近かった。ついでに、照射前後の保管はどうするのかと質問したら、輸送の保冷車を待たせておくのだという。」
こうした事が知れ渡り、米国最大手の業者は「不衛生な取り扱いや不潔な加工作業で食品を汚染したことを隠すための技術だと非難され、さらに照射肉は料理しても、判別できるくらい、照射牛肉は未照射に比べて味が落ちるので、従来通り冷蔵保存が必要なら照射する必要はないだろうと評価され」て33 ヶ月間全く利益なしで2004年に倒産しています。
衛生管理がしっかりしている照射食品でも10℃ 前後の家庭用冷蔵庫で保存すると、ボツリヌス中毒の危険があるのです。
参照・・照射魚介類中のボツリヌス菌について
http://foodirra.jaea.go.jp/dbdocs/001007000018.html
放射線照射の利用は、産業的には魅力がない
「多くの生鮮野菜は0.15kGy以下の発芽防止を目的とした照射処理では効果があるが、0.2~0.5kGyの殺虫を目的とした処理では褐変化したり腐敗しやすくなるものがある。
生鮮果実も0.5kGy前後の殺虫を目的とした処理では品質が変化しないが、1kGy以上の殺菌を目的とした処理では品質低下をもたらすものがある。
穀類も殺虫処理を目的とした放射線処理では有効であるが殺菌処理では粘度低下などの品質低下をもたらすものが多い。
肉類や食鳥肉類、魚介類も酸素共存下で照射すれば2kGy以上で異臭発生や味覚低下をもたらすものがある。
しかし、脱酸素した肉類や食鳥肉類、魚介類、または乾燥香辛料や乾燥野菜などは2kGy以上でも品質低下を起こさないものが多い。」脱酸素状態で照射した肉類や鳥肉類、魚介類ではボツリヌス中毒の危険性がある。
参照・・食品の照射効果と衛生化
http://foodirra.jaea.go.jp/dbdocs/006001003061.html
牛レバーは、病原性大腸菌中毒を契機に照射殺菌が検討されています。大腸菌のD値は0.2kGyですから、滅菌目的なら2.5kGy程度の照射が予想されます。異臭発生や味覚低下を招く可能性が高いです。それを避けるため脱酸素状態で照射すると、ボツリヌス中毒の危険性がある。
英国の委員会が「当調査会はどの有益な食品材料についても、放射線照射を利用することによって利益を見出すことができなかった。多くの研究によって考え出された放射線照射の利用は、産業的には魅力がない。」と50年前に結論しています。
食品照射から被曝影響を考える ②有害生成物 [放射能汚染]
参照・・使用済み核燃料の使用 国立衛研報 第125号(2007)
http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2007/107-118.pdf
このような状況から、米食品医薬品局FDAはいったん63年に出した照射ベーコンなどの許可を68年に取り消しています。 米食品医薬品局FDAは、放射線分解生成物の量を個別に照射食品ごとに推定し、それら放射線分解化合物の一人あたりの摂取量から安全性を確認する方法をとりました。ただし、その当時の分析測定法では有機溶媒で分解物を抽出し、その危険性を評価しています。これでは、有機溶媒で抽出できなかった不揮発成分の評価はできません。不完全です。
生体ではDNAは修復する仕組みがあります。酵素タンパクなどは修復ではなく、プロテアソーム(proteasome)やオートファジー(Autophagy)などで分解され、再合成で補充される。その間は、その酵素などが担っていた機能は低下せざるを得ない。またその分解や合成でエネルギーを使うことになる。
参照・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-21
東電核災害で追加被曝する地域に居住する人や生物は、そうした負担を東電によって背負わされている。そうした負担が強いられている。それを意識する、自覚症状として認知するとか、他者が調査して検出しないとわからない。
牛レバーを放射線照射してレバ刺しに? ①食品業者として [放射能汚染]
食品の放射能汚染とは違いますが、食品照射は食品≒生物への放射線の影響を調べる糸口になります。放射能汚染の主要な汚染源であるセシウム137は、放射線照射・食品照射の放射線源でもあります。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=08-02-02-12
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/housya/siryo/housya05/553.htm
照射後の牛レバーの輸送や保管管理が、悪ければ菌数は照射前にもどったり、かえって増えてしまいます。冷蔵で保管する食品では放射線照射が安心感を生んで、誤った保管管理になって、食中毒を増やしてしまう懸念を食べ物を扱っている身では持ちます。厚生労働省の市販流通食品・食中毒菌汚染実態調査では、牛肉、特に生食用牛レバーのO-157の汚染度は約2%です。残りは汚染されていないのだから、放射線照射で殺菌する必要はありません。大半の90%以上に不要な照射をおこなって、レバーは変質しないでしょうか?
放射線被曝と生命の進化(断章) 2014/04 [放射能汚染]
原始の海の深い所で生命が誕生した約40億年から38億年前の地球には、宇宙から放射線が飛び込んできます。大半は太陽からのものです。それはガンマ線などの電磁波と原子核が飛んでくる粒子線に大別されます。
光のエネルギー、強弱は何で決まるのでしょうか。光は波の性質があります。海の波の強弱は波高、つまり振幅の大きさです。可視光領域の光を出す電球を用意し、光をどんどん強くして振幅を大きくして太陽光からの紫外線と同じくらいのエネルギーをもった光を人体に当てれば、日焼けが起こるはずです。しかし、そのようなことは現実には起こりません。
これは光が実際は波長により異なるエネルギーを持っている粒子であり、それが幾つあるかでその光のエネルギーがきまると考えられています。このエネルギー量子を光子と言います。日焼け実験でわかるように、光子のエネルギーが物に与える影響の性質を基本的に決めます。光が強いと、影響を与える光子の数が多いので、影響を受ける数・量が増えます。
これを調理に応用したのが電子レンジ。波長12cm(周波数2.45GHz)の電磁波を照射して食品に含まれる水分の一部を蒸発・100度にして、その蒸気状態の水で食品全体を加熱する、内側から蒸すのです。この電磁波は、マイクロ波に分類されるので、物理学者は「電子レンジという名前が何とも紛らわしい。あれは本当は”マイクロ波調理器”と言うべきもの。」といいます。
この水の分解は、原子炉では冷却水の分解による活性酸素による機器の腐食や水素ガスの爆発の危険性という運転および保守上悪影響を及ぼします。生体の約80%は水です。ですから、生体にγ線が照射された時、タンパク質などに当たるより、水にγ線は当たる確率は高い。それで生成する活性酸素を介して間接的に影響を与える場合が多いと考えられます。
私たち人間など哺乳動物のガンマ線の致死線量は、5~10Gy・グレイ、細菌の胞子で10,000~50,000Gy、ウイルスで10,000~200,000Gyです。10Gyに相当するエネルギーをコタツで赤外線の光子で受けても、私たちは何の異変も起きない。しかし、X線やγ線で、その高エネルギーの光子で受けると死んでしまいます。コタツの赤外線の光子のエネルギーは0.9~1.7電子ボルトです。生体のタンパク質や水の化学的結合を壊すには不足で、それらの運動エネルギーつまり熱になってしまう。ガンマ線の光子は1万電子ボルト以上、例えば、セシウム137のガンマ線は約66万電子ボルトですから、吸収されるとタンパク質や水の化学的結合を壊してしまう。
中間子にはプラスとマイナスの電荷を持ったもの、電荷の無いもの、という三種類があります。電荷を持たないものは即2つの光子になり、その光子が電子を産む。その電子から光子が生まれ、そのプロセスを繰り返します。(電磁カスケード)
電荷を持った中間子は1千万分の1秒程度でμ粒子(ミュー)にかわります。μ粒子(ミュー)は電子の約207倍の質量をもった電荷をもった粒子です。エネルギーが高い=速度が光速にちかいものは、生成してから6Kmほど飛びます。その間、通過する原子の電子に電気的な力を及ぼし、飛び出せたります。この振る舞いはベータ線と同じですが、質量が207倍ですからμ粒子の軌道はあまり変わらないで通過します。エネルギーが低い=速度が遅いものは、百万分の1秒ほどで崩壊して、電子などがでます。その電子で電磁カスケードが始まります。
生命棲息の地が水深数百mの静かな海の底だったのは、宇宙線を水深で遮蔽できたからと考えられています。つまり当時の生物は、当時の浅い海での宇宙線や紫外線被曝には対処できないが、カリウム40などによる被曝でできる損傷を受けても、子孫を残す期間は生き延びられるように修復できる能力をもった者が繁栄したのです。放射線によるタンパク質やDNAなどの生体構造の化合物を直接破壊する直接的損傷と水H₂Oの放射線分解で生じる活性酸素などのラジカルによる間接損傷、DNAへの水素・Hや水酸基・OHの付加(化学修飾)を取り除き修復できる能力を持つ。それが少なくとも子孫を残す期間は生存を可能にする生物が棲息できたのです。
宇宙線が多いが、注ぎ込む太陽光のエネルギーを利用できるより浅い所に進出します。現在の宇宙線被曝量から試算すると、地表、海抜ゼロ付近では0.7mSv/年位、現在のカリウム40の内部被曝の約3.9倍です。ただ、紫外線がそのまま入射します。オゾン層ができていませんので、危険なUV-Cが吸収されずに海面に届いています。
紅色細菌(こうしょくさいきん)があらわれます。紅色細菌の光合成色素は、バクテリオクロロフィルといいます。この色素は、この色素は赤外線領域の波長もよく吸収しますが、紫外線の領域のUV-Aという波長域も吸収します。
http://nationalgeographic.jp/nng/member/0505/f_1_ss2.shtml)
宇宙線の粒子線は原子核ですからプラスの電荷を持っています。高速で飛んでくる電子はマイナスの電荷を持っています。運動する電荷は電流が流れているのと同じですから、磁場を作ります。この磁場と地球に出来た磁気圏の相互作用で、宇宙線の多くの部分、荷電粒子は地磁気線に沿って周回運動を繰り返しながら、一部はオーロラを出現させて、マイナスの電荷の電子は東方向に陽子などプラスの電荷をもつものは西方向に拡散し多くが到達しなくなりました。
水深が浅くなるとUV-Cの被曝が増え、DNAが損傷します。DNAの損傷を修復する能力は、宇宙線被曝の減少で余力が生じています。浅く太陽光が燦々と降り注ぐ浅い海に生命が進出できます。浅い水深では、赤い波長も減衰が少ない。水深1メートルで赤い波長の減衰は約30%、青と緑の波長は約5%です。それで赤い波長と青い波長を吸収利用し、緑の波長は反射するつまり緑色に見える葉緑素で光合成を行うシアノバクテリアが繁殖します。
葉緑素の色素はバクテリオクロロフィルの一部が構造変化したのです。「バクテリオクロロフィルaの合成系を持った光合成細菌は、2,3の遺伝子を失うだけで、クロロフィルaの合成が可能である。クロロフィルaの出現には時間がかかったが、代謝系としては昔から完成していた」(田中 歩、http://sourui.org/pdf-files/04Tanaka.pdf )このような変異は、数億年の間に紅色細菌でいく度も起きていたと思います。この変異が生存に有利になる環境、浅く太陽光が燦々と降り注ぐ浅い水深に進出、生息できなかった。バンアレン帯が形成され宇宙線被曝の半減という環境変化が、進出を可能にしたのです。それでシアノバクテリアが繁殖したのです。