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生活保護、不正受給1万9700件 09年度、過去最多に [日々の雑感]

19日に毎日新聞の野倉恵記者の<生活保護、不正受給1万9700件 09年度、過去最多に>という記事を目にしました。

= 生活保護の不正受給と認定された件数が09年度、全国で約1万9700件と過去最多になる見込みであることが厚生労働省や自治体などの調べでわかった。長引く不況の影響が背景にあるが、不正の内容は、多くの自治体で、収入の無申告とみられる。09年度の生活保護費の国と地方の負担分の総計は過去最高の3兆72億円に達する。厚労省は自治体と協議のうえ、受給者への就労支援強化や不正受給対策を柱とした生活保護法改正案の今国会への提出を目指す。

不正受給件数は99年度の4665件から毎年増え続け、04年度に1万件を突破。金額も99年度は約33億円だったが08年度には106億円に達し、09年度も100億円を超えそうだ。09年度の件数は大阪市が全国の1割以上の2012件(11億5300万円)を占める。
受給者は報酬や年金などの収入があれば申告しなければならず、収入に見合った金額が受給費から差し引かれる。無申告は、受給者が認識していない場合もあるが、故意にしないケースも少なくないという。20人に1人が受給者の大阪市は「受給者数の急増で対策が追いつかない」という。

大阪市でケースワーカー経験がある松崎喜良・神戸女子大教授は「不正受給はケースワーカーが綿密に対応すれば相当減らせるが、現場に余裕はない。働いて得た報酬分を保護費から差し引かない仕組みは就労の動機づけにはなるが、高齢や持病で働けない人もいる。社会参加や就労支援をどう具体的に進めるか。『最低限度の生活』とは何かを国民的に議論することが必要だ」と指摘する。

厚労省は近く、国と地方の検討会を設置。(1)働いて得た収入分の保護費を差し引かず、自立資金として保管できる(2)社会活動への参加に自治体が指示・指導できる--仕組みが可能かなどを検討。自治体の調査・監督権限の強化も検討する。
【野倉恵】=

人間は間違える動物で聖人君主ばかりではないのですから、ある程度の不正や誤りは自然の理です。保護世帯数が増えれば、不正受給の絶対数が増えるのは当然です。2008年度の保護世帯数(1か月平均)は114万世帯で不正受給は1万8623件。2009年度は127万世帯で13万、約11%増えているのですから、不正受給の絶対数が増えるのは当然です。ですから、<09年度、過去最多に>のニュースバリューは、犬が人に噛み付いたレベルのです。






 



私たちにとって、益ある報道とは?



保護世帯数に対する不正受給数が同じ比率なら2009年度は2万746件、ですが実際はそれより千件も少ない、1万9700件です。金額も、99年度が1件当り約71万円で2008年度が約57万円と減っています。2009年度も大阪市で1件当り約57万円。ですから2009年度は、過去最大の不正受給数ですからが総金額も最大になると予測できます。これらの根本には、生活保護世帯数・人数の増加があります。

神奈川新聞の「保護世帯数の伸びに比例し、不正受給件数も右肩上がり」の表現が適切です。2010年10月時点で約142万世帯に達していますから、来年の今頃、野倉記者はまた<10年度、生活保護、不正受給◎◎件、過去最多に>と数字だけ入れ替えた記事を書くのでしょうか?

私たちにとっては、不正受給の実情、変化などから、何が見えるのか?生活保護の受給世帯数が増え続けていく原因の方がはるかに価値のある情報であり、現場を歩き、専門家に尋ね、検討し、専門知識のない一般の人たちに解る様に伝えることが、新聞記者の腕、技能ではないでしょうか?解る様に伝える記事がお金(新聞代)を出すに値するものではないでしょうか。

 99年度は70.4万世帯(1か月平均)で不正受給件数は4665件、1万件を突破した2004年は99.9万世帯、2008年度は114万世帯で1万8623件で、2009年度は127万世帯で不正受給1万9700件です。世帯数の増加よりも、不正受給の増加の方が大きい。これは事実ですから、これだけでは新聞記事としての価値は低い。

野倉記者は、「受給者は報酬や年金などの収入があれば申告しなければならず、収入に見合った金額が受給費から差し引かれる。無申告は、受給者が認識していない場合もあるが、故意にしないケースも少なくないという。20人に1人が受給者の大阪市は『受給者数の急増で対策が追いつかない』という。」と野倉記者は、実態を明らかにしないで、行政、公務員の怠慢で、不正が蔓延っているとの見解を伝えている。

受給者への保護費支給や自立支援をするケースワーカーの横須賀市の「1人平均担当世帯数は国の標準数(80世帯)を7・7世帯上回り、過重な状況。」「不況や高齢化に伴い急増する新規申請の処理に追われ、ケースワーカーによる家庭訪問調査が追いつかないのも、増加に歯止めがかからない一因」「半年前から月額5万円ほどのアルバイト収入があったが申告していなかった―。横浜市内の男性は課税台帳に記載された所得額で就労事実が発覚。その後の生活保護費から毎月約8千円を市に返金している。・・担当者は『発覚後に保護費の一部で返金するとさらに生活が苦しくなり、新たな”隠れ就労”につながる』と悪循環を懸念している。」との神奈川新聞の記事の方が具体的で解ります。

2010年10月現在の保護世帯の43%が高齢者世帯、22%が傷病者世帯、11%が障害者世帯、8%が母子世帯です。この84%の世帯の人たちは、年齢や本人の病気・障害などの事情や、障害を持つ家族や幼子の世話などで、フル・タイムで働くのは難しい。それで、月額5万円ほどのパートやアルバイトなどになる。

16%が「その他世帯」で、リーマンショックに端を発した不況により、職場を失った非正規雇用者などで急増している世帯です。先ほどの就労を阻害する要因が少ないと考えられる人々です。こうした人たちには、技能研修などの支援が有効。生活保護以前にそうした支援があれば良いのですが、失業保険で行われるそうした就労支援を受けれません。ご存知のように厚労省は、派遣の非正規雇用者の失業保険加入を受け付けていないからです。現在の経済状況では、こうした人たちも、月額5万円ほどのアルバイトなどになるのでは?

1年やれば60万で、不正受給1件当りの金額57万円になります。子供が自分の小遣い位は自分で稼ぐとアルバイトをする。それが申告されてなければ、「働いて得た収入の無申告」の不正受給で、毎月の生活保護費が減らされ、新たな”隠れ就労”、不正を再び繰り返す動機になる。
逆に申告すれば、その分、直ちに減らされる。つまり、働いても働かなくても、収入は保護費より大きくならない仕組みです。これで、働いて自立する意欲が育つでしょうか?

より詳しくはこちら

働く意欲、能力のある人には、就労して生活保護から脱する、それが難しい高齢、傷病、障害のある方は、それなりに働いたり、社会参加して日本で共に暮らしていく、それが生活保護制度の目的・理念ではないでしょうか。野倉記者の不正は許せない視点からの役人がビシビシ取り締まれという意見が、これに益するでしょうか。

野倉記者は厚労省の記者クラブの一員であり、厚労省のこうした情報を独占する立場の人です。それゆえに、犬が人に噛み付いたレベルの<09年度、過去最多に>で記事が書ける。まず、この情報・報道の独占を廃して、ネットなどで誰でも入手できるようにする。広報報道よりも、現場を歩き専門家に尋ね、各々の視点で検討し、一般人に解る様に伝える競争で勝負する、自ずと読む見る我々が考える報道を育てるべきでは?


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