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蜂蜜と乳幼児 1歳以下には与えないで下さい警告の意味 2011-06 [甘味ー砂糖、蜂蜜]

2011年2月に小針店で発行した畑の便りの再録です。



目じりの小じわ(からすの足跡)、おでこの横じわ、眉間の縦じわなどを注射で治すアンチエイジング美容医療・ポッドクスが行われています。年に数回は数万円の注射をするのです。顔に注入されるのは、ボツリヌス菌が産生する毒素(ボツリヌストキシン)です。精製し希釈したものを、顔の筋肉、しわを作る表情筋に注入します。しわ(シワ)の原因になっている表情筋をコントロールする神経を毒素で麻痺させて、その動きを弱めることによってしわ(シワ)が浅くなり目立たなくなくする美容医療です。効果は通常4ヵ月~6ヵ月程度ですので、年に数回は数万円の注射をします。

 



その有用な毒素ボツリヌストキシンをつくるボツリヌス菌が含まれているかもしれないからと、蜂蜜を1歳以下の乳幼児に与えないよう厚労省は指導しています。



この二つを読むと混乱しますね。それをとく鍵は、この毒素とそれを産出するボツリヌス菌の生態にあります。




ボツリヌス菌の生態と
毒素の性質



 ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)は、1gで約100万人を殺傷できる自然界に存在する最強毒素で
す。ボツリヌス菌は、芽胞の形で土壌中や川底、海底など何処にでもいる菌です。しかし、空気(酸素)のないところでしか増殖・発育できない嫌気性菌です。増殖つまり毒素が作られる環境が限られています。
土いじりで手に着いたとしても、大気に接している、つまり酸素が有る環境なので増殖できません。毒素が出来ません。缶詰、ビン詰、腸詰など空気が遮断された食品で、酸素がない状態になり、そしてこの菌が居ると増殖、つまり毒素が産出されます。
毒素自体は加熱で破壊されるのでビンや缶などでの加熱処理で無害になるのですが、芽胞の形で休眠状態のボツリヌス菌は死にません。そして酸素がない状態になり、加熱処理で生存競争相手の他の菌がいなくなった缶やビンの中で増殖=毒素生産します。このボツリヌス毒素、自然界に存在する最強の神経毒素ですから、極々微量でも有害です。そのボツリヌス毒素を含んだ食品を摂ると毒素型食中毒になります。



ボツリヌス毒素は小腸で吸収され、リンパ管を経て血液中に入り、全身をめぐります。神経と筋肉の接合部に到達したものが悪さをします。神経の末端からから筋肉へ”縮め”という指示を伝達する情報伝達物資が分泌されてます。そのアセチルコリンの分泌・放出を阻害するのです。アセチルコリンを使う副交感神経、運動神経が遮断されます。脳神経には入りません。それで末梢性の神経麻痺症状が顕れます。


ボツリヌス菌毒素の構造と作用   



ボツリヌス食中毒と
小児ボツリヌス症


 このボツリヌス食中毒(食餌性ボツリヌス症)は、古代ギリシャ・ローマ時代からソーセージを食べることによって起こる特異な中毒として知られていました。それでボツリヌス菌は腸詰め菌とも呼ばれます。増殖=毒素産出の条件が特殊ですから、発生頻度はかなり低い。しかし最強の神経毒素ですから、致死率が高い。摂った毒素の量と型によりますが、呼吸筋の麻痺による呼吸困難に陥って、自然経過では10~20%の人が死に至ります。

ボツリヌス食中毒の典型的症状、経過は、まず一般的な下痢、腹下し。次いで発熱はほとんどなく、意識もはっきりしているのですが、神経麻痺症状が現れてきます。視力の低下、文字や物体が二重に見える複視、瞳孔散大、まぶたが垂れる眼瞼下垂、対光反射低下などの視覚異常とともに、口内の渇き、しわがれ声、発語障害、嚥下障害などの咽喉部の麻痺症状。さらに進むと腹部の膨満感、吐き気、嘔吐、歩行異常、頑固な便秘、尿閉、四肢の麻痺、全身の筋弛緩などの症状が現れます。呼吸筋の麻痺による呼吸困難に陥って、10~20%の人が死に至ります。



ボツリヌス菌は15℃以上になると活発に増殖します。増殖して毒素が出てくると容器がふくらんできます。缶詰、レトルトの真空パックは膨張していたら食べないように。瓶詰の場合は蓋を開けたときの発泡や臭いなどの異常に気をつけましょう。ボツリヌス菌は自然界や動物の腸管に生息していますので、泥のついた野菜や魚は十分に洗いましょう。


さて、人間の腸の中は、酸素が極めて少ない状態、ボツリヌス菌が増殖しやすい環境です。コレラ菌や病原性大腸菌は酸素があっても無くても増殖できる菌で、酸素が無い腸の中でも増殖してコレラ毒素やベロ毒素を産出して人に害をなします。この好条件の環境でもボツリヌス菌は増殖できません。成人では、外科手術や抗菌薬の投与によって腸内細菌叢の破壊や菌交代現象がおこっている場合にのみに限って、腸管内にボツリヌス菌が定着、増殖します。これの毒素中毒を成人腸管定着ボツリヌス症といいます。正常な腸内の細菌叢の微生物は、ボツリヌス菌を寄せ付けないのです。押さえ込んでしまうのです。

1歳未満の乳児では、腸内の細菌叢が乳酸菌が多いなど成人とは異なります。このためボツリヌス菌の定着と増殖がおこりやすいのです。これを乳児ボツリヌス症といいますが、致死率は2%程度と食中毒に比べるとかなり低いのです。


乳児ボツリヌス症は、便秘傾向にはじまり、全身の筋力低下がおきます。泣き声や乳を吸う力が弱まり、頸部筋肉の弛緩によって頭部を支えられなくり、”首が据わらない”状態になります。顔面は無表情になり、散瞳、眼瞼下垂、など食中毒と同様の症状が現れます。致死率は食中毒に比べると低く2%程度です。


海外では乳児の突然死症候群(SIDS)には本症による死亡が約5%含まれると推定されています。日本での突然死あるいは死に至らないまでもSIDSニアミスを起こすような症例については乳児ボツリヌス症が関与している可能性が指摘されています。

治療は通常、呼吸管理下での対症療法およびウマ抗毒素血清の投与が行われます。抗毒素療法で致命率は4%前後に下がります。抗菌薬投与は、殺菌された菌体から放出される毒素によって症状を悪化させるおそれがあるので、あまり行われません。

抗毒素療法は乳児ボツリヌス症では行われません。抗毒素療法で致命率は成人で4%前後ですが、乳児ボツリヌス症では致死率が2%とそもそも低い。抗毒素血清の乳児での危険性が明らかでないからです。乳児ボツリヌス症は、自然経過の場合、入院期間が平均6.7週。そして便に含まれる菌数と毒素量が多く、検出されなくなるまで発症後2、3カ月かかる場合が多いので、二次感染防止など看護に注意が必要です。



日本では、発生が少ない


日本では、食中毒の発生は1951年に最初の報告があり1980年代前半までは毎年数件報告され、その後は発生は散発的になり2007年以降は報告がありません(2010年3月6日現在)


詳しくは国立感染症研究所のサーベイランスのIDWR(感染症発生動向調査 週報)の中の年別一覧表

乳児ボツリヌス症は、1986年の千葉県の最初の症例から2010年3月6日現在まで25例です。米国では年に70~80件ありますが、このように日本は発生頻度の低いのです。1990年以前はハチミツが原因食品と考えられる症例がほとんどで、そのため1987年に1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてはならないとの厚生省通達がだされました。



その結果、近年はハチミツ摂取歴のない症例のみになって、かつ感染源が不明です。「乳児ボツリヌス症の原因毒素型はA、B型が多く、土壌にこれらの菌型が多い外国から、輸入食材などに芽胞が付着して持ち込まれている可能性も考えられる。」
(国立感染症研究所の病原微生物検出情報月報2008年2月号




ボツリヌス毒素の医療利用


 こうしたボツリヌス毒素の研究は、生物・細菌兵器として第二次世界大戦当事に進みました。それで生物兵器禁止条約で国際的な規制がかけられ、日本ではボツリヌス菌の所持・使用・移動は大臣許可が必要です。ボツリヌス毒素は、医療関係者の0.1mg以下や製剤の所持を除いて、大臣許可が必要です。


ポツリヌス毒素の筋弛緩作用を利用して2010年現在、83ヵ国で医療用に用いられています。日本でも1996年から使われ2009年に脳性マヒ者の筋肉が常につっぱって硬くなる「痙性(けいせい)まひ」の緩和治療に用いています。2009年2月現在、約8万人以上の方が投与を受けています。



 西日本新聞の記事より


 脳性マヒは生まれつきの脳の異常や仮死状態での出生が原因。脳の運動中枢が傷ついたため、手や足の筋肉が常につっぱって硬くなる「痙性(けいせい)まひ」と、首や肩、腕などが意思と無関係に動く「アテトーゼ型」が代表的です。


 首の不随意運動が頻繁に起こると、首の骨の変形やずれて神経を圧迫し、手足の痛みやしびれ、腕があがらない、歩けないといった二次的障害があらわれる。背中の緊張のために強く体を反らせてしまうで車椅子にも乗れないで寝たきり生活などの障害があります。この脳性麻痺による強い筋緊張を緩め、不随意運動やけいれんなどを軽減させQOL・生活の質を向上させる目的でポツリヌス毒素を用いるのです。


座位やうつぶせの姿勢を楽に保てる▽長く眠れる▽食事がしやすくなる▽寝たきりから車いすが使えるようになる▽疼痛が軽減される▽鎮痛剤などの服薬量が減る▽衣服の着脱など日常の介助がしやすくなったりしています。


 ポツリヌス毒素の成人での致死量は、体重1000g当たり百万分の1グラムですから、投与量には細心の注意が必要です。注射する部位の選定にも熟練が必要です。ポツリヌス毒素製剤の使用には、講習会を受けねばなりません。



小児脳性まひの下肢痙縮に伴う尖足について


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人工蜂蜜も天然蜂蜜も同じ扱い 伝統の甘味、蜂蜜 2007-21 [甘味ー砂糖、蜂蜜]

2007年5月22日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。



人工蜂蜜も天然蜂蜜も同じ扱い


 もう一つは、これを混ぜても検出できないのです。例えば、精製はちみつに1%のアカシア蜂蜜を入れ、花粉、香料、ビタミンなどを加え色合いや匂いを調整した人工物と、100%アカシア蜂蜜と現在の分析技術では区別できないのです。そして全国はちみつ公正取引協議会は、この人工物も天然蜂蜜と同じ扱いにしています。両方に「公正マーク」のお墨付き添付を公正取引委員会は認可しています。ただし、精製はちみつを使用したものには「純粋」や「Pure」という文言は使えません。マー、分析しても分からないのですからね。




農水省などの摘発


 2006年10月に、農水省は異性化糖を最大で約二割使用しているにも関わらず、商品名に「純粋」と冠して、あたかも純粋な蜂蜜であるかのように販売した、不正表示が確認されたので、「加工食品品質表示基準第6条第3号=その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示=の表示禁止事項に該当することから、同社に対しJAS法第19条の14第1項の規定に基づく指示を行いました。」と発表しました。


 農水省によれば、サンプルが残っていた2004年4月から2006年7月に調査に入るまでに約1300トンの販売を確認。このボーソーハチミツ株式会社は、「蜂蜜販売業者の末端で起きている価格競争が主な原因です。異性化糖は蜂蜜よりも(1kg50円前後と)原材料費が安いので、異性化糖を混ぜるとその分だけ安い蜂蜜ができるのです。また、(異性化糖は加熱すると着色するので)蜂蜜の色の調整にも使っていました。異性化糖は、とうもろこしのでん粉からとれる糖で、果糖ブドウ液糖。砂糖や水あめと違い、異性化糖の成分は蜂蜜と良く似ているので蜂蜜に加えても成分や味は余り変わりません。今後このようなことのないよう十分注意いたします。」と答えています。


2007年5月14日 読売新聞の記事

社団法人「全国はちみつ公正取引協議会」(東京都中央区)の会員業者の商品に人工甘味料などの混入疑惑が発覚した問題で、同協議会の幹部は14日、都内で記者会見し、1982年以降25年間、混入の疑いを把握してもその都度、十分な調査を行ってこなかったことを明らかにした。
 同協議会は、昨年度の検査で陽性となった業者に対する調査を始めており、故意による混入が確認されれば、処分や業者名の公表を行う考えだが、消費者団体からは、対応の甘さを厳しく指摘する声もあがっている。



 経済産業省内で会見した藤井新三副会長は「お騒がせしたことを申し訳ないと思っています」と切り出し、「混入が疑われる会員に、警告・注意などの措置を講じてきたが、公正取引委員会への報告を怠り、十分な調査を尽くしていなかった。反省している」と謝罪し、対応の甘さを認めた。
 同協議会によると、異性化糖(でんぷんなどを原料とする人工甘味料)の含有をチェックする定期検査は82年から始まった。陽性反応が出た場合、文書で「注意」や「警告」を出すだけで、規約で定める事情聴取など詳しい調査は行っていないという。



 同協議会の事務局長は代々、公正取引協議会制度を熟知する公取委OB。会見に同席した岡本光治事務局長は「規約は知っていたが、定期検査は品質管理の一環でやっており、自発的に改善してもらうという前提があったので……」などと弁明を繰り返したが、2000年度以降の検査で3回にわたり注意を受けた業者もいたという。
 報道陣から“身内への甘さ”を指摘されると、藤井副会長は「そう思われても仕方がない。意識的に偽物を作ったのかどうか、調査をやれば区別できたかもしれない」と語った。
 今回の調査対象は、06年度に異性化糖などを調べる検査で陽性となった商品を販売した会員業者14社のうち、すでに退会した1社を除く13社。各社に対し、事実関係を報告する文書の提出を求めており、その内容を精査したうえで現地調査を行う。
 藤井副会長は「故意による混入などが確認できれば、厳正に対処する」と述べ、会員業者の処分や業者名の公表を検討する考えを示したが、05年度以前の検査で陽性だった商品については調査は行わないという。


 ④の”加糖はちみつ”が①の天然の”はちみつ”に化けていたケースです。玉川大学の中村純教授は、「以前は単に砂糖や水あめを加えた蜂蜜がまがい物の蜂蜜として出回っていましたが、今では糖の組成分析によって比較的簡単に検出することができるので、現在、単に砂糖や水あめを加えただけのまがい物の蜂蜜を問題視する必要はありません。
 近年、問題となっているまがい物の蜂蜜には、砂糖や水あめの代わりに異性化糖が使用されています。」


 異性化糖はでん粉から作られる、ぶどう糖と果糖とごく少量のオリゴ糖からなる液糖です。清涼飲料などの原料欄に「ぶどう糖果糖液糖」または「果糖ぶどう糖液糖」と表示(50%を超えるほうが先書)されます。でん粉を加水分解してぶどう糖を作り、その一部を酵素で果糖に変換した物です。ブドウ糖と果糖は、分子内の原子は同じです。化学的には「分子の原子数を変えないで、分子内の結合状態を変える」ことを異性化といいます。


 中村教授は「異性化糖が開発された当初、原料はトウモロコシに限られていました。ですから、炭素安定同位対比法を用いて、蜂蜜中の炭素の同位対比が蜜源にはなり得ないトウモロコシ型かどうかを判別することで、異性化糖混入を見分けることができました。


 しかし、異性化糖の開発技術が進み、トウモロコシ以外の作物からも異性化糖が作られるようになってからは、炭素安定同位対比法では的確な判別が難しくなりました。


 そこで、最近では薄層クロマトグラフィーを使って蜂蜜に含まれているオリゴ糖を分析し、異性化糖の混入を見分ける方法を用いて検査することもあります。しかし、この方法を用いた場合、特定の蜜源に由来する蜂蜜では誤った検査結果が出易いといった問題もあり、現状では異性化糖の混入を確実に見分ける検査方法が確立されているとは言えません」


 異性化糖は防黴効果があり、高濃度でも結晶性が少なくて安定なので、加えても蜂蜜の防腐性を余り損なわず、透明な色合いで固まらないという消費者の要求に答えた品質になります。


 ボーソーハチミツは蜂蜜を瓶詰めする工程で異性化糖を加えて量を増やしていましたが、別に蜂蜜に異性化糖を食べさせ、安く採れた蜂蜜を天然ハチミツとして売るケースもあるそうです。実際に花畑(蜜源)に蜂を放して蜜を採取するわけではないため、花畑を維持・移動する手間が省け、花のない時期、場所でも安定して採取できるのです。


異性化糖について




まず蜂蜜の日本農林規格・JASの設定が先


 今回の事態に小林農林水産事務次官は「(ボーソーをきっかけに協議会に)再調査するよう公取委の方で指導した」「不適切な表示につきましては今後とも私どもJAS法という立場で、対応を適切に行ってまいりたい」。しかし、この問題の根底には天然物も人工物も一緒にしている蜂蜜の定義があります。JAS法というなら、まず蜂蜜の日本農林規格・JASの設定が先です。


 常識的にも、国際的な規格「ミツバチが集め、ミツバチが持つ特殊な物質による化合で変化・貯蔵・脱水し、巣の中で熟成されたもの」に適合した、先の規約でいえば蜂蜜は”はちみつ①””巣はちみつ②”と、”巣はちみつ入りはちみつ③”、それ以外は蜂蜜加工品・人工蜂蜜など別の分類にする。そうなれば、蜂蜜に異性化糖を食べさせた物も蜂蜜から排除されます。


 蜂蜜に関して養蜂農家の団体(農水省の天下り先)と販売業者の全国はちみつ公正取引協議会(公取委の天下り先)があり、先細りしていく天下り先の霞ヶ関レベルの争奪戦に表示問題が使われているとも見えます。


 はたして消費者や販売業者が安心して蜂蜜を食べれる、販売できるようになるでしょうか?


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蜂蜜はなぜ結晶するのか? 伝統の甘味、蜂蜜 2003-04b [甘味ー砂糖、蜂蜜]

2003年10月14日、2007年5月22日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。




 


蜂蜜はなぜ結晶するのか?
結晶しない蜂蜜の秘密


 蜂蜜は、温度が低くなると、結晶してきます。この結晶は、蜂蜜中にある花粉などを核にブドウ糖が結晶し成長します。ですからブドウ糖の比率の高い蜂蜜は結晶しやすいのです。


 結晶しにくくする方法は一つは、製造工程で花粉などをろ過して取り除いてしまう。花粉は、貴重な栄養成分ですから、これはもったいない。


 もう一つは、シロップを混ぜてしまう。デンプンから作られる異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)をいれると花粉の密度が下がり、結晶の種が少なくなりますから、結晶し難くなります。「食べてもわからないかもしれません。でも栄養はない、ただ甘いだけ。蜂蜜は蜂がみずからの身体を通してうみだした滋養です。(はちみつ職人40年、山岸武吉さん)」。



 でも、湯せんなどして、温めてやると、とりあえずは元に戻ります。(45度を超えないように注意してください!それ以上では成分が損なわれます)





蜂蜜の品質表示で
見分けられるか?


 日本農林規格・JASには蜂蜜の品質規格がありません。仲間内の規約があるだけです。業界団体、全国はちみつ公正取引協議会の規約です。1969年に設立され、景品表示法で不当表示で摘発されないための自主ルール、公正競争規約をもうけ公正取引委員会の認可を受けています。公取委のお墨付きをいただく見返りなのでしょうか、協議会の事務局長は公正取引委員会の退職者、いわゆる天下りです。


 その規約では、蜂蜜には6類型あります。
 社団法人 全国はちみつ公正取引協議会 のHPでは4種類のごとく書かれていますがその他公開項目(PDF)で公開されている公正競争規約では6類型です。


①みつばちが植物の花みつを採集し、巣房に貯え熟成した天然の甘味物質という”はちみつ”。
②ハチの巣全体又は一部を封入した、つまりプロボリスなどが残っている”巣はちみつ”と、
③それに蜂蜜を加えた”巣はちみつ入りはちみつ”。



④ 異性化糖、水飴などの糖類を加えたもので、蜂蜜の含有量が60%以上の”加糖はちみつ”。




⑤蜂蜜から樹脂などをつかって臭い、色等を取り除いた、以前は脱臭脱色はちみつと言っていた”精製はちみつ”
⑥、蜂蜜に精製はちみつ、ロイヤルゼリー、花粉、香料、果汁、ビタミンを加えた人工蜂蜜とでもいうもの。


 現在、販売されている蜂蜜の95%は中国産です。その中には、色や匂いで不適物が多くあります。それを脱臭脱色したもので、2002年に設けられ類型です。蜂蜜の主成分のブドウ糖、果糖は炭水化物ですから、豊富な栄養は主に花粉、蜂の体内生産物に由来します。それが各々の蜂蜜の特有の色や匂いを産んでいます。それを脱臭脱色するのですから、栄養的にはブドウ糖、果糖の甘味だけです。


 これの特徴は、精製しない蜂蜜を飲料水に入れると白濁してしまいますが、精製はちみつでは白濁しません。それで清涼飲料、はちみつ入りと表示される飲料に使われています。また、蜂蜜は低温下では結晶化します。結晶の元になるのは、ブドウ糖と花粉です。ブドウ糖の比率が高いと結晶しやすく、花粉があるとそれを核に結晶化が始まりやすい。精製はちみつは花粉が除かれているので、元の原料になった蜂蜜より結晶しにくいのです。


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蜂蜜による蜜の「醸造」 伝統の甘味、蜂蜜 2003-04a [甘味ー砂糖、蜂蜜]

2003年10月14日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。





蜂蜜による蜜の「醸造」


蜂蜜は、古事記にも養蜂の記述があるくらい昔から甘味料として、食料として親しまれてきました。


 ミツバチは朝気温が高くなると飛び始め、日中暖かくなってくると働き蜂(蜜を採る外勤蜂)は巣の外へ出て、花と巣を一日何回も何回も往復します。


 働き蜂は後ろ脚に花粉を抱え、腹の袋、蜜胃を花蜜でいっぱいにして重そうに何度も何度も運びます。花蜜には水分が多く、甘味の大半はショ糖(砂糖)で糖の濃度は10~40%程度です。


 巣に帰った蜂は、巣房の中にいる働き蜂(内勤蜂)に口移しで蜜胃の中の蜜を渡します。蜜胃の中でショ糖は蜜蜂の唾液腺から分泌される酵素によってブドウ糖と果糖に分解されたり、様々な糖類(25種確認されている)ができます。


また、蜂は花粉を食べますが、花粉には、ミネラルやタンパク質など様々な成分、栄養素が含まれています。これに由来する成分が加わります。蜜胃で濃縮し巣房(蜜巣)に貯蔵します。蜂は巣の室温を34℃前後に保ち、風を送るなどして蜜の水分蒸発を早めます。蜜蜂が加えた酵素で様々な成分ができます。


 



酒造りの古いやり方は、乙女が噛んで、それをツボなどに貯えて発酵させるのですが、よく似ています。それで蜜蜂による蜜の「醸造」と呼ばれます。 やがて水分が20%以下になると、蜜蜂は蜜ロウで薄い蓋をかけ、周囲からの水分の吸収やゴミの混入を防ぎます。人間は遠心分離機のような採蜜機に巣をかけて取り上げてしまうわけです。(ハチミツは通常水分23%以下、糖度65%以上)。



蜂蜜の採り方


 



 



蜂蜜の栄養成分は極めて複雑です


大半は果糖、ブドウ糖、ショ糖など糖分の混合物ですが、ロウ状の成分、花粉、脂肪、タンパク質・酵素、有機酸、ミネラルなど様々な成分が含まれます。現在180種以上の栄養物質がしられていますが、これは蜜(花粉)源となった花によって違います。



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