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「リスクコミュニケーション」Risk Communication とは?右往左往せずに済むには。 [日々の雑感]

烏賀陽(うがや)弘道 @ugaya さんの 2023年9月7日のツイッター[X] より引用・虹屋ツルマキの要約
1)「リスクコミュニケーション」の鉄則中の鉄則は「いいシナリオ」(楽観的シナリオ)と「悪いシナリオ」(悲観的シナリオ)の両方、あるいは真ん中の「中庸のシナリオ」の3つを公衆の前に提示することです。
2)福島第一原発事故でばらまかれた放射性物質の低線量長期被曝による健康への影響 にしても
アルプス水排水の環境に与える影響 にしても、
政府・東電が正しいリスクコミュニケーションをするなら、少なくとも「悲観的シナリオ」と「楽観的シナリオ」の両方を公衆に提示しなくてはなりません。
3)正しい、本来の意味でのRisk Communication とは、悲観的・楽観的シナリオ両方を提示したうえで「現実はこの間のどこかにあります。みなさんはそれを知ったうえで行動を決めてください」と公衆の自主的判断に委ねる。
4)正しい「リスク・コミュニケーション」とはまだ起きていない未来のクライシスについて、可能性を提示して公衆に判断を委ねる、決定権を公衆に託するという一種の「インフォームド・コンセント」です。
  インフォームド・コンセント(informed consent)とは、「説明を受け納得したうえでの同意」
5)ところが、政府・電力会社のリスクコミュニケーションは、一貫して「楽観的シナリオ」しか公衆に提示していません。これは本来、片翼の飛行機、一足だけのサンダルのようなもので、機能しないのです。
6)福島第一原発事故前、政府・電力会社は一貫して「楽観的(というか空想的)シナリオ」=「日本の原発では甚大事故など起こり得ない」しか公衆に提示してきませんでした。だから「悲観的シナリオ」が現実になったとき、住民も市町村役場もどうしていいのかわからなかった。
7)無論、「日本の原発では甚大事故など起こり得ない」という「楽観的(というか空想的)シナリオ」しか用意していなかったのですから、福島第一原発事故が起きたときは、政府も東電も対策などありませんでした。彼らが打った対策は事前に用意したものはほぼゼロで、ほとんどアドリブに近いものでした。
8)汚染された市町村を除染して強制避難を解除するときも、最高年間20ミリSV(事故前は1mSV)の場所に人間を住まわせたときの低線量長期被曝の影響について、政府東電は「楽観的シナリオ」しか公衆に提示していません。「悲観的シナリオ」がすっぽり抜けているのです。
9)「リスク」とは「まだ起きていない未来のクライシス」のことですから、100%正確に予測することなど不可能です。だからこそ、せめて大雑把にでもいいから「楽観的」「悲観的」の2種のシナリオぐらいは用意しておくのです。
10)この「悲観的シナリオを提示しない」「楽観的シナリオだけ提示する」という政府・東電の姿勢は、ALPS水排水の海洋への影響を考えるにあたっても、まったく変わりませんでした。
11)ところがRisk Communication の意味を正確に把握している国は、日本政府が楽観的シナリオしか提示しないことに気づいています。だから日本政府は外国から信用されません。サンダルを片方だけ売りつけるようなことをしているからです。
12)「悲観的なシナリオを提示したら住民はパニックする」という愚論をよく聞きます。これは誤りです。住民をバカにしている、子供扱いしているのです。
13)これは原子力ムラ内部の人から聞いた話。
とある核燃料輸送の計画を道路沿線の住民に説明したとき。「安全対策はP,Q,R,と万全にしております」と「楽観的シナリオ」だけ提示したら、住民は納得せず話し合いは物別れに終わった。
14)そこで一計を案じて
「核燃料輸送中に事故が起こる可能性があるとすれば、国道PがQ峠を越える山道を走るとき、運転を誤って核燃料ごと車両が谷底に転落するシナリオがある。そのとき落下はR メートル。燃料容器の落下耐性試験データはXメートルまでは大丈夫。しかしYメートル以上はデータがない」と「悲観的シナリオ」を提示したら、住民は「なるほど」と納得してしまった。
15)もちろん「楽観的シナリオ」は「車両が事故を起こさず、核燃料が無事に国道Rを通り抜ける」ことです。
16)つまり「住民がパニックしないように」「怖がらせないように」と無益な忖度をして「楽観的シナリオ」だけしか提示しないと、「じゃあ、事故が起きたとき(悲観的シナリオ)の備えはないのか」と住民はかえって不安になるのです。
17)欧米諸国はこうした「楽観的シナリオしか提示しないと、公衆はかえって不安になる」という経験を踏まえてRisk Communicationという社会コミュニケーション技法を発展させた。
18 )
ところが日本政府はこの言葉を輸入するときに「政府が保証する安全性を喧伝する」ことを「リスク・コミュニケーション」だと曲解した。よって、今でも日本政府は「リスクコミュニケーション」に巨額の予算をかけています。しかしあれは本来のリスクコミュニケーションではない。
19)とりあえずおしまい。
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