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抗がん剤はがん予防につかえるか? アガリスク回収から読み解く 2006年 [サプリメント・健康食品]

2006年小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-06」の加筆再録

  厚生労働省は2006年2月13日、健康食品「アガリクス」を原材料とする「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒(かりゅう)」に発がんを促進する作用(プロモーション作用)が認められたとして、自主的な販売停止と回収を要請し、食品安全委員会に安全性、販売停止の可否を諮問しました。販売していたキリンウェルフーズは同日、顆粒だけでなく、全アガリクス商品の販売の中止、回収を始めました。厚生労働省には13日だけで3000件あまりの問合せがあったそうです。 

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 アガリクスはカワリハラタケ(ヒメマツタケ)と呼ばれるブラジル原産のキノコ。現在、30種栽培されているそうです。がんの予防効果があるとされ、健康食品として広く販売されています。アガリクスが肝障害を引き起こす疑いが学術誌で報告され、国立医薬品食品衛生研究所で三社の製品の毒性を調べていました。残る二社の製品から発がん促進作用は未確認ですが、厚労省は食品安全委に、念のため安全性に関する意見を諮問を行いました。

  がんの予防効果があると宣伝されていた物が、実は発ガンを促進するとはとんでもない話です。がん治療の現場では、様々な抗がん剤ががん細胞をやっつけるために使われています。脱毛などの副作用がありますが、がん細胞をやっつける効き目は保証書付です。不快な副作用が顕れないよう少量を摂取・投与すれば、がん予防ができるのとは思いませんか。

抗がん剤を取り扱う医療従事者の健康リスク

  抗がん剤は、通常は点滴の輸液の中に調製されて使用されます。この準備、投与や廃棄の際に、取り扱う薬剤師や看護師さんは、抗がん剤を極少量ですが摂取します。エアロゾル化、気化した薬剤を吸入する、しぶきやはねによって薬剤が皮膚や目に付着する、薬剤に汚染された手指から食物などに付着して薬剤を経口摂取するといった経路で摂取します。その量は、患者に治療のために投与される量の約千分の一、0.1%程度といわれています。 

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 1979 年にFalck らが、がん病棟に勤務する看護師の尿から遺伝子に変異を引き起こす変異原性物質が検出されたと報告しました。これを皮切りに、80 年には、抗がん剤を取り扱う看護師に染色体異常が増加している。81 年には、抗がん剤を長時間取り扱う看護師が短時間しか取り扱わない看護師、事務職員と比較して染色体断裂や姉妹染色分体の交換頻度が高かったと報告されています。Falckめらの報告は、各国で追試が行われました。遺伝子に変異を引き起こす変異原性物質が検出されたという結果もあれば、いやいや検出されなかったという報告もありました。

  最終的な結論はでていませんが、抗がん剤を取り扱う看護師らの健康を危惧するに十分な報告がでたため、欧米で安全に扱うためのガイドラインが作成されています。1986年には米国労働省安全衛生局・OSHAが、他にもオーストラリア、カナダ、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、イギリスでも1980ま

年代から1990 年にかけて策定されています。そして、そのガイドラインを守る法的義務が課せられています。 

 そのガイドラインでは、点滴の輸液の中に調製などは周辺から隔離された安全キャビネットでおこなったり、看護師さんらは手袋、マスク、ゴーグルなどを着用して扱うことを求めています。日本も1991年に日本薬剤師会が策定していますが、ほとんどの守られていません。図の様な姿で抗がん剤を扱う看護師さんを見たことがありますか??国、厚生労働省が、なんの強制力も付与していないからです。

 発ガンの仕組みと抗がん剤

 なぜ抗がん剤で、極微量でも遺伝子や染色体に異常が起きるのでしょうか。

  発がんの過程はいくつかのステップを踏んで、多段階的に進行していると考えられています。まず遺伝子のDNAが化学物質や放射線などによって、また細胞分裂の際の複製ミスでDNA損傷を受けます。細胞にはDNA損傷を修復する機能が働き出し、修復を試みます。修復に失敗し、引き起こされたDNA損傷が突然変異として遺伝子に固定されることがあります。そして、DNA損傷とそれの当然変異での固定化が腫瘍発生に関与する遺伝子に及ぶと細胞ががん細胞に変身します。

06-06_03.gifガン細胞では最低7~8の遺伝子が異常を起こしているそうです。この最初のステップをイニシエーション(Initiation)といい、イニシエーションを起こす物質をイニシエーターと呼びます。

  ガンを引き起こす物質には、DNAを傷つけ、遺伝子に異常をおこす性質があります。その遺伝子に変異を引き起こす性質を変異原性と言います。変異原性があっても、もたらすDNA損傷が細胞の修復機能で簡単に修復できる程度なら、問題はありません。イニシエーターにはなりません。ただ修復機能の強さは人それぞれですので、変異原性物質は要注意です。

  がん化した細胞は、自ら細胞死(アトポーシス)に導く働きや、キラーT細胞という免疫細胞を呼び寄せてその働きで死んでいく防御機能が働きます。アトポーシスを不活性化したりして、この防御を掻い潜ってがん細胞が増殖する段階、異常増殖により腫瘍が顕在化する段階をプロモーションといい、これに関わり促進するものをプロモーターと呼びます。一部のアガリスクは、このプロモーターであったわけです。アガリスクそれ自身が発がんを引き起こすものではなく、他の発がん物質による発がん作用を促進する作用を持っていたわけです。

  発がん性をDNA損傷でとらえれば、発癌物質はイニシエーターでプロモーターは入りません。しかし、ガン腫瘍形成でみれば、イニシエーターもプロモーターも発癌物質です。また癌に対する物質、薬物の作用は極めて多彩で、ある臓器では制癌作用を示すものが他の臓器では発癌性があったり、同一臓器でもイニシエーション期とプロモーション期で相反する作用を示す場合があります。それで、通常は発がん性、発癌物質とはイニシエーターとプロモーターの両方をいいます。

 抗がん剤は発癌物質だから効く

   多くの抗がん剤は国際癌研究機関(IARC)によって、発癌物質とされています。ヒトに対する発がん性ありと認められた第1 群やヒトに対する発がん性の可能性の高い第2 群に分類されています。
抗がん剤は、DNAを損傷したり、染色体を損傷したり、発がん性の細胞毒性を持っています。正常な細胞にもがん細胞にも同じ作用を及ぼします。がん細胞は、元々損傷している細胞です。その損傷がさらに酷くなり、アトポーシス(細胞自死)の不活性化がはずれ自死します。キラーT細胞を呼び寄せて死んでしまいます。正常細胞も同じように損傷します。それで例えば毛根細胞がアトポーシスを起こして死んでしまい脱毛が起きたりします。中には、損傷を修復してしまう正常細胞もありますし、がん化してしまう細胞も出ます。これが、抗がん剤の多くが、発癌物質である理由です。
 

 がん患者はすでにガン腫瘍がありますから抗がん剤=発癌物質で新たなガン細胞ができ2次発ガンしてもその不利益より、治療対象のガン腫瘍が消失しての延命効果の利益が大きいといえます。しかし、ガン腫瘍のない人には何の利益もありません。

細胞毒性によるDNAや染色体の損傷、発ガン、催奇形性という不利益だけです。様々なエキス剤、健康食品ががんに効く効果をうたっています。それが、本当にそのような効果があるのなら、少なからぬ部分が細胞毒性・発がん性を有しています。それら細胞毒性のある物質”食物”を長期にわたって摂取すれば何が起こるかは、ここまで読まれた方は想像がつくでしょう。

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  抗がん剤を取り扱う看護師などには治療のために投与される量の約千分の一、0.1%程度でさえ、DNAや染色体の損傷がみられます。Valanis らは、妊娠前、もしくは妊娠期間中に、母親、もしくは父親が抗がん剤を取り扱っていた曝露群と、抗がん剤を取り扱っていない非曝露群の、自然流産と死産の出現率を比較して、母親の妊娠期間中の抗がん剤曝露に関しては、自然流産のリスクは1.5倍、自然流産と死産の複合リスクは1.4 倍、父親が曝露を受けたことによる妻の妊娠への影響に関しては、増加傾向が認められたと報告しています。 

 抗がん剤を取り扱う医療従事者の健康リスク
http://joh.sanei.or.jp/pdf/J47/J47_5_01.pdf
http://sc.chat-shuffle.net/paper/uid:110004045975

食品を商う扱う者の責任とは

  厚生労働省は、今回のアガリスクの件で「アガリクスは、『抗がん効果がある』、『免疫力を高める』などといわれていますが、一般の食品として販売されており、医薬品等とは異なり効能効果を標榜することはできず、また、国が事前に審査を行う仕組みではないことから、厚生労働省では、ヒトに対する有効性について確認しておりません。・・食品関係事業者は、自らの責任において、販売する食品の安全性を確保する必要があります。」としています。

  販売する食品の安全性を確保するのは当然ですから、私は、虹屋はアガリスクのような安全性に疑問を持つ物は扱っていません。しかしキリンビールは子会社キリンウェルフーズで販売していました。学会誌で疑いが指摘されても試験しなかったのです。「(米国産牛肉のBSE安全性に)疑問があるが、(輸入)ルールが決まったら守るべき」と大手外食産業が公言する業界です。疑問があるなら質して販売する食品の安全性を確保する必要はないのかね・・吉◎家さん。

  国が効能を審査する健康食品、特定保健用食品(トクホ)。一番人気は花王のエコナ・クッキングオイルですが、エコナには発ガン性(プロモーション作用)がある疑いが指摘され、花王は認可後に追加試験を命じられ実施中です。

2006年3月小針店で印刷・配布した「畑の便り№06-06」の加筆再録

 

看護師だからできる抗がん剤曝露対策

看護師だからできる抗がん剤曝露対策

  • 作者: 照井健太郎
  • 出版社/メーカー: 日総研出版
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本

 


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