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生薬と健康食品、サプリメント 2007年 [サプリメント・健康食品]

2007年11月小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-47」の加筆再録

11月23日は勤労感謝の日、もともとは戦前は新嘗祭(にいなめさい)。天皇家でこの日、その年にとれた新米を神に供え、召し上がる収穫を祝う神事が行われます。また大阪の菅原神社など各地で医薬と農業を司る神・神農(しんのう)のお祭りが行われる日です。 

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生薬・防已(ボウイ)と発がん性物質

  神農は古代中国の伝説に登場する皇帝。百草を嘗めて効能を確かめ、諸人に医療と農耕の術を教えたという、中国では“神農大帝”と尊称されています。伝説によれば、神農氏の頭に角が生えていて、体は脳と四肢を除き透明で、内臓が外からはっきりと見えたと言う。薬草の葉っぱの服を着、手には赤い鞭(赭鞭)を持ち野山を旅して薬草を見つけては自分で嘗めて、毒か薬かを調べた。毒があれば内臓が黒くなり、これで毒の有無および影響を与える部位を見極めたといいます。その後、あんまりに多くの毒草を服用したために、体に毒素が積もり、そのせいで最終的に亡くなったとか。漢方の三大古典の一つ「神農本草経(しんのうほんぞうきょう、中国最古の漢方書)」はこの神農大帝が著したということになってます。
神農本草経解説

神農本草経解説

  • 作者: 森 由雄
  • 出版社/メーカー: 源草社
  • 発売日: 2011/12
  • メディア: 単行本
 
 「防已(ボウイ)」は、神農本草経にもある主に駆水や抗炎症効果を目的に方剤中に処方される重要な生薬です。わが国の薬局方の第二部医薬品に収載される「医薬品」です。防已が含まれる漢方に「防已黄耆湯」(ボウイオウギトウ)という有名な煎じ薬があります。色白で疲労感があり、多汗で筋肉が柔らかく水太りの傾向にある人の肥満改善や、水分停滞が原因で起こるリュウマチ、関節痛、関 
節炎、むくみ、多汗症などに適用します。「防已」の役割は、身体の中の余分な水分の排泄を促し、痛みを止める作用です。したがって、いわゆる虚弱体質の水滞(むくみを伴う)による肥満にはこれを緩和する作用、痩身効果があるといえます。
 
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)350錠(水太り、汗かき、むくみ、関節の腫れ)

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)350錠(水太り、汗かき、むくみ、関節の腫れ)

  • 出版社/メーカー: 一元製薬
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 
 
 ダイエット、痩身効果をうたったサプリメント・健康食品のなかには、この「防已」による水太り解消の薬効をうたい文句にしたものがあります。その痩身サプリによる腎臓障害がベルギーで1992 
年に起こり、日本では1997年に起こっています。1990年~92年、ベルギーにおいて出回った漢方薬入り痩せ薬を摂取した人の中で腎臓に重大な障害を起こし、透析や腎移植を受ける人が出ました。その後、被害者には尿路系のがんの発生が報告されています。日本においても1996年から97年に関西において中国製生薬を配合した痩身の健康食品を摂取した人に腎炎の発生が報告されています。
 
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その後も、19歳女性が約20種の自然薬草よりなる「中国製のいわゆる漢方薬」を個人輸入し、約3年にわたりアトピー性皮膚炎に使用したところ腎障害を起こした例や33歳女性が不妊症に対して、医師の指示で中国ハーブから抽出した「いわゆる漢方薬」(当帰四逆加呉茱萸生姜湯)を服用していたが、5ヵ月後から腎不全になり18ヵ月後血液透析を始めた例など報告されています。問題の痩せ薬や漢方薬には腎毒性や発がん性があるアリストロキア酸を含む「生薬」が添加されており、それが健康障害の原因と考えられています。
 
 アリストロキア酸は植物に含まれる化合物、アルカロイドの一つです。この物質は動物実験や腎臓の細胞を用いた実験で強い腎毒性と発ガン性があることが既に証明されています。ヒトにおそらく発がん性がある(グループ2A)と評価されています。正常な腎臓の細胞のなかに入り込んで遺伝子(DNA)と結びつき障害を起こす作用があることが明らかとなっています。
 
日本と中国では異物同名・・ 防已(ボウイ)としている薬草が違う
 
 わが国の薬局方で防已(ボウイ)としているのはツヅラフジ科のオオツヅラフジの茎および根茎を乾燥して刻んだものです。これには問題のアリストロキア酸は含まれていません。
 
しかし中国では防已には様々な多数の薬草が含まれています。「防已」を冠する生薬には「広防已」「漢防已」「粉防已」「漢中防已」「木防已」など様々な種類があります。これらの中にはアリストロキア酸を含む薬草が多くあります。
 
生薬はなんといっても天然品、収穫量も少なく貴重な生薬は偽物が出回り、また一方で、地域によっては正規の薬草が入手できず、やむを得ずこれに類似した植物で代用となるケースもあり、種々の理由から代用が生じ、「異物同名」の混乱を招いています。中国では宋の時代までに生薬の編纂を行いましたが、その中でも異物同名の生薬の鑑別が載せられるなど、古より生薬の混用の問題点が指摘されています。この問題が今なお尾を引いているのです。
 
  中国国家食品薬品局(SFDA)は、アリストロキア酸を含む一部の生薬の利用を禁止する通知を出したり、医師の処方が必要とされる生薬に指定しています。それでも中国では1988年から2004年3月までこれら生薬により起こった腎障害の事例は31例あります。
 
  さてオオツヅラフジの茎および根茎を乾燥して刻んだものを用いた痩身サプリ・健康食品は、アリストロキア酸という点では安全ですが、わが国で医薬である防已を用いたことになります。医薬品にしか使えない成分が入っているので、その健康食品は「違法医薬品」という取り扱いになり、即回収、販売禁止です。
 
それでは、日本では危険で医薬品に用いられないアリストロキア酸を含む生薬を含有した痩身サプリ・健康食品、例えば1996年から97年に関西において被害者を出した中国製生薬を配合した痩身の健康食品は、どのような扱いになっているのでしょうか?
 
効能効果をうたわない限り、取締りされません。回収、販売禁止措置はとられないのです。被害を受けてから事後的に販売者、輸入業者に製造物責任法に基づき、損害賠償を求めることができるだけです。この事情は諸外国でも同様で、米国始め英国やドイツ、カナダ、オーストラリアでは使用禁止になっていますが、米国ではアリストロキア酸を含む可能性のある植物を含んだ製品を販売している業者は100以上、合法的に販売されていてインターネットなどを介して購入できるのです。潜在的な被害を考えて、米国は来年1月に対策会議を開くそうです。  
 

厚生労働省の姿勢は?

 今年、2007年3月にウスバサイシンとケイリンサイシンという植物が、それまでは根、根茎だけが医薬品扱いだったものが葉や茎など地上部まで医薬品に編入されました。
この二つの植物から「細辛」(サイシン)という生薬が作られます。細辛は慢性気管支炎・気管支拡張などで大量の稀薄な痰がでる場合、風湿やインフルエンザによる頭痛・関節痛などに使用などに鎮痛,鎮咳,去痰に用いられています。葉や茎など地上部にはアリストロキア酸が含まれているため、これまで日本では医薬としての使用を禁止していました。
 
ある成分・原材料が、医薬品専用か食品成分としても使用可能かは、厚生労働省が「食薬区分」の成分リストで分類しています。医薬品にしかつかえないリスト(医薬リスト)と食品に使っても良い成分(効能効果をうたわない限り医薬品とみなさない成分)のリスト(非医薬リスト)に分類されてます。
 
 
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 ウスバサイシンとケイリンサイシンの地上部は、2001年から非医薬品リストに掲載されていました。法律上では、医薬品以外は食品なのですから、今の法律では、医薬品から外せば、即食品になり健康食品に使われています。このサプリメント・健康食品は、直ちに薬事法違反にはならない、腎臓を傷害する成分が含まれていても、医薬品的効能効果を標ぼうしない限り、取り締まれないのです。
  
  この地上部の危険性については、厚生労働省自身が、医薬安全局安全対策課が医療関係者向けに定期発行している「医薬品・医療用具等安全性情報」の中で2000年7月と2004年4月の2度にわたり、注意を喚起しています。しかし同じ医薬安全局の監視指導・麻薬対策課は、所管する「食薬区分」のリストで、食品に使えるようにしていたのです。これを知った市民団体が去年2006年10月に指摘、改善を求めた結果、本年2007年3月にようやく食品に、「健康」食品に使えなくなったのです。
 
 
 
   アリストロキア酸は植物に含まれる化合物、アルカロイドです。アルカロイドは総じて激しい生理作用や生物活性を持っています。生薬、医薬品として利用されるものも多い一方、強い生物活性の故、有毒物質、致死性成分も多く、生薬でアルカロイドを多く含むものは使用に細心の注意が必要とされています。 
 
  東京大学薬学部名誉教授の齋藤洋氏は、厚生労働省の「一般用医薬品としての生薬製剤(西洋ハーブを含む)の審査のあり方に関する検討会」の座長も務められた生薬の専門家です。2003年に齋藤氏は次のように語っています。食薬区分の審議に「生薬の専門家なんか誰も入っていない。アリストロキア酸の危険性は薬学部での教科書にすら載っている常識的な問題。私が気づいた段階で、数年前から指摘しているのに、一向に訂正しようとしない」
 
  「食薬区分」の医薬リスト、非医薬リストに掲載されている成分・原材料は、何らかの生理作用や生物活性を持っていて身体・健康に益や害を及ぼします。医薬リストのものは、病気の時に薬を飲む期間だけ、投薬量に応じた量しか体に入ってきません。非医薬リストのものは、サプリや健康食品に使われ病気の有無にかかわらずその人の好きな期間、好きな量、身体に入ってきます。
 
 生薬の成分・アルカロイドは使用に細心の注意が必要とされています。多くのサプリ・健康食品は、この非医薬リストの成分・原材料を使うことで何らかの効能があるのです。サプリ・健康食品での摂取につながる非医薬リストへの掲載には管理する国に細心の注意が求められます。
しかし、食薬区分の審議に「生薬の専門家なんか誰も入っていない。」し、教科書にすら載っている常識的なサイシンの地上部の危険性の扱い、医療関係者には危険性を警告、周知を図りながら一般国民は自由に摂取できるようにしておく、をみると、非医薬リストはかなり杜撰に管理されています。その危険性(安全性)に国が責任を果たしていると言えるでしょうか??
 

カワカワ

 逆に、
「カワカワというコショウの仲間の植物をポリネシアの人たちが使っている伝統的な飲み物があります。これは年に1 度、1 週間ぐらい祭礼をしたりするときにカワカワの根を絞って、それを飲むわけです。成分はカバラクトンという化合物が入っていまして、いろいろな薬物の作用も懸念されるような化合物だった。
 
1994年以来・・カワカワの濃縮物がダイエットサプリメントで出回りました。2000年前後からいろいろなものに関して障害を起こし出しまして、特に肝臓障害のことが大変多く知られておりまして・・ 
 
 現地のポリネシアの人たちは年に1 度、1 週間ぐらいだけ、その液を煎じて飲むというだけなのに、サプリメントにしてしまいますと毎日毎日それを飲んで、大変濃度の高いものになってしまう。それで肝臓障害を起こしてしまったということで、世界的にこの販売が自粛されるようになった。 --佐竹元吉(お茶の水女子大学教授)」
 
  日本では、カバラクトンの毒性などを懸念して、医薬リストに掲載しサプリの販売できなくしたので被害が起きていませんが、常にいつも予防できるとは限らない。このように未知な害作用を受けても、国や業者に責任は問えません。
 
  食品に薬効までも求める姿勢にも問題があるのではないでしょうか?食品は身体を養う栄養と農薬や添加物など有害な物がないこと、それを満遍なく食べるのが健康には一番では?
 

カワカワの有害情報
財団法人国際医学情報センター
 
 2007年11月小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-47」の加筆再録
 
 
怖いもの見たさの人は
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  • 出版社/メーカー: NATURAL BALANCE社
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
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