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有機のゲルマニウムを含んだ1本5000円の“何とか水”の効き目? 2007年 [サプリメント・健康食品]

2007年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-13」の加筆再録

  有機のゲルマニウムを含んだ何とか水、1本5000円なりを毎日4本飲んでいたと力説された永田町の大尽(大臣)さまが話題になりましたが、ホンマに効き目があるのでしょうか?

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ゲルマニウムは、灰色ががかった物質で、トランジスタ・半導体製造やペットボトル樹脂製造の触媒として用いられています。比重5.32で重金属(比重4~5以上)です。重金属には一般に高血圧、腎機能障害、気管及び皮膚障害、発癌性といった中毒、毒性があります。


80年代の無機ゲルマニウム中毒

  ゲルマニウム中毒は、これまでも30例ほど知られています。最初の1979年の38歳主婦例など、ほとんどが日本で起きています。例えば1988(昭63)年2月3日の毎日新聞によれば
 「死亡した男の子は一歳四カ月だった昭和59年3月、鹿児島大医学部付属病院で小児糖尿病と診断され、インシュリン投与による治療が始められた。ところが症状に著しい回復がないため、『糖尿病の80%は治る』などの“ゲルマニウム療法”を書いた本を読んだ父親が60年5月から35ミリgのゲルマニウムを含むカプセル状の食品を、インシュリン治療と並行して1日当たり一つずつ飲ませた。62年1月ごろになって足がふらつくなどの症状が出始めたが、父親は糖尿病の悪化と考え、1日の服用量を倍の2カプセルに増やした。
 
  この男児は同3月ごろになって糖尿病が治らないばかりか、筋肉の衰えや呼吸障害もあらわれはじめ、5月には全く歩けなくなり同病院に入院した。入院時にはじん臓や肝臓などの内臓障害のほか、人工呼吸器なしでは呼吸できないほど症状が悪化、昨年末じん不全で死亡した。同小児科が男児の遺体を解剖した結果、じん臓や肝臓をはじめ、ほとんどの臓器から通常は存在するはずのない多量のゲルマニウムの蓄積が認められた。
 
  同医学部小児科の宮田晃一郎教授は『糖尿病が悪化すれば、たしかにじん臓や心臓に障害が出ることはある。だが、この患者のように筋肉が衰え、呼吸にまで支障を来すということは、糖尿病では考えられない。臓器へのゲルマニウムの蓄積を考えれば、ゲルマニウム中毒による死亡としか考えられない。ゲルマニウムは体内に入ると排せつされにくく、大量に長期間服用するのは非常に危険だ』と話している。
 
 一方、厚生省は『ゲルマニウムそのものは大量に摂取しなければ実害はない』としている。同省によると、健康食品と銘打って販売すること自体は違法ではない。しかし何らかの薬効があることを容器などに表示すれば製品そのものが薬事法違反になり、また表示がなくても『〇〇に効く』と説明して販売すれば、その販売行為が同法違反に問われる。このため、こうした問題食品も健康食品である限りチェックを受けないことになり、販売行為が薬事法違反で摘発されても『販売禁止』などの措置は取られていない。」
 
  この中毒は、腎障害,消化管病変,貧血,筋力低下,末梢神経障害などの症状が現れます。原因食品の多くは「有機ゲルマニウム含有」をうたっていたものの、ほとんどが無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)のことが多く、動物実験でもそれで中毒が再現されたため、二酸化ゲルマニウムが原因とみられました。
 
 88年10月に、旧厚生省は次のような通知(行政指導)を出しました。
①酸化ゲルマニウムを含有させた食品を継続的に摂取することは避けること。
②食品関係事業者に対しては、ゲルマニウムを食品の原材料として使用する場合は、予めその長期健康影響等安全性を確認して使用するよう指導すること
 

参照  ゲルマニウムを含有させた食品の取扱について(昭和63年10月12日衛新第12号)
 

 有機ゲルマニウムの効能と安全性

   さて現在、”体内のフリーラジカルを消去し、免疫細胞を活性化して、成人病に打ち克つ身体をつくる”などと有機ゲルマニウム含有の健康食品が販売されてます。これを扱う業者は、先の通知②「ゲルマニウムを食品の原材料として使用する場合は、予めその長期健康影響等安全性を確認して使用する」を守っているでしょうか?

  有機ですから炭素(C)とゲルマニウムの化合物全てが”有機ゲルマニウム”ですが、様々調べてみましたが、その安全性の資料は、浅井ゲルマニウム研究所のものだけで発見しました。
 
 参照 浅井ゲルマニウム研究所

 この会社は、有機ゲルマニウムの人工合成に1967年に成功した浅井一彦氏が設立した会社です。浅井氏が合成したものは、国際一般名は レパゲルマニウム、通称はアサイゲルマニウムやGe-132、 化学名はポリ‐トランス-〔(2‐カルボキシエチル)ゲルマセスキオキサン〕。
 
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 浅井氏は、1950年代に石炭からの無機ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウムの抽出に成功し、67年には有機物の合成に成功し67年に合成に成功してから、彼は無機・有機のゲルマニウムの医薬品としての研究開発に、多くの学者を引き込み取り組みます。
彼自身は、ナチス下のドイツに留学した石炭岩石学の専門家で、その分野では当時の第一人者で、工学博士でしたが、薬理や生物・医学系には素人です。石炭から抽出したゲルマニウムから医薬を製造する話で、業界から研究資金を集めることは出来ても、彼自身が研究できる素養がなかったし、その発表が信頼されないからです。
 
  58年の「酸化ゲルマニウム果糖錯塩溶液のX線による放射線障害予防効果」を嚆矢に70年代、80年代の研究から抗癌作用、免疫調節作用、血圧降下作用、臓器保護・抗酸化性作用といった効果が動物実験で明らかになり、学術誌や雑誌等で公表されました。79年には、協力研究者らを組織してゲルマニウム研究会を立ち上げています。つまり70年代からのゲルマニウム健康食品ブーム(それによる中毒死亡)の仕掛け人です。浅井氏は82年(昭57)に永眠しました。
 
  88年の厚生省の通知は、名指しこそしていないものの浅井一彦氏とゲルマニウム研究会の研究者に長期健康影響等安全性を確認を求めたと読めます。80年代に多発したゲルマニウム健康食品中毒死は、多くが「有機ゲルマニウム含有」をうたっていたものの、ほとんどが二酸化ゲルマニウムのことが多く、このため「有機ゲルマニウムは薬効があるが、無機ゲルマニウムは中毒を引き起こす」との風評もありました。現在でも、「有機ゲルマニウムは、心ない業者による不幸な事件によってその有用性がスムーズに認識されなかった」とする人もいます。
     
体重1kgあたりどのくらいの量を摂取すると死亡数・生存数が半々になるかという数値をLD50といい急性毒性を表す値で、小さいほど急性毒性が強いのです。経口摂取での無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)のLD50は1250mg/kg(ラット)、有機(レパゲルマニウム)のは11950mg/kg(マウス)。このだけ見れば、有機の方が急性毒性が弱い。しかし、経口LD50が50mg/kg以下が毒物、50~300以下が劇物ですから、無機も有機もゲルマニウムは普通物です。その普通物の無機ゲルマニウムの長期摂取で中毒死が起きていますから、LD50の値は長期健康影響等安全性とは別物です。
  
  厚生省が88年に注文した「その長期健康影響等安全性の確認」はどうでしょうか。
こうした慢性毒性は「投与は少なくとも2種の動物種で行われ(1種が非げっ歯類)、通常、動物の寿命が尽きるまで続くが(げっ歯類では2年、非げっ歯類ではさらに長期)」で検査・試験されます。その結果を、20年たっても浅井ゲルマニウム研究所は公表していません。「安全性の高い化合物であることが推察されました」という会社の見解だけです。慢性毒性試験が行われ、毒性が認められなかったのなら、国立健康・栄養研究所の健康食品の安全性・有効性情報で「サプリメントとしての経口摂取は恐らく危険と思われ、末梢神経や尿路系の障害を起こし、重篤な場合には死に至ることがある。」と警告を出すでしょうか? 

参照 国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報 

 
 人での有用性について、国立健康・栄養研究所の健康食品の安全性・有効性情報では、「ヒトに対する信頼できる有効性のデータは得られていない。」「ある研究で、三酸化第2ゲルマニウム(無機物)の経口投与で肺紡錘体細胞癌が完全に寛解したという報告があるが、第1相や第2相の臨床試験(少数の志願者に投与する)に携わった多くの研究者達は、ゲルマニウムは多くの生死にかかわる副作用があるために、安全ではないと示唆している。この用途にはさらなる知見が必要であろう」
 
 ゲルマニウムの医薬品・ヒトでの有効性の研究を浅井氏が始めて半世紀、医学研究者らのゲルマニウム研究会の発足が79年。それでも「信頼できる有効性のデータは得られていない。さらなる知見が必要」のです。

  このように安全性が不明なまま、有機ゲルマニウムのカプセル錠、注射剤、外用剤、点眼剤を無許可で医薬販売した件で、浅井ゲルマニウム研究所は、97年(平成9年)に厚生省から行政処分と刑事告発されています。
 
  その発表を要約すると、
96年夏以降、(株)浅井ゲルマニウム研究所が治験薬を医師グループに提供し「寄付」の名目で対価を受け取っているのではないかという情報があり、同研究所から事情聴取するとともに、12月に立ち入り調査を行った。調査の結果、(株)浅井ゲルマニウム研究所は、81年(昭和56)頃から、有機ゲルマニウム化合物(Ge-132)のカプセル剤、注射剤、外用剤、点眼剤を、同社自らその運営に深く関与している医師グループ(ゲルマニウム臨床研究会)及び診療所に反復継続して販売してきたことが判明した。
 
 本件事案は、無承認無許可医薬品の製造販売が組織的かつ全国規模で行われており、これに対する厚生省の過去数度の指導に改善を約束しながら守られず、今日に至っている。ことに94年(平成6)3月以降は治験も全く行われておらず、有機ゲルマニウム化合物を無承認、無許可の医薬品として製造し、販売のみを行っている。 

参照 (株)浅井ゲルマニウム研究所の薬事法違反に係る告発及び製品の回収について 
 
 有機水銀や無機ゲルマニウムの二の舞の懸念

  私は有機水銀や無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)の二の舞にならないか心配です。有機水銀は、殺菌剤、消毒剤として広く使われました。赤チンは1919年に開発されたマーキュロクロム(赤緑色の有機水銀化合物)の粉末を水に2%溶かしたもので、皮膚・キズの殺菌・消毒に家庭の常備薬の一つとして長く使われていました。水虫などの治療薬にも有機水銀軟膏が使われてきました。稲の種籾など種子消毒に重宝されました。その慢性毒性がわかったのは、熊本県の水俣、新潟の阿賀野川流域で、工場廃水に含まれていた有機水銀を蓄積した魚介類を多食した地域住民に中毒=水俣病=が発見されるまで分からなかったのです。その後、赤チンも水銀軟膏も、殺菌剤も姿を消しました。
 
  無機ゲルマニウム(二酸化ゲルマニウム)については、「ゲルマニウム中毒という新しい型の重金属中毒について、不幸な事件をきっかけにしてではあったが、日本人が短期間に世界の医学に決定的な貢献をしたことになる。」と評価されています。有機ゲルマニウムでも、同じことにならないか、タミフルの毒性・副作用を日本で明らかにしたように、世界に貢献しないか心配です。
 
  ゲルマニウム温浴やブレスレットなどは、例えば工学博士の浅井一彦氏を「ゲルマニウム療法の第一人者」と医学の権威と持ち上げたり、効能や安全性の根拠としている厚労省の文書がゲルマニウムを医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分とした通知だったりして、考える気力さえ湧かなかったので、採り上げませんでした。  

 

2007年3月28日小針店で印刷・配布した「畑の便り№07-13」の加筆再録

怖いもの見たさの人には
 
純度100% 【飲用100g】有機ゲルマニウム粉末 水溶性Ge-132 日本食品安全センター

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