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食料輸出大国、アメリカの餓え 2001 [有機農業と飢餓、食料自給]

2001年5週に虹屋小針店で発行した畑の便り  №01-5の再録です


有機農業は、収穫量が従来よりも一般的に落ちます。これは、従来の化成肥料や合成農薬に頼る農法が、化学肥料で作物が摂れるだけの栄養分を摂らせます、収穫量を極大にしようとします。言わば肥満児に育てますから、抵抗力が当然落ち病害虫にやられ易くなりますが、この点は合成農薬で補う。この二点を基本としているからです。有機農業は病害虫への抵抗力を高めるために、丈夫な身体の作物、家畜に育てます。摂れるだけ栄養分(肥料)を与え肥えさせようとはしませんから、収穫量が落ちます。

 この点から、有機農業を推進すると、収穫量の低下して食糧不足を招き飢餓が起こる。今でも栄養不良で困っている第三世界の国々ではなおさらだ。だから、有機農業は先進国の好事家のやることだといった意見・批判をみる事があります。収穫量低下→食糧不足→飢餓という三段論法は非常にわかりやすいのですが、はたしてそうでしょうか。飢餓は何故起きるのか、どのような要因が関係しているか。飢餓の実情は?


米国国民の30人に一人が餓えを経験
アメリカ政府・農務省は「餓えに関する年次報告(1999年度)」を2000年9月に出しました。それによるとアメリカ国民800万人が実際に餓えを経験していました。より広く食べ物が不安定「家庭の者が活動的で健康な生活をするのに十分な食べ物をいつでも手に入れることが出来ない暮らしの家庭」は3100万人。米国の人口は約2億2000万人ですから7人に一人です。

 報告をまとめた農務省の定義では、十分な食べ物がないということ、食べ物を買うお金が十分にないということ、十分な食べ物を持つことにいつもイライラした経験も持っているということです。食べ物の摂取量を減らしたり食事をカットしたり、とばしたり、あるいは、決して栄養になるとはいえない食事を食べることも含まれています。こういう暮らしに国民の14%が米国では置かれています。

 アメリカ合衆国は、食料を世界中に輸出しています。食糧不足の国とは誰しも思わないでしょう。その国民の7人に一人が食べ物に不自由していて、3.6%が「飢餓」を経験していると政府が認めています。つまり、食料過剰と飢餓が米国では共存している。


社会的にどのような階層、集団がこのような状態に置かれているのでしょうか。
子どもを持つシングルマザー、その約30%の世帯が食べ物の確保が困難で、8%が飢餓を経験。アフリカ系アメリカ人、6.4%の世帯が確保が困難。ヒスパニックつまりスペイン語系アメリカ人、約5.5%の世帯が食べ物に不自由しています。これに対し白人世帯は2.1%です。

 所得という視点で見れば、99年の所得が貧困線つまり最低限の生活を維持するのには必要な取得水準の50%から130%、それは4人家族で8,350ドルから21,710ドル(日本円で約90万から240万円)範囲の所得の世帯の27.7%が食べものが不安定、不自由でした。割合の上では95年に26.1%でしたから99年には逆に増えています。

 ご存知のように95年から99年の米国経済は絶好調、世界で唯一好景気の国でした。家庭の収入が増え、絶対数では食べものが不安定な家庭、国民は12%減っています。しかし経済が完全雇用、働く意思と能力のある人は総て雇用され職と収入が確保された状態であったことを考えると何故、800万人が飢餓に苦しまなければならないのでしょうか。
 飢餓に取り組む米国のNPOは次ぎように評価しています。「経済が活発なのに比べると飢えの改善の速さあまりにも遅すぎます。飢えが高いレベルでシツコクはびこり続けているという事が特に憂慮すべき点です。」

 今の米国経済の特徴に、定職を持ったホームレスがあります。日本ではホームレスの人は職がなく、収入がない人ですが、米国では建築労務者のような定職を得てもアパートの一室が借りられずホームレスの人がいます。つまり米国経済が作り出した新たな雇用・職場では以前より低所得なものが多い。
 白人世帯の倍以上もアフリカ系とスペイン語系アメリカ人が、母子家庭の3割が食べ物を確保するのに困っていることは単なる経済問題だけではなく、社会構造全体が飢餓、栄養不良問題に関わっていることを示唆しています。

 食料過剰と飢餓が米国では共存しています。
 80年代前半アフリカのボツワナでは食糧生産が約2割、ジンバブエでは約4割、スーダンとエチオピアは約1割減りました。しかし食糧生産の落ち込みが少なかったスーダンとエチオピアでは大規模な飢餓発生しましたが、ボツワナとジンバブエでは何も起こりませんでした。単純に食糧不足だから飢餓が起こるとはいえません。それでは飢餓と有機農業運動はどのような関りが在るのでしょうか。有機農業を進めると飢餓は深刻化するのでしょうか。 


 参照
サンタバーバラの駐車場(夏来 潤さん)
http://www.natsukijun.com/life_life_detail.php?eid=00035


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