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牛タンは日本が買占め 2004-03 [牛‐肉、乳、飼育]

2004年1月13日小針店で配布した畑の便りの再録です。




牛タンは日本が買占め

昨年末、飛び込んできた悪いニュース、米国でのBSE(狂牛病)です。直ぐに輸入禁止措置が取れました。米国からの輸入牛肉に頼る吉野家などの牛丼チェーンは、2月で牛丼が姿を消すそうです。
 輸入再開をめぐって、農林水産省など日本側は「日本で行われている全頭検査と同等の安全性対策」があれば輸入を再開するとしています。米国は、科学的には全頭検査は不要としています。米国ではBSE検査には一次検査キット代だけで一頭当り約3000円。米国で年間約3500万頭の牛がと殺されていますから、検査キット代だけで約1050億円が全頭検査ではかかります。この輸入再開の検査をめぐる駆け引きの焦点を考えてみます。

  1. 日本に輸出される牛だけを調べられるか

  2. 生後24ヶ月以下の牛を調べるか

  3. 米国農務省と畜産業界の濃密な関係




日本に輸出される牛だけを調べられるか

 妥協案で輸出される牛だけ検査する案が出ています。米国の牛肉総生産量の約10%が輸出され、日本はその内の約45%です。つまり米国の牛肉総生産量の4.5%程度。米国の年間の牛のと殺数は約3500万頭ですから、その4.5%程度は約160万頭。日本の牛のと殺数は約124万頭で全頭検査されてますから、米国が出来ないわけがないという考えです。
 しかし、牛肉取引の実態を知らない話です。日本は必要な部位だけを輸入しています。例えば、牛丼の吉野家はショートプレートというわき腹のバラ肉を年間約3万トン輸入しています。この部位肉は、一頭当たり12キロから18キロ。つまり吉野家の使用量だけで、牛では170万頭から250万頭になります。また牛タン(舌)を3万6千トン輸入しています。二枚舌、三枚舌を使う人間は沢山いますが、牛には舌は一枚しかありません。これは2400万頭にあたります。日本は米国の牛タンの三分の二を買い集めているのです。クロマグロだけでなく牛タンまで買い占める日本人?!
 日本向けだけ検査という案は、米国でと殺される牛のほとんどを検査することになります。これまでどおりの輸出を望む米国が受け入れるでしょうか。また米国国内と日本向けの検査、安全性で差をつけることに米国民が納得するでしょうか。




 

生後24ヶ月以下の牛を検査しない

 最大の焦点は検査対象に生後24ヶ月以下の牛を含めるかです。米国の肉牛は、12ヶ月の子牛が肥育の牧場に移され、ほとんど生後24ヶ月以下でと殺されています。24ヶ月以下の牛を検査からはずせば、肉牛のほとんどは検査されません。
 英仏独では、検査対象が24カ月以上、他のEU諸国は生後30カ月以上に対して検査が義務付けられています。EUが生後30カ月以上で検査を義務付けているのは、導入した2000年当時、発症例が3歳以上の牛にみられたからです。全頭検査をし、24ヶ月以下の牛も全て調べているのは、日本だけです。それで、米国は科学的には24ヶ月以下は検査の必要がないといっています。米国の妥協案はEU並みの30ヶ月以上、大幅に譲歩して24ヶ月以上の牛の検査でしょう。
 全頭検査で、日本では昨年10月生後23ヶ月のBSEが発見され、肉は流通しませんでした。英国の経験では、生後24カ月以下の発症例はこれまでに10例。24カ月が8例、生後20カ月と21カ月が各1例。生後30カ月未満では2003年10月までに49例で、英国の2000年以降のBSEは約3700頭ですから、極少ないのです。
 しかし米国の言うように生後24ヶ月未満なら、100%安全、BSEではないというのは間違っています。




 

米国農務省と
米国畜産業界の濃密な関係

米国の言うように生後24ヶ月未満なら、100%安全、BSEではないというのは間違っています。どの月齢から検査するかというのは科学の問題ではなく、どれ位の費用手間をかけて、どれ位の安全を確保するかという社会的政治的な問題です。一銭も新たに負担したくない業界の意向を受けて、米国の農務省は「科学的知見にもとづいて」と主張しているのではないでしょうか。1月2日付のニューヨークタイムスに掲載されたエリック・シュロッサーの論説によれば「ベネマン農務省長官の報道官であるアリサ・ハリソン・・農務省に入る前、彼女は全米肉牛協会の広報部長だった。この肉牛業界の最大のグループで彼女は政府の食品安全対策と戦い、・・「BSEはアメリカの問題ではない」とのプレスレリーズを行った人物である。・・過去2週間、彼女はBSEがアメリカの消費者へのリスクをもたらすものでないとのメッセージを農務省から流し続けている。
 酪農業界のロビイストから農務省への人事異動はアメリカの食品安全システムの悪い面のシンボルである。連邦政府が本来監督する対象の業界に支配されている例は容易にあげられる。ベネマン長官の主要スタッフには全米酪農協会のロビイストや元全米養豚協会会長がいる。」
 この点は、12ヶ月(米国では肥育の牧場に子牛が移される時期)とか18ヶ月とか日米の政治的駆け引きで決まるかもしれません。小泉首相の米国でのあだ名は「軍曹」=上官ブッシュの命令を唯々諾々と実行する下士官だそうですが・・・




 













BSEのネタ元
産業動物医療 LAVA-net HP  http://www.lava-net.jp/
農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/
農業情報研究所 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html
人畜共通感染症ZOONOSIS  http://www.anex.med.tokushima-u.ac.jp/topics/index.html

 


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