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狂牛病で牛乳が減産、日本の畜産は壊減の危機 2001-52 [牛‐肉、乳、飼育]

2001年12月に小針店で配布した畑の便りの再録です。






狂牛病で牛乳が減産、日本の畜産は壊減の危機


 日本子孫基金(JOF)発行の食品と暮らしの安全2001年12月号に、興農ファームの本田代表と日本子孫基金の熊澤さんとの対談が載っていました。その要約です。畜産農家の現状を知ってください。
日本の畜産は壊減の危機、
熊澤 狂牛病による影響、大変ですね。
本田 興農ファームでは、生協・共同購入グループを中心に牛肉を販売しています。うちの牛は狂牛病とは全く無関係なのに、ニュースで1頭目の狂牛病発生が報じられると、売上は6割滅。その後回復し、3割減になったら、2頭目が発生。また7割滅に落ち込みました。
熊澤 農協は、どのように対応していますか。
本田 興農ファームのある標津は、乳牛が中心です。しかも加工乳は年始めに契約するので、狂牛病による価格変動はありません。この地域で肉牛農家は興農ファームくらいなので、1軒だけ困窮していても、農協は無頓着です。でも乳廃牛の価格が落ちているので、これから乳牛農家は大変です。通常、赤字のある農家は12月未の決算期に牛を売って赤字を埋めますが、今年はそれができません。
熊澤 乳廃牛の価格低下はどの程度ですか。
本田 枝肉lキロ当たり、狂牛病が出る前は200-250円だったのが、今では10円です。売れば売るほど赤字になって、バタバタと農家がつぶれてしまうでしょう。
熊澤 農林水産省も融資を検討していますが、これはどうでしょう。
本田 この年末(2001年12月)が勝負なのに、融資は来年です。融資の前に、つぶれてしまいます。
熊澤 牛を扱っている農家や業者に自殺者が出ているそうです。でも、情報がコントロールされていてニュースにはなっていません。
本田 自殺者が出るのも理解できます。酪農家は孤独ですから。狂牛病のように大変な事態が起きても、農協とエサ屋さんだけが情報源で、その人たちが、狂牛病のことを全然知らないのです。

日経、12月26日の記事より
年明けから本格化する二○○二年度の乳価交渉に狂牛病が大きな影を落としている。狂牛病と確認された三頭の牛がすべて乳廃牛だったことから乳廃牛価格が暴落、酪農家は副収入の道を絶たれたぱかりか、売れない乳廃牛を手元に抱え続けなければならない状況。こうした負担増を乳価に上乗せしたいというのが酪農家の言い分だが、デフレによる製品値下がりや需要減に苦しむ乳業メーカーの反発は必至だ。

 「処理場の受け入れ拒否は打撃だが、かといって出荷して陽性認定された場合のことを考えると…」…中央酪農会議の伊佐地誠専務が身動きのとれない酪農家の窮状を代弁する。乳廃牛の価格は事件発生前は一頭十万円弱。だが三頭目の乳廃牛に感染が確認されて以降、全国の食肉処埋場で乳廃牛の受け入れ拒否の動きが広がっており、値がついたとしても一万円以下。酪農家の総収入のうち乳廃牛の売却益は五-二○%程度を占めるだけに痛手は大きい。

 乳廃牛を手元に抱え続ければ生乳生産量の減少にもつながってしまう。本州の酪農家は通常、春と秋に乳廃牛を出荷、その分を北海道から初妊牛を買って補充する。「通常の年なら総頭数の三分の一が更新される」(林克郎・関東生乳販売農業協同組合連合会参事)が、現在はこのサイクルが滞り気味で、農水省によれぱ十月の本州以南の生乳生産量は前年比二・七%の滅少。狂牛病は酪農果の本業も直撃している格好だ。

▼乳廃牛 搾乳できなくなったメスの乳牛。通常は三‐四回出産し、五歳前後になると体力の低下とともに搾乳量は減る。生乳中の栄養分も少なくなり、乳廃牛として食用に回る。


狂牛病は近代畜産を変えるチャンス

本田 興農ファームは無関係な狂牛病のせいで、生き残れるかどうかの瀬戸際です。でも、私は近代畜産の構造を変えるチャンスだと思っています。消費者も、狂牛病は怖いですからね。
 近代畜産の間題は、早く育てようとか、いっばい乳や卵をとろうというところから来ています。早く、たくさんを目指すと、ホルモン剤や、抗生物質を使わざるを得ない。また、さしの入った牛肉を育てようとすると、草でなく、穀物や肉骨粉を輸入して与えることになります。
本田 よく、「箸で切れるやわらかい肉」を好む消費者がいますが、そんな肉が自然なはずがありません。そんな牛、どこかにぶつかるたぴにくちゃくちゃになって、とっくに死んでますよ。
熊澤 脂肪が多すぎる、成人病の牛ですね。興農ファームでは、ホルモン剤の使用もしないのですよね。
本田 ホルモン剤も便用しませんし、オス牛の去勢もしません。知らない消費者が多いですが、未去勢の牛は日本の格付け基準では規格外品として評価の対象にならないので、一般に売られているオスの肉牛は、99.9%去勢されています。脂肪を多くするために、去勢をして、女性ホルモンを効かせるのです。


 虹屋注釈 日本で使用可能なホルモン剤は、天然型の2種類の女性ホルモン剤。厚生省の「畜産食品中残留ホルモンのヒト健康に及ぼす影響に関する研究」によれば、使用実態はないとされている。しかし、狂牛病発見からの経過を見れば、厚生省は農業の現場のことは、管轄違いでほとんど知らない。


熊澤 この構造を変えなければ、狂牛病の問題も解決しませんね。
本田 アメリカで遺伝子操作飼料が出ても、日本は分別費用としてキロ単価10円も高いものを、頭を下げて買っています。この時も、構造を変えるチャンスだと言ったのですが、みんな変えようとしないのです。
熊澤 飼料の自給はできないからしかたないと、思ってしまっていますね。
本田 だから、私は、飼料の自給はできると、強く主張したいのです。
熊澤 飼料が一般の牛とは全く違いますよね。
本田 肉骨粉は一切与えません。牧草は全て自家農場の化学肥料も農薬も一切なしの有機牧草。穀物飼料は、北海道内を中心とした農産物の副産物のくず小麦、屑米、でんぷん粕、米ぬか、ビートパルプを混合した発酵飼料を作り、非遺伝子組み換えのトウモロコシを加えています。人が食べられない農産物の副産物や食品残さをうまく使えば、飼料を輸入しなくても、畜産はできます。私は日本で飼料の自給は可能なことを、この農場で証明しています。
熊澤 この厳しい状況を、本田さんのところではどう改革していきますか。
本田 地元の消費者と結ぴついた直販システムを強化することを考えています。牛肉だけでなく、野菜・卵・加工肉のセットなどを、理解して買ってもらうのです。大きな団体は、狂牛病のように何か起きたときに、一般の市場と同じ動きになってしまいますから。
熊澤 日本の畜産を救うには、興農ファームに生き残ってもらって、本田さんに主張し続けてもらわないといけない。応援していきたいと思います。


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