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非定型BSE(狂牛病)・・米国4例目の影響 [牛‐肉、乳、飼育]

米国4例目のBSE

米国BSE カリフォルニア州トゥラリー郡の酪農家(牛乳生産)の、10年と7ヶ月の乳牛(当然メス)。歩行困難になり、横臥になった後、安楽死処置された。隣郡のハンフォードのレンダリング施設のベイカーコモディティに運び込まれた。その死牛置き場から4月18日にBSEサーベイランスの60頭のサンプルが採取されました。
カリフォルニア大学デービス校のカリフォルニア州動物衛生食品安全研究所に送られ、アイオワ州エイムスの国立獣医サービス研究所(NVSL)に転送されました。国際動植物検疫課(APHIS)が確認した陽性所見を4月24日発表。






米国の対応

牛乳がこのトゥラリー郡の収入の大半を占めており、2010年の売上高は約16億ドル、牛に関わる産品が約5.6億ドル。このため、牛乳ではBSEが人に伝達・感染しないとの広報・報道。

この牛の肉は食用として流通することはない、市場に出回っていない。

特定の個体で例外的に表れる非定型BSEで、プリオンに汚染された飼料を牛が食べたことによる感染ではない。








非定型BSEの割合

非定型BSEは、BSE検査が世界各国で行われるようになってから発見された病気です。これまでに世界で約60頭、日本では2頭発見されています。日本のBSE検査頭数は2001年10月から2012年3月末までで約1285万頭ですから、単純に割り算すれば600万頭に1頭の割合で見つかっています。多くが8 歳以上の老齢牛です。現在の畜産業では、これ以下の年齢で大半がと畜されますから、発症に至らないが素因を持つ牛の数はもっと多いと思われ、約30万頭に1頭という方もいます。ちなみに人の海綿状脳症・CJDは百万人に一人ぐらいの割合です。

米国の米国の2009年牛総頭数は約9500万頭、カナダの2011年の牛総頭数は1246万頭。日本での発見率、600万頭に1頭で単純計算すると、米国には約15頭、カナダには約2頭になります。

日本のBSE検査は、と畜される牛、農家で死んだ24ヶ月齢以上の死亡牛を対象に行われています。これに対し欧米ではBSEの有無、その割合を調べるため対象を限って行われています。EUは約4500万頭飼育規模で約746万頭検査。カナダは1246万頭で約3万5千頭、米国は約9500万頭飼育で約4万2千頭検査と米国の検査密度は際立って低いのです。

米国とカナダは発生検出された2003年以前は、牛も餌も自由に行き来して一体化していましたし飼料規制も同一でした。英国・欧州からの輸入牛や輸入飼料でのBSE侵入・拡大では同一な牛群です。カナダではこれまで15頭検出されています。カナダの7.6倍の規模の米国なら検出100頭前後が予測(期待数)にもかかわらず4頭だけです。検出数も異様に小さいのです。


非定型BSEは飼料で拡がるか?

カナダの15頭中2頭は非定型BSE、13頭が定形(英国型)BSE、13頭のなかには1997年からの飼料規制以降に生まれた98年から2002年生まれの牛が9頭います。それで、カナダはBSEの病原プリオン蛋白の飼料による拡散を防ぐために飼料規制を強化しています。

米国の4頭では、2003年12月最初に検出されたカナダ生まれの牛だけが定形(英国型)BSE、他のアメリカ生まれの3頭は非定型BSEとされています。定形がカナダ生まれであったので、カナダで病原プリオン蛋白を摂取しBSEを伝達・感染したのであり、米国内には非定型しかない。牛も餌も自由に行き来していたのもかかわらず、1997年からの飼料規制はカナダでは失敗したかもしれないが、米国内ではBSEの拡大を防いでいるといった主張が行われました。その結果、米国産牛肉の輸入国からの圧力などで、飼料規制強化が行われましたが、穴だらけです。

非定型BSEに、「汚染飼料が原因ではない非定型のBSEはまれに自然発生する。飼料を通じて広がるわけではないため、米国の牛の管理状況が問われるものでもない」と日本の厚労省幹部は説明しています。この見解は、拙速な判断といわざるを得ません。

非定型BSEは人にうつるか?

世界中のBSE研究者では非定型BSEは「報告例が少なく、どのような安全性評価をすればいいかわからない。もう少し科学的知見の蓄積が必要だ」というのが常識です。

分かっているのは、非定型BSEはウシ、マウス、サルへの脳内接種での動物実験から牛だけでなく牛以外の動物に伝達・感染すること。特にサル(霊長類)では経口、つまり食物に混じったものの摂取でも感染しており、人間にも伝達されると考えられています。定形BSEが伝達された人・vCJD患者からの輸血を介した他の人への感染が認められています。病原プリオン蛋白は、熱及び消毒薬に強い抵抗性を示し、一般の医療消毒法での不活化は非常に困難です。医療行為を介した健常者への二次感染(医原性CJD)の発生を防がなければなりません。


医原性CJD


vCJDの早発性




 牛での感染実験では、定形BSEよりも早く歩行困難など運動系の症状、音に過敏など感覚系の症状が定形BSEよりも早く出現する、潜伏期間が短いなど「通常の英国型より病原性や感染性が強い可能性がある。(小野寺節・東京大名誉教授/応用免疫学)」




 また病原プリオン蛋白が脳や脊髄(せきずい)などにほぼ全量が集中する型と違い、リンパ球を通じて全身に汚染が広がる可能性を示唆する研究もあります。こうした部位に蓄積する病原性プリオン蛋白質を肉骨粉などで経口摂取した牛の感染は発病までの潜伏期が長いため、まだ結果は得られていません。欧州食品安全機関は「非定型BSE感染の(飼料による感染)リスクは評価不可能であるが、このリスクを無視すべきではない」と強調しています。

 「飼料を通じて広がるわけではない」という見解は科学的根拠がなく、希望的観測です。厚労省という規制当局は、「飼料を通じて広がる」ことを前提に対応すべきです。

英国の伝達性海綿状脳症委員会(SEAC)は、このBSEは経口伝達は確認できていないが、その可能性も排除はできない。だが、米国がやめてしまったようなアクティブ検査でこのようなBSEの発見は可能、現在定形BSEで病原プリオン蛋白のほぼ全量が集中する特定危険部位の除去や飼料規制などの対策で動物と人間は護ることが出来るだろうとしています。

高齢の非定型BSE牛が肉骨粉や工業用牛脂などをとるレンダリングの原料になる場合は、カナダでは定形BSEで病原プリオン蛋白のほぼ全量が集中する脳や脊髄(せきずい)、扁桃、腸の一部などの特定危険部位SRMは除去されます。この部位は埋め立て場、焼却炉へ運ばれ廃棄されます。




米国では、脳や脊髄(せきずい)は除かれますが、それ以外の扁桃、腸の一部などの特定危険部位はレンダリングの原料になります。得られた肉骨粉には、病原性プリオン蛋白質が含まれます。飼料規制でこれを直接牛の飼料原料にできませんが、豚や鶏の飼料には使えます。午前中はプリオン肉骨粉をつかって豚の飼料を造り、午後に牛用の飼料を製造すると機器に残ったものが混ざってしまうといった交差汚染で、牛に病原プリオンが与えられる伝達・感染ルートが米国ではあります。英国の専門委員会(SEAC)が動物と人間は護るためにもとめる防御策を、米国は取っていません。



輸入・検疫中断できない韓国

さて、この4例目検出でインドネシアは米国産の牛の骨付きの肉と内臓それに骨粉を輸入停止にしました。インドネシアは米国産の牛肉は高級レストランやホテル向きなどに比較的少ない量を輸入していますが、お隣の韓国は焼肉用に大量に30ヶ月齢以下の米国産牛肉を輸入しています。2008年の輸入再開の際に、韓国政府は「米国でBSE(牛海綿状脳症)が発見された場合、即刻輸入を中断する。」としていました。それで 米国産牛肉の検疫・輸入を直ちに中断するよう韓国政府に求める声が上がりました。

しかし、韓国農林水産食品部(農食品部)は、米国でBSEが発生したが、直ちに検疫・輸入中断措置を取ることはできないとしました。米韓の2008年牛肉輸入検疫条件では、国際獣疫事務局(OIE)が米国のBSE制御地位を最下位の「不明のリスクの国(BSE対策が不明または不十分な国)」に下げれば検疫・輸入中断をおこなえることになっているからです。1月に韓国とカナダと締結した「カナダ産牛肉輸入衛生条件」には、BSEが発生すればとにかく牛肉検疫=輸入手続きを即時中断すると明確にされているだけに、米国のゴリ押しぶりが目立ちます。

 牛肉の輸入規制がTPPをめぐる日米間の焦点の1つになっており、BSEが検出されても日本政府に国民保護のために直ちに牛肉検疫=輸入手続きを即時中断する権限の放棄を韓国のように求めています。TPP下では即時中断すれば、ISD条項で多額の賠償金を米国に取られます。

日本では2001年9月の初検出以来、36頭のBSE牛が摘発されています。2002年4月(肉骨粉全面禁止から半年)以降に生まれた感染牛はゼロです。農林水産省によると、2001年末までに生まれた牛は約18万8千頭、国内の年間平均生産頭数は約140万頭ですから2002年4月までに生まれた牛が約46万頭、合わせて約65万頭が残っています。ここから数頭摘発されるかもしれませんが、2002年4月以降の牛から発生がなければ、日本は13年1月以降に「リスクを無視できる国」(清浄国)のBSE制御地位になります。
農家の方々、関係者の努力でBSEの封じ込めにきわめてうまく成功しています。そのところに、不完全な防御策をとっている米国産牛肉を米国の言うがままに輸入しなければならないのでしょうか?




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