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家庭で減塩の梅干を作るには? [手作り食品]

食品の塩漬けは、恐い食中毒菌のボツリヌス菌も5~7%のNaCI・塩分により生育が完全に阻止されるように一般に食品の腐敗菌は耐塩性がごく低いので保存に有効です。
微生物には、生息に酸素が必要な好気性、酸素がなくても生きていける通性嫌気性、酸素がある生きられない絶対嫌気性に分けられますが、好気性の腐敗菌は密閉などで酸素を絶つと増殖が防げます。カビのほとんどの種類が酸素なしでは生育できないので、酸素をたつことが有効なカビ対策になります。糠床を毎日世話をする効果の一つは、糠床表面で増殖・繁殖し始めた好気性の腐敗菌を糠床の中に押しやり、酸素を絶つことで抑制することです。 参照 糠床・・産膜酵母

嫌気性の菌は、一般に耐塩性が弱いのです。また海水中に生息する細菌類・微生物のように塩分がないと生息できない好塩性の微生物、身近には塩水を用いて塩蔵した魚にいる微生物がいます。代表的な好塩性の微生物の赤色高度好塩菌はpH2.7以上で死滅するように、一般的に強い酸性の条件では死滅したり増殖が抑えられます。好塩性の微生物に限らず、酸性が強くなると細胞内に侵入する酸が増えて、微生物は死滅したり、生育できなくなります。らっきょう漬や糠床では、酸素を減らして絶って乳酸菌による乳酸発酵をおこして乳酸で酸性条件を作ります。梅干は、塩分の浸透圧で梅の細胞からクエン酸を引き出して酸性条件を作ります。



梅干では一般にはカメを使いますが、カメは密閉容器の様に効率的に酸素を絶つ事はできません。梅をクエン酸の梅酢の中に水面下に置くことで嫌気条件を作っています。梅干に適した熟度の梅は、梅酒に適した青梅の時期に比べクエン酸の量が少なくなっています。ですから早くクエン酸を引き出すために食中毒菌の増殖抑制に必要な濃度8%程度より塩分濃度が20%程度と高くなっていますし、重石をのせて梅が梅酢の水面から浮かばないようにしています。

レシピの二つのポイント

塩分の低い低塩梅干を家庭で作る様々なレシピがあります。それらのレシピは①酸素を効率的に絶つ容器などを使用する、②減った塩分の代わりに何を入れるかという2つがポイントになります。

10%をお奨め
クエン酸を引き出すには10%以下の例えば6%塩分でも可能ですが、何処にでもいるボツリヌス菌の生育を阻止したい、ボツリヌス菌は生菌だけでなくその毒素、加熱しても無毒にならない神経毒が問題ですので、菌の生育を確実に阻止するために少なくとも10%をお勧めします。

①酸素を効率的に絶つ容器に用いられるのは、梅酒用の密閉容器やビニール袋、チャック付き袋です。「平らな所に置き、袋の上から梅を軽く押さえるように空気を抜きながら、梅のすぐ上のあたりで袋の口をしっかりと結んで閉じる。結び目のすぐ上でもう一度結び、二重結びにする。もう1枚のポリ袋に入れて二重にする。受け皿になる容器入れて、」こうした工夫で中の空気・酸素を減らしています。梅が入れば、熟成に伴う呼吸で酸素が消費されます。そして「梅酢が上がるまで1週間ほど室温におく」




②の塩を減らした分の補いには、A)砂糖・ショ糖、B)米酢、C)ホワイト・リカーの3パターンがあります。
塩分20%では、浸透圧は約120気圧ほどになります。これまでの研究では、約120気圧の浸透圧で酵母等の増殖が長期に抑えられます。問題は塩分10%で浸透圧が約60気圧を超えると、食塩1%の浸透圧≑約1%のエタノール≑2.8%の酢酸≑約5%のブドウ糖≑約10%の砂糖(ショ糖)。塩分を10%減の浸透圧を補おうとすると、35℃のホワイトリカーでは梅1kgに約300ml、酸度約4%の米酢では7000ml。これらの殺菌・静菌効果を利用すれば量はもっと減らせます。
レシピには
1)塩分を20%から15%程度に減らし、米酢(酢酸)を5%(梅1kgに50ml)加えます。
2)塩分10%にして米酢(酢酸)を3.5%(梅1kgに35ml)、35℃のホワイト・リカーを3.5%(梅1kgに35ml)を加える。 詳しく
3)塩分10%。まず袋に入れた梅に50mlのホワイトリカーをまぶして全体を殺菌してから、10%の塩を加える。 詳しく

密閉容器を使わないで塩分10%でホワイトリカーを1カップ・200mlのレシピでは「こちらは非常にかびやすいので、ご注意を」とあります。3)のレシピに比べ4倍のホワイトリカー・エタノールを加えても開放した、空気・酸素が遮断されていないとカビるのです。  参照 新潟県の減塩梅干しの作り方



塩分10%で密閉状態でつくる漬物には、ラッキョウの塩漬があります。これでは、耐塩乳酸菌による乳酸発酵がおこり乳酸で酸味が生まれます。らっきょう成分には強い抗菌・抗カビ作用をもつアリシンが含まれていますから、その働きでカビがつきにくい。落し蓋、皿など重石ででらっきょうが浮き上がらないようにして、らっきょうが液面から顔を出さないように保って、かびが生えにくくしています。 参照 保存するらっきょう漬

梅も塩分10%で密閉状態にすれば、乳酸発酵がおこるかどうか?。福井県食品加工研究所などの研究で、梅酢の強い酸性でも働く乳酸菌が発見されています。しかし、成熟し黄化した梅の果汁に糖分を補って発酵させていますから、発酵するための糖分が少ない。乳酸発酵するとヘテロ乳酸発酵で発生する炭酸ガスによる袋の膨張などが起こりえます。それを避けるには、ホワイトリカーによる殺菌や米酢による静菌です。においが梅干しに移るので、嫌な方にはお勧めできません。手間ですが、「消毒は熱湯を利用します。梅を2,3個たまにとって火にかけた鍋の熱湯に数秒つけています。」


甘露梅

塩分10%減の浸透圧を補うには砂糖は1kg、ブドウ糖は500gと、梅の砂糖漬になってしまいます。

江戸時代の遊郭、吉原名物に上げられている甘露梅(かんろばい)は、「青小梅塩につけおき、つけたる時出して打わり種をとりすて、そのあとへ朝倉山椒或は粒胡椒などを入、馴たる梅を合はせて紫蘇の葉にて包み、砂糖蜜に酒を加へてつけるなり。夏より冬まで目張して置べし。風入ればかびの来る者也。但したねをぬかずにするもあれどそまつなり。」(『料理早指南』四篇・1804)といったん塩漬梅をつくり、それをエタノールと砂糖の蜜に漬け変えるやり方で作られています。この記述でも風・酸素の遮断が防カビのポイントです。

歌舞伎座厨房で再現されたことがあり「刺激的な甘酸っぱい味のおいしさに驚きました」ともこと。吉原では、お正月に「私が作りました。どうぞ召し上がれ」などの甘い言葉を添えて、茶屋で、贔屓客への年玉(年礼)として贈ったもののようです。「寺からと女房をだます甘露梅」「甘露梅内儀の口に唾がたまり」
(新潟市の古町にある小川屋さんの製法はこれとは違います。)



塩と砂糖だけのレシピでは密閉容器や袋で酸素を遮断して
4)塩分18%で砂糖を3.6~5.4%を加える。 詳しく
5)塩分13%で砂糖を6.5%を加える。 詳しく

この二つのカビ対策は酸素の遮断です。砂糖を使うと「塩だけで漬ける梅干しよりも、表面の皮は柔らかくて果肉はジューシー、口当たりがしっとりとした、まろやかなコクのある味わいに仕上がります。」

梅酢が上がった後

密閉容器などで酸素を遮断してカビを防ぎます。

また、赤シソを入れてカビを防ぎます。 参照 赤シソで防カビ?

浸透圧は4)が塩分18.5%相当、5)は13.6%で、酵母を抑える浸透圧・約120気圧に届きません。1)、2)、3)も不足です。表面に膜を作る産膜酵母は酸素が必要なので、容器で酸素を遮断できていれば生えませんが、梅酢の中で酵母が繁殖できます。通常の梅酢は透明ですが、濁ってきます。
対策① 梅酢のクエン酸よりも殺菌力の強い米酢(酢酸)適量入れる。
対策② 梅はアルコール消毒、梅酢を火に掛けて加熱殺菌。後は、冷蔵庫へ。




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