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もろみ酢、粕酢、中国の酢(下) 固体発酵の酢 [調味料ー酢、料理酒、味醂]

普通の日本酒の麹菌ニホンコウジカビ・Aオリゼもクエン酸生産はしますが、能力が低いのです。日本酒では乳酸菌が働き、その乳酸で酸性にしています。今では、乳酸を別に発酵させておいて、加える蔵元が多いそうです。
日本酒を搾った酒粕を長期間貯蔵すると酒粕に含まれる酵母や麹が働いて、酒粕中のたんぱく質はペプチドやアミノ酸になり、澱粉は糖分や有機酸に分解され酢造りに最も適した豊潤な成分を持ち、アメ色から味噌色に変ります。これが練粕です。

新粕 ⇒ 練粕

麹菌など微生物の増殖・培養は、フラスコに液状の培地を入れて行う「液体培養」、半固形の培地をいれるシャーレ培養と麹の様な蒸米などの固形物の上での「固形培養」があります。麹菌は同じ菌でも培養方法によって形や性質を異にします。持っている遺伝子はみな同じですから、不思議です。

麹菌は様々な酵素たんぱく質をつくり、それで培地の成分を分解し有用な成分がうまれますが、その機能は「固体培養」が強いのです。液体培養では麹菌の周囲に栄養源がたくさんありますが、蒸米など固形培養では、米の中に菌糸を伸ばし取りにいかなければなりません。液体培養では麹菌の細胞膜に酵素を置いて、周囲の栄養物を分解し、直ちに取り入れます。固形培養では菌糸の先端から酵素を培地の蒸米の中に分泌します。その遊離型酵素が蒸米の栄養分を分解し、例えばでん粉からブドウ糖を生成し、その一部を菌糸の近いものを吸収しています。



日本酒では種麹の胞子(分生子)を蒸米にまぶし、発芽し菌糸は自ら分泌した遊離型酵素で蒸米を分解し、それを栄養として成長します。蒸米一粒一粒に麹菌が生産分泌した何種類もの酵素が詰め込まれています。麹菌は、醪の中で酸素不足とアルコールなどで胞子(分生子)を残して死んでしまいます。

酒粕にはそうした酵素や胞子、酵母が残っています。長期間貯蔵するとそれらが酒粕で働いて醸して、糖質、各種の有機酸、アミノ酸、ビタミン類が豊潤になります。練粕になったら、水を加え、撹拌して溶解すると褐色の酒粕抽出液ができます。これに種酢=酢酸菌を加え酢酸発酵させると褐色の風味豊な粕酢ができます。


虹屋で取り扱い品

この江戸時代に考案された粕酢は赤酢と呼ばれ、江戸前寿司の酢飯に使われてきました。寿司は魚を塩と米飯で乳酸発酵させた「なれすし」(熟れ鮨(鮓)、馴れ鮨(鮓)が起源ですが、元禄時代の初め頃から酒粕を利用した酢の醸造法が進歩すると炊飯に酢を加えるようになりました。


左が粕酢の酢飯


鎮江香酢(ちんこうこうす)など中国の酢の多くは、粕酢と同じく固体発酵です。麹菌、クモノスカビなどで醸されます。オオムギ、小麦、糯米、コーリャン、ふすま、エンバク、豌豆などを原料にクモノスカビ、麹菌、酵母などで固体発酵(餅こうじ)で醸します。その後、水と酢酸菌を加え、酢酸発酵してます。

クモノスカビは日本以外のアジア全域において、酒や酢の醸造で麹に用いられています。極めて成長が早くあっというまに広がる。表面に広がる菌糸に水滴がつき、きらきらと輝き、クモの巣のように見えるカビ。

インドネシアの茹でた大豆にクモノスカビを生やしたテンペ(Tempeh)という食品


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