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農薬を半減できる二つの新技術  果樹の樹形、温湯散布 [農薬を減らす工夫]

№10-12 2010年3月小針店で印刷・配布した「畑の便り」再録

IPM(総合防除)と生物農薬

  果樹栽培では、多くの消費者が好む見た目が良い果実を収穫するために、農薬を多用しています。この農薬を50%、約半分減らせる技術が開発されました。高価な機械を買ったりする必要はありません。果樹農家は冬が終わりを告げる時季に、剪定(せんてい)、枝を切り落とし樹形を整える作業をします。その樹形を工夫することで、農薬を50%、約半分減らせると農研機構・東北農業研究センターが発表しました。
bouzyo_rinngo0109.jpg果樹園の農薬散布には、スピードスプレヤー(SS)、農薬を溶かした水を納めるタンクに散布ノズル、タイヤ、エンジン、運転台を取り付けた散布専用の車を使います。これで、果樹の間を走りながら、タンクの農薬を天辺に届くように一面に散布します。人が散布ノズルを散布したい葉々に近づけて散布するやり方に比べ、手間がかかりません。

その代わりに、面状に噴霧された農薬の霧滴流は葉に衝突・付着しないかぎり、しばらく漂い、やがて地面に落下して全て無駄に、つまり環境を汚染するだけ。その果樹にかからない農薬量は散布量の約80%

これを減らす薬剤到達性の良い樹形を考案して、農家で試してもらったところ、りんごでは50%、洋ナシでは40%の農薬を減らせました。その分、環境汚染、先週の畑の便りで取り上げたような水質汚染などが減らせてます。

 収穫量がりんごでは1割ほど減るといったデメリット、作業時間は2割程度削減し、農薬代も減るメリットがあるそうです。また、農薬散布では減らせない樹木中にいるシンクイムシなどの被害も減ったそうです。

  樹高を切り下げる剪定などで良い樹形にするには、早くて3年ほどかかるそうです。今の形が手直しできないほど悪ければ、植え直して骨格になる枝配置から育て直しが必要です。時間はかかりますが、こうした減農薬技術が拡がると良いですね。 

栽培中のイチゴに、週一回、温湯をかける

 55℃前後のお湯を散布すると、農薬が半分くらい減らせるそうです。茨城大学農学部の佐藤達雄准教授らが、取り組んでいる研究で22日に発表されました。
 作物に熱ショックを与えると、その後、さまざまな病原菌の感染に対する抵抗性があらわれます。高熱で、サリチル酸や感染特異的タンパク質の集積などがおこるからです。全身獲得抵抗性(SAR)といいます。この現象、熱ショック誘導抵抗性は、トマト、キュウリ、イチゴ、メロンなどさまざまな作物でおきます。高温そのものによる病害虫防除効果も期待できる。

hsant1.jpg佐藤准教授らは、栽培される作物の中でも特に農薬使用量が多い施設イチゴで、温湯の散布によって主要病害虫・うどんこ病、炭疽病、灰色かび病、ハダニ類など抑制し、農薬使用量の削減を目指して2008年から研究して来ました。

  農薬は周辺環境への負荷・悪影響や薬剤耐性病害虫の出現、生産コスト、作業労力など、化学合成農薬一辺倒の病害虫防除は様々な問題を抱えているので、クリーンな防除手段として「お湯」に着目しました。作物に悪影響がなく病害虫のみを抑制する温度域、全身獲得抵抗性(SAR)を誘導する温度域を明らかにする。必要な水量や散布方法や道具の開発です。

その結果、週一回、葉先がかかる位の55℃前後のお湯を散布すると、農薬が半分くらい減らせるとの結果が出たそうです。経費は農薬散布とほぼ同じですが、手間が6倍。実用的な自走式の散布装置を開発して、これを減らすことを目指して研究を継続するそうです。早く実用化されること、トマト、キュウリ、メロンなどさまざまな作物でも、研究・実用化されることを待ちたいです。

新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「温湯散布による施設イチゴの農薬使用量削減と保鮮技術の確立」のホームページ

消費者の選択が開発、普及を支える
 私たち消費者が、減農薬・有機栽培の農産物を購入すれば、それが生産農家に伝わり、こうした防除資材の開発、普及につながります。

京都府キュウリモザイク病を予防する植物ワクチンが製剤化されました 

ワクチンについて ベジタブルガーデン 日本デルモンテ

 



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