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遺伝子組替え許容混入率、大豆で5%以下しかし法的強制力なし 2000年 [遺伝子技術]

2000年2月14日小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録

   私たちの働き掛けで遺伝子組み換えの大豆などを食品の原料に使っているかどうかの表示が日本では2001年4月から義務づけられます。現状では集荷や運搬の際にある程度の混入、大豆では最大5%前後の組み換え原料が混入しています。義務化されるまで改善に取り組む時間があるにもかかわらず、この現状を口実に農水省は表示を実質的に骨抜きにかかりました。不使用の表示での混入の割合の上限を法で決めず、企業の判断にゆだねる方針を11月に公表しました。つまり 

虹屋の「不使用」は混入なし、○○食品は5%混入、★☆製菓は15%まで混入。これでは表示をする意味がありません。

  この方針に対し農水省は意見の公募をしていたので様々な団体、個人から反対の意見が出されました。 

虹屋も送っています。衆議院でも取り上げられました。それで2月7日に大豆に限り混入の許容率を5%以下とすると発表。ただし原料分別管理の手順書(マニュアル)の目安値で、法的な強制力はありません。不当表示で行政指導したり告発する際の基準になりえますが、罰則なしでは実効性が疑問です。またトウモロコシは、「分別管理が遅れ、大半を輸入に頼る現状では、厳格な混入率規制は原料コストの高騰を招きかねない」として、目安も示されていません。

 欧州連合(EU)との比較
 

  4月から新表示を導入する欧州連合(EU)と比較してみます。

 日本・・・大豆とトウモロコシを原料とする24の食品

 遺伝子組み換え(義務表示)  原料が組み換え作物

 遺伝子組み換えでない(表示可能)

   原料が非組み換え作物=大豆の場合混入率5%以下が目安、

   トウモロコシは企業の自主判断

 遺伝子組み換え不分別(義務表示)

   原料が生産・流通段階で分別管理されていない

欧州・・・全食品、食品添加物

 遺伝子組み換え作物使用(表示義務)

   原料が組み換え作物=過去に認可した食品、

    99年6月以降、新規認可は凍結

 遺伝子組み換え作物が混入(義務表示)

   原料の1%以上が組み換え作物

 現在の検査技術では原料段階で0.1%の混入まで検出可能です。ですから混入をどの程度許容するかは、技術的な問題ではなく政治的社会的問題です。

  つまり日本や欧州の消費者の遺伝子組み換え作物の安全性、食品としての有害性や組替え遺伝子による生態系(野外や腸内細菌など体内の生態系)汚染などに懸念を持ち、分別と表示を求めている声をどう見るかです。

あいまいな日本政府の対応
 
   消費者に近い小売業者や加工食品業者は、組替え食品を取扱商品から排除したり、自主的な表示を日本でも欧州でも始めています。その結果、組み換え作物の米国産は売れない⇒価格が相対的低落したり市場を従来の品種、組替えをしていない品種を生産するブラジルなどに奪い取られています。
 
  こうした事態に農産物輸入の障壁だと米国などは反発しています。米国の大豆などの生産量の3分の1は輸出向けで、主な輸出先は日本や欧州で影響が大きい。今米国は大統領予備選挙の真っ最中、有力な候補は「(遺伝子組替え作物を栽培するという)米国の農業政策を外国に(欧州や日本の消費者に)左右されてはいけない」と訴えています。
 
虹屋は「私が何を食べるかは私が決める。米国政府に決められてはたまらない。」とお返しを言いたいし、米国の生産者も需要拡大が見込める非組み換え作物への転換を進めています。今春の作付けで組替え大豆は15%程度トウモロコシは最大25%、作付面積が前年に比べ減少する見通しです。
 
 米国政府は遺伝子組替えにしろ食品添加物にしろ危険性が証明されない限り原則的に輸入を認めるべきだと主張しています。100%危険というのは100%安全というのと同じくらいに科学的には難しい。つまり危険性を示す研究がでたら別の学者に金をやってその研究にケチをつけさせれば幾らでも時間は稼げます。水俣病などで原因企業が散々やった手口です。環境ホルモンのように人間に有害とわかってからでは手遅れの問題もあります。安全性を証明する科学的データがあいまいなら規制するというEU委員会の考えがより安心できませんか。
 
  7日会見で農水省の高木事務次官は「マニュアルの検証、分析は続ける」と述べ、義務表示導入後の実態も踏まえ、内容を柔軟に見直す考えを示しています。消費者・国民がきちんとした表示を求めれ続ければ、法を厳格に運用したり目安値を下げたりする。逆に米国などの圧力が強ければ、好い加減に運用したりするということですからまだまだ目が放せません。

2000年2月14日印刷・小針店で配布したものに加筆 

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