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バナナと飢餓と有機農業 (2-1) 2001 [有機農業と飢餓、食料自給]

2001年3月に虹屋小針店で配布した「畑の便り」 の加筆・再録
 
虹屋が扱っているバナナは、フィリッピンのネグロス島などで無農薬で栽培されたものです。このネグロス島は、1985年には「14万人もの子どもたちが飢えのために死に直面している」とユニセフが報告するほどの深刻な飢餓状況になりました。
 
飢餓はなぜ起きたのか。
 
 ネグロス島はフィリピンにある、四国の3分の2ほどの大きさの島です。島の西半分は肥沃な平地のほどんどを大地主の砂糖キビ農園で占められ、島民の多くも砂糖産業に依存して生活しています。大地主の砂糖きび園で働く労働者の生活条件は、大農園で砂糖きびの収穫などの時だけ、収入を得て、その金で食料を買っています。
 
 農民、漁民達の暮らしは、どうでしょうか。
 
バコロド市のストリートチルドレン、ラモン・マグバヌワ君(13歳)は「もう1年くらいここにいる。カバンカラン市のナンドン村からきたんだ。僕は6人のうち5番目。
母さんたちは山の畑でバナナやキャッサバを作っている。すごく貧乏なんだ。
家出してバスに乗り込んだ。車掌さんを知っていたから、ただでバコロドのターミナルまで乗っけてもらった。ターミナルにはたくさんの子どもがいたから友だちになってそのままここにいる。バスの掃除。床をはいたりゴミを拾ったり。運転手が食事している間、バス以外の車の番もするよ。一回2~3ペソもらえるんだ。一日で20~30ペソくらいになるかな。ターミナルの店でご飯は食べてるよ。時々余ったものをわけてくれるおばさんもいるし。夜はベンチで寝てる。
雨の日は寒いけど、病気にかかったことはまだないよ。ほとんどはラグビ(シンナー)を吸ってる。シャブやマリワナを売る大人もたくさんいる。マリワナは一本10ペソで売っている。一度母さんが会いにきた。ご飯食べていけるんだったらここにいたほうがいいと言った。本当はハイスクールまでいきたいんだ。それから仕事を捜す。なんでもいいよ、仕事にありつけるなら。」
 
  この貧困の一因は、流通手段がごく一部の人たちに独占され、そのため、農民や漁民はせっかくの生産物を安い値段で売らざるをえないことがあります。根本的には、大地主のサトウキビが条件の良いところを占め、一般の農民は土壌の痩せた土地や斜地、漁村には小さな小舟しかないといった劣悪な生産条件にあります。このため、食料は多くを島外からの輸入・移入しています。
 
 砂糖価格の暴落が80年代にこのような厳しい状況に襲いかかりました。国際市場における砂糖価格が暴落し、砂糖きび農園・プランテーションや精糖工場が閉鎖されました。当然、労働者が職を失いました。お金がなく、食料を買えません。彼らに野菜や魚を売って暮らしていた農民や漁民も買い手がいなくなるのですから、無収入。これまで魚を売った代金で買っていた穀物などが買えません。こうして餓えが始りました。子供たちが栄養失調で死亡するなどの飢餓に苦しみました。
 
  食料が社会・経済の中で流通し行き渡るのは、慈善やなにか自動的な共有システムを通じてではありません。賃金収入などお金を稼いで、そのお金での売買を通じたり、自分で収穫物を自由にできる農地を持ち耕作するなどの経路をたどります。個々人、個々の家庭にこうした食料を獲得する能力が必要であり、それが確保できない時、餓えに苦しみます。
 
  「食料を獲得する能力」と有機農業
 
  ネグロスの人々が「食料を獲得する能力」を得る為には、①工業や観光業などを振興し働く場を増
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やす②砂糖きび以外の国際商品作物、例えばコーヒーのような作物に切り替える③砂糖きびだけではなく野菜や米など地域で消費する作物をつくる農業・農民を育てるといった方途が考えられます。フィリッピン政府は①と②を推進しています。
しかし工業などを興す資本は外国からの投資に頼らざるを得ませんが97年に見られたようにこうした外国資本は、大半が投機目的で何かあると引き揚げるので不安定です。砂糖きび以外の国際商品作物を導入しても、例えばコーヒーが50%、砂糖きびが50%になったとしてもコーヒーがダメなときは50%が餓える、砂糖きびがダメなときは50%が餓えるというふうに規模は小さくなりますが85年の飢餓をおこした構造は変わりません。③の野菜や米など地域で消費する作物をつくる農業・農民を育て、その食料が流通する仕組み(市場)を作り上げることが、ネグロスの人々が「食料を獲得する能力」を安定的に得る道です。①や②の道を拓くにしても③は、安全網として重要です。
 
  この第三の道を拓く為に、有機農業・農法が必要なのです。ネグロスバナナの代金の一部はこのための資金に当てられます。詳しくは次回で


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