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健康食品の見分け方① プラシ-ボ効果 2002年 [サプリメント・健康食品]

2002年10月1日小針店で印刷・配布した「畑の便り№02‐40」の加筆再録

 「これは痛みによく効くよ。」といわれて、乳糖を飲んで、痛みがなくなったり、逆に吐き気がでたりすることがあります。このような薬理作用のないものによりもたらされる効果や症状のことをプラシーボ効果(偽薬作用)といいます。語源はラテン語の「I shall please」(私は喜ばせるでしょう。)。医療では患者さんを喜ばせ安心させるために、薬理作用のない薬、乳糖や澱粉、生理食塩水が使われます。

プラシーボ効果は客観的な変化も起す

プラシーボ効果はだいたい30%位の人に顕われるといわれています。(場合によればそれ以上)プラシーボ効果がどうして起こるか、その理由は1)「これでよくなる」という暗示、2)信頼している医師や知人が与えたという条件付け、3)自然治癒力などが考えられています。暗示効果が主で痛みなどの主観的な症状にプラシーボ効果があらわれて、客観的な変化、効果はないと考えがちですが、そうではありません。北里大学で健康な人108人にプラシーボを投与したところ、そのうち18人(14.3%)の人に肝機能検査値が変りました。客観的な変化も起こります。

「三た論法」と「二重盲検試験法」

み○もんたの番組とか発掘○○事典とか、いわゆる民間療法や健康食品の広告では、「使った、治った、効いた」という三つの「た」、「三た論法」で話が構成されています。治る例がプラシーボ効果で必ずあります。効かなかった治らなかった例は無視して、効果があったと言っている人たちの報告だけを取り上げれば、番組や広告をつくることは簡単です。血液検査など客観的効果が出た人がいれば、なおのこと信憑性がましますが、これもプラシーボ効果でおきます。

 薬、医薬の世界では、これは重要な問題です。薬の効くか効かないを確かめる、現在最も信頼できる試験法は「二重盲検試験法」です。

二重盲検試験法(Double blind test)

具体的にはまず似た症状をもつ患者さんに被験者になってもらいます。被験者の人数は多いほど正しい結果が得られます。此の人たちを無作為に二つのグループに分け、一方のグループには本物(実薬)を、もう一方にはにせ薬を飲んでもらいます。(一定期間経ったら今度は反対の薬を飲んでもらう事もあります。これをクロスオーバーといいます。)

 この時、医師(観察者)は実薬であるか、プラーシボであるか知っていて、患者(被験者)にのみ知らせないというやり方を単純盲検法・single blind testといいます。この単純盲検法では、医師の投

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与の際の態度が微妙に変り影響を与えたり、医師が実薬を飲ませた患者の症状を特に注意するなど、効果・結果の評価に偏り・バイアスがでます。

この偏り・バイアスをなくすために医師も被験者も、どちらが実薬でどちらが偽薬か分からないようにします。患者だけでなく投与する側の医師や、データ解析者などにも知らせない、二重に目隠しをします。このやり方を二重盲検、二重めかくし法とかダブル・ブラインド・テストと言います。どの人に本物が投与され、偽薬を飲んでいるのは誰か知っているのは、コントローラー(管理者)だけです。こうすると偽薬効果だけを取り出せます。得られた結果を集めて、実薬の投与で顕われた効果と偽薬効果を統計的に比較分析して、試験結果の判定が行われます。

 ところで、最近までの日本での医薬の二重盲検試験の結果は、欧米では通用しませんでした。少数症例の試験が殆どで、医師自身が謎解きでもするようにどちらが実薬かを詮索する結果、二重盲検の意味がなくなるなど信頼性に欠けると海外では評価されていました。これが、日本では有効だが海外では一顧だにされない薬、日本だけで使われる抗がん剤、アレルギー薬が多数ある理由です。(数年前から、ようやく国際的に信頼される二重盲検比較試験が実施されるようになりましたが、日本だけ薬は再試験されて有効性が確認されているわけではありません。)このように二重盲検試験にも様々なレベルのものがあります。

アルカリイオン水の二重盲検

アルカリイオン水は下痢や便秘、腹部膨満感などの腹部愁訴に効くと宣伝されています。その根拠に業界団体からの研究資金で某国立病院で行なわれた二重盲検試験データがあります。それによれば、アルカリイオン水は有効判定79%とありますが、偽薬(浄水)でも65%が有効です。この数字だけなら効果がありそうです。しかしこの研究では有効というのは、「やや改善」から「著明改善」まで、②腹部愁訴は心理状態に左右される事が多く、特に腹部膨満感は本人の感覚。つまり、有効判定の中味が問題です。ただの水を飲んでも65%も有効判定なのです。同じような試験が繰り返されて、その結果を見なければ、何ともいえないというところです。

 「ためして○○」とか、健康食品の広告で効果があるという説明は、①「使った、治った、効いた」という「三た論法」ではないか②プラシーボ効果(偽薬作用)の扱いといった点を良くチェクしてください。

2002年10月1日小針店で印刷・配布した「畑の便り№02‐40」の加筆再録


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