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バナナと飢餓と有機農業 (2-2) 2001 [有機農業と飢餓、食料自給]

2001年3月に虹屋小針店で配布した「畑の便り」 の加筆・再録
 
虹屋のフィリッピンのネグロス・バナナはネグロス島で80年代後半に起きた飢餓救済の国際的な活動の中で生まれた無農薬栽培のバナナです。募金に始まった救援活動は、自立支援のバナナの共同購入を生み出しました。そのバナナです。
 
 島の肥沃な平地、生産条件の良い土地のほどんどを大地主の砂糖キビ農園で占められています。多くの島民は大地主の農園や精糖工場で砂糖きびの収穫などの時だけ働き口を得て、その労賃で食料を買っています。国際市場における砂糖価格が80年代に大暴落し、砂糖きび農園や精糖工場が閉鎖されました。当然、労働者が職を失いました。お金がなく、食料を買えません。彼らに野菜や魚を売って暮らしていた農民や漁民も買い手がいなくなるのですから、無収入。これまで魚を売った代金で買っていた穀物などが買えません。こうして餓えが起こりました。
 
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  この飢餓を生む構造からネグロスの人々が抜け出す為には、①工場など働く場を増やす②コーヒーのような国際商品作物もつくる③野菜や米など地域で消費する作物をつくる農業・農民を育てるといった方途が考えられます。フィリッピン政府は①と②を推進しています。しかし資本や市場は外国に頼ります。例えばコーヒーが50%、砂糖きびが50%になったとしてもコーヒーがダメなときは50%が餓える、砂糖きびがダメなときは50%が餓えるというふうに飢餓をおこした構造は変わりません。③の野菜や米など地域で消費する作物をつくる農業・農民を育て、その食料が流通する仕組み(市場)を作り上げることが、「食料を獲得する能力」を安定的に得る道です。①や②の道を拓くにしても③は、安全網として重要です。
 
  この第三の道を拓く為に、ネグロスでまず問題になのは生産条件の良い肥沃な土地を大地主の砂糖キビ農園から如何に取り戻すか。敗戦後の日本では、地主から土地を実際に耕作している人に無償で渡す農地解放・自作農創設が行なわれました。明治時代末から農業が生み出す利益を地主らは専ら農業外に投資し、結果、農業の発展は遅れました。小作人だったら生産意欲はどうでしょうか。
 
 敗戦により朝鮮、台湾を失い飢餓に臨んだ日本は、食料生産を阻害するこの病根を退治する必要があったのです。
 
  フィリピンでは、マルコス、アキノ、ラモス、そして現在の大統領も大地主の出身です。それで徹底的な改革はされていませんが、ある程度の農地改革の法律が制定されています。こうした法や人々の運動で小規模ですが、砂糖きび畑が農園労働者の手に渡っています。
 
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 そこで様々な作物をつくろうとして直面したのは長年、砂糖きびが連作され化学肥料や農薬が使われた土地では、種をまいたから実が成るとは行かない「土地、土壌がが干からびている」という問題です。恵みを創り出す農業を回復するには、まず干からびた土を豊かにすることが大切です。それには家畜の糞尿や生ごみやサトウキビの絞り滓などで作った堆肥、魚粉、貝殻など、多くの有機物の施肥が必要です。つまり有機農業・有機農法をおこなわなければネグロスの人々が、様々な野菜や米などの栽培し「食料を獲得する能力」を育てられないという現実です。
 
  しかし人々は社会的混乱・内戦状態で子どもが病気にかかると、せっかく貯めておいた種も器具も売り払ってしまわなければならないという状態、まず「今日の米を確保する」ことが先決という状態ですから、3年先5年先に効果が現われてくる有機農業に取り組むことが困難な状況にあります。
 
  ネグロスバナナ民衆交易で積み立てられる自立資金を使い様々な取り組みが行なわれ、紆余曲折がありましたが、芽が出てきています。
「ツブランは小規模でも養豚を中心に一つの循環ができあがりつつある。豚の糞尿はもちろん堆肥となって、米や野菜、有機砂糖きび・果物の生産に利用される。鶏のエサにもなるし、養豚場の下に池を掘って300匹のテラピアを養殖し始めた。池の水にも豚の糞尿が利用されているから、水田や畑に撒けば肥料にもなる。全経費の4割が農場の収益でカバーでき、100%自立の計画は夢でなくできそう」
 
  第三世界の多くに、ネグロスと同様に国際商品作物に偏ったプランテーション農業が行なわれています。ネグロスの経験は、化学肥料や農薬を多投するプランテーションで干からびてしまった土地を回復する・農法、つまり有機農法・農業が「食料を獲得する能力」を人々が安定的に獲得し、飢餓に落ち込まないためには必要ということではないでしょうか。


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