三年番茶の由来 2011年 [サプリメント・健康食品]
2011年1月小針店で印刷・配布した「畑の便り№11-05」の加筆再録
昔、ある村で中国から渡来した僧が、村人のために寒中、野生の茶の木を伐採されました。太い枝のところはナタで割って、焙じたのち茶つぼに入れ、口を和紙でふさいで紐で結わえました。そして納屋や物置の上に三年以上放置し、順に使いました。これが三年番茶の由来だとされています。
茶壷に入れて3年以上放置・・後熟(こうじゅく)
茶道では「「口切(くちきり)」「炉開き」という大切な茶事があります。毎年、初冬の11月ごろに行われ、この日をもって、茶道においては、新しい年がはじまり「茶の正月」と呼ばれます。
抹茶が大好きな徳川家康は、静岡の駿府の大日峠など3ヵ所にてん茶(抹茶にひく前のお茶)を貯蔵する氷室(氷で冷やした倉庫)=お茶壷屋敷をおいて、毎年お彼岸のあと、11月ごろに山から降ろしてきたそうです。そのお城に降ろしてくる行事が遊び歌(ずいずいずっころばし)で知られる「お茶壷道中」で、最初に殿様がお茶壷の「封切り」をしました。それで、秋になってはじめて飲むその年のお茶を「封切り茶」と言います。
なぜ、わざわざ貯蔵して秋に抹茶を飲んだ、飲むのか?それはもちろん、秋に飲んだ方がおいしいと思った、思うからです。温度管理をきちんとしたら、色と香りは別にして味は抜群だそうです。新茶特有の新鮮香(若葉の香)に代わって、後熟香(すずらん・バラ・果実のような甘い芳香)が強くなります。味は旨みと甘みを伴ったコク味が生じ、角の取れた深みのある味に変化するのだそうです。この初夏に摘まれた新茶が茶壷で保管中におこす変化を、茶業界では後熟(こうじゅく)といいます。
中国茶の黒茶は、麹菌により数ヶ月以上発酵させますが、これはそうではありません。茶葉中にある酵素が働き(お茶の発酵)お茶が褐色になるようにしたお茶が紅茶です。緑茶は、この酵素をお茶の葉を加熱して働きを止めています。ですから、どういう仕組み、原因で後熟が起きるのかは分かっていませんが、とにかく美味しくなります。今では、低温保管で新鮮な状態を保つ技術が進んだために、後熟したお茶はなくなりました。その変わりに登場したのが深蒸し茶だそうです。蒸しを深くし、製茶の段階で後熟したような風味を引き出すのです。
「焙じたのち茶つぼに入れ、三年以上放置」という由来から、三年番茶は後熟させたお茶です。
4番茶(秋冬番茶)・・冬に摘んだお茶
お茶は新芽で作ります。栽培地の気候によって違いがありますが、概ね年4回の新芽の伸びる時期があります。
・4月~5月にかけて摘採製造されるお茶を1番茶(新茶)
・6月に摘採製造される2番茶
・7月~8月にかけて摘採製造される3番茶
・9月~10月にかけて摘採製造される4番茶(秋冬番茶)
その中でも、柔らかな新芽でなく、硬化が進んだ茶葉(コワ葉)や収穫した後、遅れて伸びた茶葉(遅れ芽)を使ったお茶を特に番茶と区別するようです。3番茶、4番茶(秋冬番茶)は、夏の太陽を浴びて丈夫に硬くなっている葉が多いので、番茶になりやすい。
番茶はプロビタミンC、体内でビタミンCに変わる成分が含まれていて、これが熱に強く、ぐつぐつ炊いても分解しません。ビタミンC源として最適です。また、血糖降下作用のあるといわれるポリサッカライドを多く含みます。この物質、富山医科薬科大学の動物実験で効果が見出され、秋冬番茶に多く含まれています。これは熱に弱いので、水出し茶で多く摂取できます。
お茶の渋み成分のカテキンは、癌に対抗する作用や血中コレステロール、血圧、血糖値を下げる作用、体脂肪を低減する効果、抗菌作用などがあるといわれます。この成分は日をよく浴び、成長した茶葉に多い。つまり番茶にする硬化が進んだ茶葉(コワ葉)や茎に多く含まれています。
「寒中に採った茎も含まれた野生の茶」という三年番茶の由来は、このような様々な健康的な効果・効能をもった秋冬に摘採された番茶ということです。
お茶の分類
人工的な日陰で栽培* | 碾茶(てんちゃ) | 遮光期間30日。挽いて抹茶にする。蒸し機(高温蒸気で15~20秒)→散茶機(高さ5~6m 、一枚毎バラバラになるよう露を切る)→乾燥炉(180度の高温で乾燥)→荒碾茶→仕上げ(切断、選別・乾燥)→ 碾茶→挽く→抹茶 |
玉露 | 遮光期間20日。1835年失敗した碾茶を販売したところ好評で普及といわれる。製造法は煎 茶とほぼ同じ。新茶より熟成した方がよいという考え方があり、何年産などを表示したものも。 | |
かぶせ茶 | 遮光期間茶摘み前3~10日。煎茶として販売。7~10日、長めにかぶせた茶は玉露としても 販売。 | |
日光の下で栽培 | 釜煎り茶 | 発酵酵素の働きを止める方法として煎茶の蒸しでなく、釜で炒る方法を採用したお茶。中 国など世界の緑茶生産の80%は釜煎り茶だが、日本では反主流。 |
煎茶(普通蒸し) | 南北が原則のかまぼこ型の畝で栽培。 (機械荒茶製法)生葉コンテナー→蒸し機→冷却機→葉打ち機(送風で水切り)→粗揉機(焙炉上で 回転揉み)→揉捻機(力を入れ葉の中心の水分を押し出して乾かす)→中揉機(玉解き熱風乾燥)→精揉機(尖っ た形に整えながら乾かす)→乾燥機 |
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深蒸し煎茶 | 標準蒸し時間30秒に対して60~120秒くらい蒸す煎茶。 | |
蒸し製玉緑茶(蒸しグリ茶) | 煎茶の簡易型。戦前ソ連南部イスラム圏へ輸出しようとして中国産釜煎り茶に似せた煎茶 として開発されたもの。精揉工程をなくし仕上げ乾燥で整形。 | |
番茶 | 最初に摘採する4月下旬~5月上旬の一番茶でなく、6月中旬に摘む二番茶以後のかたい茶 葉で製茶 |
*覆い下(おおいした)茶園でつくるお茶(化学繊維の寒冷紗(かんれいしゃ)による遮光 が主流、従来は葦簾(よしず)と藁(わら)の本簾(ほんず)作り)。日光を遮ると光合成のため不足する日光を 有効に使おうとして、茶樹が葉緑素を増やす。また、日光を浴びると茶樹が合成するアミノ酸からカテキンが生ま れるが、覆い下茶園では日光が余り届かないのでアミノ酸が多く含まれたお茶となる。
副産物茶 | 茎茶、芽茶、粉茶 | |
加工茶 | 抹茶 | 12C末栄西が伝えた古くからのお茶であり中国で滅びた後、日本だけで受け継がれた。 |
ほうじ茶 | 大型の番茶を強火で狐色になるまで炒って製造。色は茶色だが発酵を止めているので緑茶 の仲間。茎茶を混ぜて、あるいは茎茶だけ焙じるものもある。 | |
玄米茶 | 煎茶や番茶をベースに炒ったお米やはぜたもち米(白花)を混ぜたお茶。茎茶、抹茶を加 えたものも。 |
2011年1月小針店で印刷・配布した「畑の便り№11-05」の加筆再録
虹屋小針店で扱っていた三年番茶
虹屋の三年番茶の「無双番茶」は、静岡県、滋賀県、三重県、奈良県などの生産農家が十分に成熟した茎と葉を9月から10月に摘採し、選別して蒸して揉んで乾燥させ「荒茶」にして、仕上げ加工をする近江製茶に出荷します。
近江製茶では、木箱に入れて半年から1年寝かせて、後熟させます。近江製茶は、明治4年創業の近江茶の老舗。近江茶は、「宇治茶」として販売されてきました。その経験、伝統で培った目で、風味がまろやかになったものを選び出します。そして茎が7割以上になるように葉と茎を合組(ブレンド)して、培った技能で鉄釜で丁重に焙じます。「一般の焙茶は2~3分で仕上げますが、無双番茶はじっくり15分焙じます。茎が多い分、芯まで焙煎したいので」(川崎社長)
このようにして、どんな食事にも相性の良い、毎日飲み続けても飽きがこない無双番茶になります。
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