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厚労省は、BSE感染牛の牛肉の流通を認め、ヒト狂牛病もOKと方針転換? 2005-26 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-26 2005年6月21日小針店で印刷・配布の再録



厚労省は、
BSE感染牛の牛肉の流通を認め、
ヒト狂牛病もOKと方針転換?


 先週の畑の便りに載せた21ヶ月齢反対の意見書への厚生労働省の回答が15日に公表されました。それを読むと厚労省は①高感度BSE検査法を採用する気はない②21月齢未満のBSE陽性牛の肉の流通を認めることがわかりました。
厚生労働省の回答→PDFファイルhttp://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1040&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000005465

BSE牛を見つけたくない、厚生労働省
曲者の「リスク評価」
BSE感染牛の牛肉の流通を公認
それでも輸入再開のための法改正、物申す
生産者=米国の牛肉業者に軸足





BSE牛を見つけたくない、
厚生労働省


 虹屋の意見書の1番2番は無視され、「検査の対象となる牛の月齢を零月とし、プリオンの蓄積量が検出限界以下みられる月齢は検査除外が可能であるとするのが適切です。」に対して応答がありました。
検査限界という技術の点を問題にしたのですから、返ってくる答えはせいぜい「BSE高感度検査法が開発された場合には、食品安全委員会や農林水産省と連携して、必要な対応をとりたいと考えています。」と考えていました。ところが、リスク論が返ってきました。

「全頭検査から21ヶ月齢以上の牛に変更した場合、20ヶ月齢以下で検出限界を超えたBSE感染牛が存在しない場合にはリスクは変化しない。一方、存在する場合には、リスクの増加は否定できないが、食肉のBSEプリオン汚染率は「非常に低く」その汚染量は「無視できる」~「非常に少ない」と考えられる」「検査月齢の線引きがもたらす人に対するリスクは、非常に低いレベルの増加にとどまるものと判断される」
なぜ、このような答え方をしたのか。他の回答と照らし合わせると、より高感度なBSE検査技術を採用しないようにするためなのです。「BSE高感度検査法が開発された場合には、生体牛での検査の可能性、その時点でのリスク評価の状況等も踏まえ、食品安全委員会や農林水産省と連携して、BSE対策について必要な対応をとりたいと考えています。」とありました。リスク評価の状況とあるのが曲者です。





曲者の「リスク評価」


 21ヶ月齢以下BSE検査除外で増加するリスクを、BSE陽性牛を見逃すリスクをAとします。また21月齢以下で、現在の検査法では検出できないBSE牛に由来するリスクをBとします。21ヶ月齢で線引きで、私たちが負担するリスクは、A+Bです。

高感度検査法ではリスクBが細分化します。仮に検出できるプリオンの最低量が半分になったとします。検出可能になったとします。これでBSE陽性となり排除されるBSE牛で減るリスクをCとします。なお残る検出できないBSE牛によるリスクをDとします。B=C+D。

リスク評価論をとれば、この改正でリスク(A+B=A+C+D)を許容するのですから、高感度検査法を採用してリスクDにまで下げる必要はありません。

BSE検査が、BSE感染牛を全て検出・排除し一頭たりとも食卓に上げない、国民に食べさせないという決意・目的で行われているのなら、高感度検査法ができたら、さっさと、採用すればよいのです。検査の月齢を12ヶ月なり10ヶ月に引き下げればよいのです。米国政府などはお怒りになるでしょうが、日本国民の健康、命を護るのは日本政府の当然の責務です。リスク評価は高感度BSE検査法を使わない=検査月齢を引き下げないための口実にしかなりません。





BSE感染牛の牛肉の流通を公認


 また、20ヶ月齢以下の牛には、地方自治体が検査を続行します。この牛でBSE陽性牛が検出された場合、今回の改正では、このBSE牛の肉、内臓、血液、骨及び皮を、と畜場外に持ち出すことが禁止されていません。商品化できます。しかしその牛肉などはBSEの病原プリオンに汚染されています。

食品衛生法では「病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの」の販売、輸入等を禁じています。ある方が、「プリオン汚染度が『非常に低い』ことは、同法にいう『疑い』に該当し、法的には販売、輸入等が禁じられると考えられます。」と問いただしました。回答は、「疑い」には該当しないです。

 販売、輸入を禁止しないです。厚生労働省は、20ヶ月月齢以下のBSE陽性牛の肉や内臓(レバーなど)が販売され、食卓に上がり国民が食べても構わないというのです。

 どれくらいの病原プリオンをとると人間が感染するかは全くわかっていません。それでWHOはBSE感染牛を人の食品、動物の飼料から排除するよう勧告しています。国民が「非常に少ない」量と考えられるとはいえ、プリオンに汚染された牛肉を食べても構わない=BSEに感染しても構わないということです。WHO勧告を事実上放棄しました。

 人間では、感染の有無をスクリーニング検査できないことや、異常プリオンたん白質を輸血用血液から効果的に除去する技術が確立されていないから、一人ヒト狂牛病になったら感染が輸血・献血で拡大する可能性があります。





厚生労働省関係
牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則
の一部改正(案)に関する意見改正に
反対する。


第7条第1項の厚生労働省令で定める月齢は零月とし、「都道府県知事又は保健所を設置する市の長は、プリオンの蓄積量が検出限界以下と見られる20ヶ月齢以下は牛海綿状脳症に係る検査から除外できる」という旨の除外規定を新設する。
理由

1、5月26日に決議されたOIE新基準では牛肉(脱骨骨格筋肉)は①BSE牛や疑わしい牛由来でない②特定危険部位SRMによる汚染防止が行われている③30ヵ月齢以下の牛由来であることの条件に、輸出国のBSEステータスと無関係に貿易できるリスクのない製品のリストに含まれたと報じられております。 (中略) 「BSE感染牛又は感染の疑いのある牛由来でないこと」という条件が、本件に関連します。検査対象を(案)の21月とすると、牛肉の(米国など)輸出国に対し20カ月齢以下の牛にBSE検査を実施しBSE感染牛を検出し排除を求めることが困難になります。

2、BSEはウシの間で餌として与えられた肉骨粉を介しての経口感染で広がり、病原プリオンの感染量と感染時期によって検出量に達する時期が決まります。山内一也東京大学名誉教授は、17ヶ月から13ヶ月齢で感染性が見いだされる可能性を指摘されています。 牛肉の輸出国の牛の飼料の汚染状況によっては、20カ月齢以下の牛でのBSE陽性がでる可能性がありますから、OIE新基準の「BSE感染牛又は感染の疑いのある牛由来でないこと」を満たすためには、輸出国に20カ月齢以下の牛のBSE検査を求める必要があります。 しかし1、で述べたように検査対象を(案)の21月とすると、牛肉の輸出国に対し20カ月齢以下の牛にBSE検査を実施しBSE感染牛を検出し排除を求めることが困難になります。

3、先立って行われた内閣府食品安全委員会によるリスク評価は、日本の国産牛を対象にしたものです。日本の飼料規制の実効性を検討した結果、「2003年7月以降生まれでは肉骨粉使用の完全禁止後1年9ヵ月以上経過していることから、当時の肉骨粉が残存している可能性は低く、国内産肉骨粉の飼料への混入は『無視できる』。・・(2005年3 月現在、20 ヶ月齢以下である2003 年7月以降に生まれた牛における)、国産飼料に起因する交差汚染による感染率は、非常に低く、蓄積量は、無視できると考えられる。・・2003 年7月生まれ以降の牛で検査陽性例が見いだされるとしたら、その蓄積量は検出限界(約1 m i.c. LD50)に近いと考えられる。」との評価を下しております。 したがって、検査対象を(案)の21月とすることは根拠がありますが、BSE検査技術の向上により検出限界が現在より下がれば、検査対象の月齢を変更する、下げる必要が出てきます。
 牛海綿状脳症対策特別措置法によるBSE検査の目的は、BSE感染牛の摘発にあるのですから、全頭検査が望ましいのです。日本の飼料規制の実効性と技術的限界からみて2005 年3 月現在、20 ヶ月齢以下のBSE感染牛は検出できないであろうと評価できるに過ぎません。
 したがって、条文も牛海綿状脳症に係る検査の対象となる牛の月齢を零月とし、プリオンの蓄積量が検出限界以下みられる月齢は検査除外が可能であるとするのが、適切です。


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厚労省は、BSE感染牛の牛肉の流通を認め、ヒト狂牛病もOKと方針転換? 2005-26 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-26 2005年6月21日小針店で印刷・配布の再録



厚労省は、
BSE感染牛の牛肉の流通を認め、
ヒト狂牛病もOKと方針転換?


 先週の畑の便りに載せた21ヶ月齢反対の意見書への厚生労働省の回答が15日に公表されました。それを読むと厚労省は①高感度BSE検査法を採用する気はない②21月齢未満のBSE陽性牛の肉の流通を認めることがわかりました。
厚生労働省の回答→PDFファイルhttp://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1040&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000005465

BSE牛を見つけたくない、厚生労働省
曲者の「リスク評価」
BSE感染牛の牛肉の流通を公認
それでも輸入再開のための法改正、物申す
生産者=米国の牛肉業者に軸足





BSE牛を見つけたくない、
厚生労働省


 虹屋の意見書の1番2番は無視され、「検査の対象となる牛の月齢を零月とし、プリオンの蓄積量が検出限界以下みられる月齢は検査除外が可能であるとするのが適切です。」に対して応答がありました。
検査限界という技術の点を問題にしたのですから、返ってくる答えはせいぜい「BSE高感度検査法が開発された場合には、食品安全委員会や農林水産省と連携して、必要な対応をとりたいと考えています。」と考えていました。ところが、リスク論が返ってきました。

「全頭検査から21ヶ月齢以上の牛に変更した場合、20ヶ月齢以下で検出限界を超えたBSE感染牛が存在しない場合にはリスクは変化しない。一方、存在する場合には、リスクの増加は否定できないが、食肉のBSEプリオン汚染率は「非常に低く」その汚染量は「無視できる」~「非常に少ない」と考えられる」「検査月齢の線引きがもたらす人に対するリスクは、非常に低いレベルの増加にとどまるものと判断される」
なぜ、このような答え方をしたのか。他の回答と照らし合わせると、より高感度なBSE検査技術を採用しないようにするためなのです。「BSE高感度検査法が開発された場合には、生体牛での検査の可能性、その時点でのリスク評価の状況等も踏まえ、食品安全委員会や農林水産省と連携して、BSE対策について必要な対応をとりたいと考えています。」とありました。リスク評価の状況とあるのが曲者です。





曲者の「リスク評価」


 21ヶ月齢以下BSE検査除外で増加するリスクを、BSE陽性牛を見逃すリスクをAとします。また21月齢以下で、現在の検査法では検出できないBSE牛に由来するリスクをBとします。21ヶ月齢で線引きで、私たちが負担するリスクは、A+Bです。

高感度検査法ではリスクBが細分化します。仮に検出できるプリオンの最低量が半分になったとします。検出可能になったとします。これでBSE陽性となり排除されるBSE牛で減るリスクをCとします。なお残る検出できないBSE牛によるリスクをDとします。B=C+D。

リスク評価論をとれば、この改正でリスク(A+B=A+C+D)を許容するのですから、高感度検査法を採用してリスクDにまで下げる必要はありません。

BSE検査が、BSE感染牛を全て検出・排除し一頭たりとも食卓に上げない、国民に食べさせないという決意・目的で行われているのなら、高感度検査法ができたら、さっさと、採用すればよいのです。検査の月齢を12ヶ月なり10ヶ月に引き下げればよいのです。米国政府などはお怒りになるでしょうが、日本国民の健康、命を護るのは日本政府の当然の責務です。リスク評価は高感度BSE検査法を使わない=検査月齢を引き下げないための口実にしかなりません。





BSE感染牛の牛肉の流通を公認


 また、20ヶ月齢以下の牛には、地方自治体が検査を続行します。この牛でBSE陽性牛が検出された場合、今回の改正では、このBSE牛の肉、内臓、血液、骨及び皮を、と畜場外に持ち出すことが禁止されていません。商品化できます。しかしその牛肉などはBSEの病原プリオンに汚染されています。

食品衛生法では「病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの」の販売、輸入等を禁じています。ある方が、「プリオン汚染度が『非常に低い』ことは、同法にいう『疑い』に該当し、法的には販売、輸入等が禁じられると考えられます。」と問いただしました。回答は、「疑い」には該当しないです。

 販売、輸入を禁止しないです。厚生労働省は、20ヶ月月齢以下のBSE陽性牛の肉や内臓(レバーなど)が販売され、食卓に上がり国民が食べても構わないというのです。

 どれくらいの病原プリオンをとると人間が感染するかは全くわかっていません。それでWHOはBSE感染牛を人の食品、動物の飼料から排除するよう勧告しています。国民が「非常に少ない」量と考えられるとはいえ、プリオンに汚染された牛肉を食べても構わない=BSEに感染しても構わないということです。WHO勧告を事実上放棄しました。

 人間では、感染の有無をスクリーニング検査できないことや、異常プリオンたん白質を輸血用血液から効果的に除去する技術が確立されていないから、一人ヒト狂牛病になったら感染が輸血・献血で拡大する可能性があります。





厚生労働省関係
牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則
の一部改正(案)に関する意見改正に
反対する。


第7条第1項の厚生労働省令で定める月齢は零月とし、「都道府県知事又は保健所を設置する市の長は、プリオンの蓄積量が検出限界以下と見られる20ヶ月齢以下は牛海綿状脳症に係る検査から除外できる」という旨の除外規定を新設する。
理由

1、5月26日に決議されたOIE新基準では牛肉(脱骨骨格筋肉)は①BSE牛や疑わしい牛由来でない②特定危険部位SRMによる汚染防止が行われている③30ヵ月齢以下の牛由来であることの条件に、輸出国のBSEステータスと無関係に貿易できるリスクのない製品のリストに含まれたと報じられております。 (中略) 「BSE感染牛又は感染の疑いのある牛由来でないこと」という条件が、本件に関連します。検査対象を(案)の21月とすると、牛肉の(米国など)輸出国に対し20カ月齢以下の牛にBSE検査を実施しBSE感染牛を検出し排除を求めることが困難になります。

2、BSEはウシの間で餌として与えられた肉骨粉を介しての経口感染で広がり、病原プリオンの感染量と感染時期によって検出量に達する時期が決まります。山内一也東京大学名誉教授は、17ヶ月から13ヶ月齢で感染性が見いだされる可能性を指摘されています。 牛肉の輸出国の牛の飼料の汚染状況によっては、20カ月齢以下の牛でのBSE陽性がでる可能性がありますから、OIE新基準の「BSE感染牛又は感染の疑いのある牛由来でないこと」を満たすためには、輸出国に20カ月齢以下の牛のBSE検査を求める必要があります。 しかし1、で述べたように検査対象を(案)の21月とすると、牛肉の輸出国に対し20カ月齢以下の牛にBSE検査を実施しBSE感染牛を検出し排除を求めることが困難になります。

3、先立って行われた内閣府食品安全委員会によるリスク評価は、日本の国産牛を対象にしたものです。日本の飼料規制の実効性を検討した結果、「2003年7月以降生まれでは肉骨粉使用の完全禁止後1年9ヵ月以上経過していることから、当時の肉骨粉が残存している可能性は低く、国内産肉骨粉の飼料への混入は『無視できる』。・・(2005年3 月現在、20 ヶ月齢以下である2003 年7月以降に生まれた牛における)、国産飼料に起因する交差汚染による感染率は、非常に低く、蓄積量は、無視できると考えられる。・・2003 年7月生まれ以降の牛で検査陽性例が見いだされるとしたら、その蓄積量は検出限界(約1 m i.c. LD50)に近いと考えられる。」との評価を下しております。 したがって、検査対象を(案)の21月とすることは根拠がありますが、BSE検査技術の向上により検出限界が現在より下がれば、検査対象の月齢を変更する、下げる必要が出てきます。
 牛海綿状脳症対策特別措置法によるBSE検査の目的は、BSE感染牛の摘発にあるのですから、全頭検査が望ましいのです。日本の飼料規制の実効性と技術的限界からみて2005 年3 月現在、20 ヶ月齢以下のBSE感染牛は検出できないであろうと評価できるに過ぎません。
 したがって、条文も牛海綿状脳症に係る検査の対象となる牛の月齢を零月とし、プリオンの蓄積量が検出限界以下みられる月齢は検査除外が可能であるとするのが、適切です。


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米国で2頭めのBSE(狂牛病)牛?はブッシュ大統領の地元の牛 2005-25 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-25 2005年6月14日小針店で印刷・配布したものに加筆



米国で2頭めのBSE(狂牛病)牛?は
ブッシュ大統領の地元の牛


 10日、米農務省はBSE(狂牛病)の疑いのある牛、一頭を発見したと発表しました。経過を見ると、日本ならBSE「クロ」と扱われる牛です。

再々検査、三度目の正直でみつかる
感度良い方法で、わざわざやらない不思議の国アメリカ
廻る因果の糸車 病源体プリオンは拡がっている?!
それでも輸入再開のための法改正、物申す
生産者=米国の牛肉業者に軸足





再々検査、三度目の正直で
見つかる


 昨年11月までに迅速検査で3頭がひっかかりました。ELISA検査で陽性と出ました。2度目の免疫組織化学検査(IHC)では3頭とも陰性と出ました。その後、農務省内部監察局(OIG)の要請で、今週になって3度目の検査を行ったところ内一頭が陽性と出ました。

 3度目は検査方法をウェスタン・ブロット法(WB)に変えて調べたのです。日本では迅速検査で陽性と出て免疫組織化学検査(IHC)かウェスタン・ブロット法(WB)のいずれかで陽性の結果が出たものについてBSE と判断しています。つまり、日本なら日本ならBSE「クロ」と扱われる牛です。米国も、2003年12月の一頭めはWB法で陽性とでてBSE牛と判定しています。IHCに検査法を変えていなければ、米国でもBSE牛と判断された牛です。





感度良い方法で、わざわざやらない
不思議の国アメリカ


 検査の感度からするとWBが一番良いのです。日本の8例目(23 ヶ月齢)及び9例目(21 ヶ月齢)は、WBのみが陽性であり、IHC免疫組織化学検査では陰性。今の米国のようにIHCで検査をしていたら検出・摘発されず、この2頭の牛肉が食卓に上がっていたのです。日本政府は米国に、より感度の高い検査方法、WB をIHC と並行して用いることをお奨めしているのですが、米国は聞いてくれません。

 米国も最初はWBで確定検査をしていた、つまりWB法が感度もよく信頼できる検査法という科学的認識は持っています。1頭目以降にわざわざ感度が劣ったIHCに切り替えた。検査を怠っていると米国国内からも批判されています。今回の3頭も11月に米消費者同盟(CU)から再々検査が要望されましたが、米農務省は不必要とはねつけていました。行政監視に当たる内部監察局(OIG)に言われて渋々WB法で検査したら、案の定?BSE陽性の牛が見つかってしまったというところです。

 米農務省は、今回の牛は老齢でと畜場まで歩いてこられなかったダウナー牛と発表していますが、詳しい月齢や生まれたところ、農場などの情報は公開を拒んでいます。報道では、ブッシュ大統領のお膝元、テキサス州の牛で11月に死んだ肉牛。何処で何時うまれたなどは当局も情報をつかんでいない模様です。同じ農場で同じ餌を食べた牛がどれ位いるのか等、拡りを推測する術がありません。

補記
2005年6月29日米国農務省動植物検疫局 (APHIS)の発表当該BSE陽性牛は、その所有者からの情報によるとテキサス州の牛群で生育したおよそ12才の雌牛であった。当該牛は同州の3D・4D牛(死亡牛(Dead)、疾病牛(Diseased)、危篤牛(Dying)、歩行困難牛(Down)の食用禁止牛を意味する)を扱うペットフード用処理施設に搬送され、到着時に(BSE)検査対象サンプルとして選定された。また、今後は確定診断にはWB法とIHCを併用する方向で改正手続きに入っている。





廻る因果の糸車
 病原プリオンは拡がっている?!


 同じ農場で同じ餌を食べた牛は「擬似患畜」に分類されます。現在の検査が感染牛を100%発見できないため、「擬似患畜」の殺処分(屠殺し、環境や飼料、食料から排除されるように廃棄する)は、BSEが動物と人間に拡散するのを防止する最も基本的な手段で、どの国でも行っています。しかし、今回はもう7ヶ月も経っているのですから、擬似患畜は、おおかた、牛肉に変わって食べられている、食用にならない部分から肉骨粉が作られて動物用飼料に使われていると思われます。

 今回のWB陽性の「BSE牛」も、米国では肉骨粉製造が許されていますから、病源体プリオン入りの肉骨粉が作られて動物用飼料に使われている(日本では禁止)。”廻る因果の糸車”がアメリカで廻っている、病源体プリオンが拡がっていると考えたほうが無難です。

補記
>米テキサス州の牧場で飼育された米国生まれの約12歳だった(1992年頃の生まれ?)・・会見した同省のクリフォード主任獣医師は「(今回の感染牛は)97年規制導入前に肉骨粉を含んだエサで感染した可能性が高い」と指摘した。

山内一也先生 6/28日本農業新聞米国は、飼料を規制した1997年以前に生まれた牛と強調しているが、生後すぐに感染して8年も経てば、どの検査でも強い陽性反応を示すのが普通で、免疫組織化学法で陰性になるのは不自然。最近感染した可能性もある。汚染状況の評価は、科学的なデータが公表されなければ議論もできない。

農業情報研究所の北林さん。この高齢で「感染のレベルは低かった」というのだから、(最近の感染であった)その方が辻褄が合いそうでもある。ただし、EUでも12歳以上の牛の陽性が相当数確認されているから、これはあまり当てにならないー2003年のEU15ヵ国の検査で陽性が確認されたもののうちの6%、76頭が12歳以上の牛だった
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05063001.htm





 


それでも輸入再開のための
法改正、物申す


 こんな状況なのに、厚生労働省はBSE検査から20ヶ月齢以下を除外する法改正を行い、機械的に米国産牛肉にも当てはめ輸入再開をしようとしています。意見を公募していたので応募してみました。約100件の国民の意見が寄せられ、反対論が約7割だそうです。13日に詳細を発表するそうですから、機会があればご紹介します。

厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則の一部改正(案)に関する意見改正に反対する。
第7条第1項の厚生労働省令で定める月齢は零月とし、「都道府県知事又は保健所を設置する市の長は、プリオンの蓄積量が検出限界以下と見られる20ヶ月齢以下は牛海綿状脳症に係る検査から除外できる」という旨の除外規定を新設する。
理由

1、5月26日に決議されたOIE新基準では牛肉(脱骨骨格筋肉)は①BSE牛や疑わしい牛由来でない②特定危険部位SRMによる汚染防止が行われている③30ヵ月齢以下の牛由来であることの条件に、輸出国のBSEステータスと無関係に貿易できるリスクのない製品のリストに含まれたと報じられております。 (中略) 「BSE感染牛又は感染の疑いのある牛由来でないこと」という条件が、本件に関連します。検査対象を(案)の21月とすると、牛肉の(米国など)輸出国に対し20カ月齢以下の牛にBSE検査を実施しBSE感染牛を検出し排除を求めることが困難になります。

2、BSEはウシの間で餌として与えられた肉骨粉を介しての経口感染で広がり、病原プリオンの感染量と感染時期によって検出量に達する時期が決まります。山内一也東京大学名誉教授は、17ヶ月から13ヶ月齢で感染性が見いだされる可能性を指摘されています。 牛肉の輸出国の牛の飼料の汚染状況によっては、20カ月齢以下の牛でのBSE陽性がでる可能性がありますから、OIE新基準の「BSE感染牛又は感染の疑いのある牛由来でないこと」を満たすためには、輸出国に20カ月齢以下の牛のBSE検査を求める必要があります。 しかし1、で述べたように検査対象を(案)の21月とすると、牛肉の輸出国に対し20カ月齢以下の牛にBSE検査を実施しBSE感染牛を検出し排除を求めることが困難になります。

3、先立って行われた内閣府食品安全委員会によるリスク評価は、日本の国産牛を対象にしたものです。日本の飼料規制の実効性を検討した結果、「2003年7月以降生まれでは肉骨粉使用の完全禁止後1年9ヵ月以上経過していることから、当時の肉骨粉が残存している可能性は低く、国内産肉骨粉の飼料への混入は『無視できる』。・・(2005年3 月現在、20 ヶ月齢以下である2003 年7月以降に生まれた牛における)、国産飼料に起因する交差汚染による感染率は、非常に低く、蓄積量は、無視できると考えられる。・・2003 年7 月生まれ以降の牛で検査陽性例が見いだされるとしたら、その蓄積量は検出限界(約1 m i.c. LD50)に近いと考えられる。」との評価を下しております。


 したがって、検査対象を(案)の21月とすることは根拠がありますが、BSE検査技術の向上により検出限界が現在より下がれば、検査対象の月齢を変更する、下げる必要が出てきます。 牛海綿状脳症対策特別措置法によるBSE検査の目的は、BSE感染牛の摘発にあるのですから、全頭検査が望ましいのです。日本の飼料規制の実効性と技術的限界からみて2005年3 月現在、20 ヶ月齢以下のBSE感染牛は検出できないであろうと評価できるに過ぎません。したがって、条文も牛海綿状脳症に係る検査の対象となる牛の月齢を零月とし、プリオンの蓄積量が検出限界以下みられる月齢は検査除外が可能であるとするのが、適切です。


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食品安全行政は、消費者から生産者に軸足を再び移した 2005-21 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-21 2005年5月17日小針店で印刷・配布の再録です。



食品安全行政は、
消費者から生産者重視に再転換?


 5月12日、北海道砂川市内の酪農家が飼育していた99年8月生まれの五歳の雌のホルスタインの牛海綿状脳症(BSE)感染が検出されました。これで18頭になります。日本のBSE対策が大きく変わろうとしています。全頭検査から「生後20カ月以下の牛」を検査から除外し、制度的な未検出BSE感染牛を創り出し、その牛肉などの流通、摂食を内閣府の食品安全委員会が容認することを6日に正式に決め、厚生労働省と農水省に答申しました。両省は、法律変更の手続きに入り、米国産牛肉の輸入が夏以降には再開されそうと報道されています。

 内閣府の食品安全委員会は2日、牛海綿状脳症(BSE)対策の全頭検査の緩和「生後20カ月以下の牛の検査除外」容認を内定し、3連休明けの6日に正式に決め、厚生労働省と農水省に答申しました。両省は、関連法規の変更手続きを行っており、また米国産牛肉の輸入が夏以降には再開されそうと報道されています。 そもそも食品安全委員会は、2001年の秋に日本でBSE発生した事態の反省をもとに、”消費者に軸足を移して”食品の安全を確保する行政改革の一環で、内閣府に設けられた機関です。今回の答申は、手続き的にも中身的にも”消費者に軸足を置いて”食品の安全を確保するものになっていません。消費者よりも生産者=米国の牛肉業者に軸足を置いているものです。今回は、手続き面から見てみます。

検査法のアップデートは行われるのか
ゴールデン・ウィークの最中に決定するとは
国民の意見を鼻紙扱い
輸血で拡める自由を求める除外容認の意見
生産者=米国の牛肉業者に軸足





検査法のアップデートは
行われるのか


 この容認答申には、「検査月齢を全月齢から20ヶ月齢以下の牛を検査対象から外す場合、・・牛で検査陽性例が見いだされるとしたら、その(病原プリオン)蓄積量は検出限界に近いと考えられる」。「と畜場で実用可能なより感度の高い検査法が開発された場合には、本評価の見直しを検討する必要がある。」とあります。つまり、より感度の高い検査法なら20ヶ月齢以下の牛から、BSE牛が検出されると認めています。従来の方法より1000倍も感度の良い技術や原理的にはプリオンが1個でも検出でき、牧場で飼育中にも検出できる技術が開発中です。ですから、牛肉の安全を高めるためには、こうした検査法を採用し20ヶ月齢以下除外を見直す必要があります。それを言い出すのは、誰なのでしょうか。農水省?厚生労働省?食品安全委員会?

 米国では肉用牛のほとんどが30ヶ月齢以下でと畜されるので、米国の本音は20ではなく30ヶ月です。30ヶ月齢以下検査除外なら、そのまま日本に輸出できます。これに迎合するように専門調査会の吉川座長は、平成十九年度末までのBSE(牛海綿状脳症)検査で若い牛の感染が見つからなければ、30カ月以下まで検査除外を緩和できると述べています。(5/9産経新聞)後3年間、若い牛の感染が見つからなければ万々歳。とすれば、20ヶ月齢以下の牛からもBSE牛を検出可能なより感度の高い検査法の採用は、それによる除外月齢の引き下げになり米国には不利。米国の鼻息をうかがう農水省、厚生労働省が、自ら進んで採用や除外月齢の引き下げを言い出すとは思えません。答申までの流れや吉川座長の発言をみると、食品安全委員会も言い出すとは思えません。





ゴールデン・ウィークの最中に
決定するとは


 今回の答申は、食品安全委員会の下部組織のプリオン専門調査会で3月28日に除外しても食肉への影響は非常に低いレベルの増加にとどまるという答申案がまとまり、これに対する国民の意見を募集する手続きに入り4月27日までに1250件の意見が寄せられました。報道では、そのうち約7割が全頭検査の継続を求める内容です。この1250の国民の意見を調査会の吉川泰弘座長が28日から検討した結果、答申案の修正は必要ないと判断し、2日には食品安全委員会での除外容認の答申が内定し3連休明けの6日に食品安全委員会は正式決定し答申しました。





国民の意見を鼻紙扱い


  国民の意見の公募、パブリックコメント制度は”消費者に軸足”を移した象徴で食品安全基本法13条「施策の策定に国民の意見を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため」の制度です。これまでは、概ね10件多くて50件前後の意見が寄せれていました。それが1250も集まったのです。関心の高さがわかります。その1250の意見を、吉川座長は28、29(みどりの日)30、5/1の4日間で読み終えた事になり、12時間×4日÷1250件≒2分でしかありません。吉川座長が東京大教授でも「一度に十人の訴えをあやまたず聞きわけられ、答えられた」という伝説の聖徳太子のような方ではないでしょうから、「走り読みで、貴重な国民の意見を、ティッシュ扱い・鼻紙扱い」と言われて当然です。

その国民の意見では約7割が全頭検査の継続を求めているのですから、生後20カ月以下の牛の検査除外は国民・消費者の理解や納得を十分に得られているとはいえません。

 そもそも食品安全委員会は、日本が96年からBSE予防策をとっていたにもかかわらず2001年の秋に千葉でBSE牛が検出された事態の反省をもとに、”生産者から消費者に軸足を移して”食品の安全行政を執行する行政改革の一環で、内閣府に設けられた行政機関です。パブリックコメント制度も、政策決定への国民参加や決定の透明性を確保するための制度です。

 検査除外は国民・消費者の理解や納得を十分に得られていないのですから、まず寄せられた意見の内容・概要と、それに対する専門調査会からの回答をまとめた「意見募集の結果」を公開し、これをふまえて調査会で再審議し必要なら再度意見公募をした後で、はじめて本委員会―専門調査会の上に置かれた7人の委員からなる委員会―での最終審議という段取りが「透明性」の確保というものです。連休の最中に決定で、どこに透明性があるのでしょうか。寄せられた意見を事務局が要約し回答文を作成した概要が、5月6日の本委員会では配布されました。





輸血で拡める自由を求める
除外容認の意見


  それによると除外を求める意見の中には「何故全面輸入禁止なのか納得いかない。・・国内の酪農家、生産者保護としか考えられない。牛たんの値段も高騰、商社ばっか儲けてる。食いたくないやつは食わなければいい、」「(ヤコブ病の)潜伏期間が長いことを考えれば、安価で美味しい米国産牛肉を食べた方が得と考える。消費者には、選択する権利がある。つまり、米国から輸入された牛でも、それがイヤな人は買わなければいいのだ。買いたい人は買ってもいい、と言うような選択肢があるはずなのに、その選択肢すら奪われてしまっているとすれば、日本は本当に自由な国なのですか。」といった意見があります。BSEの人へのリスクを理解しているとは思えないものが多数含まれています。BSEが人に感染した場合、本人が異型ヤコブ病vCJDを発病するだけでなく、長い潜伏期間に献血・輸血や臓器移植で他人にひろげてしまう危険があります。(イギリスの例では輸血以外で、食肉などで感染した確率は15,000分の1から30,000分の1)

 「BSEのみならず・・リスク評価の内容は、用語も含め専門的で一般的には非常に難解なもの」とか、今回の応募意見には「科学的な検討を要するような指摘は無く『再審議の必要は無い』(吉川泰弘座長)と判断」と、難しいのだから素人は黙っていろという姿勢です。つまり、国民消費者のほとんどは素人なのですから、その姿勢は国民消費者は学者先生やお上に従えということです。これは、安全委員会発足以前の時代と変わりがありません。情報を共有し消費者、国民の理解を進め普通の人が納得できる内容と決定手順=政策決定への国民参加という委員会の目的を果しているでしょうか。

こうした姿勢から、消費者には感染する自由、、潜伏期間中に他人にBSEを感染させるうる選択の自由を主張し除外を求める意見には何のコメント・反論もしていません。今回、直ぐに20ヶ月齢以下除外をきめたことは、こうした意見を結果的に認めたことになります。





生産者=米国の牛肉業者に軸足


 遮二無二に手続きだけを進め日程をこなしている姿は、消費者よりも生産者=米国の牛肉業者に軸足を置いている、元の木阿弥としかいえません。これでは、消費者には利益になるが、生産者には不利となるかもしれない新検査法の採用や検査除外の月齢引き下げなどを安全委員会が主導するとは思えません。

米国政府の評価 ・・ 食の安全を確保するうえで若齢牛に対するBSE検査は不必要であるという報告書の結論は、特に歓迎するものである。具体的には、と畜時にすべての牛を対象に行われている現行の検査対象を21カ月齢以上へと新たな体制に変更することを推奨している。これは日本の食品安全基準を国際的な慣例やOIEの指針と調和させるうえで重要な前進の第一歩である。しかしながら、米国政府は日本が検査対象の下限月齢をさらに国際的な慣例と調和すべく20カ月齢から30カ月齢に引き上げることを奨励する。


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無理が通れば道理がひっこむ、米国の横槍でBSE対策はガタガタ? 2005-20 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-20 2005年5月10日小針店で印刷・配布の再録です。



無理が通れば道理がひっこむ、
米国の横槍でBSE対策はガタガタ?


 内閣府の食品安全委員会は2日、牛海綿状脳症(BSE)対策の全頭検査の緩和「生後20カ月以下の牛の検査除外」容認を内定し、3連休明けの6日に正式に決め、厚生労働省と農水省に答申しました。両省は、関連法規の変更手続きを行っており、また米国産牛肉の輸入が夏以降には再開されそうと報道されています。 そもそも食品安全委員会は、2001年の秋に日本でBSE発生した事態の反省をもとに、”消費者に軸足を移して”食品の安全を確保する行政改革の一環で、内閣府に設けられた機関です。今回の答申は、手続き的にも中身的にも”消費者に軸足を置いて”食品の安全を確保するものになっていません。消費者よりも生産者=米国の牛肉業者に軸足を置いているものです。紙面の関係で、今週は答申の中身を見てみます。

BSE牛肉を食べさせる米国
危険部位除去でプリオンは完全除去できるか
最も悩ましいのは、末梢神経
SRM(特定危険部位)除去について
半年で、米国に一歩にじり寄る





BSE牛肉を食べさせる米国


  米国は、科学的にはBSE感染牛であっても、特定危険部位(SRM、脳や脊髄など病源体プリオンが蓄積する組織)が取り除かれていれば、人間が消費しても安全、健康上問題はないと一貫して主張しています。そのために、米国には業者はBSE感染牛の食肉を回収する法的義務はありません。回収は営業政策上の自主的リコールで、一昨年のBSE牛の牛肉は完全には回収されず食べられています。





危険部位除去でプリオンは
完全除去できるか


  世界保健機関(WHO)は1996年以来「BSE病原体プリオンを含む可能性のある部分、組織をすべての動物または人間の食物連鎖に入れてはいけない。排除せねばならない。」と勧告しています。この勧告は、2つの科学的事実に基づいています。一つは、口にして良いプリオンの量がわからない。感染を起こす量が例えば1グラムとすれば、摂取量をそれ以下になるよう管理すれば感染を防げます。しかし口にしても安全なプリオンの量がわからないのですから、量的コントロールは原理的に不可能で白か黒かという質的管理、一切を食品から排除することになります。

 もう一つは、BSE病原体プリオンが蓄積する部分、組織が特定危険部位(SRM、脳や脊髄など)だけとはいえない。動物実験などでは、BSE病原体プリオンを摂取させて、しばらくしてから特定危険部位にプリオンが検出できる量まで蓄積します。プリオンを子牛に感染させた場合、感染後、半年から一年は腸の一部で見つかりますが、その後は検出できなくなり、どういう経路でプリオンが脳などの中枢神経に集まるのかわかっていません。それまでの間プリオンが”冬眠”しているのではなく、検査技術の限界からどの部分、組織で増えているのか判らないと考えられています。検査の感度が上げていったら、ありとあらゆる臓器で検出されるはずというのが専門家の間では常識です。

 昨年11月には、検出されたBSE牛の末梢神経や副腎から特定危険部位以外からのプリオン検出が公表されました。これまで3例あり、WHO勧告の科学的妥当性が強化され来ています。つまり、特定危険部位(SRM)除去を完璧におこなっても、BSE病原体プリオンを含む可能性のある部分、組織が人間の食物に入ることを完全には防げない、人のプリオン暴露、BSE感染を防げないというのが科学的に妥当です。





最も悩ましいのは、
末梢神経


 牛乳は、最も感度の良い方法でもBSE感染は起こしていませんから、安全です。牛脂も安全なものを作る製造基準が判っています。肉は、筋肉組織を子牛の脳に接種しても発病していません。しかし、末梢神経は子牛の脳に接種すると発症しています。しかしマウスでは発症していません。人では??です。しかしあらゆる筋肉、臓器には末梢神経が来ていますから、取り除くのは事実上不可能です。

 ですから、BSE感染牛の発生を減らすこと、肉骨粉などの飼料対策をきちんと行ってBSEの拡大を防ぐことが根本的基本的な対策となります。仮にBSE感染牛が50%とすると、BSE検査で陰性となる牛のかなりの部分が潜伏期で陽性とならない偽陰性のBSE牛です。(米国の主張どおりなら偽陰性のBSE牛が約48%)SMR除去を完璧に行っても、かなりの量の病源体プリオンが食卓に上がります。逆にBSE感染牛が1%とすると、検査で陰性となる牛の99%以上がBSEに感染していない牛となります。そしてSMR除去を完璧に行えば、口に入る病源体プリオンをさらに減らせます。





日本のBSE対策の効果は


日本は1996 年4 月に牛の肉骨粉等を牛用飼料に使用禁止する通達が出されましたが、BSE発生を防ぐことができなかったため2001年10月以降完全禁止しています。現在までにBSE牛は17頭検出されていますが、完全禁止以降に生まれた牛は2頭です。潜伏期間を考えると、01年の完全禁止措置の効果は、09年頃までの検出数で判りますので、即断はできませんが発生を抑えています。

 さらに検査技術を向上させ検査限界を低くし技術的な未検出BSE感染牛を減らすことや、検査対象を拡大し制度的な未検出BSE感染牛を減少させることが重要です。日本は、検査法を改良し従来の10倍は感度の良い検査法を採用し、全頭で検査を行い30ヶ月齢除外などを採る欧州などでは見逃されていたであろう21及び23ヶ月齢のBSE 感染牛を検出し食卓に上がるのを阻止しました。

 社会全体から見れば、牛肉の需要を満たすため食肉の確保は重要です。飼料対策を行い、それでも発生するBSE牛にたいして、BSE検査とSRM除去の二つ手段をどう組み合わせて、食卓に上がるプリオンの量を極小にするかは、財源や関心・危機感の程度で各々の国、社会で異なります。

 日本は、飼料規制(BSE牛の発生防止)、SRM特定危険部位除去、BSE検査の三位一体で牛肉の安全を確保する枠組みです。欧州は、飼料規制、SRM除去が中心で、BSE検査は発生状況を調べ飼料規制の効果を測るための手段という位置づけです。米国は特定危険部位SRM除去万能ですから、飼料対策も検査もおざなりです。





半年で、米国に一歩
にじり寄る


昨年9月にまとめられたBSE対策についての「中間とりまとめ」では、「特に、飼料規制等はBSE 感染牛の発生を防ぎ、結果として牛から人へのBSE感染リスクの低減を保証する根源的に重要な対策」「SRM 除去及びBSE 検査が牛肉や牛内臓等を摂食することによる人のBSE感染リスクを直接的に低減させることに大きく貢献するもの」と位置づけられています。「この中には、21及び23 ヶ月齢のBSE感染牛も含まれ、全頭検査を行っていたことが発見につながったものである。すなわち、消費者の健康保護に有効に貢献したといえよう。」と評価しています。この日本の三位一体のBSE対策の枠組みでは、「生後20カ月以下の牛の検査除外」は制度的な未検出BSE感染牛を創出し、安全性を低めることはあっても高めることはありません。

 半年後にまとめられた今回の答申では、検査除外を正当化するために、「中間とりまとめ」にあった飼料規制やBSE検査の意義が、きれいさっぱり消されています。SRM除去の限界も述べられていません。むしろ「(完全禁止)措置後に生まれた牛 でBSE陽性例が見つかっており、完全な汚染防止が困難であることも知られている。」「英国の感染実験から中枢神経系に感染性の検出できない若齢牛でも回腸に感染性が認められている。従って、SRMの除去が汚染リスクの低減に必要となる。」とSRM除去さえ確実に完璧におこなえば、病原体プリオンを完全に除けるという米国流の誤った認識を与えるものになっています。

 20ヶ月齢以下を検査から除外し、制度的な未検出BSE感染牛をわざわざ創出しなければならないのか、”消費者に軸足を置いて”食品の安全を考えるなら理解不可能です。と殺場の現場労働者の組合は、現場が混乱し検査が20ヶ月齢以上でも完全には行われくなると反対しています。日本のBSE対策、飼料規制(BSE牛の発生防止)、SRM特定危険部位除去、BSE検査の三位一体で牛肉の安全を確保する枠組みでは、「生後20カ月以下の牛の検査除外」は安全性を低めることはあっても、高めることは無い。

 この容認答申では、「検査月齢を全月齢から20 ヶ月齢以下の牛を検査対象から外す場合、・・牛で検査陽性例が見いだされるとしたら、その蓄積量は検出限界に近いと考えられる」。「と畜場で実用可能なより感度の高い検査法が開発された場合には、本評価の見直しを検討する必要がある。」とあります。つまり、より感度の高い検査法なら20ヶ月齢以下の牛から、BSE牛が検出されます。BSE検査技術は、従来の方法の1000倍も感度の良い技術や原理的にはプリオンが1個でも検出でき、牧場で飼育中にも検出できる技術が開発中です。これらが実用化されれば、技術的な未検出BSE感染牛を減らすことが可能になり、月齢的にはより若いBSE感染牛を検出、除外できより安全性が高まります。ですから、牛肉の安全を高めるためには、そうした検査法を公的に採用し20ヶ月齢以下除外を見直す必要があります。その「本評価の見直しを検討する」のは、誰なのでしょうか。農水省、厚生労働省、食品安全委員会でしょうか。

 御存知のように、米国の本音は20ヶ月ではなく30ヶ月です。米国では肉用牛のほとんどが30ヶ月齢以下でと畜されるので、30ヶ月齢以下無検査なら、そのまま日本に輸出できるからです。プリオン専門調査会の吉川泰弘座長は、産経新聞のインタビューで(5月9日)、平成十九年度末までのBSE(牛海綿状脳症)検査で若い牛の感染が見つからなければ、検査除外を30カ月以下まで緩和できると述べています。後3年間、若い牛の感染が見つからなければ万々歳。とすれば、20ヶ月齢以下の牛からもBSE牛を検出可能なより感度の高い検査法の採用を、米国が喜ぶとは思えません。米国の鼻息をうかがう農水省、厚生労働省が、自ら進んで採用や除外月齢の引き下げを言い出すとも思えません。食品安全委員会でしょうか。答申では、その点が不明確です。 米国政府の評価 ・・ 食の安全を確保するうえで若齢牛に対するBSE検査は不必要であるという報告書の結論は、特に歓迎するものである。具体的には、と畜時にすべての牛を対象に行われている現行の検査対象を21カ月齢以上へと新たな体制に変更することを推奨している。これは日本の食品安全基準を国際的な慣例やOIEの指針と調和させるうえで重要な前進の第一歩である。しかしながら、米国政府は日本が検査対象の下限月齢をさらに国際的な慣例と調和すべく20カ月齢から30カ月齢に引き上げることを奨励する。






      米国政府の評価http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20050412-51.html
      農業情報研究所 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html 
      食品安全委員会http://www.fsc.go.jp/のプリオン専門部会の資料 
      農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/ 


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BSE対策に係る食品健康影響評価(案)に関する審議結果(案)についての御意見・情報の募集に応募しました 2005-19 [牛‐肉、乳、飼育]

2005年4月28日に小針店で配布した畑の便りの再録です。



 内閣府の食品安全委員会の下部組織のプリオン専門調査会は、3月28日に牛海綿状脳症(BSE)対策の全頭検査の緩和「生後20カ月以下の牛の検査除外」容認、除外しても食肉への影響は非常に低いレベルの増加にとどまるという答申案をまとめ、これに対する国民の意見を募集する手続きに入り4月27日までに1250件の意見が寄せられました。以下は、虹屋が応募して、提出したものです。

BSE対策の目標が不明確、評価基準がわからない
飼料対策の役割、位置づけが不明である
飼料対策の実効性について
SRM(特定危険部位)除去について
BSE検査について





BSE対策の目標が不明確、
評価基準がわからない


 この「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)」(以下、評価(案)と表記)では「我が国における牛から人への牛海綿状脳症(BSE)プリオンの感染リスクの評価及びリスク対策による低減効果等を検討する目的で、我が国におけるBSE 対策全般について検証した。」とあるが、日本のBSE対策の基本目標が不明です。

 世界保健機関(WHO)はBSE病原体プリオンへの暴露を減らすために「すべての国は、反芻動物飼料における反芻動物組織の使用を禁止しなければならず、またBSE病原体プリオンを含む可能性のある組織をすべての動物または人間の食物連鎖から排除せねばならない。」と勧告しています。交差汚染を考慮すれば、BSE病原体プリオンを含む可能性のある組織の”反芻動物飼料における反芻動物組織の使用禁止と人間の食物連鎖から排除”では不十分で、人間を含めた全ての動物の食物連鎖から排除がBSE対策の基本目標だと考えます。もとより、最重要なのは人へのBSEプリオンの感染阻止、リスク低減であり、食肉のBSEプリオン汚染度を限りなくゼロに近づけることです。そのためにも、牛でのBSE感染、発症を可能な限り低くし、BSEプリオン蓄積度(感染率、蓄積量)を可能な限り低くすることが肝要であり、日本の経験、交差汚染を考慮すれば、牛など全ての家畜・動物の飼料からの排除、飼料規制が必要です。





飼料対策の役割、
位置づけが不明である


 2月24日の衆院農水委員会で農林水産省の中川消費・安全局長は「飼料規制というのは、BSEの病原体が牛から牛に伝播するところを防止するという意味では、極めて大事な、また、それぞれの国で牛のBSEを根絶するという意味でも大変大事な措置ではありますけれども、牛肉そのものの安全性を直接確保する措置ではない」と答弁しております。
また4月19日の衆院農水委員会で「島村宜伸農相が米国産牛肉の安全性を食品安全委員会に諮問する際に米国の飼料規制の有効性を「諮問事項としない」と発言」と報道されております。つまりBSEプリオン蓄積度(感染率、蓄積量)を低くするための飼料規制は、食肉の安全性、BSEプリオン汚染度には影響しない、安全性評価には不用と農水省は公言しております。

 しかし、この評価(案)では飼料規制の実効性に関する検討が中核をなしております。
飼料規制の実効性を検討した結果、「2003 年7月以降生まれでは肉骨粉使用の完全禁止後1年9ヵ月以上経過していることから、当時の肉骨粉が残存している可能性は低く、国内産肉骨粉の飼料への混入は『無視できる』。・・(2005 年3 月現在、20 ヶ月齢以下である2003 年7月以降に生まれた牛における)、国産飼料に起因する交差汚染による感染率は、非常に低く、蓄積量は、無視できると考えられる。・・2003 年7 月生まれ以降の牛で検査陽性例が見いだされるとしたら、その蓄積量は検出限界(約1 m i.c.LD50)に近いと考えられる。」との評価を下し、それが「検査月齢の線引きがもたらす人に対する食品健康影響(リスク)は、非常に低いレベルの増加にとどまる」との判断を導き出しております。
評価(案)から、飼料規制の実効性に関する検討を除いたら、評価の体をなしません。なぜ、20ヶ月齢以下を検査対象から外しても、リスクが変わらないのか判らなくなります。

 我々国民の目には、島村宜伸農相や中川消費・安全局長の答弁を信じるのなら、食品安全委員会プリオン専門調査会の評価は全く信用の置けないものに写り、専門調査会の評価を、その方法を信じるのなら島村宜伸農相や中川消費・安全局長の答弁は全く信用の置けないもの写ります。
 平成16年9月の「日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について、中間とりまとめ」(以下、中間とりまとめと表記)では「特に、飼料規制等はBSE 感染牛の発生を防ぎ、結果として牛から人へのBSE 感染リスクの低減を保証する根源的に重要な対策」「SRM 除去及びBSE検査が牛肉や牛内臓等を摂食することによる人のBSE 感染リスクを直接的に低減させることに大きく貢献するもの」とあります。評価(案)では、これらの文言が消え、図1のモデルでは飼料規制、BSE 検査、SRM 除去などが並立的に取り扱われ、各々の対策の位置付けがわかり難くなっております。また図では、視覚障害をもつ国民にはわかりません。中間とりまとめの文言を、評価(案)の、2 リスク評価に関する基本的考え方とか1.3 審議の基本方針など適切な箇所に挿入し、各々の対策の位置付けを明示してください。





飼料対策の
実効性について


 飼料対策の要は、BSE病原体プリオンを含む可能性のある組織をすべての動物の飼料から排除することです。具体的には、牛の肉骨粉、牛のと畜解体で廃棄されるSRMなどです。現在では年間100億円ほどの公費を投入して、全て焼却処分や再生セメントの原料となっていると存じておりますが、評価(案)では、この国内で生産される牛の肉骨粉などの処理状況を検討していないのは腑に落ちません。国産牛肉骨粉などの流通が大元で閉じられていることを検証、検討してください。

 国内で生産される牛の肉骨粉などが流通してないとすれば、肉骨粉は2001年10月以後は輸入停止になっているので、牛の肉骨粉の侵入ルートは、肉骨粉の混入した配混合飼料の輸入、約90%を輸入に依存している国内で製造される配合飼料の原料となる飼料穀物等の肉骨粉の混入、汚染が考えられます。 評価(案)では、輸入配合飼料については「輸出国におけるBSE汚染の実態は不明」として検討を行っていません。実態はわからなくとも、輸出国の飼料規制は容易に知ることができます。例えば、米国ではSRMや死亡牛からも肉骨粉が作られており、牛(反芻度物)以外の飼料には用いられています。2005年3月14日に米国議会検査院(GAO)が公表した報告書では、「国内向けに販売される飼料には、牛その他の反芻動物に与えてはいけないの表示が義務付けられているのに、輸出向け飼料にはこの表示が義務付けられていない。このような表示がなければ、禁止物質を含む飼料が偶然にか故意に米国に逆送されて米国の牛の口に入るか、外国の牛の口に入る。」と指摘されております。輸入配合飼料について、製造国の飼料規制などを精査し、リスクを評価してください。

昨年11月、アイルランドで、牛の配合飼料に使われる米国からの輸入飼料原料(トモロコシ/グルテン)に動物の骨が発見されたと報道されました。(Department has to extend recall of contaminated feed,The Irish Times,12.2)12月には、カナダ食品検査局の検査で、牛の植物性飼料の60%(70のサンプル中41のサンプル)が動物蛋白質(骨と筋肉の断片)を含んでいることが明らかになったと報道されました。(Animal parts foundin'all-vegetable'feed:study,CBC,12.17)日本でも、11月に畜産農家において使用している輸入粗飼料、アルファルファ乾牧草(米国・オレゴン州産)から、哺乳動物の骨と思われる異物が発見されています。(平成16年11月22日農林水産省発表) これらの動物蛋白質や骨がBSE牛の物かどうかは不明ですが、輸入飼料原料や粗飼料での牛の肉骨粉の混入、汚染が考えられます。しかし、評価(案)では検討されていません。
日本の検査体制が不十分で混入、汚染の状況が不明ならば、不明と明記して、リスクを評価してください。また、今後、採るべき対策を盛り込んでください。

 また、2001年10月からの牛の肉骨粉使用の完全禁止の効果を知るためには、2001 年10 月生(23 ヵ月齢)と2002 年1 月生(21ヵ月齢)のBSE 検査陽性例の感染源の究明が問題となります。評価(案)では「市場に残存している肉骨粉が使用されたか、牛の肉骨粉に汚染された他の畜種の肉骨粉が使用された可能性がある。」とありますが、それを裏付けるものは何かあるのでしょうか。2001年10月の完全禁止措置以降に製造された飼料が感染源ではないという根拠はあるのでしょうか。





SRM(特定危険部位)
除去について


SRM除去が重要なのは言うまでもありませんが、万能の対策でしょうか。日本では、BSEの検査で陽性となれば、その牛肉は全て焼却処分されますが、SRM除去が確実におこなわれていれば、BSE発症牛、検査陽性牛でもその肉は食用にできるのでしょうか。
最近、つくば市にあるプリオン病研究センターで、BSE 検査陽性牛の副腎や末梢神経などSRM以外でにもBSEプリオン蛋白の蓄積が見られた例が報告されております。
16年9月の中間とりまとめでは「これまでの知見からSRM とされている組織以外に異常プリオンたん白質が蓄積する組織が全くないかどうかについては、SRM を指定した根拠となった感染試験における検出限界の問題やBSE の感染メカニズムが完全に解明されていないことなどの不確実性から、現時点において判断することはできない。世界保健機関(WHO)がBSE 感染牛のいかなる組織も食物連鎖から排除するべきであると勧告していることもこのような考えに基づくものと思われる。」とあります。

 つまり、確実に完璧にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえないから「BSE感染牛のいかなる組織」が排除の対象となるのです。BSE発症牛、検査陽性牛はむろん、検査陰性のBSE感染牛でも確実にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえない。しかしBSEに感染していない検査陰性の牛と区別できないから、検査陰性のBSE感染牛の肉が排除できない。 この確実にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえないというSRM除去の限界があるから、BSE感染牛の発生を防ぐ飼料規制などが「人へのBSE 感染リスクの低減を保証する根源的に重要な対策」なのです。

 この評価(案)では、2.2 主な論点③SRM 除去、3.1.2.2.1.3 SRM 除去、3.2.1.3.2 BSE 検査とSRM 除去により低減される暴露リスク、3.3 SRM除去によるリスク低減効果に関する見解などでSRM除去について検討していますが、SRM除去の限界は触れられていません。
「英国の感染実験から中枢神経系に感染性の検出できない若齢牛でも回腸に感染性が認められている。従って、SRM の除去が汚染リスクの低減に必要となる。(25ページ)」
「(反すう動物由来の肉骨粉使用を完全禁止)措置後に生まれた牛(born after real ban:BARB) でBSE 陽性例が見つかっており、完全な汚染防止が困難であることも知られている。(19ページ)」とBSE検査や飼料規制の限界は述べられていますが、SRM除去の限界は述べられていません。そのため、SRM除去さえ確実に完璧におこなえば、異常プリオンたん白質を完全に除けてBSEプリオン汚染度(汚染率、汚染量)をゼロにできるという誤った認識を与えるものに、評価(案)はなっています。

 16年9月の中間とりまとめにあるような理由から、確実に完璧にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえないというSRM除去の限界を明示する文言を付け加えてください。世界保健機関(WHO)の勧告にあるように、BSE検査で陽性であれ、プリオン蓄積量が少なく陰性であれ、BSE 感染牛のいかなる組織も食物連鎖から排除するべきである事、陰性のBSE感染牛では全組織ではなくSRMだけの除去、排除が食肉確保の観点から現実的に成し得ることである事を明示する文言を付け加えてください。





BSE検査について


BSE 感染牛のいかなる組織も食物連鎖から排除するべきであるが、BSE検査陰性のBSE感染牛では全組織ではなくSRMだけの除去、排除が食肉確保の観点から現実的に成し得ることですから、牛肉の安全性を高めるためには、検査技術を向上させ検査限界を低くすることと、検査から除外し陰性とみなされる牛を減少させることが重要です。

 日本の全頭検査は、陰性と看做される感染牛が出ない検査制度です。30ヶ月齢以下をBSE検査から制度的に除外し陰性と看做していたら2003年10月の8例目、11月の9例目は見逃され、そのBSE プリオンに汚染した牛肉や内臓等を国民が摂食する事態になっていました。
16年9月の中間とりまとめでは、「この中には、21及び23 ヶ月齢のBSE 感染牛も含まれ、全頭検査を行っていたことが発見につながったものである。すなわち、消費者の健康保護に有効に貢献したといえよう。」と評価しています。
評価(案)では、このような全頭検査の消費者の健康保護に直接的に貢献する積極的意義を明らかにする文言がなくなっております。中間とりまとめにある全頭検査の意義を明らかにする文言を追加してください。

 検査技術を向上させ検査限界を低くすることの重要性は、言うまでもありません。評価(案)でも開発の必要性は述べられていますが、より感度の高い検査方法が実用段階になった時に、その検査方法の導入やそれに伴う検査対象の月齢の見直しは、誰が、どの官庁が発議、主導するのでしょうか。より感度の高い検査方法を速やかに導入し、現在の検査では陰性となるBSE 感染牛を見出し、そのBSEプリオンに汚染した牛肉や内臓等が摂食されないようにすることが消費者の健康保護になります。食品安全委員会が、農水省なり厚生労働省に勧告するのでしょうか。その手順なりが評価(案)では述べられておりません。明記してください。

SRM除去が重要なのは言うまでもありませんが、万能の対策でしょうか。日本では、BSEの検査で陽性となれば、その牛肉は全て焼却処分されますが、SRM除去が確実におこなわれていれば、BSE発症牛、検査陽性牛でもその肉は食用にできるのでしょうか。
最近、つくば市にあるプリオン病研究センターで、BSE 検査陽性牛の副腎や末梢神経などSRM以外でにもBSEプリオン蛋白の蓄積が見られた例が報告されております。16年9月の中間とりまとめでは「これまでの知見からSRM とされている組織以外に異常プリオンたん白質が蓄積する組織が全くないかどうかについては、SRM を指定した根拠となった感染試験における検出限界の問題やBSE の感染メカニズムが完全に解明されていないことなどの不確実性から、現時点において判断することはできない。世界保健機関(WHO)がBSE 感染牛のいかなる組織も食物連鎖から排除するべきであると勧告していることもこのような考えに基づくものと思われる。」とあります。

 つまり、確実に完璧にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえないから「BSE感染牛のいかなる組織」が排除の対象となるのです。BSE発症牛、検査陽性牛はむろん、検査陰性のBSE感染牛でも確実にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえない。しかしBSEに感染していない検査陰性の牛と区別できないから、検査陰性のBSE感染牛の肉が排除できない。

 この確実にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえないというSRM除去の限界があるから、BSE 感染牛の発生を防ぐ飼料規制などが「人へのBSE 感染リスクの低減を保証する根源的に重要な対策」なのです。

 この評価(案)では、2.2 主な論点③SRM 除去、3.1.2.2.1.3 SRM 除去、3.2.1.3.2 BSE 検査とSRM 除去により低減される暴露リスク、3.3 SRM除去によるリスク低減効果に関する見解などでSRM除去について検討していますが、SRM除去の限界は触れられていません。「英国の感染実験から中枢神経系に感染性の検出できない若齢牛でも回腸に感染性が認められている。従って、SRM の除去が汚染リスクの低減に必要となる。(25ページ)」「(反すう動物由来の肉骨粉使用を完全禁止)措置後に生まれた牛(born after real ban:BARB) でBSE 陽性例が見つかっており、完全な汚染防止が困難であることも知られている。(19ページ)」とBSE検査や飼料規制の限界は述べられていますが、SRM除去の限界は述べられていません。そのため、SRM除去さえ確実に完璧におこなえば、異常プリオンたん白質を完全に除けてBSEプリオン汚染度(汚染率、汚染量)をゼロにできるという誤った認識を与えるものに、評価(案)はなっています。

 16年9月の中間とりまとめにあるような理由から、確実に完璧にSRM除去をおこなっても、異常プリオンたん白質を完全に除いたとはいえないというSRM除去の限界を明示する文言を付け加えてください。世界保健機関(WHO)の勧告にあるように、BSE検査で陽性であれ、プリオン蓄積量が少なく陰性であれ、BSE 感染牛のいかなる組織も食物連鎖から排除するべきである事、陰性のBSE感染牛では全組織ではなくSRMだけの除去、排除が食肉確保の観点から現実的に成し得ることである事を明示する文言を付け加えてください。


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鶏糞を食べさせられる米国の牛、その肉が牛丼に!? 2005-15 [牛‐肉、乳、飼育]

2005年4月5日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。



鶏糞を食べさせられる米国の牛、
その肉が牛丼に!?
その鶏は牛の肉骨粉を食べている、
その糞でBSE(牛海綿状脳症)に?!


 「実は私はきのう、東京港の(メキシコ産)食肉の検疫を見に行ってきました。・・ショートプレートというのは、通称吉野家カットといって、牛丼になる部分です、これは。そこに何と書かれておったかというと、糖みつ飼育の若姫牛と書かれておった。糖みつ飼育の若姫牛。 糖みつ飼育というのは、大臣わからないかもしれない。これは、鶏ふんを牛に食べさせる。アメリカで行われているんです。そのときに、鶏ふんを牛がなかなか食べないから、もう臭いし、おいしくないし。どうして食べさせるかというと、糖みつをかけて食べさせているんです。これはアメリカで行われています。・・メキシコからアメリカ産の牛肉がまじっていたということで(韓国はメキシコからの)輸入を禁止している、」これは2月24日の衆議院の農林水産委員会での民主党の山田正彦議員の質問です。

兎は糞を食べるが、牛は食べないぞ
大豆粕の代わりに肉骨粉か鶏糞
鶏糞には未消化な牛の肉骨粉が混じっている、しかし米国では牛に禁止規制できない、それでも輸入再開できるの、NHK?





兎は糞を食べるが、牛は食べないぞ


 鶏の糞を食べさせらるとは、牛はかわいそうな!動物の糞を餌とする動物は、昆虫など数多くいます。身近なところでは、ウサギ。耳の長いあの兎、しかし牛が食べるとは本来の食性で餌にしているとは聞いたことがありません。

 「ウサギなど、やはり草食動物で後腸発酵(草のセルロース、ヘミセルロース、リグニンなど繊維成分を微生物によって発酵分解しタンパク質の合成する)を行う動物は、食糞という一種の栄養摂取行動がみられる。通常の糞と匂いも形状も異なるソフトフィーシズ(軟らかい糞)と呼ばれる盲腸糞をだし、これを摂取する。すなわち、後腸の発酵分解で作られた微生物態タンパク質を一旦体外に排出し、もう一度食道→胃→小腸→と通過させ、消化吸収しようとするものだ。」牛は微生物によって発酵分解を4つある反芻胃で行います。いつも口をモグモグしているのは、醗酵の途中のものを胃から戻して、よく噛んで細かくして醗酵をすすめるためです。そして食べてから7~10日ほどかけて消化し排便します。十分に草を醗酵分解・吸収していますから、兎にように食糞する必要が栄養的にありません。

 鳥類は、空を飛ぶために体を軽くしておくために、食べたら未消化でも直ぐに排出します。鶏糞にも多量の栄養分が未消化のまま残っています。牛本来の食べ物ではありませんが、廃棄物として大型養鶏場から大量に出ますから、これを牛に食べさせることができれば、廃棄物の処理費を頂いた上に飼料代も節約できます。経営的には、利益向上には一石二鳥。






大豆粕の代わりに肉骨粉か鶏糞


 日本でも30年ほど前に試されています。結果は、生に近い状態では「他の飼料をまったく与えないようにしても」食べないが、十分に乾燥し粉砕して「糖蜜を10%程度添加すれば」飼料中に60%程度混ぜても食べる。栄養的エネルギー源的には飼料価値は比較的に低いからそこまでは混ぜて使えないが、肉(タンパク質)を作るためのタンパク質源・窒素源、としては大豆粕と同等に価値を有するというものでした。日本では、衛生管理や乾燥させる手間、エネルギー代などの問題から一般には行われていないようですが、アメリカじゃ鶏のウンチを牛に食わせている。

 タンパク質源・窒素源、としては大豆粕と同等とありますが、大豆粕が高騰した時に代替で肉骨粉が使われはじめ、それでBSEが拡がったのです。牛本来の食性、草食動物として飼って大豆粕などを与えていれば、BSEが拡がることは無かったわけですから、大豆粕の代わりに鶏糞を食べさせたらどうなんだろう。何がおきるのか??閑話休題、この糖蜜掛け鶏糞飼育が、BSEを米国で拡げる汚染ルートになります。

 米国では、鶏、あひるなど家禽用の飼料に牛の(BSE牛の)肉骨粉を配合できます。それを食べた鶏などの糞には、未消化の肉骨粉が混じっています。それを牛が食べる。BSEに感染する。その牛から肉骨粉がつくられる。という汚染ルート、BSEリサイクルがあります。

鶏糞には未消化な牛の肉骨粉が混じっている、しかし米国では牛に禁止規制できない、それでも輸入再開できるの、NHK?





鶏糞には未消化な牛の肉骨粉が混じっている、
しかし米国では牛に禁止規制できない、
それでも輸入再開できるの、NHK?


 米国食品医薬局(FDA)は昨年1月26日、米国BSE発生から約一月後、狂牛病(BSE)の人間への伝達と動物への伝播を防ぐための措置の強化を提案しました。その中に、家禽が飼育場からでる糞・食べ残した牛の肉骨粉入りの餌・羽・敷藁などの家禽排出物を牛など反芻動物用飼料成分として利用することを禁止するという条項が提案されています。しかしこの規制は、業界の反対で未だに実施されていません。立ち消えとなっています。

 ライス米国務長官や島村農水大臣、町村外相は政治家で知らないかもしれませんが、米国食品医薬局など専門家が見れば、大きな穴、BSEがリサイクルする抜け道があります。先日、食品安全委員会の専門部会がBSE検査から20ヶ月齢以下の牛を除外する緩和案を認めました。マスコミは、これで米国産牛肉の輸入再開へ一歩前進と評価していますが、糖蜜飼育のような抜け道の実態を見れば、とても再開は言えないのは明白です。知らなくとも、文の読解力があれば、とうてい米国産牛肉が早期に輸入再開になるとは考えられない。

 委員会の文書(我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案))には「月齢見直しの事項は、2001 年10 月の飼料規制から1年半以上経過した、2003 年7 月以降に生まれた牛についてのリスク評価」と書かれています。2001 年10 月に肉骨粉の使用が、全面禁止、牛のみならず豚や鶏やペットフードなど全ての飼料や肥料への使用が禁止され、全量焼却処分されるようになりました。
「2003 年7月以降生まれでは肉骨粉使用の完全禁止後1年9ヵ月以上経過していることから、当時の肉骨粉が残存している可能性は低く、国内産肉骨粉の飼料への混入は『無視できる』・・国産飼料に起因する交差汚染による感染率は、非常に低く、蓄積量は、無視できると考えられる。」

 しかし米国では、全面禁止されていません。牛用の飼料のみ禁止です。ですから、BSE検査から20ヶ月齢以下の“米国産”牛を除外する緩和措置が直ちに出てこない事は明白です。一から、米国の飼料規制の実効性から検討しなければならないことは自明です。

 3月14日に米国議会検査院(GAO)が、BSE拡散を防ぐための飼料規制の有効性に限界がある「米国の牛をBSE拡散のリスクに曝している」とする報告書を発表していますから、米国の飼料規制に問題があることは周知の事実。記者は知っていたはずです。しかし様々なマスコミ報道では、再開問題と関連させて、この点を触れていません。NHKは早期輸入再開を目論む政府・政治家の御機嫌を損なわないように、“また”自主規制したのでしょうか。吉野屋など外食産業は、重要な民放の広告主ですからね、・・

 閑話休題、今回の食品安全委員会の審査では、肉骨粉の全面禁止以降、理論的には出てくるはず無いBSE牛が発生している、その汚染源とみられる輸入配合飼料(国内使用量の約0.5%以下)は「輸出国におけるBSE 汚染の実態は不明であり、・・海外で製造され輸入される配混合飼料の交差汚染については検証されていない。・・肉骨粉の混入した配混合飼料の輸入を防止しうるか否かに関しては、予断を許すことはできない。」国内で製造される配合飼料の原料は90%以上輸入ですが、その汚染状況は検証していません。


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日本で15例目のBSE(牛海綿状脳症)牛は、米国では見逃される!? 2005-10 [牛‐肉、乳、飼育]

2005年3月1日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。



日本で15例目のBSE(牛海綿状脳症)牛は、米国では見逃される!? 



先週の土曜日2月26日に、国内で15例目のBSE牛が検出されました。この牛は、米国にいれば多分BSE牛とはわからなかったでしょうし、肉骨粉にされて他の牛にBSEをひろげていたでしょうし、その肉は食べられたかもしれません。<BR>
  日本初の人のBSEと、献血の見直し
異常プリオンがリサイクルする米国
米国牛肉に保証書は出せない、食品安全委。島村農相が政治的圧力




日本初の人のBSEと、献血の見直し 15例目の牛は、1996年8月に生まれた8歳6カ月の雌のホルスタイン(乳牛)。北海道本別町で飼育されていました。食肉処理場へ出荷する際にトラックに積み込もうとしたところ転倒。出荷を中止して農場で飼育していたが起立不能になり、獣医の診断では「関節炎」。22日に廃用牛として殺処分されました。23日に十勝家畜保健衛生所の検査で疑陽性となり、動物衛生研究所(つくば市)の確認検査でも陽性でした。 死んだ牛の検査は病気や事故で死んだ2歳以上の牛を対象に2003年4月から全国で始まり、04年末までに11万3623頭が検査を受けています。死んだ牛では3例目になります。農水省は「確率的には年に2~3頭程度の陽性が出てもおかしくない」としています。 米国では、死亡牛(農場で及び輸送中に死んだ牛)、BSEの兆候を示す牛など高BSEリスク牛は年間44万6千頭(推定)ですが、検査されたのは2004年に17万6468頭、39%です。ですから、この15例目の牛は、米国で飼われていたら、まず検査されなかったのです。仮に検査されて疑陽性となっても、確認検査では日本や欧州は、高感度な「ウエスタンブロット」を用いていますが、米国では別の方法を用いています。一昨年末の1例目では、「ウエスタンブロット」を用いて陽性とでたので、それ以降別の検査方法にかえ、陰性と発表しています。米消費者同盟(CU)は2月24日に再検査を要求しています。つまり今回の北海道の牛は米国なら多分BSE牛とはわからなかったでしょう。


異常プリオンがリサイクルする米国この牛の肉は食用に回らず、焼却処分されます。米国では、死亡牛でも自家用という名目なら食用にできます。そしてこうした牛肉を集め格安牛肉として流通させる闇ブローカーが米国にはいるそうです。 こんな危ないことをせずとも、レンダリング工場に原料として販売できます。工場では、牛脂やゼラチンなど様々な副産物がとりだされ、最後の残りかすが肉骨粉。配合飼料などに使われます。今回のBSE牛も北海道ではなく米国にいれば、このように処分され、BSEの病原プリオンを含んだ肉骨粉が、鶏や豚など飼料に配合されることになります。牛用飼料には禁止されています。 15例目のBSE牛は96年8月に生まれです。日本では、96年4月から今の米国と同じ飼料規制、牛用には使用禁止、鶏や豚などには牛に肉骨粉を使ってよいとしていました。その規制が本当に有効なら、規制から4ヵ月後に生まれた今回の牛はBSEにかからなかったのです。つまり、現在の米国の飼料規制では、BSEの新たな発生・拡大を防げないのです。今のところ、肉骨粉全面禁止以外にBSE拡散を防ぐ有力な手段はないというのが欧州や日本の経験が示すところです。(日本は、2001年10月、BSE牛1例目検出直後に、全面禁止) あらためて言うまでもありませんがBSE牛が増えれば増えるほど、いくら検査や特定危険部位除去をおこなっても、上手の手から水が漏れるで、BSE牛肉が食卓に上がる可能性が増します。飼料規制は、牛肉の安全性を高めるために国際的にも求められている措置です。ところが、2月24日の衆院農水委で、民主党の山田正彦議員が、「内外同一というなら、なぜ米国に対し輸入再開条件で肉骨粉の飼料規制を求めないのか」と聞いたのに対し、中川消費・安全局長(←ご尊顔)は、「飼料規制は牛から牛へのBSEの伝播を防止する上で重要だが、牛肉の安全性を確保する措置ではない」と答えています。(日本農業新聞、2/25)


米国牛肉に保証書は出せない、食品安全委。島村農相が政治的圧力 翌25日、島村宜伸農相(←ご尊顔)は部下の非常識をたしなめるどころか、BSE(牛海綿状脳症)の「全頭検査は世界の常識ではなく、非常識な部類。国際社会で生きていくための常識がある。」「いつまでも、こういう(全頭検査にこだわる)姿勢に閉じこもっているのが妥当とは考えていない」と衆院予算委員会で公言しました。農水省と厚生労働省は、昨年10月に、検査対象から20ヶ月齢以上に限る検査緩和案を食品安全委員会に諮問しました。しかし、委員の意見が分かれ、「(結論が出るのが)ゴールデンウイークになってしまう」「日本がいたずらに結論を引き延ばしている印象を(米国に)与えかねない」と閣議後の会見で語り、安全委に検討を急ぐよう求めました。しかし、経過を顧みると、いたずらに結論を引き延ばさせたのは島村農相本人なのです。 昨年8月に食品安全委員会は「米国でのいろいろな今の疑義は確かにそのとおりですが、それを私たちが確実な信頼性を持ったデータを手に入れることができない限りは、科学的な評価ができないという点があります。ですから、不確実性が余りに不確実過ぎて、評価に至れない。」と言っています。しかし、大臣就任直後の10月の日米協議で、20ヶ月齢以上に限る検査緩和案を食品安全委員会が認めたら、20ヶ月齢以下の米国産牛肉を輸入再開すると農水省は約束。つまり、科学者としては安全性が評価できない米国産牛まで安全保証書をだすように、食品安全委員会を農水省は、はめたのです。 平成14 年、牛肉の国内生産量が52 万トンで輸入量は76 万トンですから、輸入再開すれば20ヶ月齢以下に限定しても、かなりの量の米国産牛肉が食べられるようになる。その安全性は評価できないというよりも、先ほどの飼料規制をみればBSE汚染度が日本よりも高いと見られ、米国産牛肉は20ヶ月齢以下は無検査という点は形式的には同じでも安全性は低いとしか考えられない。そんな米国産牛肉に国産牛肉と安全性は同じという保証書はだせない。ある委員は「日本は脳の硬膜移植による薬害ヤコブ病で100人以上の被害者を出している。BSE問題で議論を尽くすのは当然のことだ」。それで食品安全委員会の先生方は、結論を引き延ばしているのです。 保証書を出す上での大きな障害は、飼料規制。米国の飼料規制では、BSE拡大を防げないのは日本の経験でわかっています。安全性を高めるには、日欧と同じ肉骨粉全面禁止を米国に求めていくしかないのです。こういったレベルの話は、官僚ではなく政治家、大臣レベルの交渉事でしょうが、島村農相は「米国は殺気立っているような感じだ」と米国の顔色をうかがうだけ。それで、上の顔を見て中川消費・安全局長の非常識な答弁が飛び出してくる。 農相は「(米国牛肉を食べるかどうかは)消費者の自己責任に任せればよい」と言っていますが、BSEが原因とされる異型CJDで死亡した51歳の男性の2月4日の日本国内初の件でも、献血・血液での伝播が問題となったように、食べた本人だけに被害は収まらないのです。


農水省、BSE対策見直し意欲の裏 ところで、朝日新聞は2月27日に次のようなニュースを配信しました。「BSE対策見直し意欲の裏  農林水産省が、かつて消極的だったBSE(牛海綿状脳症)対策の見直しに意欲を見せ始めている。背景には、BSEへの対応の不手際が批判され、事実上の引責辞任に追い込まれた熊沢英昭・元事務次官(←ご尊顔)を、同省出身者で初めての大使に送り出そうという、大物OBの「再就職問題」もあるようだ。  03年12月から停止している米国産牛肉の輸入再開には、全頭検査を柱とする現行のBSE対策の見直しが前提。だが見直さない方が、米国産と競合する国産牛肉の保護につながるため、農水省は当初、消極的だった。  ところが、島村農水相が25日の衆院予算委員会で「BSE全頭検査は世界の非常識」と発言するなど、一転して、前向き姿勢を強調し始めた。ある同省幹部は「BSEをめぐる混乱を早く過去のものにしたい」と話す。  その裏で進むのが、熊沢氏の大使就任構想。同氏は畜産局長時代に、感染源とされる肉骨粉を牛に与えることを法的に禁止せず、BSE拡大のきっかけを作ったとして批判された。「世間の記憶が薄れることが、熊沢大使実現に欠かせない」という声が同省にはある。  政府系金融機関の統廃合論議が本格化すれば、官僚の天下り先が減る公算が大きい。大使という新たな「再就職先」の確保が農水省には重要課題になっている。」
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日本で初の人の狂牛病と米国産牛肉の輸入再開の交渉の猿芝居 2005-05 [牛‐肉、乳、飼育]

2005年1月25日2月8日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。



日本で初の人の狂牛病と
米国産牛肉の輸入再開の
交渉の猿芝居


 牛海綿状脳症(BSE)が原因とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJDで死亡した51歳の男性の件が4日に公表されました。そして血液を介しての二次汚染が懸念され、献血の仕組みが変更されました。 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJDは、医療の安全性を根底から揺るがします。その源であるBSE牛が食卓に、人の口に入らないようにすることが重要です。米国産牛肉の輸入再開に向けての日米交渉を見ると、日米両当局の姿勢に疑問がわきます。

日本初の人のBSEと、献血の見直し
全頭BSE検査廃止の動きにみえる日米両政府のオカルト・非科学性
日本・欧州でで肉骨粉全面禁止後も新たなBSE牛が発生するわけを、米国・北米の飼料規制に探る





日本初の人のBSEと
、献血の見直し


 厚生労働省が把握している日本のCJD患者さんは約500名、うち遺伝性が約1割、医原性が約一割、孤発性が約8割です。今回の男性は01年12月に、焦燥感やイライラなどの精神症状を40歳台で発症し、02年12月ごろ、意思に関係なく体が動く不随運動が出るなど症状が進行。その後、刺激への反応が全くなくなり、04年12月に死亡。9月時点では、孤発性(原因不明)と判断されていましたが、変異型の疑いが捨てきれず亡くなられてから、脊髄など病理検査が行われ、その結果をみて厚生労働省の専門委員会が牛海綿状脳症(BSE)が原因の変異型と4日に確定診断しました。

献血歴は?? この男性は輸血歴はなく、平成元年1989年頃に英国に1ヶ月、短期間ではあるが滞在との情報があり、「その時の曝露の可能性が現時点では有力と考えられる」。もちろん、帰国してからの国産・輸入牛肉での感染や牛ゼラチンなどを使った医薬品、サプリメントなどからの感染も十分に考えられます。徹底的に調査する必要があります。 また医原性CJDでわかるように臓器製剤・臓器移植で人に感染します。献血をしていると、その血液、血液製剤で拡がる可能性があります。

 BSE流行時(1980~1996年)の英国に6カ月以上滞在したヒトからの献血は受けつけない方針を日本を始め多くの国が採っていますが、1ヶ月、短期間ですから献血をした可能性があります。また1ヶ月の短期間の英国滞在中にBSEに感染したとすれば、献血の6カ月以上の長期滞在という条件を見直す必要があります。今後の献血でもそうですが、今まで献血されたBSE流行時(1980~1996年)の英国に6カ月以内滞在したヒトからの血液の輸血、血液製剤による二次感染の恐れがあります。(4日夜になって、1995年春以降の献血記録がない、それ以前は不明と発表。また”暫定的に滞在一ヶ月以上”に変更された。)

 このように変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJDは、医療の安全性を根底から揺るがします。HIVやC型肝炎は、血液中のウイルスを検出して排除できますが、vCJDを伝えるプリオンは血液を検査しても現在は検出できません。発症して死亡してから脳や脊髄を調べて初めて確定できます。献血する人の脳や脊髄を取り出して調べることは出来ません。それだけ厄介な病気です。その源であるBSE牛が食卓に、人の口に入らないようにすることが重要です。





全頭BSE検査廃止の動きにみえる
日米両政府のオカルト・非科学性
 穴の開いた靴下も三枚重ねれば大丈夫?


 日本の対策は、BSE牛を出さないための飼料対策、プリオンのほとんどが蓄積している脳や脊髄などの特定危険部位の除去、全頭検査によって検出できたBSE牛を焼却して食卓に出さないという3本柱です。どれか一つで完璧という防護策ではありません。飼料対策は原料段階での汚染、BSE検査は検査感度、故意または不手際による不完全な除去という限界があります。いわば穴が開いた靴下ですが、三枚重ねて履けば穴がふさがるというところです。 その一つBSE検査に検査除外という穴が開けられようとしています。

米国産牛肉輸入再開のための昨年10月の日米局長級会合で、日本の安全基準を全頭検査から生後21ヶ月以上検査にに改め、米国牛のうち生後20カ月齢以下に限り輸入を再開することで基本合意しました。10月15日には国内の改正手続きで食品安全委員会に大臣から、改正案が諮問されました。これを受けて専門家会議の吉川座長と金子座長代理が、これを認める答申案を作成しました。 答申案をめぐる専門部会の論議を見ると、BSE検査を生後21ヶ月以上限定は科学的に妥当、生後20カ月齢以下のBSE牛は、現在の検査法ではプリオンの蓄積が少なくて検出できないから、今でも発見できないから妥当という答申は出てきそうにもありません。





科学的根拠がほとんどない
20ヶ月線引き


 吉川座長の論拠は、月齢を横軸にプリオン検出量を縦軸に日本での検出例をおいた図で、大まかに月齢によるプリオン蓄積量の相関関係を推測したグラフ(実線)で、検出限界が20ヶ月ごろというものです。(紫の破線は、英国のデータを基にした推測蓄積量、同じ牛なのに大きな違いはなぜ生まれる??)

 これにたいして「なぜ年齢(月齢)にこんなに拘るのか?汚染飼料の性格から多くの場合、生後まもなく感染すると推定され、見かけ上年齢に関連して見えるに過ぎない。厳密には年齢とは無関係で、感染量と感染時期によって検出量に達する時期が決まるのである故にこんな指摘は不見識である。」「グラフの意味不明です。BSEが、すべて同じ経過をとるかのような印象を与えます。感染量や暴露時期も不明な個体の成績(各点)を結んでグラフとすることに、意味があるでしょうか?」「EUの報告書では17か月、もしくは最悪のシナリオでいけば13か月で見つかる」と批判されています。

 EUの実例や動物実験などから、レー・ブラッドレーとオーストリアの神経病理のブドウカ教授が17か月、もしくは13か月で見つかるという結論を出していますから、検査の感度、検出限界を理由にBSE検査を生後17ヶ月(または13ヶ月)で線引きするのは、科学的な納得が得られます。が、厚生省・農水省の20ヶ月で線引きする案は現在の科学的知見では支持できません。17ヶ月(13ヶ月)から20ヶ月の検出可能なBSE牛を、見逃すことになります。ですから意味不明のグラフではなく、日本の実例をも考慮すると検出量に達する時期、月齢は何時頃かをまず科学的に検討する必要があると批判されました。

 それで、当初、20ヶ月線引き案を認めた座長らも「20ケ月以下でも検出可能かもしれないというのは、今の北本先生の御意見もそうですし、山内先生もそうですけれども、これはもっと早くてもいいわけです。そういったことも含めて、これはここで公開の場で議論していただく問題だと私(金子座長代理)は認識しております。」吉川座長も「これ(答申案)はあくまでだれかが出さないと先に進まないから出しただけであって、別にこれを根底から全部直して組み直すということはあっても構わないと思いますし、何月何日までが限界で答えを出せというものではない」 つまり、振り出しに戻り、日本の安全基準、検査体制の変更が何時になるかわからないし、科学的には線引きの月齢は17とか13とかの20ケ月以下が妥当という答申がでる可能性が強いのです。

 紫の破線は、英国のデータを基にした推測蓄積量、同じ牛なのに大きな違いはなぜ生まれるでしょうか。プリオンの感染量(摂取量)と感染時期によって月齢ごとの蓄積量が決まり検出量に達する時期が決まるという点はだれも否定できないでしょう。この二つだけでなく、牛の体質とか様々な要因が絡み合っているでしょうが、この二つが重要な要因であることは間違いありません。その国の飼料対策がプリオンの感染量(摂取量)と感染時期に影響します。

日本と英国では、飼料対策の法制度的な内容、実施状況、実施時期が違います。日本と米国も違います。日本は2001年10月に肉骨粉の全面的に禁止しました。米国では昨年1月まで、子牛にプリオンが含まれている可能性のある成分を与えていました。米国では、肉骨粉は飼料製造に使えます。牛用の配合飼料を製造する施設・設備で、豚や鶏用の飼料製造時には使えます。設備に残った肉骨粉が、牛用の配合飼料に混じってしまいます。

 ですから、日本ではBSE検査から21ヶ月齢とか17ヶ月齢で線引きすることは、現時点では肉骨粉の全面的に禁止してから1年以上たった2003年春以降に生まれた牛は検査から除外することですから、肉骨粉の全面禁止の実施状況によっては、日本では合理性を持ち得ます。しかし、米国では、米国産の牛ではどうでしょうか?そのまま当てはめて、21ヶ月齢とか17ヶ月齢で線引きはできません。別途、検討が必要です。この飼料対策の点は時節で。





米国からの再開圧力で
科学が歪めらる懸念 


この8日に、米国産牛肉の輸入再開へ向けての会合がもたれます。昨年10月の日米局長級会合での、生後20カ月齢以下の米国牛に限り輸入を再開する基本合意を受けての会合です。現在、米国では生年月日が記録され、月齢が証明できる牛は約8%ほどです。一昨年12月のBSE発見直後の2003年1月に約束した牛の戸籍制度・識別システムの全米規模での構築を先延ばしにしたため、こんなに少ないのです。そのため米国は、米国の肉質基準のA40~10は、20ヶ月齢以下の牛である。生年月日の記録が無くともA40~10の米国産牛肉の輸出入も再開べきであると主張しています。その妥当性を検討するための会合です。

 目じりの皺の数、肌のつやは年齢と相関関係が有るから、それを見れば女性の年がピタリと当てられるというのと同じ理屈です。論ずるにも値しない。また米国の主張はプリオン蓄積との関連で見れば、「肉質A40~10の牛はBSE牛であってもプリオンの蓄積が少なく検知できない」です。まったく根拠の無い、オカルトです。

 先ほどのように20ケ月以下は検査対象から外すことも確定していないのに、20ヶ月という数字が一人歩きしています。輸入再開のため政治的圧力が食品安全委員会や専門の科学者に加わっていないでしょうか。政治的約束の20ヶ月に結論を合わせるように中立的、科学的であるべき審議が歪められないか心配です。食品安全委員会のサイトhttp://www.fsc.go.jp/から「食の安全ダイヤル」といくとメール受付窓口へつながりますし、電話03-5251-9220または9221で平日10時から17時まで意見を受け付けています。





日本・欧州で肉骨粉全面禁止後も
新たなBSE牛が発生するわけを、
米国・北米の飼料規制に探る


  日本でBSE(狂牛病、牛脳海綿症)が14例も発生しているのは、飼料の規制が不十分だったからです。BSEをひろげる牛の肉骨粉の規制が不十分だったからです。BSE発生の混乱と不振不安を取り除くのに、どれほどの時間とお金がかかったか。日本の農水省は、この教訓を忘れてしまったようです。

 北米、米国とカナダの飼料規制は、以前の日本と同じ水準です。BSEが検出を逃れて静かに広がっている可能性が非常に高いのですが、農水省はぜんぜん問題にしていません。米国に、改善を要求していません。カナダでのBSE牛 カナダ牛の70%は生きたまま米国に販売していました。北米自由貿易協定(NAFTA)でカナダで生まれた牛が米国に輸入されて肥育されて肉や乳を生産したり、米国産飼料がカナダで使われたりと両国の畜産業は一体化していました。米国政府に牛海綿状脳症(BSE)対策を勧告した国際調査団は、「米国で発見された03年12月のBSEのケースと03年5月にカナダで報告された最初のBSEは、どちらも北米のBSEのケースと認められねばならない」としています。

 新年になって、2日と11日にカナダでBSE牛が見つかりましたから、北米の牛生産、畜産業全体では4例のBSE牛が発見されています。 注目されるのは、1月11日に確認された98年3月生まれの牛です。カナダ、米国では97年8月以来の牛の肉骨粉の牛用飼料への禁止(牛の肉骨粉は豚、鶏用などに使える、牛の飼料には豚・馬の肉骨粉が使える飼料規制、フィードバンという)を行っています。98年3月生まれですから、その飼料規制がとられてから半年以上たってから生まれています。カナダ、米国のフィードバン、牛の飼料の規制は効果がないのではないでしょうか。

 昨年、カナダ食品検査局(CFIA)、米国食品医薬局(FDA)は、全ての動物飼料からの牛の特定危険部位(SRM、脊髄などプリオンの蓄積する部位)の利用の禁止という交差汚染防止策を提案していますが、実施されていません。規制当局は、現在のフィードバンに欠陥、抜け道があることを認めているのです。





輸入飼料の汚染を
遮断する必要


 日本では96年4月以前は牛の肉骨粉は自由に使えましたし、96年4月から米国、カナダ同様のフィードバン、禁止措置を行政指導で行っていました。つまり豚や鶏用の飼料には、無制限に牛の肉骨粉が使えました。2001年9月にBSE牛(96年3月26日生まれ)が発見され現在までに14例発見されています。禁止措置がとられた96年4月以降に生まれているのは7頭。そのうち、肉骨粉の全面的に禁止された2001年10月以降が3頭です。汚染源の飼料は特定できていませんが、専門家は肉骨粉の入った豚や鶏用の飼料による製造・輸送・使用段階での牛用飼料の汚染(交差感染)とみています。つまり、米国の、カナダのフィードバン、牛の飼料の規制では、BSEの拡大を防ぐことは出来ない。

 日本は牛の特定危険部位だけではなく、全ての肉骨粉を禁止していますが、それでも完全に防げない。英国・欧州でも同様で、どこかに抜け道があります。 昨年11月には、米国から輸入されたアルファルファ乾牧草への哺乳動物の骨の混入が日本で発見されています。アイルランドで、牛の配合飼料に使われる米国からの輸入飼料原料(トモロコシ/グルテン)に動物の骨が発見されています。12月にはカナダ食品検査局の検査で、牛の植物性飼料の60%(70のサンプル中41のサンプル)に骨と筋肉の断片(動物蛋白質)が含くまれていたと報道されました。

 日本の飼料は、ほとんどが輸入品です。この輸入飼料の汚染の問題は、12月の食品安全委員会の会合でも取り上げられています。輸入した原料段階で汚染されていれば、日本での配合で肉骨粉を使わなくとも、禁止していても、できた配合飼料には含まれてしまう。牛の口に入ってしまいます。世界の飼料輸出国はどこかということを考えれば、米国に厳しい飼料規制を求めることが米国産牛肉の安全のみならず、日本の牛をBSEから守るために大切です。


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米国産牛肉の輸入再開にみえる日本の企業の品質劣化 2004-52 [牛‐肉、乳、飼育]

2004年12月21日小針店で印刷・配布した畑の便りの再録です。





米国産牛肉の輸入再開にみえる
日本の企業の品質劣化


 昨年の12月23日に米国で、BSE(狂牛病)の牛が検出されました。米国産牛肉の輸入が止まっていますが、ご存知のように日本がBSE検査を全てのと殺される牛から、生まれてから20ヶ月以上の牛に限定することで輸入再開が図られています。米国では肉用牛の約8割が20ヶ月以下ですから、これで事実上、米国の望むBSE無検査での再開が可能という算段です。

しかし、12月9日に外食産業の業界団体・日本フードサービス協会は、それでは牛丼用の「ショートプレート(バラ)」や焼肉用の「牛タン」は、以前の1割前後しか回復せず、これらのメニューの再開は事実上不可能と発表しました。『 「問題解決を先送り」と吉野家社長が政府批判(毎日新聞)』  おかしいですね、牛の約8割が20ヶ月以下なのに1割前後しか充足できないのでしょう。米国の牛は20ヶ月以上になると舌が2枚3枚に増えるので、20ヶ月以下に限ると数が足りないのでしょうか。

  米国政府の怠慢のツケを日本国民が支払うのか?
食品産業の社会的責任、誇りはどこに?





米国政府の怠慢のツケを
日本国民が支払うのか?


 日本には牛の”戸籍”制度があり、生まれた子牛に番号の入った耳標識をつけています。これで、どこで、いつ生まれたか、どの農家で、どんな餌を食べたかなどが記録されています。仮にその牛がBSEとわかれば、同じ農家、同じ餌を食べた牛が”擬似”BSE牛と特定され監視されます。飼料などBSEの感染源などを調査し特定し、拡大を防ぐために欠かせない制度です。

 米国も今年の1月21日ベナマン米国農務長官がで、こうした全国規模の牛識別システムをできる限り早期の実施する必要性を米国議会で証言しています。しかしそれっきり。言っただけで、有耶無耶になってしまいました。その結果、米国の年間にと殺される肉用牛2700万頭のうち、月齢を生産記録で証明できるのは約200万頭分だそうです。米国でも牛には舌は1枚しかありませんから、「牛タン」は以前の7%前後しか輸入できない事になるわけです。吉野家の安部修仁社長は怒る相手を間違えている。日本政府ではなく、怠慢な米国政府を批判すべきです。

 そもそも、BSEの検査対象を縮小するのは、現在の検査手段では、仮にBSEでも感度の関係で20ヶ月齢以下だと検出できないと見られるからです。安全というのとは違います。以前の輸入量や輸入金額で、換算すると米国から日本の輸入は、牛160万頭分にあたります。月齢を生産記録で証明できる牛200万頭に限ったとしても、牛丼用のショートプレート、カルビ用のチャックリブ、牛タンなど不足する部位はあるでしょうが、「部分解禁では、米国産牛肉が消費者の手に届かない(日本フードサービス協会)」ということはありません。届かないのは、吉野家の調理場です。そこまで直ぐに満たそうとすれば、日本のBSE対策を全て捨てて、米国の言うがままにするしかないのです。

 米国のBSE対策で最も問題なのは、飼料対策です。BSEは牛の肉骨粉で拡がるので、これが牛の口に入らないようにする飼料対策です。イギリスは88年に牛の飼料への使用を禁じたが、豚や鶏の飼料には肉骨粉がなお使われていました。この88年規制以後生まれた牛にもBSEは発生しつづけました。その最大の要因は、肉骨粉入り豚・鶏飼料による交叉汚染と見られたため、96年に肉骨粉を飼料(ペットフードを含む)から全面追放しました。それ以後生まれた牛でも感染が確認されていますが、激減していることは確かで、牛の肉骨粉はペットフードを含む全ての飼料に使わないことが国際的常識です。日本でもそうしています。食用にならない牛の内臓などから牛脂を煮出して、残りが肉骨粉ですが、日本では全てセメントの原料になっています。1200度に加熱されるためプリオンは完全に分解し安全です。

 FDA(米国食品医薬局)も1月26日にすべての動物飼料やペットフードからの排除を提案していますが、この暮れになっても提案のまま、牛識別システムと同じく言ったきりで後は有耶無耶です。

 BSE検査は、感度の問題からBSE牛肉を排除する万全な対策ではありません。飼料対策も英国などを見ると、BSE牛の新発生を激減させますが、ゼロにはできません。どこかに穴があるようです。我々はこの二つを適切に運用して、牛の感染を最小限にし、それでも発生するBSE牛を検出して食卓や食物連鎖から排除することができます。米国の対策は、この点は不合格です。牛の感染リスクは高いままですし、検査数やサンプルの選び方は、国際的基準をようやく満たすものでしかありません。その米国産牛肉を、そのまま輸入して大丈夫でしょうか。





食品産業の誇り、
社会的責任はどこにいった?


 私は吉野家など外食産業の経営者が、商っている食べ物の安全にどれだけ留意しているのか気になります。
 オランダ保健省は9日、1980年以後に輸血を受けた者すべての献血を禁止すると発表しました。BSE牛→人間、vCJD(BSEの人間版とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)患者の血液を介しての感染拡大が以前から指摘されていました。そのため、オランダも日本も1980年以来英国に6ヵ月以上滞在した人の献血を禁止してきました。

 昨年末以来、英国で、献血時にはそうとは分からなかったvCJD患者の血液を輸血されてこの病気に感染したと見られる二つのケースが見つかりました。仮に一人でも感染者がいれば、この感染が発見されることなく、献血を通して何十人、何百人、何千人もの人々に感染を広げることになる恐れがより現実化しました。オランダではvCJD患者は一人だけですが、それでも、オランダでは献血量が8%ほど減るコストを払ってまでも、予防的措置を英国並みに強化することにしたのです。

 吉野家の牛丼を食べて、vCJD患者がでて献血を通して何十人、何百人、何千人もの人々に感染を広げるリスクを、吉野家の安部修仁社長はどれほど感じているのでしょうか。それを承知の上で、日本のBSE対策を全て捨てて、米国の言うがままに輸入できるように、それで以前のように牛丼や牛タンを売れるようにすべきだと言っているのでしょうか。

 12月15日に報道された米国ウエスタン・リザーブ大学の研究では、病原のプリオンの大半は別の蛋白質・フェリチンの背に乗って腸壁を通過、血液に入ることが明らかになったそうです。フェリチンは鉄を貯蔵し、血中の鉄分が不足してくると貯蔵鉄を血液中に送る役割をはたす蛋白質です。フェリチンは広範な動物に共通の蛋白質。プリオンがこれにくっついて移動するのなら、牛から人間への移動は簡単ということになります。BSEは牛の病気だから、人間には簡単にうつらない「種の壁」があるといわれてきました。その種間バリアは10~1万倍と推定されていますが、この研究は低い方の数字、実は種の壁などBSEにはないのかもしれないことを示唆しています。

 この不景気で、外食産業の売上は軒並み落ちています。米国産牛肉の代わりの国産牛肉や豪州牛肉の価格が高く、経営を圧迫していると伝えられています。米国産牛肉に99%依存してきた吉野家は、特に苦境に落ちいっていると伝えられています。窮すれば貧すなのでしょうか。しかし、食品は人の健康に直結しています。 三菱自動車の欠陥車、三菱地所の砒素汚染地のマンション販売、三井物産のジーゼル排気浄化装置の欠陥データ隠しなど日本の大企業や経営者の品質劣化を感じた1年でしたが、皆様にはどのような年でしたでしょうか。畑の便り、今年は今週が最後となります。よいお年をお迎えください。



ネタ元
農業情報研究所 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html
食品安全委員会http://www.fsc.go.jp/のプリオン専門部会の資料
農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/ 
米国食肉輸出連合会 http://www.americanmeat.jp/


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