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米国産牛肉、検査・査察強化だけでなく、条件全体の見直しを 2006-05 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №06-05 2006年1月31日小針店で印刷・配布の再録です。



米国産牛肉、
検査・査察強化だけでなく、
条件全体の見直しを


 23日、カナダで4頭目のBSE陽性牛が発見されました。約6歳の2000年前後の生まれた牛です。カナダもアメリカも97年7月から現行の飼料規制、肉骨粉などは牛に与えない規制を行っています。規制から2年以上経ってから生まれた牛です。カナダ当局は感染源は規制以前に製造された肉骨粉入りの飼料が疑わしいとしていますが、2年以上も前に製造された飼料を食べる可能性は??


カナダそして米国の飼料規制は、新たなBSE感染・発生を防いでいないのです。日本の食品安全委員会は、この2000年にカナダでは100万頭当たり10~12頭が新たにBSE感染と推計しています。今回、BSEの症候が進んだためにと殺され検査された牛は、その中の1頭でしょう。米国はこの当時カナダから毎年100万頭余りの牛、生きた牛を輸入していました。その牛の中にも、当然BSE感染牛がいたはずです。その大半は、と畜され肉骨粉にされているでしょう。それで、どれ位のBSEが米国で発生しているのでしょうか?

日本のBSEは、感染牛1~2頭分のプリオンが原因と見られています。日本は96年から牛への給餌は行政指導で禁止していましたが、ご存知のようにBSE感染が起きています。米国・カナダの飼料規制は当時の日本と同じです。23日の4頭目でも分かるように新たな感染を防げない。ところが、食品安全委員会はカナダから米国へ輸出された牛、肉骨粉などによる米国へのプリオン侵入は、「米国の汚染に影響を与えたとは考えにくい」。この脳天気な判断をもとに、脊柱など特定危険部位SRMを除去するなどの輸出条件を守られた牛肉は安全という結論を出しています。

20日の米国産背骨付き肉事件は、その輸出条件でさえ、米国は守らない、守れないということです。この件が26日の国会で論議されましたが、その内容は「目くそ、鼻くそを笑う」でした。

台湾、韓国の再開条件では、骨付き肉、背骨付だけでなく骨付き肉全部が禁止品目です。国際基準のOIE規約どおりに輸入するのは骨なし肉、脱骨・除骨された肉だけです。日本の輸入再開条件が、このOIE規約をないがしろにした条件だったため今回骨付き肉が輸入されようとしました。国会での野党の議論はこの点を突いていません。

もっとも野党の対策法2法案もその点は同じ。OIE規約を最低限として日本独自の上乗せ規制を盛るものではなくOIE規約を事実上無視しています。仮に現野党が政権を獲っていたとしても、今回の事件は防げなかった。野党の対策もSRM除去などを守らせる方策の強化、「今後は日本の査察を受けた施設に限って輸入を再開する」という24日の自民党の動植物検疫・消費安全小委員会と同じ方向での対策しかでてこないでしょう。


政局的にはどうなるかは知りませんが、このままでは野党の追求は竜頭蛇尾、お釈迦様(自民党)の掌のなかの孫悟空。

1月6日に輸出許可を得た業者が20日の1回目には違反発覚。業者も許可を出した米農務省にも再開条件を遵守する気もなければ、守らせる気がないか、その能力がないのは明白です。また、SRM除去をしていない米国国内向けと輸出用の除去済みが混在している中では、ケアレスミスでも同様のことが起きるでしょう。SRM除去が不完全でも牛が健康であれば何の問題もありません。結局、牛のBSE感染を防いでいく対策を米国に採らせることが肝心です。


日本側が背骨付き肉を注文??
写真には脊髄まで残っている
日本と韓国・台湾の違いは
野党も与党も同じ枠組み、輸入条件の枠組み全体の見直しを





日本側が背骨付き肉を注文??


 日本シイベルヘグナー社がニューヨーク州にあるアトランティック・ヴィール(子牛)&ラム社から輸入したヴィール(子牛)の骨付き肉41箱(約390kg)のうちの3箱(約55kg)です。アトランティック社が、グループ会社のゴールデン・ヴィール社(オハイオ州)から子牛の部分ブロック肉を仕入れて、皮下脂肪や筋など除いて整形加工した骨付き肉です。日本シイベルヘグナー社は、フランス料理でよく使われる子牛肉やフォン・ド・ボーを新たに商うために輸入したものです。フォン・ド・ボー自体は牛肉加工品で輸入できませんから、原料の骨付き子牛肉が必要となります。シーファー駐日米大使によれば米国捜査当局の調べでは、日本シイベルヘグナー社は背骨付きの子牛肉や羊肉を意味する「ホテル・ラック(Hotel Rack)」と呼ばれる注文書で発注しました。現時点で輸入側と輸出側が単に規制を無視しただけなのか、あるいは意図的なもの(犯罪)なのかは不明と大使は述べています。(日本経済新聞1月27日)




 成田に到着したのは、ロイントリムドとホテル・ラック7本リブです。ロイントリムドはロイン、つまりロースやサーロインの部位で皮下脂肪除去などの整形(トリム)された骨付き固まり肉です。ホテル・ラックは、背骨つきで「仔牛のローストにはホテルラックのリブ7本入りが最も高級メニューになる。米国の大体の規格で約5キロぐらいのブロックになるので、一枚づつのメニューにするか、パーティー専用メニューにするか、あるいはブロックのまま客席に持っていって、その場でカービング(切り分け)をする」のだそうです。



 




 


写真には脊髄まで残っている


 肉にはその中を通る末梢神経を除けば病原体プリオンが蓄積するところはありません。骨自体にもプリオンは蓄積しません。危険性が高いのは脳や脊髄などプリオンが多くたまる部位、特定危険部位SRMです。SRMをそのまま食べることを除けば、食肉で問題となるのは、Tボーンステーキやリブ肉など、切り取られた牛肉の一部に脊柱が付いた状態で食べられること、ひき肉の原料にSRMが混じること、解体、食肉への切り分けの際のSRM汚染です。

 背骨も骨は問題ありません。その中にある脊髄や脊柱「背根神経節(はいこんしんけいせつ)」が危ない部位SRMです。背根神経節は背骨の中を通過するせき髄から分枝した神経が、背骨から出る前につくる膨らみをいいます。脊髄は、牛を背骨で二分して枝肉にする際にと畜場で取り除けます。その時に脊髄で肉が汚染されないかが問題です。

 背骨は枝肉を支える役割がありますが中に脊柱(背根神経節)が残っています。背根神経節は1頭あたり32対、64個もあり、と畜場で注意深く除去を試みても6~8割程度しか除去できませんでした。したがって、食肉加工場など、枝肉から食肉を分離する場所で、脊骨を除去する除骨の作業時に取るしかありません。除かれる背骨に含まれるように切り離すことと、間違って神経節を切断し食肉を汚染しないよう分離します。背骨ぎりぎりで肉をとろうとすると背骨から引き出されて食肉に含まれたり、切断しますから、カナダは1インチ離れた所、その分背骨に肉を残して切るよう指導しています。





 米国では今回のような30ヶ月齢以下の牛では脊髄も脊柱「背根神経節」は除きません。輸出用牛肉で必要となりますが、普段の国内向けはしていません。ゴールデン・ヴィール社は、と畜し枝肉にして部分ブロック肉にするまで、脊髄の除去と脊柱「背根神経節」除去は、これまでやったことがありません。今回が初めて。1月6日に輸出許可を得ていますから、作業員、検査員は輸出向けには除去が必要なこととその方法技能の習得が必要です。しかし農務省の検査員すらそのことを知りませんでした。

 したがって、と畜、枝肉にする際に脊髄が除去されていません。枝肉は細菌汚染予防のために2回は洗浄することになっていますから、その際に流れ出して肉を汚染します。今回の違反の肉の写真が公開されています。箱の中に肉がある写真では、上にある肉の椎間板の白い板が挟まっている背骨、その下の脊柱管に白いひも状の脊髄がはっきりと、箱の外に肉が置かれた写真では、脊柱管には痕跡状態で残っています。






 枝肉から部分ブロック肉を切り出し過程での背骨を外す際に脊柱「背根神経節」除去をしていません。今回の背骨がないロイントリムドでも、背骨を外す際に脊柱「背根神経節」除去、1インチ分背骨に肉を残す不経済な事はしていません。当然、食肉側に背根神経節が残っていたり、不適切な切断で汚染されたと考えられます。そしてそれは、成田空港での検疫の目視検査では見つかっていません。わずか数ミリ、1gに満たない神経の球の背根神経節、固まり肉の表面にでていなければ分かりません。破壊による肉の汚染は目でわかる物でしょうか??
ところが、同じように汚染されている可能性のある米国産部分牛肉570トンあまりを、輸入業者が目視点検して安全を確認することを1月23日に厚労省は求めています。プロの検疫官でさえ出来ないことを輸入業者が出来ると思っているのでしょうか?回収・廃棄・米国に返品しかないでしょう。





日本と韓国・台湾の違いは


 OIE規約では骨なし肉、脱骨・除骨され①30ヶ月齢以下②と畜前と後に検分を受けている③定められたと殺方法で④特定危険部位(SRM)を汚染を起こさない方法で除去されている牛肉は、輸出国のBSE発生状況や飼料規制などと無関係に貿易できる品目です。骨付き肉は、内臓、ひき肉などと同じく、輸出国のBSE発生状況や飼料規制などのBSEステータスで交易条件が変わる品目です。

 米国は昨年、自国で生まれた牛でBSEが検出されていますから、最低(BSEリスク不明国)か中間(リスク管理国)です。中間と証明できなければ、最低評価です。そうなると骨付き肉などは、どれだけいるかも分からない感染牛を排除するために一頭一頭の牛ごとに「肉骨粉と獣脂かすを食べなかった」「BSEと疑われないか、確認されない」などを輸出国が証明した牛で、SRMが汚染が起きない方法で除去されていなければなりません。事実上不可能です。中間評価なら骨なし肉と同じ条件です。

 米国は自国が中間(リスク管理国)との自己証明をまだ出していません。韓国、台湾は輸入禁止にしました。最低と表立って評価せずに米国のメンツを立て、かつ自国民を守る実を取ったのです。焼肉の国・韓国では、BSE発生で輸入を禁止する前、韓国が輸入していた米国産牛肉の57%が骨付き肉でしたから、再開を望む声が大きかったのですが禁止しているのです。日本は、小泉政府は逆です。米国に頼まれもしないのに骨なし肉と同じ条件、つまり中間(リスク管理国)待遇と大甘です。その結果、骨付き肉の輸入が試みられたのです。





野党も与党も同じ枠組み、輸入条件の枠組み全体の見直しを


野党のBSE対策も、この点は小泉政府と変わりません。野党は昨年10月にBSE対策2法案を発表しています。一つは、問題が起きたときに回収を容易にするために輸入牛肉にトレサビリテーを課すものですから、無関係です。もう一つの輸出国についてBSEの発生するおそれの程度を評価して輸入条件を決める事が、野党の安全確保策です。それは、BSE発生国とBSE発生のおそれが相当程度ある国を指定し、指定された国からの牛肉などには①国産牛と同等の検査(現在、21ヶ月齢以上の牛はBSE検査)②特定危険部位SRMの除去が行われた証明を求めることとなっています。つまり、BSE発生国のカナダ・米国の輸入条件は現在の小泉政府と変わりません。野党案どおりに法律が改正されていても今回の事態は予防できません。この枠組みでは、検査、査察強化ぐらいしか対応策がありません。

輸入条件の枠組み全体の見直しを


検査や査察強化策で背骨が混じることはなくなるかもしれませんが、背根神経節の確実な除去は??でかつ検疫で点検できるとは思えません。SRMの確実な除去を「前提」としなければ、飼料規制で牛のBSE感染を防ぐことが肝要です。台湾は、米国牛肉の安全性を確保するために、米国のBSEステータスについて米国当局とコミュニケーションを継続するそうです。ステータス評価には飼料規制が重要項目ですから、それが議題となり、改善が話し合いが期待できます。日米の貿易条件の見直し条項を発動し、輸入は骨なし肉だけに限り、骨付き肉、内蔵肉は米国のBSEステータスで合意が得られるまで貿易凍結。当分は、査察検査強化でしのぎ、ステータスをめぐる交渉の中で、内蔵肉などの輸入という人参をぶら下げて、牛のBSE感染を防いでいく飼料対策を米国に求めていくのはどうでしょうか??


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米国産子牛の骨付き肉で、米国産牛肉、再度輸入禁止 2006-04 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №06-04 2006年1月24日小針店で印刷・配布の再録です。



子牛の骨付き肉で、米国産牛肉、再度輸入禁止、
これを機会にBSE対策の骨抜きを図る米国


 米国産牛肉が20日再び輸入禁止になりました。これを奇貨に米国は日本のBSE(狂牛病、牛海綿状脳症)対策の特定危険部位SRMの全頭での除去措置の緩和を策動しています。これを避けるためには、日本が遵守状況を「査察」した施設から、順次、輸入再開をすべきです。
BSEの感染源プリオンが蓄積しやすい脊柱や脳などの部位を特定危険部位SRMといいます。これをどれだけ食べれば蓄積したプリオンで人にBSE感染が起こるかは、科学的には不明です。それで国内では全頭から除去し焼却処分しています。国際基準のOIE規約でも日本が提唱して貿易する牛肉は、SRM除去が条件となっていますし、米国からの輸入条件としてSRM除去を義務付けています。

成田空港で、米国産子牛の骨付き肉で見つかるまで
想定外の火事で混じった??
SRM除去も目の上のたんこぶ
日本の「査察」に合格した施設から順次、輸入再開





成田空港で、米国産子牛の
骨付き肉で見つかるまで


 成田空港で米国産牛肉を20日午前に検査、「ロットごとに(10箱で1箱の割合で)箱を空けて調べていたが、問題の3箱はロット番号が異なるため全て調べていた。」そこに除去されているはずのSRM、脊柱(せきちゅう・背骨)が残存している子牛の骨付き肉が見つかったのです。日本シイベルヘグナー社がニューヨーク州にあるアトランティック・ヴィール(子牛)&ラム社から輸入したヴィール(子牛)の骨付き肉41箱(約390kg)のうちの3箱(約55kg)で、中心部に太く横に一直線に背骨と脊柱の残存が目視で確認できる状態でした。



 
 米国では国内向けの30ヵ月齢以下の牛では脊柱など特定危険部位SRMの除去をしなくてもOKです。この除去されていない米国内向けが日本向けに紛れ込んだ可能性、牛肉処理施設の訓練不足、検査官のチェックミスなど様々な原因が考えらます。

 ジョハンズ米農務長官は、担当の検査官、輸出元の処理施設が「日本向け牛肉から脊柱を除去する必要があることを認識していなかった」ためとしています。長官の見解なら、残りの38箱分も目視でも残存しているはずですが、そうではありませんでした。読売新聞は社説で「米国では、食肉処理に当たる作業員の技術が一定せず、危険部位の除去が完全に行われるかなどについて、疑問視する声が根強かった。今回、その懸念が当たった形だ。」と指摘しています。しかし、今回の食肉会社は総従業員180人程度です。事務員などを除けば食肉処理作業員はもっと限られますから、ロット番号が違う3箱全てから目視で見つかるくらい技量が低いのなら38箱からも見つかるはずです。

 輸出処理元の会社の輸出許可は1月6日に、Fabricatorでおりています。これは、枝肉から部位別にロースとかモモとかの部分肉を切り分け包装する作業です。と畜、解体の工程は、Slaughtererといわれます。米国ではこの二つの工程を同じ施設が行うことが主流です。日本では別で、と畜、解体しをSRM除去し枝肉にするまでは、と畜場。食肉会社は、枝肉を仕入れて部分肉に切り分けパックして販売しています。食肉会社は残った脊柱のSRM除去をします。

 今回の子牛肉では、輸出元は日本の食肉会社と同じで枝肉を仕入れてきます。米国では国内向けの30ヵ月齢以下の牛ではSRM除去されていません。牛肉大国・米国でも、ヴィール(子牛)の生産農家は約900軒、子牛肉の処理・加工を行うパッカーが20社。SRM除去など輸出プログラムを実施し許可を得てヴィール(子牛)の除去枝肉を供給できると畜業者は、許可リストではGolden Veal Corporation(オハイオ州)です。この輸出許可も1月6日付けです。

また輸入元の日本シイベルヘグナー社は、スイスの機械時計や精密計測器などを扱うスイス系資本の商社で、食品も扱っていますが、HPを見る限り食肉部門はありません。今回もサンプルでの輸入です。その試しの輸入を、6日に輸出許可が下りたばかりのアトランティック・ヴィール&ラム社に発注し、アトランティック社はこれまた許可を得たばかりのゴールデン・ヴィール社からSRM除去の子牛枝肉を調達して、20日成田着で輸出したのです。一見、眉唾にみえますが、垂直統合インテグレートといい、事前に話をすすめ統合する形は畜産の世界では良くあることなのです。

 日本シイベルヘグナー社はMore Than Gourmet社と共同で第31回国際食品・飲料展(FOODEX JAPAN 2006)(2006年3月14~17日)に参加を予定しておりリストでは、会場が「フードサービス向け」、出展製品に「仔牛肉、フォンドヴォー」です。フォン・ド・ヴォーは、一般的に仔牛の肉や骨、野菜、トマトなどを原料として、時間をかけて煮込んで作られるフランス料理には欠かせない仔牛の出し汁です。骨付き肉を輸入したわけですね。

 More Than Gourmet社は、1983年に米国で設立されたフランス料理の食材(業務用)を扱う会社です。日本シイベルヘグナー社はMore Than Gourmet社の日本代理店という関係です。More Than Gourmet社と今回の出荷元Atlantic Veal & Lamb社は、2004年8月から共同でヴィール(子牛)肉の高級ブランドの製造、販売を行っています。サンプル出荷は今回の出荷元Atlantic Veal & Lambの担当。More Than Gourmet社を軸につながっていたのです。





想定外の火事で混じった??


 この垂直統合にひびが入ったのは現地時間12日の朝。ゴールデン・ヴィール社が火事になったのです。現在休業中で、20日付の許可リストから削られていますから復旧の目処がないのです。SRM除去の子牛枝肉の供給が止まりました。火事までに作られたSRM除去の子牛枝肉を処理した物が38箱。これで不足だったからなのか余り物を押し込んだのか、単に取り違えたのか、その理由は分かりませんがあと3箱、手近にあった米国内向けのSRMが除去されていない枝肉からの骨付き肉、目視でも残存が分かる物を加えたのです。アトランティック社では従業員も駐在する検査官も何の注意も払わなかったのです。テレビのニュースでは、インタヴューに作業員が、除去について「そんなことは何も上司から聞かされてないよ。あんた(記者)に聞いて初めて知ったよ」と言ってました。つまり38箱もSRM除去の子牛枝肉をつかっため目視ではわかりませんが、小分け作業(fablication)過程での脊柱除去はされていません。

 米国では国内向けの30ヵ月齢以下の牛では特定危険部位SRMの除去は義務ではありません。しかし日本、メキシコ、カナダなど輸出向けには除去が必要です。米国の牛肉市場には2種類の枝肉、肉が混在しています。同じ施設で混在していれば、取り違い見間違いで今回のような事が起きるのは火を見るより明らかです。単純なだけに根絶が難しいミスです。

 


 





SRM除去も目の上のたんこぶ


 それでは、米国内向けもふくめ全部、全頭SRM除去してはどうでしょうか。畜産業界は費用増大を理由に反対しています。米国政府は30ヶ月齢以下では脳や脊髄、脊柱などは食べて安全、特定危険部位SRMに指定しない、神経質な顧客、日本などの要求で除去しているだけ。今回は約束を守れなくて御免なさいと言っています。この立場では、必要がないのに米国内の牛肉価格上昇につながる全頭除去は出来ません。

 輸出する施設にはSRM除去の枝肉、牛肉しか扱わせないというのはどうでしょうか。大手パッカーの処理施設では、既にカナダ、メキシコ輸出で、そうしていたところもあり、日本が「査察」したのはそうした11施設です。しかし、そうすると以前のような日米牛肉貿易はできません。

 米国でBSE発生前は、米国の牛肉総生産量の約10%が輸出され、日本は約4.5%でした。しかし、部位別には日本はヒレの約3.9%、肩ロースは約17%、牛丼のショートプレートというわき腹のバラ肉では62%、牛タン(舌)で69%です。以前のような牛肉貿易をするには事実上全頭でSRM除去が必要で、これは米国では不可です。

 国際基準のOIE規約に貿易する牛肉に関して日本が提唱して二つの条項が昨年加えられました。「と畜前後の検分」と「SRM除去」です。米国の国内規制では、どちらも一部しか行われていませんから、米国にとっては目の上のたんこぶです。米国は「と畜前後の検分」は20ヶ月齢以下という条件が付きましたが有名無実化しました。のこるは、「SRM除去」の無効化です。

 その機会を虎視眈々と狙っていたところに起きたのが今回の件です。出荷元は「生後4ヵ月半(18週齢)以下の子牛と推定される」としています。自分のところでと畜、解体していないし、と畜元が火事で記録もなくなっているから推測estimateでしかありませんが、ヴィール(子牛)は18週から20週齢まで人工乳肥育の牛、長くて9ヶ月齢ですから概ねこんな月齢でしょう。

 これまでの研究から、BSE発症は濃厚汚染・感染を受けた場合でも13ヶ月齢と推定されていますから、この生後4ヵ月半(18週齢)では誕生直後に感染していても、SRMにプリオンの蓄積はほとんどなかった、安全と考えられます。

 しかし米国食肉業界は、この子牛肉は安全から30ヶ月齢以下のSRM付きも安全に話を拡大。100万頭・肉9万トンのヴィール(子牛)から930万トン・2200万頭の30ヶ月齢以下まで話を広げて安全を誇張し、日本の対応を非難しています。米農務長官は、「米国の規制の下では(30ヶ月以下の牛のものだから)日本に輸出された背骨あるいは脊柱は(BSE感染を起こす)特定危険部位ではありません。」これでは安全なものを何故日本人は受け入れないのか、米国民は理解できないでしょう。

 「日本政府は、アメリカの牛肉を、世界で一番安全なものとしている・・科学的標準(30ヶ月齢以下は脳や脊髄なども安全、除去は不要)を受け入れる用意があるかどうかの決断をする必要がある。もし、日本政府が、更なるアメリカ牛肉輸入禁止措置を続けるのであれば、経済制裁に向けての働く用意がある。(Musgrave下院議員)」

 これを日本政府が認めるのなら、OIE規約の貿易牛肉は30ヶ月齢以下でSRM除去された骨なし肉という条項は名存実亡。日本国内規制にも跳ね返って、SRM付きの国産牛肉が出回るでしょう。





日本の「査察」に合格した
施設から順次、輸入再開


そもそもは作業員、検査官が輸出条件・プログラムを理解していない施設に、米国農務省が輸出許可を与えたことです。米農務省は全米の検査官の再研修や施設の追加検査などを言っていますが、1ヶ月後に再研修・検査をしなければならないほど、杜撰な輸出許可交付なのです。

 日本の農水省や厚労省は年末に米国の施設査察を行っています。しかし今回のように「査察」を受けていない施設からの輸出も受け入れています。両省は、日本の査察は輸出許可を与えるものではなく確認に過ぎない、輸出入の一般ルール上、条件順守の責任を持つのは輸出国で、日本が直接米国の許認可は出来ない、受け入れ拒否はできないと説明しています。日本からの米国に輸出する牛肉の処理施設は厚生労働省が認定しています。輸出入のルールは同じですが、米国は日本任せにはしません。輸出開始前に米国係官による厳しい「査察」を行っています。

 日本も同様にして再研修や施設の追加検査などの「査察」をし査察を終了した施設から順次、輸入再開すれば良いのです。成文化されたルール上は権限はないにもかかわらず、米国は運用上、実質的に行使しています。日本も同じ状況を作り出せばよいのではないでしょうか。

 本当に大事なのは、新たなBSE感染を予防する飼料規制の強化と、それを検証するサーベイランスの強化です。安全委も答申で農水省などに対米交渉を求めています。新たなBSE感染がなくなれば、日本人だけでなく米国人もより安全・安心な米国産牛肉を食べれるのですから何の遠慮がいるのでしょう。即効性はないで、その間は査察強化で乗り切ってはどうでしょうか。 


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輸入、血液製剤から、BSEに感染する恐れは? 2005-49 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-49 2005年11月29日発行の再録です。



輸入、血液製剤から、
BSEに感染する恐れは?


29日(火)に、米国産牛肉の輸入再開に関する国民の意見募集が締め切られました。(虹屋の応募意見)焦点は米国産牛肉の安全性、BSE(狂牛病・牛海綿脳症)に関する安全性です。これは、日本が米国から大量に輸入している血液製剤の安全性に関わります。

BSEは血液で人→人感染
BSE対策の基本は飼料規制で発生を絶つ
米国で多発する人の海綿脳症 CJD
米国へのBSEの侵入を過小に見積もっている
不十分な米国の感染拡大ルート検討
解消されない不安、米国の調査結果





BSEは血液で人→人


 BSEが人に拡がるルートは二つあります。一つは、BSE牛を食べるルートです。もう一つは、感染した人、異型クロイツフェルトヤコブ病vCJDになった人からの輸血、血液製剤、臓器移植などです。残念ながら、血液検査でvCJDを調べられません。エイズHIVや肝炎は、血液検査で検出し、排除してます。潜伏期のvCJDはできません。日本やどの国でも、BSEが多発した時期に英国に滞在した人からの献血は断っています、受け付けていません。

 日本は米国から大量の血液製剤を輸入しています。米国のBSE対策に穴が開いていて、BSEが米国人に広がっていると、米国人の血液から作られた血液製剤で日本に持ち込まれる可能性があります。血友病HIVの二の舞をする可能性があります。

 米国産の血液製剤のBSE安全性は、米国産牛肉の基本的な安全性の確保が大前提です。牛肉輸入再開は、その上に様々な条件を付けると日本産牛肉と同じ水準の安全性が確保できるか、が問題の焦点です。大前提の米国産牛肉の基本的な安全性に疑問符がつくのなら、輸入牛肉、血液製剤の安全性も疑わしくなります。





BSE対策の基本は
飼料規制で発生を絶つ


 BSE対策は、大きく3種類あります。一つは、飼料を規制してBSEが牛に広がらないようにする発生源対策です。一つは、BSE検査で検出できる陽性牛を摘発し排除する策です。最後は、病原のプリオンのほとんどが蓄積している特定危険部位SRMをと畜、解体の際に取り除いてしまうことです。

 この3つのうち、一番大切なのは飼料規制です。仮に1頭もBSE牛がいなければ、検査も特定危険部位SRM除去も不要です。逆に、BSE牛が多数なら、どうでしょうか。1980年代後半の英国では高齢の牛で多数検出され、とうとう高齢牛は、検査もせずに全頭を焼却場に直送してました。検査は見逃しがあるし、SRM除去は取り残しや食肉付着が起こるからです。





米国で多発する人の
海綿脳症 CJD


また、中西氏は「米国からの輸入牛肉で、日本に100年に1人の変異型クロイツフェルトヤコブ病vCJDの患者が出るリスクがあったとしよう。とすれば、牛肉の消費が日本よりはるかに多い米国では小さく見ても、2000年代初頭から始まる100年間に1000人強の患者が出るはずである。もちろん、こんなこと起きてはいない。申し訳ないような気もするが、米国人が食べていることは、1000倍以上の検出力で試験してもらっているようなものなのである。」

 中西先生は、アイダホ州の7人(8人?)クロイツフェルトヤコブ病CJD発症の件はご存知でしょうか。アイダホ州は人口やこれまでの発症件数から、年間1~2人発症が普通で、現在のところ5人ほど過剰発症している。それに米国で弧発性の原因不明のCJDが増えて、CJD患者の急増、3倍以上は良く知られた事実です。(死後の解剖検査までvCJDと確定できないが、剖検される例が少ない。)中西先生はこれらの事実をご存知でしょうか?彼らの血液から製剤が作られていたら?





専門部会の審議には
大きく3つの問題
一つは、
米国へのBSEの侵入を
過小に見積り


さて、食品安全委員会の専門部会の審議には大きく3つの問題があります。

 一つは、米国へのBSEの侵入を過小に見積もっていることです。日本のBSEの大元は、英国などからの生体牛(日本でと畜され、作られた肉骨粉での拡大)と肉骨粉、イエローグリースという肉骨粉を含んだ牛脂が挙げられ、その中に1~2頭の感染牛がいてそれが日本のBSEの大元とされています。

 米国でのBSE陽性1例目は、カナダ生まれの乳牛です。これを含め、カナダ産牛からは4頭のBSE牛が摘発されています。安全委は、カナダのBSEは1990 年代から増加し、(97年夏)規制前に生まれた牛群で最大となり、100 万頭当たりでBSE牛20 ~ 24 頭、規制後に生まれた牛群では緩やかに減少し2000年で10~12頭、2004 年では、5~6頭、と評価しています。

 米国は、90年から2003年5月のカナダでのBSE牛発生時点まで約1300万頭輸入しています。(肉骨粉では約350万頭~約620万頭分、動物性油脂で約560万頭分。)このなかのBSE牛が、2003年暮れに摘発された米国でのBSE陽性1例目だけと考えるのは馬鹿げています。しかし、安全委の答申案は「カナダからの侵入リスクは、米国の汚染に影響を与えたとは考えにくいので、現時点では考慮しない」。





不十分な
米国の感染拡大
ルート検討


第二の問題点は、米国での肉骨粉を含んだ牛脂イエローグリースでの感染拡大を見落としていることです。幼弱齢の牛は、10倍はBSEに感染しやすいのですが、幼弱齢の牛に与えられる牛用粉ミルク、人工乳・代用乳にこの牛脂が使われています。

 米国ではプリオンを大量に含む特定危険部位SRMも肉骨粉やイエローグリース製造の原料とされています。肉骨粉は、鶏や豚など牛以外の家畜やペットフードに使用が許されており、製造や給餌の際の交差汚染によるBSE汚染を安全委は指摘しています。イエローグリースは、自由に使えます、牛にも与えられています。その上、不純物≒肉骨粉の規制もありません。日本でのBSE解明の際には、この牛脂も取り上げているのに、今回の審議では、口を閉ざしています。

 米国では肉骨粉2%前後のイエローグリースが良く使われるといわれています。米国でのレンダリング(肉骨粉・イエローグリース製造)での真空処理法でのBSE牛1頭のイエローグリースには約30頭の新たな感染をおこす力(感染価)、連続処理/脂肪不添加法なら約3頭が見込まれます。

 先の肉骨粉での交差汚染やこのイエローグリース給餌を考えれば、米国の97年飼料規制でBSEの爆発的拡大は防げているでしょうが、現在、規制前に生まれた牛群で最大となったBSE曝露・感染が定常状態にあるのか、増加、減少しているのか、そのテンポは、実態調査の結果でしか分かりません。





解消されない不安、
米国の調査結果


第三の問題は、この実態調査、米国が04年6月から行っている拡大サーベランスが、杜撰で結果が当てにならない。BSE検査法の感度が悪く見逃していた可能性があることと、検査された牛が適切なものか不明なのです。

 米国提供資料では、死亡牛の一部とと畜場につれてこられたが歩行困難などで排除された病牛・廃棄牛全てが検査対象です。しかし実際には病牛・廃棄牛の20%ほどです。と畜場の検査員、獣医の目の前に牛はいるのに試料採取できないはずがありません。日本側に公表されていない検査対象の選別基準があるのです。死亡牛は「どうやって補足しているのかよくわからないところもございます。」(農水省・衛生管理課長)

 このように米国のBSE汚染は、規制面などをみると大いに不安があり、調査では解消されないのです。米国民はその牛肉を食べています。彼らの健康状態は先に述べたとおり。

 このまま日本の専門家が米国産牛肉に安全というお墨付きを与え、日米でBSEリスクに差が少ないとして輸入再開して良いのでしょうか??


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駐米大使、11月のブッシュ大統領の京都土産は、牛肉輸入再開と言明 2005-40 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-45 2005年10月31日小針店で印刷・配布の再録です。



駐米大使、11月の
ブッシュ大統領の京都土産は、
牛肉輸入再開と言明


 加藤駐米大使は、先週の火曜日10月25日にBen Nelsonアメリカ上院議員に「来週、日本では、日米の牛肉のリスクを比較し、アメリカの牛肉のリスクは、非常に小さいとの結論を考えている。」「1週間のパブリックコメントの後に、11月中旬の小泉・ブッシュ会談で、牛肉輸入再開の結論をだす。」「この決定を市民に知らしめるには、4週間かかる」と書簡と口頭で伝えたそうです。月曜日24日には、食品安全委員会のプリオン専門部会は、そうした結論に達しませんでした。それでも日本を代表する立場の大使の発言ですから、本国政府、外務省や首相官邸筋からの示唆があってのものでしょう。

 そして、この31日に食品安全委員会の狂牛病に関わるプリオン専門部会が開かれます。この畑の便りが出る頃には官邸筋の思惑通りの結論が出ているかもしれませんが、24日の専門部会の論議を見るとそう簡単に官邸の思惑に沿った結論が出るとは思えません。


24日の食品安全委員会の専門部会で答申(案)が認められなかったわけ
甲斐知恵子委員の反対意見
横山委員の反対意見
山内委員、金子委員の反対意見





24日の食品安全委員会の
専門部会で答申(案)が
認められなかったわけ


 24日の会合で結論が出なかった理由は次にように報道されています。

★ 内閣府・食品安全委員会のプリオン専門調査会(座長=吉川泰弘・東大大学院教授)は24日、政府が諮問している米国・カナダ産牛肉の輸入について、生後20か月以下の牛に限って再開を容認する答申原案を提示した。

 同調査会は今月末に開く次回の審議で答申案をまとめる。食品安全委は4週間の意見公募を行い、12月にも政府に答申する方向で、政府は12月中にも輸入再開に踏み切る見通しだ。 食品安全委は、「特定危険部位(SRM)を取り除いた、生後20か月以下の牛肉を検査なしで輸入する」とした2004年10月の日米両政府の基本合意に基づいて、今年5月、米・カナダ産牛肉の安全性が国産牛肉と同等かどうかの諮問を政府から受け、プリオン専門調査会に科学的な検証を委ねていた。

 調査会は、米国内のBSE(牛海綿状脳症)の汚染状況や病原体をエサに混入させないための飼料規制の実態などを検証し、安全性を評価した。その結果、輸出条件が守られることを前提に比較した場合、「日本で処理される牛の食肉・内臓と米・カナダのそれとのリスクの差は非常に小さい」と結論づけた。

 ただ、一部の委員からは、米国の食肉処理現場でSRMの除去がきちんと監視されているか不明であるとして、「リスクが同等とはみなせない」との意見も出された。このため、答申案の正式決定は次回の審議に持ち越したが、委員の多数に大きな異論がないため、おおむね原案に沿った内容で決着する見通しだ。

 原案は、輸入再開の安全性を懸念する意見にも配慮して、再開後、米国がSRMの除去などの対策を守らないなどの場合には、「いったん輸入をストップすることも必要」とした。米国の順守状況は、厚生労働省と農林水産省がチェックするよう求めている。

 【プリオン専門調査会が提示した答申原案の骨子】
 ▽国産牛の食肉・内臓と、脊髄(せきずい)などのSRM(特定危険部位)を取り除いた生後20か月以下の米国・カナダ牛の食肉・内臓のリスクの差は極めて小さい
 ▽米・カナダのBSE(牛海綿状脳症)汚染状況を把握し、適切に管理するため、継続的な調査監視が必要
 ▽BSE拡大を防ぐには、SRMの飼料利用禁止が必要
 ▽SRM除去は、食肉処理場での監視の実態が不透明で、国産牛とリスクが同等とは見なしがたいため、科学的検証などが必要
 ▽輸出条件の順守が十分でない場合、いったん輸入停止することも必要
(読売新聞) - 10月25日
 これは正確ではありません。

 専門部会の委員は実質11人です。24日には3人が欠席され、3人とも「リスクの差は非常に小さい」との答申案に反対の意見を文書で出されました。出席した金子座長代理も、「日米同等かは不明」とする意見を文書で提出し、審議では「リスクの差は極めて小さいというなら理由を説明すべきだ」「条件をつけて科学的・公正な結論を出したといえるか」「委員がそろったところで審議すべきだ」とのべました。残りの7人の方の議論は、議事録が公表されていませんので分かりませんが、これまでの審議を見る限り1~2人は答申案には異議を表明されておかしくありません。この問題は、多数決で決める性質の問題ではありませんから、欠席した委員が出席したうえでコンセンサス(合意)をうるために審議をさらに継続することになったのです。





甲斐知恵子委員の
反対意見


 反対意見の根底には、甲斐知恵子専門委員(東大医科学研究所教授)の表明された懸念があります。甲斐委員の意見は特別な輸出条件規制を行なっても「常に米国内のBSE汚染度に影響を受ける危険性が伴う」と指摘し、米国・カナダの飼料の「規制によっては交差汚染などを十分防げないことは多くの事例から示されています。」「輸入解禁に対しては、全体の(BSE)汚染度が日本より高いことや、(輸出条件の)上乗せ規制が完全に行われるための具体的方策の明示が不十分であることから、調査委員会としては慎重にすべきという提言を行なうべきでしょう。」そうでなければ「どのような汚染国であっても、部分的規制を行なえば輸出入は可能になるという例をつくってしまうことになります。」

 答申案では、「現時点で20 ヶ月齢以下と考えられる2004年以後の生まれの牛の汚染は米国、カナダのほうが日本より数倍高いと予想される」とあります。それでも「リスクの差は非常に小さい」という結論は、日本の牛はと畜場で処理される全ての年齢の牛、米国・カナダ産は20 ヶ月齢以下の牛を比較しているからです。

 日本の牛は、飼料規制が徹底されず交差汚染のあった時代に生まれ育った、そういった飼料を食べたであろう牛群と2001年12月飼料完全規制によって肉骨粉などでの感染リスクが限りなくゼロになった飼料で飼育された牛群に分けられます。交差汚染のあった時代の飼料だけで飼育された牛群から2005年の時点で年間5~6頭前後のBSE陽性牛が摘発されています。後者の感染リスクが限りなくゼロになった牛群(10月現在で40ヶ月齢以下)からは一頭も発見されていません。

 つまり日本のBSE感染牛は交差汚染のあった時代の飼料で飼育された牛群からのみ摘発され、摘発淘汰で絶対数は年々減少します。この牛群は2005年末で飼育頭数の約4割で、2009年末にはほぼゼロとなります。この時点で、日本の国産牛でのBSE感染牛は限りなくゼロに近づきます。これに対して、米国もカナダも交差汚染による新たな感染牛が発生し続けます。日本の全年齢の牛でBSE感染牛が限りなくゼロになっても、米国・カナダでは新発生が続き感染牛がいるのです。

 仮に現時点では日米同等でも2年先、4年先には米国のほうがはるかにリスクが高くなります。現時点でも、日本の20ヶ月齢以下の牛では感染牛は限りなくゼロに近いのですが、米国・カナダ産の20 ヶ月齢以下の牛には交差汚染による感染牛がいます。 平成15年9月発行「 牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」P93  農水省の牛海綿状脳症(BSE)に関する技術検討会 BSE疫学検討チーム





横山委員の
反対意見


 また答申案では、米国カナダの20ヶ月齢以下の感染牛は、検出限界以下のプリオンしか蓄積としていないしています。横山隆委員(動物衛生研究所プリオン病研究センター長)は、「現在までのvCJDはBSEプリオンの感染が原因と考えられるが、低い感染量のBSEプリオンの病原性を無視しても良いか?・・感染を成立させることがあるとしたら、悪いことが起こるのは、数十年先(英国においても)であるといった危険性は考えられないか?」と、検出限界以下であれ多数のBSE感染牛を食べることへの懸念を指摘します。
 そして「日米の比較により、食肉加工場における対策は担保できても、BSEの根本的な対策は不十分であることが示されたと考える。とくに、上の1)は20ヶ月齢以下の牛の感染の可能性を示唆している。修正案のとおりの結論付けるのであれば、個々の点で認められた日米の差をどのように判定(評価)し、「リスクの差は極めて小さいと考えられる」との結論が得られたのかを説明する必要がある。」としています。つまり答申案の結論の出し方は不十分というのです。

 答申案では、日本の全月例での感染牛の割合を現在100万頭当たり5~6頭、カナダは20ヶ月齢以下(2004年2月以降生まれ)で5~6頭、米国の20ヶ月齢以下で2~3頭としています。(下の表)この数字だけ見れば、同等とか「リスクの差は極めて小さいと考えられる」といえなくもありません。
 資料3:米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉を摂取する場合と、わが国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性に係る評価(たたき台修正三次案)[PDF]27ページ

 日本のは全頭検査の結果で、実数です。米国とカナダは移入してきたBSE感染牛などの「侵入リスクによる汚染規模を輸入生体牛のリスクを重くみれば、米国が日本の約1.5~ 7倍以下と考えられ、カナダは約4 ~ 6 倍以下」と評価し、飼育規模差で補正した推測値です。「米国は・・侵入リスクでは100 万頭当たり約2~ 3 頭( 日本5 ~ 6 頭×約10 倍÷20:飼育規模)」。飼育規模はカナダが日本の約3倍で米国が約20倍。

 しかし、カナダは米国からの輸入牛、米国はカナダからの輸入を考慮していません。カナダは米国から毎年、約16,000~340,000頭を輸入していましたが、「米国からの侵入リスクは、カナダの汚染に影響を与えたとは考えにくいので現時点では考慮しない」

 米国は、カナダから80 年代( 1986~ 1989 年) が年間約16~ 60 万頭、90 年代は年間約100万頭を、2002年には169万頭、2003年5月のカナダでのBSE牛発生時点まで輸入しています。その中に米国の1例目BSE牛がいましたが「カナダからの侵入リスクは、カナダの汚染率を踏まえ判断することとし、現時点では考慮しない」としています。
しかし、1次答申案、2次案では、カナダの汚染率は出されていませんでしたが、この3次案では2004年時点での汚染率=感染率を100万頭当たり5~6頭としています。これで考慮しないのはおかしい。
 資料3:米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉を摂取する場合と、わが国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性に係る評価(たたき台修正三次案)[PDF]14ページ 


「米国・カナダともに国内での暴露は1990年代から増加し、(97年8月)規制前に生まれた牛群で最大となり、その後に生まれた牛群では緩やかに減少したと考えられる。欧州のデータ(3年で半減)をもとにすれば、2004 年生まれの牛群では最盛期の約1/4」と答申案はしていますから、それに従うとカナダの規制97年の時点では 100万頭当たり20 ~ 24頭、2000年で100万頭当たり10 ~ 14頭となります。2003年5月の輸入禁止までに、97年以降に生まれた感染牛が50~60頭はカナダから米国に侵入したと考えられます。

 日本のBSE感染の大本の火元のBSE感染牛は英国・欧州から輸入した33頭の乳牛ですが、そのなかの感染牛は0.85頭から1.45頭、最もありうる数が1.14頭と見込まれています。(平成15年9月発行、農水省の牛海綿状脳症(BSE)に関する技術検討会 BSE疫学検討チームの「 牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」)

 つまり、米国はカナダからの感染牛、97年以降に生まれた感染牛だけで日本の40倍~50倍の侵入リスクを受けています。

 これを先ほどの式に入れると 日本5 ~ 6 頭× 約(10+40)倍÷20:飼育規模となり、日本の現在の2倍以上の感染率となります。97年以前に生まれた感染牛は、入っていませんから、これを考慮するともっと大きな倍率になります。

 これが正しいというのではありません。「リスクの差は極めて小さい」という評価は極めて杜撰な推論で導き出されていて、科学的論理的な説明がありません。横山委員が指摘されるようの『「リスクの差は極めて小さいと考えられる」との結論が得られたのかを説明する必要がある。』のです。答申案は恣意的に書かれていると思わざるを得ないのです。





山内委員、金子委員
の反対意見


山内委員は「同等とは見なしがたい。」

金子委員が言われるようの『「同等とはみなしがたい」には、「同等ではない+同等かどうか不明」の両者を含みますが、現時点では「同等かどうかは不明である」、のほうが適切な表現ではないかと考えます。今回初めて同等かどうかの判断を示す文言が出たわけですが、ここは今回の答申の核心ですから、大いに議論すべきところと思います。』

 冒頭の加藤駐米大使の発言のように日本政府、外務省や官邸筋は31日の専門部会で、アメリカの牛肉のリスクは非常に小さいとの結論をえて「11月中旬の小泉・ブッシュ会談で、牛肉輸入再開の結論をだす。」と米国側に伝えています。この政治的圧力下で、専門家の方々は大いに議論されたでしょうか、その結果は、これを読まれる時点ではでていますが、皆さんが納得できるもでしたでしょうか??政府は科学者に無理やり同等と言わせるのではなく、小泉首相の政治決断でお土産(輸入再開)は揃えれば良いのです。

 
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米国産牛肉の輸入、年末に約2割分、来年のお盆前には全面的に再開?? 2005-43 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-43 2005年10月18日小針店で印刷・配布の再録です。



米国産牛肉の輸入、
年末に約2割分、
来年のお盆前には全面的に再開??


 この年末までには米国産牛肉の輸入が20ヶ月齢以下の牛限定で再開されると報道されてます。9月27日の畑の便りで予想した通りで残念です。米国大使館の農務担当公使は13日に、20ヶ月齢以下に輸出を限定することは日本向けの独特のもの、再開されたら30ヶ月齢未満まで拡大することを求めていくと発言してます。食品安全委員会の答申が案のままなら、来年夏には米国の求める全面的な貿易再開が可能です。

食品安全委員会の答申(案)は、
米国の主張を丸呑み


 今回の食品安全委員会の答申(案)は、米国の主張を丸呑みしています。米国は、BSE感染牛でも脳や脊髄などの特定危険部位SRMを除けば、安全で食用にできると主張しています。これに対し日本は、感染牛のあらゆる部位は食用にも、家畜の餌にもできないという方針。これは世界保健機関WHOの見解と同じです。

 日本は、まず肉骨粉飼料の完全禁止で感染牛の新たな発生を防ぎ、感染牛を減らすこと、次いでBSE検査で発見できる感染牛を摘発、排除すること、検査の技術的限界で摘発できない感染牛はSRM除去で対処する三段構えで、食肉の安全を図っています。

米国は、と畜場でのSRM除去や肉などへの付着防止に力をいれ、飼料規制やBSE検査など感染牛の減少や摘発除去はおざなりです。

 このため、BSE牛の新たな発生が防げません。牛への肉骨粉給餌禁止は日本は1996年4月から、米国は97年8月からです。日本では、この程度の規制ではBSE発生を防げませんでした。交差汚染という形で病原プリオン入り肉骨粉などが牛の口に入ったためです。それで2001年12月に肉骨粉を全て焼却し、牛だけでなく豚や鶏など全ての飼料で全面使用禁止しました。それ以前の飼料が全てなくなっただろう2002年6月以降に生まれた牛では、現在まで1頭もBSEは検出されていません。こうした牛が現在の飼育牛の約6割といわれてます。これに対し、米国は97年規制のままです。交差汚染が規制違反だけでなく、制度上も許容されている。病原プリオンを牛が摂取する合法的な抜け道があります。その点は食品安全委員会の答申(案)でも指摘しています。それでの交差汚染で新たなBSE牛が発生している。  平成15年9月発行「 牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」P93  農水省の牛海綿状脳症(BSE)に関する技術検討会 BSE疫学検討チーム

米国では新たなBSE牛の発生継続中=若齢牛に感染牛がいるのなら、日本流ならBSE検査で摘発しプリオンの蓄積量が少なく発見できない牛にはSRM除去です。それが出来ないのなら日本に輸出される牛肉には、制度的に交差汚染を受けた牛のものは除く措置が考えられます。9月12日の会合で、豚や鶏の牛の肉骨粉入り飼料での交差汚染を受ける可能性のある牛と、人工乳や代用乳でプリオン入り牛脂を摂取する可能性のある牛は、輸出から実質的に除かれているのではないかと論議され
「それができれば、評価は割合限定されて、分析は簡単にはなります」と吉川座長は応じています。


発生中の感染牛
の規模は??


 そういった交差汚染の可能性が特に高い牛が輸出されるなら交差感染の規模や程度を推定しなければ安全性は論議できません。感受性の高い幼若牛で感染機会が多ければ、若齢での感染牛が多く、プリオン蓄積量も多くなります。またBSE感染牛10頭からの肉骨粉などで、牛の飼料の肉骨粉を使用していた97年規制以前には、感染が新たに起きていた数を、仮に50頭とします。97年の直接給餌の禁止で、10頭に減れば総感染数は増えも減りもしません。10頭以上なら増え、以下なら減りますが、そのペースは交差感染での発生数の大きさで左右されます。

 答申(案)では、欧州の直接給餌禁止の規制効果、3年で半減を用いて2004年の時点では米国の感染は97年規制前の約四分の1に減っていると推測しています。日本のBSE発生数も同じやり方で推測し年毎の検出数を予測していますが、実際には予想より多くなっています。規制の効果が違いは欧州と日本では飼料成分や飼育法が違いますから当然です。欧州と米国も違いますから、米国の感染は約四分の1に減少という推測は実際、どれ位、感染が起きているのか、検出されているのか、その実態で検証しなければ、単なる仮説です。


使えない米国のデータ


 米国では、昨年6月から検査牛を増やした拡大サーベランス調査を行っています。この調査データが使えるでしょうか?答申(案)ではこの調査を、検査牛が「米国における高リスク牛の抽出検査のみで行われ」「抽出検査による汚染の程度の推定が困難」。検査方法も「(日本の)WBのようなより感度の高い方法を導入していれば、(より多く)摘発可能」と評価。つまり、米国のBSE感染の実態を示す科学的に信頼性の足る検査データがない。感染は約四分の1に減少という推論も、検証できず仮説のままです。この拡大サーベランス結果から感染牛の数を試算していますが、それは「参考に留めておくべき」と自己評価しています。データがないため交差汚染の規模や程度を議論し、責任を持てる評価は難しい。それで「(交差感染を受けただろう牛の除外)それができれば、評価は割合限定されて、分析は簡単にはなります」という弱音がでるのです。

 日本政府、米国政府、カナダ政府の答えは、「そうした牛は除いてません。」この時点で、食品安全委員会は科学的評価はできない、米国産牛肉のBSEリスクは国産と同等/小さい/大きいとも責任を持てる評価は不可能、だから輸入再開に反対できないが輸入再開か米国と再交渉するかは小泉政府の政治決断でといった答申を出す道が採れました。そのように小泉政府の意向に逆らった時のお返しの仕打ちは総選挙で示されています。その小泉政府に日本国民は圧倒的議席を与えました。

 結局、答申(案)では、20ヶ月齢以下の米国産牛にはBSE感染牛が含まれる確率はきわめて低い、発症したり、BSE検査により発見される可能性は極めて低いとしています。感染率を裏付ける科学的で信頼性のあるデータはありません。発症時期や検査可能性はBSEプリオンの蓄積量によりますが、それはどれ位のプリオンを何時摂取したかに影響されます。米国からのデータには、それらを推測できるものがありません。欧州の研究から、幼若牛が大量に摂取したなら13ヶ月齢で検出可能まで蓄積すると見られています。答申(案)は机上の空論です。

 答申(案)は「日本向け輸出プログラム条件が遵守されれば、BSEプリオンによる汚染の可能性は非常に低い」プリオンの蓄積が多い脳や脊髄などは、米国では30ヶ月齢以下の牛の危険部位SRMに指定されず、除去義務はありません。(日本ではSRMで除去)日本向けには特別に除去が輸出プログラムの骨子です。答申(案)はBSE感染牛でもSRMを除けば安全という米国の主張そのままで、実質的に日本のBSE防止対策を否定しています。


答申(案)は
来年夏の再開を
約束する内容


また「米国では、2005年9月現在で、20ヶ月齢以下の牛が生まれた2004年1月時点において、一定の割合で交差汚染がおこった可能性が否定できない」が、それによるBSE感染牛が含まれる確率はきわめて低く、BSE検査により発見される可能性は極めて低いから検査除外として、日本の20ヶ月齢以下と同等の扱い=安全性を“科学的”に認めています。04年1月に生まれた牛は、来年6月には30ヶ月齢に達します。来年の7月以降に、と畜される米国産の30ヶ月齢未満の牛はすべて” 科学的に安全”な牛になります。

 在日米国大使館の農務担当公使は13日に、「20ヶ月齢以下に輸出を限定することは日本向けの独特のもの」・・今後は「30ヶ月齢未満」まで拡大することを求めていく・・「まず、日米間で貿易を再開することが大切。その後の協議となるだろう」と述べています。

 食品安全委員会のプリオン部会の吉川座長は5月に、BSEの発症までの潜伏期間が6~7年と見られることから、国、自治体による全頭検査が行われる2007年度末、2008年3月までの検査結果で現在の飼料規制、2002年からの肉骨粉の完全禁止の効果が読めるとし、それまでに若い牛から陽性牛が見つからなければ、検査対象から30ヶ月齢未満を除けると言っています。しかし、科学的にはあと3年たたないと分からない飼料規制の効果を見込んで、今年の5月に2003年7月以降に生まれた牛を検査から除外することを認めています。法律的には20ヶ月齢以下除外、その20ヶ月齢以下は自治体による検査に8月から移行しました。1年後の2006年夏に30ヶ月齢以下は検査除外に食品安全委員会は異を唱えられるでしょうか、何の障害があるでしょうか。

 来年、米国議会は中間選挙です。それで虹屋は答申が案のままなら、お盆商戦、米国の選挙に間に合わせて来年の夏、日本の牛で30ヶ月齢未満は検査除外となり、米国産牛肉にも適用され米国産牛肉の全面的再開と予想しますが、外れて欲しいものです。


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年末商戦に米国産牛肉が復活?? 駆け足の食品安全委員会の審議 2005-40 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-40 2005年9月27日小針店で印刷・配布の再録です。



年末商戦に米国産牛肉が復活??
駆け足の食品安全委員会の審議


 9月12日に食品安全委員会の米国産・カナダ産牛肉の安全性の評価する専門部会がありました。その議事録もできていないのに26日に31回目。2倍の速さで審議が進められています。年末には輸入再開という報道もされています。9月12日に呈示された吉川座長(東京大学教授)の答申の原案(たたき台)には、米国は日本よりBSE感染率は低いとしています。それなら輸入再開は可能と答申でるからです。

国際基準(OIE規約)と
農水省の諮問案


 国際基準(OIE規約)では次の4条件の牛肉、牛タンなど内臓肉を除く牛精肉は、輸出国にBSEが発生していても輸出入を拒めません。

 ①30ヶ月齢以下の牛②スタンニング不使用など適切なと畜方法③と畜前の検分とと畜後の検分④脳などBSEの特定危険部位の除去と肉の汚染防止の4条件です。ただし科学的な根拠があれば輸入国がより厳しい条件をつけることができます。逆に、輸入国が認めればより緩い条件でも可能です。

 と畜後の検分は、日本ではBSE組織検査です。米国では、BSE組織検査は食肉になる牛ではしていません。農水省の諮問案では30ヶ月を20ヶ月齢に厳しくし、その代わりにと畜後の検分はBSE組織検査を求めず米国の従来の検分でOKとするものです。

 問題なのは、20ヶ月齢以下の牛の牛タンなど内臓肉を除く牛精肉はならBSE組織検査をしなくても安全かです。日本では牛のSRMも肉骨粉も全部焼却して、さらに飼料規制を強化して交差汚染の抜け道を2001年12月に塞いで、2年たった事を根拠に20ヶ月齢以下は死後の検分=BSE検査からこの夏に外しました。

 米国では先週お伝えしたように、交差汚染の抜け道がたくさんあります。吉川座長(東京大学教授)の答申原案では肉骨粉だけに注目し、「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」と結論しています。つまり、交差汚染でBSEに感染した牛が今も発生している。素人考えならこれだけで、BSE組織検査ナシでの輸入再開は無理です。

 吉川座長(東京大学教授)はさすが専門家、日米での20ヶ月齢以下のBSE牛の比率はどうか試算しました。これが同じなら輸入再開は可能と答申できます。それが答申原案の「2.3サーベランスによる検証」です。

 しかし、日本のBSE検査結果と米国の拡大サーベランス結果の違いを吟味していません。そのため米国が低いと間違っています


米国の拡大サーベランスの実情


 日本は食肉にされる全ての牛、と畜場から不健康などの理由で廃棄される全ての廃棄牛と20ヶ月齢以上の死亡牛でBSE検査をしています。

 米国が2004年の6月からはじめた拡大サーベランスでは、廃棄牛は計画では全て、月齢や種類を問わず全て年間19万5千頭を調べると3月に発表していました。しかし実際には30ヶ月齢以上に限定しています。およそ15万頭に減ります。しかし検査数の実績ではそのうちの4頭に1頭だけ約25%だけです。廃棄牛はと畜場で獣医などが検査してより分けています。廃棄牛がBSE検査の前にどこかへ歩いていって行方不明になったのか、廃棄牛から検査に廻す牛を更に選別していたことになります。

 また、05年4月に発効した北米三国(カナダ・メキシコ・アメリカ)の統一BSE対策で、成牛(30ヶ月齢以上)では、「明らかな理由で障害を持っている牛、たとえば、輸送の途中で傷ついたような場合には、獣医は、BSEの症状とは一致しないものとの決定を下すことが出来る。」としました。そうしたら検査数が更に3分の1に減りました。

 米国は死亡牛はBSEに特徴的な症状を示した上で死亡した牛、年間約25万頭を調べると計画しました。しかし実際には年間32.1万、約128%と大幅に超過した数を調べています。調査用にサンプル採る人へのマニアルには、対象以外の死亡牛でもサンプルを採取し検査に廻しても構わないとあります。

 死亡してから時間がたつと腐敗で良いサンプルが取れません。そのためかBSE2例目は5頭分の組織が混じっていました。しかし、検査に廻されています。これで済むなら、幾らでもサンプルを採れます、提出できますネ。1サンプル約10ドルの手間賃で集めています。

 米国は今年の7月22日まで3回開かれた実務者会合で30ヶ月齢以上に限定したことは日本に伝えました。他の点は口を閉ざしています。会合の5日後に米国から提出されたのは3月の計画案の資料です。30ヶ月齢以上に限定したことさえ書かれていません。全く不誠実ですし、少なくとも廃棄牛でのサーベランスのデータはサンプル採取に信頼性がなく使えません。またBSE組織検査の方法の違いによる検査感度などから、「米国の検査では感染牛の見逃しがある」ことが、28回の審議で確認されています。


米国の交差汚染による
BSE発生状況


 死亡牛でのデータ(32.1万頭で1頭、死亡牛94万頭で推定3頭)で、廃棄牛での検出されたであろうBSE牛を吉川座長の方法で計算してみます。日本のデータでは、死亡牛98100頭から2頭検出、廃棄牛8300頭から1頭検出、食肉の牛90万頭で2頭です。死亡牛10万頭に2頭、廃棄牛なら10万頭に12.3頭。米国でも同じ比率とします。

 計算すると成牛の廃棄牛約15万頭中に3頭。
 2/98100:1/8300=1/321000:A/155000
(A/155000)×(2/98100)=(1/8300)×(1/321000)
A=(1/8300)×(1/321000)÷(2/98100)×155000
A=(1×1×98100×155000)÷(8300×321000×2)
A≒3

廃棄・死亡牛全体で6頭で計算すると食肉にされた270万頭中には2頭。
3/(98100+8300):2/90万=6/(94万+15.5万):B/270万
(B/270万)×(3/11万)=(6/110万)×(2/90万)
B=(6/110万)×(2/90万)÷(3/11万)×270万
B=(6×2×11万×270万)÷(110万×90万×3)
B≒2

合計すると米国の成牛380万頭中に8頭の検出可能なBSE牛がいると推定されます。

 吉川座長は廃棄牛のデータも信頼できるもの死亡牛と廃棄牛を合算してデータを使っているので半分の4頭です。
 日本の成牛では100万頭で5頭ですから、虹屋の計算では米国の倍近くいることになります。しかし、「米国の検査では感染牛の見逃しがある」のですから、これ位の違いは余り意味がありません。見逃しが1~2頭と控えめに考えるとほぼ同じになります。 つまり、米国の成牛でのBSE感染は日本のそれと控えめに見積もって同じであろうと評価されます。吉川座長は、見逃しを考慮せず、日本より感染率は低いとしています。それなら輸入再開は可能と答申できます。


米国の若齢牛の状況は、
以前の日本と同じ、
BSE検査すべし


米国の成牛でのBSE感染は日本のそれと控えめに見積もって同じであろうと評価されます。

 日本のBSE感染は、これまでの検査結果を見ると2001年12月以前の交差汚染があった時代の飼料を生年月日からみて確実に食べているか、その在庫品を食べたと見られる牛、21ヶ月、23ヶ月齢から検出されています。在庫品は2002年半ばには消費され無くなったと見られています。それ以降生まれた牛、肉骨粉で交差汚染を制度的に排除した飼料で育った牛からは一頭も出ていません。それだからこそ、日本は20ヶ月齢以下の牛をBSE検査から除外できたのです。

 「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」であり、交差汚染によるBSE発生の状況は米国の成牛での状況から、日本の2001年12月の肉骨粉完全禁止以前と同じ、控えめに見て「同じ」といえます。

 その以前の飼料を食べた牛が若齢牛の大半を占めていた時に日本は全頭で20ヶ月齢以下もBSE検査をしていました。したがって、同じ状況下の米国の若齢牛、20ヶ月齢以下はBSE検査をすべきです。米国の若齢牛、20ヶ月齢以下をBSE検査をしないでも安全ということは出来ません。

 米国が2004年春に予告した飼料規制強化を実施し、きちんとしたサーベランスでその効果が確認されるまで、と畜後の検分ではBSE組織検査を条件とすべきです。


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食品安全委員会にBSE問題で2005/9/22と23に送った質問 [牛‐肉、乳、飼育]

食品安全委員会に2005/9/22と23送った質問


9月12日 第30回プリオン専門調査会に出された 吉川座長のたたき台について① たたき台の「1.1 経緯」で、国際基準であるOIE規約との関連が一言も触れられていない。 今回の諮問、審議の基本的性格は、平成1 7 年5 月2 6 日の第9 6 回食品安全委員会(本委員会)で、農林水産省・伊地知大臣官房参事官は「今回の諮問は輸入停止以降、リスク評価のための情報収集を行ってきたことを踏まえまして、一定の輸入条件(現在の米国の国内規制及び日本向け輸出プログラム)でのリスク評価をいただき、その結果を踏まえて国際基準(OIE基準)を上回ることとなる検疫措置を実施しようとするものでございます。」(議事録5ページ、カッコ内は弦巻が加えた)


厚生労働省の松本大臣官房参事官は米国から輸入される牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合と、我が国でとさつ解体して流通している牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合の牛海綿状脳症に関するリスクの同等性についての意見を求めるもの」としている。 


 すなわち、審議の焦点は
①OIE規約での牛肉と内臓肉での諸条件を米国の国内規制及び日本向け輸出プログラムが満たしているか
②それを上回ることとなる検疫措置であるか
③これらの条件・検疫措置の結果、日米の牛肉と内臓肉のBSE牛海綿状脳症に関するリスクの同等性が確保されるかになる。


 しかし、国際基準であるOIE規約との関連がこのたたき台では、触れられていない。国際基準(OIE基準)を上回ることとなる検疫措置の実施は国民全てが望むものであり、この点を明確にしていただきたい。





吉川座長のたたき台の
「2.1 侵入リスクの比較」について


2.1 侵入リスクの比較では、BSE感染牛の輸入・移入、肉骨粉、動物性油脂の三ルートが取り上げられている。BSE感染牛の輸入・移入、肉骨粉では、カナダからの輸入も多いのカナダの汚染率=BSE感染牛の率は「極めて低い」として事実上無視している。カナダの汚染率は審議されたことがないのに、この取りまとめはおかしい。

 動物性油脂では、オランダ産のみを問題にしているのはおかしい。牛や肉骨粉では、カナダ産・カナダ経由のそれを取り上げているのに、なぜ油脂ではとりあげないのか。また米国・カナダ国内での狂鹿病(CWD)など他のTSE因子をもった肉骨がレンダリング原料となり、肉骨粉や油脂になっている。この点を取り上げないのもおかしい。





吉川座長のたたき台の
「2.2暴露・増幅リスク」について
 その1


 肉骨粉の暴露・増幅リスクを検討している。BSE陽性牛の感染値の99.4%を占めると言われるSRMが、米国では全て牛でレンダリング原料とされているから、当然である。吉川座長は、米国でのレンダリングで、感染価が約1/100になるとしているが、欧州食品安全庁(EFSA)は「大気圧の下で(つまり加圧することなく)加工しているから、BSE感染性が工程に入れば、これを大きく減らすとは考えられない」としている。

 吉川座長は、平成15年9月の「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」の「4感染経路モデルによる計量的な分析の結果と考察」において「旧方式では汚染リスクの軽減若しくは不活性化はほとんど望めないが、新方式では高温処理(133℃、3気圧、20 分)で10マイナス4乗 以上の感染価の低下が見込まれる」としている。しかし、これまでの専門部会の審議で米国・カナダでのレンダリングのやり方を検討したであろうか。欧州食品安全庁(EFSA)は「大気圧の下で加工している」としているのだから、感染価は「軽減若しくは不活性化はほとんど望めない」と見るべきではないか。





吉川座長のたたき台の
「2.2暴露・増幅リスク」について
 その2


レンダリングでは肉骨粉だけでなくタロー(牛脂)も生産される。吉川座長は、平成15年9月の「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」の「4感染経路モデルによる計量的な分析の結果と考察」において、牛での暴露評価ではSRMを含む肉骨粉、動物性油脂に着目している(4.2.3.4 リスクの特性 総合評価)。しかし、たたき台ではタロー(牛脂)の利用による暴露・増幅が全く考慮されていない。

タロー(牛脂)ではプリオンなどのタンパク質は不溶性不純物として含まれる。米国は不溶性不純物0.15%以下で、SRMも原料とされている肉骨粉製造時に産生される動物性油脂(イエローグリース)である。そして、米国ではイエローグリースの使用に何の規制もない。たたき台では肉骨粉に注目し、「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」としている。

 したがって、現在の米国の状況は、先の考察での吉川座長の言葉を借りれば、「肉骨粉は、特定部位(SRM)の使用により汚染される可能性が極めて高い。・・レンダリング由来の動物性油脂では特定部位(SRM)を使用していたわけであるから汚染の可能性を否定できない。その場合、動物性油脂中の不溶物として(肉骨粉と)混合汚染を起こしている可能性がある。」(4.2.3.3 製造工程によるリスク)と見るべきではないか。





吉川座長のたたき台の
「2.2暴露・増幅リスク」について
 その3


吉川座長は、平成15年9月の「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」の「4感染経路モデルによる計量的な分析の結果と考察」において、SRMを含む動物性油脂イエローグリースによる牛での暴露評価では、汚染動物性油脂を代用乳・人工乳として摂取した新生牛の汚染に専ら着目している。

 米国で、代用乳・人工乳で曝露された可能性が高い食肉牛は、フィードロットで肥育されと畜される30ヶ月齢以下の牛のうち、約10%、320万頭の乳用牛の去勢雄牛である。生後8週齢になるまでの間は、カーフハッチでの代用乳および人工乳(スターター)によるほ育が行われ、その後、10週齢程度で育成舎での群飼に移行し、粗飼料と濃厚飼料による育成され、その後フィードロットで肥育される。この資料は、現在の(独)農畜産業振興機構の月報「畜産の情報」(海外編)の2003年3月の米国の「酪農家の副産物・乳おす牛による牛肉生産(子牛肉生産と乳去勢肥育)の状況」 http://lin.lin.go.jp/alic/month/fore/2003/mar/rep-us.htm

 またたたき台では、肉骨粉による交差汚染を起こす要因として、牛の肉骨粉の使用が許されている鶏飼料の残渣、豚飼料の残飯などを牛に給与することが禁止されていないことをあげている。甲斐諭専門委員によれば「大局的に見て(肉用の子牛の)主な産地は米国南東部が中心地で全米の子牛の約35%がそこで生産され、米国内の27州に販売されている。米国南東部の子牛生産地の繁殖牛経営は20~30頭の繁殖牛を飼養する零細経営が多く、綿花や大豆を栽培し、家禽も使用している家族経営が多く、兼業経営が多い。」(28回専門部会の参考資料10)とある。つまりつまり鶏・豚飼料の給餌による交差汚染の確率が高い牛群がある。
このような、飼育方法による曝露リスクを十分に考慮して、交差汚染の確率を評価すべきである。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その1


米国の拡大サーベランスの結果の信頼性について何も触れていない。その為、データの扱いが不適切である。

米国の拡大サーベランス計画は、米国の資料に拠ればと畜の際の廃棄牛の全て約19.5万頭/年と死亡牛の一部、原因不明で死亡した牛など約25万頭/年である。

その実績は、2004年6月から2005年3月までが、6月10日に提出された補足資料の47ページにある。2004年6月から2005年7月3日まのデータが7月8日に提出された補足資料の61ページにある。

 計画に比べ30ヶ月齢以下の牛が1頭しか検査されていない、廃棄牛が計画の約16.5%と大幅に不足で、死亡牛は約128%と逆に超過している。こうした、拡大サーベランスの実績から、まずその調査の信頼性を評価がたたき台には必要である。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その2


計画では、月齢によるサンプルリングの制限はない。例えば廃棄牛の計画の算出根拠は、FSIS(食品安全検査局)の2002年度廃棄データでは全ての廃棄牛が全と畜数の0.57%であり、計画はそれをそのまま使っている。廃棄データは、雄牛(種牛、全体の廃棄牛の0.8%)去勢牛(6.4%)経産牛(Cows、77.3%)未経産牛(Heifers、4.8%)子牛(10.5%)である。去勢牛と未経産牛は食用にされる牛で、ほとんどが30ヶ月齢以下と米国は主張している。子牛は生後20週齢以下である。拡大サーベランスは計画段階では月齢による制限はしていない。しかし30ヶ月齢以下の牛は1頭しか検査されていない。サンプリングで30ヶ月齢以下除外のバイアス(偏向)がかかっている。

 今回の諮問は去勢牛と未経産牛の牛肉、内臓肉であり、これの牛群からでる廃棄牛からは殆どサンプリングされていない。計画では検査対象であるが、実際には殆ど検査されいないのは、拡大サーベランス結果の致命的欠陥ではないか。

 また、逆に30ヶ月齢以上である経産牛(Cows)の廃棄牛19.5万×77.3%、約15万頭から殆どのサンプルが採られていると結果から推測できる。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その3


 廃棄牛の検査数は、2004年6月から2005年3月までの期間では約3000頭/月である。05年4月5月6月は3ヶ月間で2337頭(34693-32256)である。廃棄牛の発生数がこの3ヶ月間は三分の一に減ったのであろうか。サンプリングに変化が起こったのであろうか。05年4月に発効した北米三国(カナダ・メキシコ・アメリカ)の統一BSE対策(Report of the North American Chief Veterinary Officers on Harmonization of a BSE Strategy)には「老齢の牛で、明らかな理由で障害を持っている牛、たとえば、輸送の途中で傷ついたような場合には、獣医は、BSEの症状とは一致しないものとの決定を下すことが出来る。」という項目がある。つまり廃棄牛のサンプリングで獣医の裁量で、サンプリングから除くことに4月からなっている。この影響である。BSE牛は輸送の途中で傷つかないのであろうか??これは、拡大サーベランスの信頼性を阻害する決定で、サンプリングに加えられたバイアス偏向であるが、公表された計画にはのっていないし、米国からの提出資料にもない。
北米三国の統一BSE対策の原文はhttp://www.usembassycanada.gov/content/can_usa/madcow_bseharmonization.pdf





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その4


 05年4月以前は、約3000頭/月であるが、これは計画案の約20%、経産牛(Cows)の廃棄牛に限定しても約25%でしかない。つまり拡大サーベランスには、米国の資料にはないバイアスが廃棄牛のサンプリングでは当初からあったと推測できる。

 このように拡大サーベランスの廃棄牛のデータは、サンプリングに様々なバイアスが、計画にはない公表されていないバイアスがかかっている。その結果の信頼性は非常に低い。とくに今回の諮問は去勢牛と未経産牛の牛肉、内臓肉であるが、これの牛群からでる廃棄牛からは殆どサンプリングされていないことは、拡大サーベランス結果の致命的欠陥ではないか。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その5


米国の拡大サーベランス計画は、死亡牛は約25万頭/年からのサンプリングである。肉用繁殖雌牛の原因不明で死亡した牛約10万頭と乳用雌牛の原因不明で死亡した牛、歩行障害または怪我で死亡した牛、運動失調の症状を呈して死亡した牛の約15万頭である。
計画段階で肉用繁殖雌牛の歩行障害または怪我で死亡した牛、運動失調の症状を呈して死亡した牛が対象から外されて理由は不明である。農水省・釘田衛生管理課長によれば「その中でBSE に特徴的な症状を示したような牛。そういった症状を示した上で死亡した牛」(27回専門部会議事録11ページ)。
またこれらの牛を特定捕捉する方法も不明である。「何をもって、例えば、農場死亡牛、あるいはBSE症状を示した死亡牛というのは、どうやって補足しているのかよくわからないところもございます。」(農水省・釘田衛生管理課長 27回専門部会議事録42ページ)

 実績をみると、死亡牛は04年6月から05年7月までの13ヶ月で34.8万、年間32.1万、計画比約128%と大幅に超過したサンプル数になっている。04年6月から05年3月までは、119%。4,5,6月では157%。明らかに、4月、5月、6月の3ヶ月間の死亡牛サンプルが異常に多い。日本の死亡牛検査では、この時季にこのような大きな死亡牛数の季節変動は見られない。肉用繁殖雌牛は春仔の出産時の死亡が3月4月に多いが、それはサーベランスの捕捉対象の原因不明で死亡した牛にはならない。この増加は、死亡率や死亡原因の季節変動では説明がつかない。

 採取場所の内訳が2004年6月だけ公表されている。20%はと畜場(ダウナー牛・死亡牛・病牛・傷害牛専用と畜場)、30%はレンダリング工場、40%は廃品回収所で収集したもので、農場などからは10%。このような場所で、上記の死亡原因の牛だけ選別することは可能だろうか。2例目のBSE牛のサンプルは、5頭分が混じっていた。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その6


米国が2004年3月に公表したサーベランス計画Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) Surveillance Plan March 15, 2004の2ページのClinical Presentation Criteriaには次のような項目がある。 4. Dead cattle Any dead cattle where the specimen is of diagnostic quality and the cause of death and/or clinical signs prior to death, if known, do not preclude it from the targeted population.

 原因不明で死亡した牛は本来のサンプル対象になっていますから、それ以外は死亡原因がわかっている牛です。その死因がわかる牛のうち、歩行障害または怪我で死亡した乳牛、運動失調の症状を呈して死亡した乳牛は計画のサンプル採取対象、それ以外は計画では対象外です。しかし先の規定は、それらの死因がわかる死亡牛もサンプル採取対象から排除しないとなっています。つまり、どんな死亡牛からサンプルを採取してもよいのです。

 計画の対象死亡牛を特定捕捉する方法も、計画以上の死亡牛サンプル数が集められる理由も、これで分かります。BSEに特徴的な症状を示した上で死亡した牛だけのサンプルを集める計画が、実際にはどんな死亡牛からもサンプルを採取している。サーベランスの質は、計画よりも実績がはるかに劣化している。

 また山内専門委員が指摘する「アメリカの場合だったら、結局死んだ牛だったら、それでもうそのまま自分のところで処分してしまうと。といったようなことだったら、検査に回ってこないのではないかと。だから、実際に死亡している牛のどれぐらいが検査に提供されてきているのか、されるんだろうかという、その点がよくわからないんです。」という問題もある。日本には牛の登録の法的制度があるが、米国にはない。このため、死亡牛を農場で処分されても、USDAは知りようがない。

サーベランス計画の原文は
http://www.aphis.usda.gov/lpa/issues/bse/BSE_Surveil_Plan03-15-04.pdf





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その7


このように米国の拡大サーベランスは、04年3月に公表された計画と実績が全く別物である。死亡牛は、BSEに特徴的な症状を示した上で死亡した牛だけのサンプル選別を計画しながら実際は死因を問わず集めている。
廃棄牛は、3月の計画数は月齢を問わず全ての廃棄牛である。しかし05年7月22日のBSEに関する専門家及び実務担当者会合(WG)報告書によれば「30ヶ月齢以上の高リスク牛を対象」と米国は説明している。7月27日に米国が提出した資料では廃棄牛のサンプル数は計画通り19.5万頭である。
実務担当者会合での説明からすれば約15万頭前後に減らされていなければならない。また、05年4月からの北米三国の統一BSE対策の実施により廃棄牛からサンプルが採られる数が激減しているが、7月の実務担当者会合では説明がない。余りに不誠実である。

 廃棄牛のサンプリングには、と畜場で獣医が分別しているにもかかわらず約75%がサンプルを採られていない。不明なバイアス偏向がかかっており、そのサンプリングは信頼性に乏しい。

 また米国BSE2例の検討から、サンプルの検査に日本は確定検査にウェスタンブロットWB法とIHCを併用しているのに米国はIHCだけであったことや用いた抗体の性質から「米国の検査では感染牛の見逃しがある」が、28回の審議で確認されている。

 このようなデータでは、現在の飼料規制の有効性を評価するのは難しい。たたき台で吉川座長は制度的に「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」としているが、その可能性が現実になって、どれ位BSEが発生しているかを知ることは不可能ではないか。

 たたき台では、米国の拡大サーベランス結果から、若齢牛でのBSE数を外挿法で求めている。米国の拡大サーベランス結果は、信頼性、信用性に乏しい。制度的に「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」。これに対し日本では制度的には交差汚染が起きる抜け道はない。外挿法は使えないのではないか。


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米国でのBSEはどのように拡がるか、見落としの多い食品安全委員会の答申原案 2005-25 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-39 2005年9月20日小針店で印刷・配布の再録



米国でのBSEはどのように拡がるか、
見落としの多い
食品安全委員会の答申原案


 9月12日に食品安全委員会の狂牛病BSEに関する専門部会がありました。議題はもちろん米国産・カナダ産牛肉の輸入再開へ向けての安全性の評価です。そこで吉川座長(東京大学教授)の答申の原案(たたき台)が示されました。それには、私のような素人でも判る見落としが多々あります。吉川座長は、日本国内でのBSE拡大・感染経路を以前検討しています。その際は、飼料に使われた肉骨粉とタロー(牛脂)を病原プリオンの運び屋にとりあげています。ところが、米国やカナダでのBSE拡大・感染経路では、肉骨粉しかとりあげていません。タロー(牛脂)はどこかに消えています。片手落ちです。

タロー(牛脂)のBSE感染
での危険性


 この二つは、レンダリング処理(化製処理)で共に作られます。牛、羊、豚、ニワトリなど食用動物から食肉を採取した残りのくず肉・内臓を煮ます。これがレンダリングです。すると上に脂肪がかたまります。脂肪(獣脂・タロー)は昔から石鹸やローソクの原料として、現在では飼料、医薬品や化粧品などにまで広く用いられます。脂肪をとった後の脂かすは、かつては捨てられていした。20世紀に入ってからが、乾燥して粉末とした肉骨粉が家畜やペットの飼料、肥料などに用いられるようになりました。

 BSE牛のくず肉や内臓などがレンダリング処理されたら、その肉骨粉やタロー(牛脂)には病原のプリオン蛋白質が含まれます。レンダリング処理のやり方を色々に変えても肉骨粉は感染する力があります。高温処理法(133℃、3気圧、20分)がとられていますが、この条件でも肉骨粉の感染する力は百分の1~数千分の1に減りますが、BSEの感染が起きます。タローは疑問視されていました。当初、英国でマウスなどでの動物実験では、BSEの感染が起きなかったからです。それで牛脂は飼料に使われ続けました。

 その後研究が進み、プリオンの分解は脂肪・牛脂があると進まないことがわかりました。特にプリオンが牛脂の中に含まれていると、つまり不純物で牛脂に含まれた状態では分解が遅いことが分かりました。そしてマウスは牛の百分の一位の感受性がない、BSEに感染しにくいので、動物実験の結果が必ずしも当てにならないことも分かりました。牛用飼料で特に問題なのは、牛脂を含んだ代用乳・人工乳。これを飲む「幼若牛の感受性は子牛の約10 倍と考えるべきである(吉川座長)」。

 それで、EUは牛に与える牛脂にはプリオンが多い危険部位SRMを原料としないこと、更に高温150℃などの条件でレンダリングしています。日本では、腹脂、背脂や食肉加工場で除かれる脂身、内臓の脂身のみを原料として、不純物0.02%以下のタロー(ファンシータロー)を子牛の代用乳・人工乳にのみ使うようにしました。ところが、米国は未だにタロー(牛脂)ではBSEはうつらないとしています。それで相変わらずSRMを原料に使い、不純物も0.15%と日本の7倍です。
 イエロータローと呼ばれる物です。レンダリングの方法も欧州食品安全庁(EFSA)は米国では「大気圧の下で(つまり加圧することなく)加工しているから、BSE感染性が工程に入れば、これを大きく減らすとは考えられない」としています。米国では、子牛用代用乳・人工乳だけでなく、牛用飼料全般に使えます。
 吉川座長は、2年前の日本国内でのBSE拡大・感染経路の検討では肉骨粉とタロー(牛脂)を病原プリオンの運び屋にとりあげています。何故に、米国でのBSE発生を考える際には、タロー(牛脂)が抜けてしまうのでしょう??


米国内のBSEの
曝露・増幅リスク


 吉川座長は肉骨粉に注目し、「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」と結論しています。また吉川座長は、2年前に「動物性油脂(タロー)では特定部位(SRM)を使用していたわけであるから汚染の可能性を否定できない。その場合、動物性油脂中の不溶物として(肉骨粉と)混合汚染を起こしている可能性がある。」との見解を公表しています。まさに米国がその状況です。

 吉川座長がやっておられないので、僭越ながらタロー(牛脂)での暴露リスクを考えてみました。特に問題なのは、代用乳・人工乳です。これを飲む「幼若牛の感受性は子牛の約10倍と考えるべきである(吉川座長)」。米国では、代用乳・人工乳だけでなく、牛用飼料全般に使えます。

 米国で、食肉用にと畜される30ヶ月齢以下の牛のうち、約10%、320万頭は乳用牛の去勢雄牛。生後8週齢になるまでの間は、代用乳および人工乳(スターター)によるほ育が行われ、その後、10週齢程度で育成舎での群飼に移行し、粗飼料と濃厚飼料によ
る育成され、その後フィードロットで肥育されます。この去勢雄牛は一番感受性が高い時期に代用乳と人工乳でタロー(牛脂)での暴露リスク。育成、肥育期間は牛用配合・濃厚飼料に含まれるタロー(牛脂)での暴露リスクがあります。

 残り約90%の肉用品種の牛では、肥育期間は牛用濃厚飼料、子牛・育成期間中は牛用サプリメント(米国BSE牛2例目で追跡された飼料)での暴露リスクがあります。

 吉川座長は肉骨粉に注目し、レンダリング施設・飼料工場の交差汚染、流通、農家での自家配合による汚染、牛の肉骨粉の使用が許されている鶏飼料の残渣、豚飼料の残飯などを牛に給与することが禁止されていないことなどから、「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」と結論しています。前2者は特定の群れではなく牛全体にかかわる暴露リスクをあたえます。

 甲斐諭専門委員によれば「大局的に見て(肉用の子牛の)主な産地は米国南東部が中心地で全米の子牛の約35%がそこで生産され、米国内の27州に販売されている。米国南東部の子牛生産地の繁殖牛経営は20~30頭の繁殖牛を飼養する零細経営が多く、綿花や大豆を栽培し、家禽も使用している家族経営が多く、兼業経営が多い。」つまり鶏・豚飼料の給餌による交差汚染の確率が高い牛群がある。米国の牛はその暴露リスクの濃淡がある。3つほどに大別できるとおもいます。
一つは、全般的なタロー(牛脂)使用やレンダリング施設・飼料工場で交差汚染、流通、農家での自家配合による汚染による暴露リスクの牛群。
一つは、代用乳・人工乳を飲む、それによる高暴露リスクの320万頭、約10%の乳用牛の去勢雄牛。
一つは、零細で鶏や豚も飼育する農家で育成される鶏・豚飼料の給餌による交差汚染の確率が高い牛群。
このような暴露リスクを持った米国の牛に、現実にBSE感染がどれ位起きているのか。拡大サーベランスの結果を検討することで、検証できるはずですが、それが無理と言うお話は次号以降に。





吉川流の恣意的な曝露
・増幅の評価


 たたき台は、暴露リスクの検討の後、増幅リスクつまり米国でBSE発生が増えているのか減っているのかを数字をあげて定量的に検討しています。しかし、吉川座長は「定量的評価は困難であることが考えられるので、評価は定性的評価を基本とする。」(1.2 審議するにあたっての基本的方針)としているのに、定量的評価を何故するのか真意が分かりません。

 また、その定量的評価でも前提となる数字、仮説がきわめて恣意的です。BSE陽性牛の感染値の99.4%を占めると言われるSRMが、米国では全て牛でレンダリング原料とされています。吉川座長は、米国でのレンダリングで、感染値が約1/100になるとしているが、欧州食品安全庁(EFSA)は「大気圧の下で(つまり加圧することなく)加工しているから、BSE感染性が工程に入れば、これを大きく減らすとは考えられない」としています。

 また、そもそも米国にBSEがどれ位侵入したのかという事でも、恣意的です。侵入リスクの比較では、BSE感染牛の輸入・移入、肉骨粉、動物性油脂の三ルートが取り上げられている。BSE感染牛の輸入・移入、肉骨粉では、カナダからの輸入も多いのカナダの汚染率=BSE感染牛の率は「極めて低い」として事実上無視している。カナダの汚染率は審議されたことがないのに、この取りまとめはおかしい。動物性油脂では、オランダ産のみを問題にしているのはおかしい。牛や肉骨粉では、カナダ産・カナダ経由のそれを取り上げているのに、なぜ油脂ではとりあげないのか。また米国・カナダ国内での狂鹿病(CWD)など他のTSE因子をもった肉骨がレンダリング原料となり、肉骨粉や油脂になっている。この点を取り上げないのもおかしい。





米国産牛タンの安全性は、
想像力で評価し、
国際基準以下を是認


たたき台の「1.1 経緯」で、国際基準であるOIE規約との関連が一言も触れられていない。

 今回の諮問、審議の基本的性格は、平成1 7 年5 月2 6 日の第9 6回食品安全委員会(本委員会)で、農林水産省・伊地知大臣官房参事官は「今回の諮問は輸入停止以降、リスク評価のための情報収集を行ってきたことを踏まえまして、一定の輸入条件(現在の米国の国内規制及び日本向け輸出プログラム)でのリスク評価をいただき、その結果を踏まえて国際基準(OIE基準)を上回ることとなる検疫措置を実施しようとするものでございます。」(議事録5ページ、カッコ内は虹屋が加えた)厚生労働省の松本大臣官房参事官は米国から輸入される牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合と、我が国でとさつ解体して流通している牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合の牛海綿状脳症に関するリスクの同等性についての意見を求めるもの」としている。

 すなわち、審議の焦点は①OIE規約での牛肉と内臓肉での諸条件を米国の国内規制及び日本向け輸出プログラムが満たしているか②それを上回ることとなる検疫措置であるか③これらの条件・検疫措置の結果、日米の牛肉と内臓肉のBSE牛海綿状脳症に関するリスクの同等性が確保されるかになる。

 しかし、国際基準であるOIE規約との関連がこのたたき台では、隠されている。このため、あたかも国際基準であるOIE規約とは無関係に、リスクの同等性を評価するように審議結果がまとめられている。

 内臓肉は、OIE規約ではその国のBSEリスクのステータスで扱いが違う。しかも、米国のBSEステータスは、侵入リスク、暴露・増幅リスクだけでなく、BSE牛が発見された場合の出身農場の特定と擬似BSE牛の特定追跡の制度・仕組みなど評価すべき点が多々ある。これらの点は、このまとめには無い。米国のBSEステータスへの言及がない。
 OIE基準では、BSEリスクに応じて国などを3つにランク分けして、各々で検疫措置が違います。青信号に相当するリスクを無視できる国Negligible BSE risk。このランクなら、獣医による検査くらいしか規制はありません。脳などのBSEの特定危険部位SRMも輸出可能です。ところが米国では2頭めのBSE牛が米国産の牛でしたから、リスク管理国(黄信号状態Controlled BSE risk)かリスク不明国(赤信号状態Undetermined BSE risk)です。牛タンや焼肉で使われるハラミなどの内臓肉の扱いが全く違います。

 リスク管理国なら、肉骨粉などを牛に食べさせない飼料規制が国全体で有効に機能していれば良いのです。リスク不明国なら、と蓄される牛一頭一頭で肉骨粉などを食べていない証明が必要です。たとえば牛タン・舌の後部は扁桃があります。扁桃はBSEの特定危険部位。解体のやり方が悪ければ、牛タンに残ります。リスク不明国(赤信号状態)なら、その牛タンを採ったその牛が肉骨粉を食べていない≒BSEに感染していない証明まで求めるのです。

 米国では牛用飼料に牛の肉骨粉をつかうのは禁止されています。鶏や豚用には使われています。米国の肉用品種の子牛の35%くらいは、鶏や豚なども一緒に飼っている農家で育ちます。こうした農家では、鶏の食べ残した肉骨粉入りの飼料を牛に与えていました。現在も禁止されていません。

 米国は、どちらのランクか自己評価中です。リスク不明国(赤信号状態)なら、牛一頭一頭で肉骨粉などを食べていない証明、鶏用豚用の飼料を食べていない証明を求めることが国際基準(OIE基準)です。しかし、前回の専門調査会では「今まで主に肉を取り上げて議論をしてきたんですけれども、諮問は肉と内臓を含むという格好で書いてあるので、後で評価を介して、また内臓だけ評価しなさいというのは避けたいと思うので、委員の想像力を高めて、・・議論をしていただきたい」。(8/24吉川座長)

 この原案では、米国・カナダの全ての牛でリスクをまず評価し20ヶ月齢以下に絞り込む方法をとっており、これでは、米国・カナダをControlled BSE risk リスク管理国と評価するのと同じである。まず、この米国・カナダのBSEステータスを明確にしてから、内臓肉のリスク評価が行われるべきである。想像で安全評価し、国際基準以下の検疫措置を是認は御免こうむりたいですね。



 


日本のレンダリング産業 畜産の情報-今月の話題-2001年12月
 月報国内編日本のレンダリング産業 畜産の情報-調査・報告-2003年3月 月報国内
BSEとレンダリングのかかわり 霊長類フォーラム-人獣共通感染症連続講座(山内一也)(第71回) 1999.1.27  米国酪農家の副産物・乳おす牛による牛肉生産(子牛肉生産と乳去勢肥育)の状況
吉川座長の研究牛海綿状脳症(BSE)の感染源 及び感染経路の調査について
BSEと代用乳


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日本ではBSE牛が20頭検出され、米国では2頭・・・米国のほうが安全??2005-32 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-32 2005年8月9日小針店で印刷・配布の再録です。



日本ではBSE牛が20頭検出され、
米国では2頭・・・
米国のほうが安全?? 


 日本では米国の10倍のBSE牛が検出されています。その大きな理由は、米国では食卓に上がる牛肉は一切調べていないからです。こうした日米のBSE検査の仕組みの違いから、日米のBSE検出数の意味を見てみます。

日本470万頭、米国44万頭
30ヶ月齢以上約595万頭に検査が必要
食用になる牛を検査をしない理由
米国の検査システムで、日本を調べたら・・
米国の検査結果では、アメリカにBSEが発生していることしかわからない





日本470万頭、
米国44万頭


 日本では米国の10倍のBSE牛が検出されています。その大きな理由は、米国では食卓に上がる牛肉は一切調べていないからです。米国では年間約3400万頭が食肉用にと畜されますが、BSE検査はされません。日本では、125万頭ですが全て検査されます。この全頭検査は、2001年10月から始まり7月末までの累積で約470万頭です。日本は食卓に上がる牛肉から可能な限りBSE牛を除くために全頭検査をしています。米国は、BSE検査はBSE発生の有無を知るための調査検査だから、BSE牛の確率の高い歩行困難などのダウナー牛や死亡牛などの検査で十分として、約39万頭を検査。(これでも大幅に増えている、2001年は5,272頭、02年は1万9,990頭、03年には20,543頭、2003年12月に1例目が出たので2004年から拡充して7月末でこの数字です)

 その一方、米国は日本の全頭検査はやりすぎで30ヶ月齢以上、EUでもやられているBSE検出確率が高い30ヶ月齢以上に絞るべきだと日本に捩じ込んでいます。「米国政府は日本が検査対象の下限月齢をさらに国際的な慣例と調和すべく20カ月齢から30カ月齢に引き上げることを奨励する。」(4月に公表された意見書)
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20050412-51.html

 では米国では30ヶ月齢以上の牛の検査をしているのでしょうか。説教を垂れるぐらいですから、やっているかと思いきや、やっていません。2万頭を検査する計画を公表しましたが、結局、1年以上たった現在まで1頭も検査していません。


30ヶ月齢以上の数と
検査の必要性


 米国の年間のと畜頭数の約4割が肉用牛の去勢雄牛(約1400万頭)、1割弱が乳用牛の去勢雄牛(約320万頭)、約3割が肉用牛の未経産雌牛(約1130万頭)で、お役御免になった乳用経産牛が1割弱(約260万頭)、同じく肉用繁殖牛の経産牛が1割弱(約305万頭)です。前の3つ、去勢牛と未経産雌牛の90%は20ヶ月齢以下で、30ヶ月齢以上牛は1%位といわれています。後の二つの経産牛は初産が約28ヶ月齢ですから、お役御免になる頃には30ヶ月齢はゆうにこえた高齢牛です。合わせると30ヶ月齢以上は、と畜頭数の約1割7分、1年間に約595万頭と見られます。これらの肉は、専ら、米国内の国内消費に回されています。

 検査できる数、検査能力や検査に充てられる資金は限られています。どのような牛を調べれば、もっとも効率的にBSE牛を検出し排除できるか。BSEの発生状況を把握できるでしょうか。BSEは感染してからの潜伏期間が長く、現在の検査技術で検出例は30ヶ月齢以上が圧倒的に多いのです。こうした理由からEUでは、BSE検査を30ヶ月齢以上の全頭で行い、検出できるBSE牛を食卓から排除しています。英国は、余りに多くて30ヶ月齢以上は検査もせず、即座に廃棄処分、昨年まで全て食用にはしていませんでした。現在はBSE検査をして選別しています。日本は全頭数の検査能力もあり、国民も出費を認めたためやっています。玄関に4つ鍵をつけるは用心しすぎかもしれませんが、馬鹿・非常識呼ばわりされることではありません。

 米国の一例目2003年12月のBSE牛は、お役御免になった乳用経産牛(推定48ヶ月齢)でダウナー牛であっため検査されました。2例目は同じく肉用繁殖牛の経産牛(推定144ヶ月齢)で、と畜・食肉工場に到着時に死亡していたため検査された牛でした。2例目は、産後の肥立ちが悪く衰弱したため家畜市場に出され11/11にセリにかけられ、15日にと畜・食肉工場に運ぶトラックに自力でのりましたが、3日間家畜市場に留め置かれたためか他の1頭とともに死亡していました。もう少し早く、と畜・食肉工場に運ばれていれば、死亡せず検査もされず、と畜・解体され食肉にされたでしょう。

 このように肉用繁殖牛の経産牛や乳用経産牛などは、科学的にも、国際的な慣例や実態からも、BSE牛肉を食べないよう摘発、排除のため全頭を検査すべきなのです。米国も1例目発生後には、17州の40のと畜・食肉工場で2万頭を検査する計画を公表しましたが、結局、1年以上たった現在まで1頭も検査していません。たった2万頭でしかないのに何故検査しないのでしょうか。





食用になる牛を
検査をしない理由


 この2万頭検査からBSE牛が検出されたら、どういう事態が起きるでしょうか。一例目2003年12月のBSE牛は、既に枝肉から部分肉に加工され販売されていました。それで、45トンの牛肉が回収されました。体重600kg牛1頭の部分肉は約250kg、BSE牛1頭分の肉回収もために90頭分を回収したのです。枝肉を解体し、部分肉に加工する段階では大規模な流れ作業であるために個体別の加工処理が出来ないため、混ぜこぜになるのです。この点は、今も変わりません。同じ騒ぎが起きます。

 また1例目は、歩行困難なのダウナー牛でした。歩行困難はBSEの症状の一つですからダウナー牛を未検査で人の食用にすることが本来おかしいのです。アメリカ国内からの要求に応じてダウナー牛を人の食用にはしない禁則が新設されました。計画通り2万頭検査してBSE牛が検出されたら、同様に、経産牛を食用にしないとかEUや日本並みの経産牛・30ヶ月齢以上全頭検査の要求が米国内から出ます。ダウナー牛は13~20万頭ですが経産牛などは約595万頭、食用禁止にはできません。また30ヶ月齢以上全頭検査するには少なくとも25・3億ドルかかります。(年間4万頭分検査で1700万ドル計上、米国政府05年度予算当初案)

 計画通りに2万頭検査をしなければ、上のような混乱も出費も起きません。”寝た子は起こすな”です。それで、実際に食卓に上がる牛肉は、一切、BSE検査を受けていないのです。”寝た子は起こすな”です。誰しも不安を覚えます。消費者団体などが私的に検査して検出されるかもしれません。その対策が「たとえBSEに感染していたとしても、特定危険部位以外の部位は、食べても安全である」というウソの宣伝です。





米国の検査システムで、
日本を調べたら・・


 米国では実際に食卓に上がる牛は一切調べられていません。日本では、この部分の牛から9頭検出されています。米国流なら見つかっていません。

 さらに歩行困難などのダイナー牛では、日本では6頭見つかっています。米国では「老齢の牛で、明らかな理由で障害を持っている牛、たとえば、輸送の途中で傷ついたような場合には、獣医は、BSEの症状とは一致しないものとの決定を下すことが出来る。」としています。これは2005年4月からの基準です。 
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=255

日本での結果を見ると、起立困難・歩行困難のダウナー牛には股関節脱臼や関節炎など所見がついています。http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0308-1.html これら5頭は、米国流では明らかな理由で起立・歩行困難を持っている牛になりますから、検査対象から外れます。そもそも、BSEなら骨折しないのでしょうか。新基準が非科学的なのです。この新基準の影響は、米国でも検査数の減少となっています。米国の検査数は2005年3月末までは1万を上回っていたのに、新基準発効後は週を減るごとに9000から8000、7000と減少、6月20-26日には6304にまで減っています。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05070401.htm


 検査計画ではサンプルのおよそ44%がダウナー牛から、56%は死亡牛から採取です。2005年3月末までの週1万強のサンプルのうち約5000弱がダウナー牛、約6000が死亡牛と推定されます。6月末の数字から、ダウナー牛からサンプルがほとんど採られなくなったと思われます。

 つまり、日本の歩行困難などのダイナー牛6頭うち1頭前後しか米国では検査対象になりません。

 また、日本では農場で死亡した牛から5頭見つかっています。米国では、死亡牛の27%をサンプルとして計画しています。日本は全頭対象です。先日、北海道で死亡牛を川原に埋めた事件がありました。日本では人目に付かないように処分したくとも牧場も狭い。しかし米国は埋める場所には困りません。牧場の隅に穴を掘り、死亡牛を埋めれます。米国農務省の内部監察局でさえ「BSEの場合には、破滅的結果への恐れから、(電話して、”BSEらしい牛がいる。検査を頼む”などと)進んで検査を申し出る生産者や関係業者は少ないだろう」と指摘しています。
 採取場所の内訳が2004年6月だけ公表されています。20%はと畜場(ダウナー牛・死亡牛・病牛・傷害牛専用と畜場)、30%はレンダリング工場、40%は廃品回収所で収集したもので、農場などからは10%。死亡牛の大部分は農場外から集められたものです。頭から、農場から検体を集めることをあきらめています。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04071501.htm
 つまり、大目に見ても日本で死亡牛で見つかった5頭のうち1頭しか米国では検体になりません。合わせると、米国のBSE検体のシステムでは、日本で検出された20頭から多めに見ても2頭が検査対象にされるに過ぎません。





米国の検査結果では、
アメリカにBSEが
発生していることしか
わからない


 さて、検査対象になっても、検査でBSEと判定されるでしょうか。日本では、エライザ法で一次検査をおこない更にIHC法とWB法で確定検査をします。WB法のほうが感度が100倍かそれ以上良いといわれています。しかし、両方で行います。これまでの20頭は18頭が両方の確定検査で陽性と出ています。2頭がIHCでは陰性(シロ)、WB法で陽性(クロ)です。

 米国はIHCだけで確定検査をしています。米国の2例目はIHCでは陰性(シロ)で、その後のWB法で陽性(クロ)でした。米国は、これをプリオンの蓄積量が少なかったためと説明しています。しかし検査結果を見た日本の専門家は「当初は異常プリオンの蓄積が少ないという話だったのではないか」「(データからは)しっかり蓄積していると言える」などの疑問や意見が出された(共同通信)そうです。つまり米国のIHC検査能力は日本では不合格、明らかに陽性のサンプルを陰性に判定していた可能性が強いのです。

 7月末、英国に確定検査に出されてものは、獣医が4月に遠隔地の農場で、お産のときに衰弱していた牛(推定12歳)から採取したものです。脳の一部をサンプルにとられているのですから、この農場で死亡牛です。この検体はホルマリン漬で保管されていました。農場ですから検体を適切に保管する施設、設備がありません。防腐のための当然の措置です。農場で採られた死亡牛の検体の少なからぬ数がホルマリン漬でしょう。ホルマリン漬ではIHC法でしか検査できません。その米国のIHC検査能力は上のようです。日本の農場での5頭の死亡牛のうち、多めに見ても1頭しか検査対象になりません。その1頭も陰性(シロ)と判定されてもおかしくないのです。 http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=427

このように日本ではBSE牛が20頭検出され米国では2頭でも、それは米国のほうがBSE汚染がすくなく安全ということではありません。

 私たちの目から見れば杜撰としかいえない米国のBSE検査体制。米農務省の内部監察局に、「検査が法的に義務づけられ、当局の権限に基づいて標的とする牛すべてがサンプリングの対象として収集されないかぎり、サンプリングに恣意あるいは作為が働かないとは保証できない」と指摘されている検査体制。サンプリングに恣意あるいは作為が働いている検査データは信頼できません。それも、BSE牛が検出されないようにバイアスがかかっているデータです。

 米国は97年にとった飼料規制がBSE感染を防いで有効に働いていると主張しています。これは適切に、無作為にサンプリング・検体が採られたBSE検査で、規制前に生まれた牛と規制後に生まれた牛でのBSE数を比べることで分かります。しかし、米国の検査は無作為が保証できません。BSE牛が検出されないように恣意や作為が働いている事を否定できませんから、役に立たないのです。米国の主張を裏付ける事も否定することも出来ないデータです。

 BSE牛が出ていますから、米国にBSEが発生していることは確実にわかりますが、それ以外の事、例えばどの月齢でどれ位といったことは分かりません。


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エビで鯨を釣る、したたかな米国に日本は太刀打ちできるか? 2005-35 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-35 2005年8月23日小針店で印刷・配布に加筆



和牛の対米
輸出再開エビで鯨を釣る、
したたかな米国外交に
日本は太刀打ちできるか?
和牛の対米輸出再開


 BSE(狂牛病)で日米間の牛肉貿易は途絶えています。以前の日本の牛肉の対米輸出はほぼすべて高級な和牛、97~00年の年平均で約9トン、金額で80万8000ドル(約8900万円)、「神戸牛」などが高級ステーキ店で日本人観光客向けに出されていました。これに対して米国は約24万トン、約10億ドル。

 この9トンの和牛を輸入を再開してやるから、早く25万トンの米国産牛肉を輸入再開をするよう米国政府は、17日圧力をかけてきました。エビで鯛ならぬ、エビで鯨を釣り上げる戦術です。


アメリカがつけた再開条件は国際基準より緩い
米国産牛肉の輸出再開のための条件緩和が隠された目的
毒饅頭を避けられるか





  アメリカがつけた和牛再開条件は
国際基準より緩い


 アメリカがつけた再開条件は、牛肉(ひき肉や加工製品ではない骨から外された肉)が下記の条件を満たすことを日本政府が保証すること。
①空気スタンニング、ピッシングなどと畜方法が国際基準・指針に適合している
②BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の原因となる異常プリオンが蓄積される脳や脊髄(せきずい)などの特定危険部位の完全な除去など一見、妥当な条件に見えます。しかし、よくよく見ると猛毒の毒饅頭です。
http://a257.g.akamaitech.net/7/257/2422/01jan20051800/edocket.access.gpo.gov/2005/05-16422.htm

国際基準・指針は、国際獣疫事務局(OIE)が今年の5月に採択したBSEの発見された国との動物製品の安全な貿易に関する規約・OIEコードです。それでの牛肉の条件は
①30ヵ月齢以下
②頭蓋の穴に圧搾空気またはガスを注入する装置でスタンニングの処置、またはピッシングの処置をと畜の時に受けなかった
③生前・死後の検分を受け、BSEのケースと疑われなかったか確認されなかった
④脳や脊髄(せきずい)などの特定危険部位SRMが除去されそれによる汚染を回避する方法で解体
米国の条件では①30ヵ月齢以下③生前・死後の検分が抜けています。





米国産牛肉の輸出再開のための
条件緩和が隠された目的


 米国の条件では①30ヵ月齢以下③生前・死後の検分が抜けています。この二つの条件は、BSE感染牛を食肉から可能な限り排除するために、EU・欧州や日本が主張し、米国の反対をOIE総会で覆して盛り込んだ条項です。

 BSE感染牛は、現在の検査技術では30ヶ月齢以上から見つかることが多いから①30ヵ月齢以下、③検分は、獣医などが異常行動などでと畜前に、またと畜後の組織検査で感染牛・疑わしい牛を可能な限り除くという意味があります。

 米国は、永久歯が3本なら30ヶ月齢という誤差が多いやり方で分けているので、輸入国が厳密に30ヶ月齢以下を求めると満たすことが難しい。また、米国では1~2名の獣医で1地時間に3000頭あまりの牛を検分して歩行困難などの牛をより分けています。また、食用にする牛では一切、BSE組織検査はしていません。輸入国がこの米国の現状に満足せず、日本のようにBSE組織検査を要求すると生前・生後の検分の条件も満たすことが難しい。日本政府は20ヶ月齢以下は目こぼしするといっていますが、食品安全委員会がそれを認めるかは非常に不透明です。

 この米国が満せない難しい条件を抜いて、外して、日本産牛肉・和牛の貿易を再開すれば、米国産牛肉も同じ条件でと持ち込めると踏んでいるのです。米国がBSE検査を求めずに和牛を輸入してやっているのに、日本が米国にBSE検査を求めるのは不公平だと主張することが出来ると考えているのです。「米政府は日本に対し、9月までに米国産牛肉の輸入を再開するよう強く求めている。米国が日本産牛肉の輸入を再開すれば、日本にも「公平な措置」を求める米議会などの対日圧力が強まる可能性もある。」と読売新聞は分析しています。

 貿易の法制度では、SPS協定によって輸入国が設定する適切な保護の水準(ALOP、Appropriate Level of Protection)でOKとされるならば、ほとんど何でも輸出入可能なのです。OIEコードよりも条件が緩くても、日米両政府がOKならその条件でよいのです。
 SPS協定とOIEコードとの関係は→ http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=279





毒饅頭を避けられるか


 JA農協の機関紙の日本農業新聞は「日本産牛肉解禁へ」と今回の米国の発表を歓迎しています。その一方、「米国産(牛肉)解禁とは別問題」と言っていますが、これは甘い見通しだと思います。内外無差別の同じ条件での競争が米国流のグローバリーゼーションです。今の日本政府も同じ方針です。つまり米国産牛肉は別条件と国内と国外を分けることが政治的外交的にできると考えるのは、非常に甘い。

 米国産牛肉が未検査でスーパーの店頭に並んだら、日本国民の国産牛肉への信頼感、安心感が損なわれ牛肉消費全体がどうなるのか、火を見るより明らかです。米国政府の条件で9トン輸出したら、失うものの大きさが分かっていません。毒饅頭と気づかずに食べようとしています。

 米国政府は、9月19日まで一般から意見を公募し、速やかに決定する方針です。米国の国内手続きですから、日本は干渉できません。しかし米国政府は、日本の20ヶ月齢以下のBSE検査除外の意見公募の際、30ヶ月齢にすべきだという自国の主張を寄せてきました。日本政府も、自国のOIE規約に上乗せ条件をつけるという立場を主張すべきではないでしょうか。例えば、OIEコードは最低限のルールであり、すくなくとも①30ヵ月齢以下③生前・死後の検分という条件を付け加えるべきである。輸出する和牛に生前・死後の検分条件が加われば、米国に対してもBSE検査を求める根拠になります。しかし、日本はちょうど衆議院選挙の時期です。政府はそれどころではありません。多分、行われないでしょう。

 この時期を選んで、米国の思惑に沿った条件で日本産牛肉の輸入(実績9トン)を決め、同じ無検査での米国産牛肉での輸入再開(実績25万トン)を図る。なんと、したたかな米国の外交、エビで鯨を釣る交渉力には、感嘆せざるをえません。
 「国連の常任理事国に日本はふさわしい」という米国のご機嫌取りに戦地イラクに自国民(自衛隊員)を送りこみ(米国と国境を接しているカナダ、メキシコは派遣していない!!)、その一方、常任理事国で拒否権をもつ中国の神経を逆撫でするような振る舞いを繰り返すという、何処に歩いていきたいのか、さっぱり分からない日本外交。この外交力で太刀打ちできるでしょうか。


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