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年末商戦に米国産牛肉が復活?? 駆け足の食品安全委員会の審議 2005-40 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-40 2005年9月27日小針店で印刷・配布の再録です。



年末商戦に米国産牛肉が復活??
駆け足の食品安全委員会の審議


 9月12日に食品安全委員会の米国産・カナダ産牛肉の安全性の評価する専門部会がありました。その議事録もできていないのに26日に31回目。2倍の速さで審議が進められています。年末には輸入再開という報道もされています。9月12日に呈示された吉川座長(東京大学教授)の答申の原案(たたき台)には、米国は日本よりBSE感染率は低いとしています。それなら輸入再開は可能と答申でるからです。

国際基準(OIE規約)と
農水省の諮問案


 国際基準(OIE規約)では次の4条件の牛肉、牛タンなど内臓肉を除く牛精肉は、輸出国にBSEが発生していても輸出入を拒めません。

 ①30ヶ月齢以下の牛②スタンニング不使用など適切なと畜方法③と畜前の検分とと畜後の検分④脳などBSEの特定危険部位の除去と肉の汚染防止の4条件です。ただし科学的な根拠があれば輸入国がより厳しい条件をつけることができます。逆に、輸入国が認めればより緩い条件でも可能です。

 と畜後の検分は、日本ではBSE組織検査です。米国では、BSE組織検査は食肉になる牛ではしていません。農水省の諮問案では30ヶ月を20ヶ月齢に厳しくし、その代わりにと畜後の検分はBSE組織検査を求めず米国の従来の検分でOKとするものです。

 問題なのは、20ヶ月齢以下の牛の牛タンなど内臓肉を除く牛精肉はならBSE組織検査をしなくても安全かです。日本では牛のSRMも肉骨粉も全部焼却して、さらに飼料規制を強化して交差汚染の抜け道を2001年12月に塞いで、2年たった事を根拠に20ヶ月齢以下は死後の検分=BSE検査からこの夏に外しました。

 米国では先週お伝えしたように、交差汚染の抜け道がたくさんあります。吉川座長(東京大学教授)の答申原案では肉骨粉だけに注目し、「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」と結論しています。つまり、交差汚染でBSEに感染した牛が今も発生している。素人考えならこれだけで、BSE組織検査ナシでの輸入再開は無理です。

 吉川座長(東京大学教授)はさすが専門家、日米での20ヶ月齢以下のBSE牛の比率はどうか試算しました。これが同じなら輸入再開は可能と答申できます。それが答申原案の「2.3サーベランスによる検証」です。

 しかし、日本のBSE検査結果と米国の拡大サーベランス結果の違いを吟味していません。そのため米国が低いと間違っています


米国の拡大サーベランスの実情


 日本は食肉にされる全ての牛、と畜場から不健康などの理由で廃棄される全ての廃棄牛と20ヶ月齢以上の死亡牛でBSE検査をしています。

 米国が2004年の6月からはじめた拡大サーベランスでは、廃棄牛は計画では全て、月齢や種類を問わず全て年間19万5千頭を調べると3月に発表していました。しかし実際には30ヶ月齢以上に限定しています。およそ15万頭に減ります。しかし検査数の実績ではそのうちの4頭に1頭だけ約25%だけです。廃棄牛はと畜場で獣医などが検査してより分けています。廃棄牛がBSE検査の前にどこかへ歩いていって行方不明になったのか、廃棄牛から検査に廻す牛を更に選別していたことになります。

 また、05年4月に発効した北米三国(カナダ・メキシコ・アメリカ)の統一BSE対策で、成牛(30ヶ月齢以上)では、「明らかな理由で障害を持っている牛、たとえば、輸送の途中で傷ついたような場合には、獣医は、BSEの症状とは一致しないものとの決定を下すことが出来る。」としました。そうしたら検査数が更に3分の1に減りました。

 米国は死亡牛はBSEに特徴的な症状を示した上で死亡した牛、年間約25万頭を調べると計画しました。しかし実際には年間32.1万、約128%と大幅に超過した数を調べています。調査用にサンプル採る人へのマニアルには、対象以外の死亡牛でもサンプルを採取し検査に廻しても構わないとあります。

 死亡してから時間がたつと腐敗で良いサンプルが取れません。そのためかBSE2例目は5頭分の組織が混じっていました。しかし、検査に廻されています。これで済むなら、幾らでもサンプルを採れます、提出できますネ。1サンプル約10ドルの手間賃で集めています。

 米国は今年の7月22日まで3回開かれた実務者会合で30ヶ月齢以上に限定したことは日本に伝えました。他の点は口を閉ざしています。会合の5日後に米国から提出されたのは3月の計画案の資料です。30ヶ月齢以上に限定したことさえ書かれていません。全く不誠実ですし、少なくとも廃棄牛でのサーベランスのデータはサンプル採取に信頼性がなく使えません。またBSE組織検査の方法の違いによる検査感度などから、「米国の検査では感染牛の見逃しがある」ことが、28回の審議で確認されています。


米国の交差汚染による
BSE発生状況


 死亡牛でのデータ(32.1万頭で1頭、死亡牛94万頭で推定3頭)で、廃棄牛での検出されたであろうBSE牛を吉川座長の方法で計算してみます。日本のデータでは、死亡牛98100頭から2頭検出、廃棄牛8300頭から1頭検出、食肉の牛90万頭で2頭です。死亡牛10万頭に2頭、廃棄牛なら10万頭に12.3頭。米国でも同じ比率とします。

 計算すると成牛の廃棄牛約15万頭中に3頭。
 2/98100:1/8300=1/321000:A/155000
(A/155000)×(2/98100)=(1/8300)×(1/321000)
A=(1/8300)×(1/321000)÷(2/98100)×155000
A=(1×1×98100×155000)÷(8300×321000×2)
A≒3

廃棄・死亡牛全体で6頭で計算すると食肉にされた270万頭中には2頭。
3/(98100+8300):2/90万=6/(94万+15.5万):B/270万
(B/270万)×(3/11万)=(6/110万)×(2/90万)
B=(6/110万)×(2/90万)÷(3/11万)×270万
B=(6×2×11万×270万)÷(110万×90万×3)
B≒2

合計すると米国の成牛380万頭中に8頭の検出可能なBSE牛がいると推定されます。

 吉川座長は廃棄牛のデータも信頼できるもの死亡牛と廃棄牛を合算してデータを使っているので半分の4頭です。
 日本の成牛では100万頭で5頭ですから、虹屋の計算では米国の倍近くいることになります。しかし、「米国の検査では感染牛の見逃しがある」のですから、これ位の違いは余り意味がありません。見逃しが1~2頭と控えめに考えるとほぼ同じになります。 つまり、米国の成牛でのBSE感染は日本のそれと控えめに見積もって同じであろうと評価されます。吉川座長は、見逃しを考慮せず、日本より感染率は低いとしています。それなら輸入再開は可能と答申できます。


米国の若齢牛の状況は、
以前の日本と同じ、
BSE検査すべし


米国の成牛でのBSE感染は日本のそれと控えめに見積もって同じであろうと評価されます。

 日本のBSE感染は、これまでの検査結果を見ると2001年12月以前の交差汚染があった時代の飼料を生年月日からみて確実に食べているか、その在庫品を食べたと見られる牛、21ヶ月、23ヶ月齢から検出されています。在庫品は2002年半ばには消費され無くなったと見られています。それ以降生まれた牛、肉骨粉で交差汚染を制度的に排除した飼料で育った牛からは一頭も出ていません。それだからこそ、日本は20ヶ月齢以下の牛をBSE検査から除外できたのです。

 「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」であり、交差汚染によるBSE発生の状況は米国の成牛での状況から、日本の2001年12月の肉骨粉完全禁止以前と同じ、控えめに見て「同じ」といえます。

 その以前の飼料を食べた牛が若齢牛の大半を占めていた時に日本は全頭で20ヶ月齢以下もBSE検査をしていました。したがって、同じ状況下の米国の若齢牛、20ヶ月齢以下はBSE検査をすべきです。米国の若齢牛、20ヶ月齢以下をBSE検査をしないでも安全ということは出来ません。

 米国が2004年春に予告した飼料規制強化を実施し、きちんとしたサーベランスでその効果が確認されるまで、と畜後の検分ではBSE組織検査を条件とすべきです。


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