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食品安全委員会にBSE問題で2005/9/22と23に送った質問 [牛‐肉、乳、飼育]

食品安全委員会に2005/9/22と23送った質問


9月12日 第30回プリオン専門調査会に出された 吉川座長のたたき台について① たたき台の「1.1 経緯」で、国際基準であるOIE規約との関連が一言も触れられていない。 今回の諮問、審議の基本的性格は、平成1 7 年5 月2 6 日の第9 6 回食品安全委員会(本委員会)で、農林水産省・伊地知大臣官房参事官は「今回の諮問は輸入停止以降、リスク評価のための情報収集を行ってきたことを踏まえまして、一定の輸入条件(現在の米国の国内規制及び日本向け輸出プログラム)でのリスク評価をいただき、その結果を踏まえて国際基準(OIE基準)を上回ることとなる検疫措置を実施しようとするものでございます。」(議事録5ページ、カッコ内は弦巻が加えた)


厚生労働省の松本大臣官房参事官は米国から輸入される牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合と、我が国でとさつ解体して流通している牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合の牛海綿状脳症に関するリスクの同等性についての意見を求めるもの」としている。 


 すなわち、審議の焦点は
①OIE規約での牛肉と内臓肉での諸条件を米国の国内規制及び日本向け輸出プログラムが満たしているか
②それを上回ることとなる検疫措置であるか
③これらの条件・検疫措置の結果、日米の牛肉と内臓肉のBSE牛海綿状脳症に関するリスクの同等性が確保されるかになる。


 しかし、国際基準であるOIE規約との関連がこのたたき台では、触れられていない。国際基準(OIE基準)を上回ることとなる検疫措置の実施は国民全てが望むものであり、この点を明確にしていただきたい。





吉川座長のたたき台の
「2.1 侵入リスクの比較」について


2.1 侵入リスクの比較では、BSE感染牛の輸入・移入、肉骨粉、動物性油脂の三ルートが取り上げられている。BSE感染牛の輸入・移入、肉骨粉では、カナダからの輸入も多いのカナダの汚染率=BSE感染牛の率は「極めて低い」として事実上無視している。カナダの汚染率は審議されたことがないのに、この取りまとめはおかしい。

 動物性油脂では、オランダ産のみを問題にしているのはおかしい。牛や肉骨粉では、カナダ産・カナダ経由のそれを取り上げているのに、なぜ油脂ではとりあげないのか。また米国・カナダ国内での狂鹿病(CWD)など他のTSE因子をもった肉骨がレンダリング原料となり、肉骨粉や油脂になっている。この点を取り上げないのもおかしい。





吉川座長のたたき台の
「2.2暴露・増幅リスク」について
 その1


 肉骨粉の暴露・増幅リスクを検討している。BSE陽性牛の感染値の99.4%を占めると言われるSRMが、米国では全て牛でレンダリング原料とされているから、当然である。吉川座長は、米国でのレンダリングで、感染価が約1/100になるとしているが、欧州食品安全庁(EFSA)は「大気圧の下で(つまり加圧することなく)加工しているから、BSE感染性が工程に入れば、これを大きく減らすとは考えられない」としている。

 吉川座長は、平成15年9月の「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」の「4感染経路モデルによる計量的な分析の結果と考察」において「旧方式では汚染リスクの軽減若しくは不活性化はほとんど望めないが、新方式では高温処理(133℃、3気圧、20 分)で10マイナス4乗 以上の感染価の低下が見込まれる」としている。しかし、これまでの専門部会の審議で米国・カナダでのレンダリングのやり方を検討したであろうか。欧州食品安全庁(EFSA)は「大気圧の下で加工している」としているのだから、感染価は「軽減若しくは不活性化はほとんど望めない」と見るべきではないか。





吉川座長のたたき台の
「2.2暴露・増幅リスク」について
 その2


レンダリングでは肉骨粉だけでなくタロー(牛脂)も生産される。吉川座長は、平成15年9月の「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」の「4感染経路モデルによる計量的な分析の結果と考察」において、牛での暴露評価ではSRMを含む肉骨粉、動物性油脂に着目している(4.2.3.4 リスクの特性 総合評価)。しかし、たたき台ではタロー(牛脂)の利用による暴露・増幅が全く考慮されていない。

タロー(牛脂)ではプリオンなどのタンパク質は不溶性不純物として含まれる。米国は不溶性不純物0.15%以下で、SRMも原料とされている肉骨粉製造時に産生される動物性油脂(イエローグリース)である。そして、米国ではイエローグリースの使用に何の規制もない。たたき台では肉骨粉に注目し、「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」としている。

 したがって、現在の米国の状況は、先の考察での吉川座長の言葉を借りれば、「肉骨粉は、特定部位(SRM)の使用により汚染される可能性が極めて高い。・・レンダリング由来の動物性油脂では特定部位(SRM)を使用していたわけであるから汚染の可能性を否定できない。その場合、動物性油脂中の不溶物として(肉骨粉と)混合汚染を起こしている可能性がある。」(4.2.3.3 製造工程によるリスク)と見るべきではないか。





吉川座長のたたき台の
「2.2暴露・増幅リスク」について
 その3


吉川座長は、平成15年9月の「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」の「4感染経路モデルによる計量的な分析の結果と考察」において、SRMを含む動物性油脂イエローグリースによる牛での暴露評価では、汚染動物性油脂を代用乳・人工乳として摂取した新生牛の汚染に専ら着目している。

 米国で、代用乳・人工乳で曝露された可能性が高い食肉牛は、フィードロットで肥育されと畜される30ヶ月齢以下の牛のうち、約10%、320万頭の乳用牛の去勢雄牛である。生後8週齢になるまでの間は、カーフハッチでの代用乳および人工乳(スターター)によるほ育が行われ、その後、10週齢程度で育成舎での群飼に移行し、粗飼料と濃厚飼料による育成され、その後フィードロットで肥育される。この資料は、現在の(独)農畜産業振興機構の月報「畜産の情報」(海外編)の2003年3月の米国の「酪農家の副産物・乳おす牛による牛肉生産(子牛肉生産と乳去勢肥育)の状況」 http://lin.lin.go.jp/alic/month/fore/2003/mar/rep-us.htm

 またたたき台では、肉骨粉による交差汚染を起こす要因として、牛の肉骨粉の使用が許されている鶏飼料の残渣、豚飼料の残飯などを牛に給与することが禁止されていないことをあげている。甲斐諭専門委員によれば「大局的に見て(肉用の子牛の)主な産地は米国南東部が中心地で全米の子牛の約35%がそこで生産され、米国内の27州に販売されている。米国南東部の子牛生産地の繁殖牛経営は20~30頭の繁殖牛を飼養する零細経営が多く、綿花や大豆を栽培し、家禽も使用している家族経営が多く、兼業経営が多い。」(28回専門部会の参考資料10)とある。つまりつまり鶏・豚飼料の給餌による交差汚染の確率が高い牛群がある。
このような、飼育方法による曝露リスクを十分に考慮して、交差汚染の確率を評価すべきである。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その1


米国の拡大サーベランスの結果の信頼性について何も触れていない。その為、データの扱いが不適切である。

米国の拡大サーベランス計画は、米国の資料に拠ればと畜の際の廃棄牛の全て約19.5万頭/年と死亡牛の一部、原因不明で死亡した牛など約25万頭/年である。

その実績は、2004年6月から2005年3月までが、6月10日に提出された補足資料の47ページにある。2004年6月から2005年7月3日まのデータが7月8日に提出された補足資料の61ページにある。

 計画に比べ30ヶ月齢以下の牛が1頭しか検査されていない、廃棄牛が計画の約16.5%と大幅に不足で、死亡牛は約128%と逆に超過している。こうした、拡大サーベランスの実績から、まずその調査の信頼性を評価がたたき台には必要である。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その2


計画では、月齢によるサンプルリングの制限はない。例えば廃棄牛の計画の算出根拠は、FSIS(食品安全検査局)の2002年度廃棄データでは全ての廃棄牛が全と畜数の0.57%であり、計画はそれをそのまま使っている。廃棄データは、雄牛(種牛、全体の廃棄牛の0.8%)去勢牛(6.4%)経産牛(Cows、77.3%)未経産牛(Heifers、4.8%)子牛(10.5%)である。去勢牛と未経産牛は食用にされる牛で、ほとんどが30ヶ月齢以下と米国は主張している。子牛は生後20週齢以下である。拡大サーベランスは計画段階では月齢による制限はしていない。しかし30ヶ月齢以下の牛は1頭しか検査されていない。サンプリングで30ヶ月齢以下除外のバイアス(偏向)がかかっている。

 今回の諮問は去勢牛と未経産牛の牛肉、内臓肉であり、これの牛群からでる廃棄牛からは殆どサンプリングされていない。計画では検査対象であるが、実際には殆ど検査されいないのは、拡大サーベランス結果の致命的欠陥ではないか。

 また、逆に30ヶ月齢以上である経産牛(Cows)の廃棄牛19.5万×77.3%、約15万頭から殆どのサンプルが採られていると結果から推測できる。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その3


 廃棄牛の検査数は、2004年6月から2005年3月までの期間では約3000頭/月である。05年4月5月6月は3ヶ月間で2337頭(34693-32256)である。廃棄牛の発生数がこの3ヶ月間は三分の一に減ったのであろうか。サンプリングに変化が起こったのであろうか。05年4月に発効した北米三国(カナダ・メキシコ・アメリカ)の統一BSE対策(Report of the North American Chief Veterinary Officers on Harmonization of a BSE Strategy)には「老齢の牛で、明らかな理由で障害を持っている牛、たとえば、輸送の途中で傷ついたような場合には、獣医は、BSEの症状とは一致しないものとの決定を下すことが出来る。」という項目がある。つまり廃棄牛のサンプリングで獣医の裁量で、サンプリングから除くことに4月からなっている。この影響である。BSE牛は輸送の途中で傷つかないのであろうか??これは、拡大サーベランスの信頼性を阻害する決定で、サンプリングに加えられたバイアス偏向であるが、公表された計画にはのっていないし、米国からの提出資料にもない。
北米三国の統一BSE対策の原文はhttp://www.usembassycanada.gov/content/can_usa/madcow_bseharmonization.pdf





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その4


 05年4月以前は、約3000頭/月であるが、これは計画案の約20%、経産牛(Cows)の廃棄牛に限定しても約25%でしかない。つまり拡大サーベランスには、米国の資料にはないバイアスが廃棄牛のサンプリングでは当初からあったと推測できる。

 このように拡大サーベランスの廃棄牛のデータは、サンプリングに様々なバイアスが、計画にはない公表されていないバイアスがかかっている。その結果の信頼性は非常に低い。とくに今回の諮問は去勢牛と未経産牛の牛肉、内臓肉であるが、これの牛群からでる廃棄牛からは殆どサンプリングされていないことは、拡大サーベランス結果の致命的欠陥ではないか。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その5


米国の拡大サーベランス計画は、死亡牛は約25万頭/年からのサンプリングである。肉用繁殖雌牛の原因不明で死亡した牛約10万頭と乳用雌牛の原因不明で死亡した牛、歩行障害または怪我で死亡した牛、運動失調の症状を呈して死亡した牛の約15万頭である。
計画段階で肉用繁殖雌牛の歩行障害または怪我で死亡した牛、運動失調の症状を呈して死亡した牛が対象から外されて理由は不明である。農水省・釘田衛生管理課長によれば「その中でBSE に特徴的な症状を示したような牛。そういった症状を示した上で死亡した牛」(27回専門部会議事録11ページ)。
またこれらの牛を特定捕捉する方法も不明である。「何をもって、例えば、農場死亡牛、あるいはBSE症状を示した死亡牛というのは、どうやって補足しているのかよくわからないところもございます。」(農水省・釘田衛生管理課長 27回専門部会議事録42ページ)

 実績をみると、死亡牛は04年6月から05年7月までの13ヶ月で34.8万、年間32.1万、計画比約128%と大幅に超過したサンプル数になっている。04年6月から05年3月までは、119%。4,5,6月では157%。明らかに、4月、5月、6月の3ヶ月間の死亡牛サンプルが異常に多い。日本の死亡牛検査では、この時季にこのような大きな死亡牛数の季節変動は見られない。肉用繁殖雌牛は春仔の出産時の死亡が3月4月に多いが、それはサーベランスの捕捉対象の原因不明で死亡した牛にはならない。この増加は、死亡率や死亡原因の季節変動では説明がつかない。

 採取場所の内訳が2004年6月だけ公表されている。20%はと畜場(ダウナー牛・死亡牛・病牛・傷害牛専用と畜場)、30%はレンダリング工場、40%は廃品回収所で収集したもので、農場などからは10%。このような場所で、上記の死亡原因の牛だけ選別することは可能だろうか。2例目のBSE牛のサンプルは、5頭分が混じっていた。





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その6


米国が2004年3月に公表したサーベランス計画Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) Surveillance Plan March 15, 2004の2ページのClinical Presentation Criteriaには次のような項目がある。 4. Dead cattle Any dead cattle where the specimen is of diagnostic quality and the cause of death and/or clinical signs prior to death, if known, do not preclude it from the targeted population.

 原因不明で死亡した牛は本来のサンプル対象になっていますから、それ以外は死亡原因がわかっている牛です。その死因がわかる牛のうち、歩行障害または怪我で死亡した乳牛、運動失調の症状を呈して死亡した乳牛は計画のサンプル採取対象、それ以外は計画では対象外です。しかし先の規定は、それらの死因がわかる死亡牛もサンプル採取対象から排除しないとなっています。つまり、どんな死亡牛からサンプルを採取してもよいのです。

 計画の対象死亡牛を特定捕捉する方法も、計画以上の死亡牛サンプル数が集められる理由も、これで分かります。BSEに特徴的な症状を示した上で死亡した牛だけのサンプルを集める計画が、実際にはどんな死亡牛からもサンプルを採取している。サーベランスの質は、計画よりも実績がはるかに劣化している。

 また山内専門委員が指摘する「アメリカの場合だったら、結局死んだ牛だったら、それでもうそのまま自分のところで処分してしまうと。といったようなことだったら、検査に回ってこないのではないかと。だから、実際に死亡している牛のどれぐらいが検査に提供されてきているのか、されるんだろうかという、その点がよくわからないんです。」という問題もある。日本には牛の登録の法的制度があるが、米国にはない。このため、死亡牛を農場で処分されても、USDAは知りようがない。

サーベランス計画の原文は
http://www.aphis.usda.gov/lpa/issues/bse/BSE_Surveil_Plan03-15-04.pdf





吉川座長のたたき台の
「2.3サーベランスによる検証」について
 その7


このように米国の拡大サーベランスは、04年3月に公表された計画と実績が全く別物である。死亡牛は、BSEに特徴的な症状を示した上で死亡した牛だけのサンプル選別を計画しながら実際は死因を問わず集めている。
廃棄牛は、3月の計画数は月齢を問わず全ての廃棄牛である。しかし05年7月22日のBSEに関する専門家及び実務担当者会合(WG)報告書によれば「30ヶ月齢以上の高リスク牛を対象」と米国は説明している。7月27日に米国が提出した資料では廃棄牛のサンプル数は計画通り19.5万頭である。
実務担当者会合での説明からすれば約15万頭前後に減らされていなければならない。また、05年4月からの北米三国の統一BSE対策の実施により廃棄牛からサンプルが採られる数が激減しているが、7月の実務担当者会合では説明がない。余りに不誠実である。

 廃棄牛のサンプリングには、と畜場で獣医が分別しているにもかかわらず約75%がサンプルを採られていない。不明なバイアス偏向がかかっており、そのサンプリングは信頼性に乏しい。

 また米国BSE2例の検討から、サンプルの検査に日本は確定検査にウェスタンブロットWB法とIHCを併用しているのに米国はIHCだけであったことや用いた抗体の性質から「米国の検査では感染牛の見逃しがある」が、28回の審議で確認されている。

 このようなデータでは、現在の飼料規制の有効性を評価するのは難しい。たたき台で吉川座長は制度的に「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」としているが、その可能性が現実になって、どれ位BSEが発生しているかを知ることは不可能ではないか。

 たたき台では、米国の拡大サーベランス結果から、若齢牛でのBSE数を外挿法で求めている。米国の拡大サーベランス結果は、信頼性、信用性に乏しい。制度的に「米国では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が否定できない」。これに対し日本では制度的には交差汚染が起きる抜け道はない。外挿法は使えないのではないか。


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