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日本ではBSE牛が20頭検出され、米国では2頭・・・米国のほうが安全??2005-32 [牛‐肉、乳、飼育]

畑の便り  №05-32 2005年8月9日小針店で印刷・配布の再録です。



日本ではBSE牛が20頭検出され、
米国では2頭・・・
米国のほうが安全?? 


 日本では米国の10倍のBSE牛が検出されています。その大きな理由は、米国では食卓に上がる牛肉は一切調べていないからです。こうした日米のBSE検査の仕組みの違いから、日米のBSE検出数の意味を見てみます。

日本470万頭、米国44万頭
30ヶ月齢以上約595万頭に検査が必要
食用になる牛を検査をしない理由
米国の検査システムで、日本を調べたら・・
米国の検査結果では、アメリカにBSEが発生していることしかわからない





日本470万頭、
米国44万頭


 日本では米国の10倍のBSE牛が検出されています。その大きな理由は、米国では食卓に上がる牛肉は一切調べていないからです。米国では年間約3400万頭が食肉用にと畜されますが、BSE検査はされません。日本では、125万頭ですが全て検査されます。この全頭検査は、2001年10月から始まり7月末までの累積で約470万頭です。日本は食卓に上がる牛肉から可能な限りBSE牛を除くために全頭検査をしています。米国は、BSE検査はBSE発生の有無を知るための調査検査だから、BSE牛の確率の高い歩行困難などのダウナー牛や死亡牛などの検査で十分として、約39万頭を検査。(これでも大幅に増えている、2001年は5,272頭、02年は1万9,990頭、03年には20,543頭、2003年12月に1例目が出たので2004年から拡充して7月末でこの数字です)

 その一方、米国は日本の全頭検査はやりすぎで30ヶ月齢以上、EUでもやられているBSE検出確率が高い30ヶ月齢以上に絞るべきだと日本に捩じ込んでいます。「米国政府は日本が検査対象の下限月齢をさらに国際的な慣例と調和すべく20カ月齢から30カ月齢に引き上げることを奨励する。」(4月に公表された意見書)
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20050412-51.html

 では米国では30ヶ月齢以上の牛の検査をしているのでしょうか。説教を垂れるぐらいですから、やっているかと思いきや、やっていません。2万頭を検査する計画を公表しましたが、結局、1年以上たった現在まで1頭も検査していません。


30ヶ月齢以上の数と
検査の必要性


 米国の年間のと畜頭数の約4割が肉用牛の去勢雄牛(約1400万頭)、1割弱が乳用牛の去勢雄牛(約320万頭)、約3割が肉用牛の未経産雌牛(約1130万頭)で、お役御免になった乳用経産牛が1割弱(約260万頭)、同じく肉用繁殖牛の経産牛が1割弱(約305万頭)です。前の3つ、去勢牛と未経産雌牛の90%は20ヶ月齢以下で、30ヶ月齢以上牛は1%位といわれています。後の二つの経産牛は初産が約28ヶ月齢ですから、お役御免になる頃には30ヶ月齢はゆうにこえた高齢牛です。合わせると30ヶ月齢以上は、と畜頭数の約1割7分、1年間に約595万頭と見られます。これらの肉は、専ら、米国内の国内消費に回されています。

 検査できる数、検査能力や検査に充てられる資金は限られています。どのような牛を調べれば、もっとも効率的にBSE牛を検出し排除できるか。BSEの発生状況を把握できるでしょうか。BSEは感染してからの潜伏期間が長く、現在の検査技術で検出例は30ヶ月齢以上が圧倒的に多いのです。こうした理由からEUでは、BSE検査を30ヶ月齢以上の全頭で行い、検出できるBSE牛を食卓から排除しています。英国は、余りに多くて30ヶ月齢以上は検査もせず、即座に廃棄処分、昨年まで全て食用にはしていませんでした。現在はBSE検査をして選別しています。日本は全頭数の検査能力もあり、国民も出費を認めたためやっています。玄関に4つ鍵をつけるは用心しすぎかもしれませんが、馬鹿・非常識呼ばわりされることではありません。

 米国の一例目2003年12月のBSE牛は、お役御免になった乳用経産牛(推定48ヶ月齢)でダウナー牛であっため検査されました。2例目は同じく肉用繁殖牛の経産牛(推定144ヶ月齢)で、と畜・食肉工場に到着時に死亡していたため検査された牛でした。2例目は、産後の肥立ちが悪く衰弱したため家畜市場に出され11/11にセリにかけられ、15日にと畜・食肉工場に運ぶトラックに自力でのりましたが、3日間家畜市場に留め置かれたためか他の1頭とともに死亡していました。もう少し早く、と畜・食肉工場に運ばれていれば、死亡せず検査もされず、と畜・解体され食肉にされたでしょう。

 このように肉用繁殖牛の経産牛や乳用経産牛などは、科学的にも、国際的な慣例や実態からも、BSE牛肉を食べないよう摘発、排除のため全頭を検査すべきなのです。米国も1例目発生後には、17州の40のと畜・食肉工場で2万頭を検査する計画を公表しましたが、結局、1年以上たった現在まで1頭も検査していません。たった2万頭でしかないのに何故検査しないのでしょうか。





食用になる牛を
検査をしない理由


 この2万頭検査からBSE牛が検出されたら、どういう事態が起きるでしょうか。一例目2003年12月のBSE牛は、既に枝肉から部分肉に加工され販売されていました。それで、45トンの牛肉が回収されました。体重600kg牛1頭の部分肉は約250kg、BSE牛1頭分の肉回収もために90頭分を回収したのです。枝肉を解体し、部分肉に加工する段階では大規模な流れ作業であるために個体別の加工処理が出来ないため、混ぜこぜになるのです。この点は、今も変わりません。同じ騒ぎが起きます。

 また1例目は、歩行困難なのダウナー牛でした。歩行困難はBSEの症状の一つですからダウナー牛を未検査で人の食用にすることが本来おかしいのです。アメリカ国内からの要求に応じてダウナー牛を人の食用にはしない禁則が新設されました。計画通り2万頭検査してBSE牛が検出されたら、同様に、経産牛を食用にしないとかEUや日本並みの経産牛・30ヶ月齢以上全頭検査の要求が米国内から出ます。ダウナー牛は13~20万頭ですが経産牛などは約595万頭、食用禁止にはできません。また30ヶ月齢以上全頭検査するには少なくとも25・3億ドルかかります。(年間4万頭分検査で1700万ドル計上、米国政府05年度予算当初案)

 計画通りに2万頭検査をしなければ、上のような混乱も出費も起きません。”寝た子は起こすな”です。それで、実際に食卓に上がる牛肉は、一切、BSE検査を受けていないのです。”寝た子は起こすな”です。誰しも不安を覚えます。消費者団体などが私的に検査して検出されるかもしれません。その対策が「たとえBSEに感染していたとしても、特定危険部位以外の部位は、食べても安全である」というウソの宣伝です。





米国の検査システムで、
日本を調べたら・・


 米国では実際に食卓に上がる牛は一切調べられていません。日本では、この部分の牛から9頭検出されています。米国流なら見つかっていません。

 さらに歩行困難などのダイナー牛では、日本では6頭見つかっています。米国では「老齢の牛で、明らかな理由で障害を持っている牛、たとえば、輸送の途中で傷ついたような場合には、獣医は、BSEの症状とは一致しないものとの決定を下すことが出来る。」としています。これは2005年4月からの基準です。 
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=255

日本での結果を見ると、起立困難・歩行困難のダウナー牛には股関節脱臼や関節炎など所見がついています。http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0308-1.html これら5頭は、米国流では明らかな理由で起立・歩行困難を持っている牛になりますから、検査対象から外れます。そもそも、BSEなら骨折しないのでしょうか。新基準が非科学的なのです。この新基準の影響は、米国でも検査数の減少となっています。米国の検査数は2005年3月末までは1万を上回っていたのに、新基準発効後は週を減るごとに9000から8000、7000と減少、6月20-26日には6304にまで減っています。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05070401.htm


 検査計画ではサンプルのおよそ44%がダウナー牛から、56%は死亡牛から採取です。2005年3月末までの週1万強のサンプルのうち約5000弱がダウナー牛、約6000が死亡牛と推定されます。6月末の数字から、ダウナー牛からサンプルがほとんど採られなくなったと思われます。

 つまり、日本の歩行困難などのダイナー牛6頭うち1頭前後しか米国では検査対象になりません。

 また、日本では農場で死亡した牛から5頭見つかっています。米国では、死亡牛の27%をサンプルとして計画しています。日本は全頭対象です。先日、北海道で死亡牛を川原に埋めた事件がありました。日本では人目に付かないように処分したくとも牧場も狭い。しかし米国は埋める場所には困りません。牧場の隅に穴を掘り、死亡牛を埋めれます。米国農務省の内部監察局でさえ「BSEの場合には、破滅的結果への恐れから、(電話して、”BSEらしい牛がいる。検査を頼む”などと)進んで検査を申し出る生産者や関係業者は少ないだろう」と指摘しています。
 採取場所の内訳が2004年6月だけ公表されています。20%はと畜場(ダウナー牛・死亡牛・病牛・傷害牛専用と畜場)、30%はレンダリング工場、40%は廃品回収所で収集したもので、農場などからは10%。死亡牛の大部分は農場外から集められたものです。頭から、農場から検体を集めることをあきらめています。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04071501.htm
 つまり、大目に見ても日本で死亡牛で見つかった5頭のうち1頭しか米国では検体になりません。合わせると、米国のBSE検体のシステムでは、日本で検出された20頭から多めに見ても2頭が検査対象にされるに過ぎません。





米国の検査結果では、
アメリカにBSEが
発生していることしか
わからない


 さて、検査対象になっても、検査でBSEと判定されるでしょうか。日本では、エライザ法で一次検査をおこない更にIHC法とWB法で確定検査をします。WB法のほうが感度が100倍かそれ以上良いといわれています。しかし、両方で行います。これまでの20頭は18頭が両方の確定検査で陽性と出ています。2頭がIHCでは陰性(シロ)、WB法で陽性(クロ)です。

 米国はIHCだけで確定検査をしています。米国の2例目はIHCでは陰性(シロ)で、その後のWB法で陽性(クロ)でした。米国は、これをプリオンの蓄積量が少なかったためと説明しています。しかし検査結果を見た日本の専門家は「当初は異常プリオンの蓄積が少ないという話だったのではないか」「(データからは)しっかり蓄積していると言える」などの疑問や意見が出された(共同通信)そうです。つまり米国のIHC検査能力は日本では不合格、明らかに陽性のサンプルを陰性に判定していた可能性が強いのです。

 7月末、英国に確定検査に出されてものは、獣医が4月に遠隔地の農場で、お産のときに衰弱していた牛(推定12歳)から採取したものです。脳の一部をサンプルにとられているのですから、この農場で死亡牛です。この検体はホルマリン漬で保管されていました。農場ですから検体を適切に保管する施設、設備がありません。防腐のための当然の措置です。農場で採られた死亡牛の検体の少なからぬ数がホルマリン漬でしょう。ホルマリン漬ではIHC法でしか検査できません。その米国のIHC検査能力は上のようです。日本の農場での5頭の死亡牛のうち、多めに見ても1頭しか検査対象になりません。その1頭も陰性(シロ)と判定されてもおかしくないのです。 http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=427

このように日本ではBSE牛が20頭検出され米国では2頭でも、それは米国のほうがBSE汚染がすくなく安全ということではありません。

 私たちの目から見れば杜撰としかいえない米国のBSE検査体制。米農務省の内部監察局に、「検査が法的に義務づけられ、当局の権限に基づいて標的とする牛すべてがサンプリングの対象として収集されないかぎり、サンプリングに恣意あるいは作為が働かないとは保証できない」と指摘されている検査体制。サンプリングに恣意あるいは作為が働いている検査データは信頼できません。それも、BSE牛が検出されないようにバイアスがかかっているデータです。

 米国は97年にとった飼料規制がBSE感染を防いで有効に働いていると主張しています。これは適切に、無作為にサンプリング・検体が採られたBSE検査で、規制前に生まれた牛と規制後に生まれた牛でのBSE数を比べることで分かります。しかし、米国の検査は無作為が保証できません。BSE牛が検出されないように恣意や作為が働いている事を否定できませんから、役に立たないのです。米国の主張を裏付ける事も否定することも出来ないデータです。

 BSE牛が出ていますから、米国にBSEが発生していることは確実にわかりますが、それ以外の事、例えばどの月齢でどれ位といったことは分かりません。


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