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アルコール発酵、アルコール消毒、アル中・・酢-3 [調味料ー酢、料理酒、味醂]

柿やブドウやリンゴ、モモなど熟し糖度の高いものを、ヘタ等を取り除き、カメや瓶に詰めてそのまま、じっくり待つと、果実の表面に付着していた酵母と酢酸菌・アセトバクターの働き出します。容器の中で糖分からアルコール(エチルアルコール、エタノール)ができる酵母発酵とそのアルコールから酢酸ができる酢酸発酵が同時にゆるやかにすすみます。時間がかかりますが、酢酸とその果実の成分を含んだ果実酢ができます。

お酒の種類だけ、酢の種類がある

パイナップルの搾汁液から製造した果実酢・パイナップルビネガーは、パインアップルの微香があり東南アジアで主に造られています。サトウキビの搾り汁をそのまま醗酵させてできた醸造酒をさらに酢酸醗酵させたシュガーケインビネガー(さとうきび酢)。(この醸造酒を蒸留し、エタノールの濃度を高めてから熟成させるラム酒を「アグリコール・ラム」(農業ラム)で、沖縄の南大東島で作られている。⇒醸造元

沖縄では、黒砂糖を作った後の鍋に湧き水を入れて、鍋肌にこびりついて残っているものを洗い落として、その水をカメに入れて発酵させたそうです。さとうきび酢は、サトウキビの豊富なミネラルがそのまま含まれています。


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米や麦などの穀物を原料とするとこれらの糖分はでん粉で蓄えられているので、でん粉を麹菌などで分解する過程、『糖化』という工程が必要になります。

酵母は、酸素が無い、少ない嫌気環境では糖を分解して、アルコール(エチルアルコール・エタノール)と二酸化炭素にして生存に必要なエネルギーを得ています。同様に乳酸をつくるのが乳酸菌です。人間は酸素がないと筋肉では乳酸ができる回路でエネルギーを得ています。この乳酸が溜まって筋肉中の0.3%程度になると筋の収縮動作を著しく低下させ、運動を続けることが困難になるし、筋肉痛になります。酵母も乳酸菌も酸素が十分に有る環境では、糖を水と二酸化炭素まで分解する代謝系(クエン酸回路・TCA回路)が働きます。この代謝系ではアルコール発酵や乳酸醗酵のに比べエネルギーが16倍も得られるのです。人間も乳酸ができる回路ではエネルギーは16分の一で、1分~2分程度しか続きません。酵母も乳酸菌も酸素が有る環境のほうが生育はよいのです。


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日本酒では、でん粉を分解する麹菌の酸素呼吸と静置で嫌気環境になります。果実酒などは、タルやカメなどに封じられ静置されるので嫌気環境になります。パンの酵母は、練られた小麦粉の生地内では酸素が少ない。アルコール発酵が始まると、醗酵で生じる二酸化炭素で酸素が無い、少ない嫌気環境が維持されます。

エタノールは、消毒に使われているように殺菌力があります。殺菌力は65~75%濃度が一番強く、20%以下では殺菌作用はありません。4~8%で微生物が増殖できない静菌状態になります。また温度が高いほど殺菌力も大きくなります。エタノールは、水によく溶けるし油脂や脂肪にも溶け込み、加えて酵素などタンパク質を凝固させる性質も合わせ持っています。エタノールC2H5OHは、CH3の部分が脂溶(疎水)性、OHの部分が親水性となります。



細胞は、細胞膜という脂質の膜で包れた蛋白質などが溶け込んでいる水滴です。油脂や脂肪に溶けない性質のものは脂質の細胞膜で弾かれます。このように細胞膜はガードしています。しかし油脂や脂肪に溶けない性質だが必要なものを細胞内に取り入れるために、介添え役(チャンネル)となるなどのタンパク質が膜にあります。細胞膜は脂質が整然と列んだプールの中に、いろいろな機能を持つタンパク質が浮いている構造(膜構造)です。この脂質の細胞膜にエタノールは脂溶(疎水)性もあるので、簡単に溶け込みます。 細胞膜





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エタノールに入り込まれた細胞膜は軟らかくなります。軟らかくなった膜からは、細胞に大切なアミノ酸やカリウムなどが漏れ出します。さらに、タンパク質を凝固させるアルコールの作用はタンパク質の立体構造を壊し、それが酵素なら失活します。介添え役(チャンネル)が失活すれば、細胞外から栄養素が入らなくなります。エタノールによる栄養素の漏出・移入阻害で、飢餓状態となり細胞の増殖が抑制、つまり静菌状態になります。

高濃度エタノールでは、細胞膜が壊れます。死んでしまいます。

アル中・・人の脳細胞のアルコール消毒の結果??

人間でも同じです。エタノール耐性は微生物によって違いますが、人間でも神経細胞が影響を受け易い。正常な神経細胞機能や細胞間コミュニケーション=神経伝達を妨害されます。脳は神経細胞の塊ですが、エタノール・アルコールを飲むことにより脳の中でのドーパミン(幸福感を与える物質)の量が増えることが知られています。また逆に、アルコールを長期的に摂取していたあとに禁酒すると、副腎皮質刺激ホルモン(ストレスを感じたときに放出される物質)の量が増えます。それで飲酒が習慣化するわけで、エタノールが完全に分解されるには約12時間かかりますから、毎日飲酒すれば、エタノールに長時間神経細胞はさらされます。

アルコール依存症では精神症状として抑うつを伴うことが多く、また頭部画像所見などでは大脳の萎縮や記銘力障害、前頭葉機能障害を認めることが多く、痴呆を発症する例も少なくありません。つまりアルコール依存症においてエタノールの作用により、神経細胞の脱落や神経細胞新生の障害が生じ、脳神経回路網の改変が起きていることを示唆しています。動物実験では、エタノールが神経細胞の生存に影響するよりも低い濃度から、神経幹細胞の分化=神経細胞新生を抑制することがわかっています。 詳しく


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脂質は温度が高いと物理的に溶け(軟化)、低いと半固体(ゲル状)になっています。温度が高いと物理的に柔らかくなっているところに、エタノールの軟化が加わるから、殺菌や静菌効果が出やすいのです。サバ、サケ、マグロ等の水産生物は低い温度環境(15-25℃)で生息しているので、細胞膜を柔らかく保つ不飽和脂肪酸を多く持って細胞膜の流動性を保ち、生命活動を維持しています。体温(36-41℃)の牛、豚、鶏等の約2倍あります。 詳しく

ですからエタノール対策の一つは、細胞膜の飽和脂肪酸を増やすことです。形が直線的なので堅固な膜になります。さらに、ガードマン役の蛋白質を合成します。また傷害を受けたタンパク質を復元をたすける修繕係りの蛋白質を合成します。これらの能力は各微生物ごとに違います。どの程度の温度、エタノール濃度で静菌状態になるのか、死んでしまうのかは違います。

それでは、お酒の醸造では酵母など微生物相は、どのように推移するのでしょう。 続く


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