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ネオニコチノイド系農薬の子供らへの神経毒性を考慮した規制 [農薬ー害]

ネオニコチノイド系農薬の影響、とくに子供らに対する影響の顕われ方を考慮した食品における農薬残留をコントロールをまとめると次のようになります。

従来のやり方は、動物実験などで動物での影響が出ない一日当りの摂取量、無影響量・無毒性量(NOAEL)を割り出します。それを人間と実験動物との主の間の格差として10分の一、人での個人差として10分の一にする、安全係数100で無毒性量(NOAEL)を割り算して人での無毒性量(NOAEL)を算出します。(「不確実係数1/100をかける」とも言います。)それが人のADI・一日許容摂取量、一生毎日摂取しても毒性が現れないと考えられる摂取量を設定します。

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農薬によっては、同じ薬物が家庭用の殺虫剤や家庭用品にも使われています。ネオニコチノイド系は農薬以外にも防虫剤として建材、ガーデニング、シロアリ駆除、家庭用殺虫剤、ペットの蚤駆除などに多用されています。これらのルートによる摂取・被爆量などを勘案し、ADIの50%とか80%を食品残留での摂取上限として農薬残留基準値を設定する、コントロールしています。

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まず、遺伝子多型による高感受性、ハイリスクグループは、従来の人での個人差として10分の一の枠内に収まるかの検討が必要です。北海道スタディは遺伝子多型の個人差で約3倍、他の疫学研究では、喫煙量が1日10本までの場合では、胎児の体重は約90グラム減少で20本以上で533グラム減少と6倍差が出ています。これを合わせると20倍近くの個人差がありえます。

神経毒、特にヒトの発達神経毒性(Developmental neurotoxicity, DNT)の検出は、米国環境保護庁・EPA (1998年、OPPTS 870.6300) と経済協力開発機構OECD (2007年、TG 426) の二つの公式のDNT 試験ガイドラインがあります。OECDは10年ほど後に制定されていますから、その間の進歩を取り入れ、現時点では化学物質の発達神経毒性を検出する試験法としてはEPA ガイドラインよりもOECD ガイドラインの方がより優れているとされています。

米国では97年4月に大統領令(クリントン)「私は子供に安心して食事をあげられるようにしたい。・・子供たちは自分で考え自分たちを守る術を知りません。・・使用される農薬が子供を危険にさらす可能性があるのであれば,これを使用するべきではありません。信頼できるデータがない場合には(従来のやり方で出された基準値は使わず、その)基準値の10分の1以下とします」を出しています。
発生毒性 (催奇形性) 試験や繁殖毒性試験データにより乳幼児・子供への影響が示唆された場合には、まず通常の安全係数 100に、さらに10の不確実係数 (Uncertainty factor) を掛け1000で実験動物での無毒性量(NOAEL)を割り算して、乳幼児および子どもと13才から50才の女性(妊娠可能ということで胎児の保護を目的とする区分)でのADI・一日許容摂取量とします。

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大統領令にあるように信頼できるデータがあれば、10の不確実係数 (Uncertainty factor) を見直します。そのデータを得る方法として98年に制定されたのが米国環境保護庁・EPAのDNT・発達神経毒性試験ガイドラインOPPTS 870.6300です。
そのデータでヒトへの安全性 (特に乳幼児・子供に対する安全性) が担保できると判断される場合には、その内容に応じケースバイケースで3 倍あるいは1倍に追加係数が軽減される方向で運用されているそうです。

この二つのDNT試験ガイドラインでは、親動物数は80匹以上(20匹以上/群、4群)の実験動物を一定期間飼育し640匹を上回る児動物を行動観察した後、解剖し病理検査を行って調べます。約1億円と高価で、約1年と時間がかかり、および多数の動物の必要とします。実施されたDNT試験は約110程度です。それで、優先順位付けするための初期スクリーニング用の代替試験管内試験の開発が急がれています。

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脳の機能発達には、多種類のホルモンやアセチルコリンなどの神経伝達物質により、莫大な数の遺伝子発現が時空間的に精微に調節され、神経回路が形成されることが必要です。実験動物と人間では神経発達の次元が機能的あるいは構造的 (形態的) にも著しく異なるでしょう。行われた発達神経毒性DNT試験が少ないことと相まって、この試験での病理検査や行動観察結果、そこで見出された神経発達の異常が、ヒトのでみられる注意欠陥多動性障害・ADHD、学習障害あるいは自閉症などの発達障害との関連を十分に評価することはできていません。

参照 化学物質の発達神経毒性評価手法に関する情報収集調査報告書

1383575330.jpg「遠山千春(東京大学)らは、マウスを用いて脳高次機能に関わる社会的な行動を自動解析できる“インテリケージ”(TSESystems GmbH、ドイツ)システムを開発し、ごく低用量のダイオキシンを母胎経由で曝露したマウスが、行動に柔軟性がなく社会性行動にも異常がおきることを明らかにした。“インテリケージ”は全自動コンピュータ管理されたマウスの集団飼育ケージで、検査対象のマウスにチップを埋め込み、集団の中でのマウスの行動を終日コンピュータ管理できるシステムで、脳高次機能への環境化学物質の多様な影響を調べることが可能となる、画期的なシステムといえる。化学物質のリスク評価や農薬の毒性評価には、このような最新の行動奇形学の実験システムを取り入れていく必要がある。」 引用元 http://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2012/02/Kagaku_201307_Kimura_Kuroda.pdf

日本では2000年に農薬の試験ガイドラインが見直され、新たに急性および亜急性の神経毒性試験ガイドラインが追加されたが、発達神経毒性のガイドラインは未だない状態です。
ネオニコチノイド系農薬では、妊娠中の女性での喫煙影響の研究でニコチンが胎児の発達に対し影響して注意欠陥多動性障害・ADHDのリスクを高めることが判明しています。この結果はそのままネオニコチノイド系農薬に当てはまらないといった異論もあります。
2013年10月にパブコメにかかったネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンでは、田中豊人博士(東京都健康安全研究センター)の研究では仔の神経発達行動に影響が及んでいるという結果が出ています。
「農薬クロチアニジンのマウスへの給餌投与による生殖系及び神経行動系への影響」

ですから、日本の農薬の試験に発達神経毒性DNT試験が取りいれられ、その結果信頼できるデータを元に判断ができるようになるまでは、10の不確実係数 (Uncertainty factor) を掛け、従来のやり方でのADI・一日許容摂取量の10分の一で規制を行うべきです。

例えば、資料の26ページ別紙(3)の1~6歳の幼少児、妊婦さんの摂取量(TMDI・理論最大1日摂取量)は、子供ら幼少者に対する悪影響、注意欠陥多動性障害・ADHDといった発達障害リスクを考慮して一日許容摂取量・ADI比で5%以下になるように規制すべきです。食品での残留基準だけでなく、家庭用殺虫剤などの用途も対象に規制すべきです。

またネオニコチノイド系農薬は同じ作用ルート、ニコチン性受容体に働くメカニズムは同じですから、ADIを合算するネオニコチノイド系で合算したADI、クロチアニジン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムを合算した総合的なADIと残留基準の設定が必要だと思います。

そして有機リン系農薬もニコチン性受容体をターゲットの一つにしています。有機リン系は今も多用されています。有機リン系とネオニコチノイド系の複合毒性も研究を進め、その神経毒性を見極める、解明する必要があります。



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