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狂牛病と遺伝子組換え食品 有機農業と畜産 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]

畑の便り  №01-41&40 2001年10月2日小針店で印刷・配布したもの
狂牛病と遺伝子組換え食品 有機農業と畜産 
二頭目の狂牛病発生騒ぎから 13日追加
 
10月12日、東京で狂牛病、厚生大臣の言を借りれば、「正確な確認はしていないが、(二頭目の狂牛病である)可能性は強い」牛が見つかったと発表されました。その日の深夜に、シロの確定診断が出て、一安心ということになりましたが、様々な問題点が浮かび上がりました。
 
 狂牛病の二頭目の発生は、予測されたことですから、余り驚きませんでしたが、開いた口が塞がらなかったのは、都は「(昼の)現段階では、どの個体から採取したものかわからず(どの牛が)不明」とした事です。問題の牛は、10日に東京・港区の都中央卸売市場食肉市場で解体された食肉牛、約300頭のなかの一頭です。仮に、狂牛病と確定された場合、どの牛がわからないのですから、確実に狂牛病を感染源となる食肉、内臓を確定できない。300頭の牛の全てを疑い、回収し、廃棄しなければならない。
 また問題の牛の産地、生産農家も判らないことになります。つまり感染源となった飼料も調べられない、判らない。だから同じエサを食べていた牛も判らないことになります。この300頭の牛は18の県などから集荷されたもの。どの牛か判らなければ、この18の県などの牛の全てを疑わなければならないことになります。
 
 そもそも、18日からと殺・解体される牛の全てで狂牛病の検査を厚生労働省が実施することになり、その検査法の研修につかわれた都の食肉市場から供された牛の脳から、陽性の反応が出たことが事の発端です。全数検査は二頭目三頭目の狂牛病の牛を見つけ出し、食卓に上がらないようにするためです。この研修に供された牛から、見つかる可能性は当然あります。ですから、見つかった場合、その牛の肉などの出荷・流通を止めなければならない事態は十分に想定できたことです。ところが、先ほど見たように全く備えていなかった。食肉では販売されていないだろうと言われていますが、内臓は既に販売されているそうです。これでは、全頭検査が18日か実施されても、販売される牛肉の安全は保証されるのか。また同じ騒ぎになるだけではないのか?
 
 農林水産省は、11日から、牛の出荷の全面停止を行政指導していますが、11日にもこの市場には牛が集まり、都営のこの市場は受け入れ、と殺し解体しています。単純に言えば、食肉市場に入る前は、農水省の管轄で、市場の門をくぐってしまえば厚生労働省の管轄になるのですが、これは余りに酷い。右手のやっていることを左手は全く知らない。となれば、頭が問題ですが、両省の上にいるのは、総理大臣しかいない。
 
その総理は、自衛隊を米軍に使わせる法案にかかりっきりで、国内の「すぐ目の前にある危機」の管理はどうなっているのか。両大臣を叱りつけたそうですが、叱るだけなら、このチラシのように私にもできる。厚生労働省は、18日からの全頭調査では、確定診断が出るまで公表しないそうです。今回の場合、10日にと殺されてから、確定診断が出たのは12日の深夜です。3日間。18日以降、この日数が短くなったとしても、食肉や内臓は、食肉市場の門を出て流通に乗っているのではないでしょうか。果たして、確実に狂牛病の牛が食べられる前に確実に回収できるのでしょうか。この「すぐ目の前にある危機」にどう対処するつもりなのでしょうか?
閑話休題。
 ともあれ、食べ物の安全は、その栽培、飼育、加工製造まで目を届けなければならないという事を今回の狂牛病事件は教えています。それは、虹屋の原点でもあります。
以上13日追加
 
先月の10日に明らかにされた日本の狂牛病発生は、次々に隠された事実がわかり、波紋を広げています。10月5日、お菓子などの加工食品に使われるビーフエキスなども、特定危険部位を使っていないかの調査と使っていた場合の自主回収が行政指導されました。虹屋にもビーフエキスなどを使っているものがあります。調査の結果は、わかり次第、店頭に表示したり、チラシの「今週の野菜果物」、このWEB 虹屋でお知らせします。
 
 さて、狂牛病の原因は、異常プリオン蛋白です。プリオンという蛋白質は、哺乳類の身体に、普遍的に存在しています。正常なプリオンは蛋白質分解酵素で分解され、異常プリオンは壊れにくいという点が重要な違いです。このため、正常なプリオンは分解消失するのに、異常プリオンは細胞内に蓄積し塊をつくり、神経細胞を死に至らしめます。運動を司る小脳に蓄積し、牛が立てなくなるなど起立障害、狂牛病の症状が現われます。また異常プリオンは、分解酵素だけでなく、熱などでも変化・壊れ難いのです。
 
 狂牛病の検査は、脳を顕微鏡で病理検査をして空胞などの有無でまず調べますが、確定診断は脳組織を潰して、蛋白質分解酵素を働かせ正常なプリオンを分解消失して、異常プリオンの有無で調べます。現在の検査薬では、プリオンの有無はわかっても、異常か正常かは区別がつきません。
 
 蛋白質はアミノ酸で構成されます。正常なプリオンも異常なプリオンもこのアミノ酸の並び方、配列、一次構造は同じです。違いは立体構造(三次構造)。正常なプリオンは、らせん状で、異常プリオンは、シート状です。この異常プリオンの構造変化が、正常なプリオンに伝達され、ねずみ算的に異常が伝播して発症するとされています。伝染病は、病原体が病気のかかった人や動物の体内で自己増殖し、呼気や排出物などから体外に出て、人から人、動物から動物へと急速に感染し広がリます。狂牛病は、異常プリオンが肉骨粉などを経て、他の牛に食べられ、消化器から体内に入り、さらに正常なプリオンに出会って、正常なプリオンに構造変化を伝達して拡がります。したがって、同じ牛舎にいたとか、狂牛病の牛に触ったなどではプリオンは移りませんから病気になりません。
 
 フォールディング病
 この間まで、ヒトの遺伝子・ゲノムが完全にわかったとか騒がれていたことを覚えていますか。遺伝子・DNAにある情報は、酵素などの蛋白質のアミノ酸を並び方、配列の情報です。アミノ酸が、どういう順序で並べられるのか、その配列の情報が遺伝子にのっています。

fo-01.jpg
 
 遺伝子・DNAがひも状ですから、その遺伝子の情報で作られる最初の段階の蛋白質は、アミノ酸が並んだヒモ状です。次の段階で、このヒモが、複雑に巻いたり折れ曲がり立体的な三次元構造をもつ蛋白質に成長します。これを「フォールディング」と言います。フォールディングに失敗したものは、グチャグチャの塊になり、リサイクルされます。自然状態では特定のアミノ酸の一次配列が特定の三次元構造の蛋白質になります。この天然立体構造になって、はじめて酵素などの働きを発揮します。そして、天然立体構造が最もエネルギーが低い状態、言い換えれば最も安定した構造と考えられています。
 
 狂牛病におけるプリオンの振舞いは、この基本原則を揺るがすものです。同じアミノ酸配列(つまり遺伝子は同じ)でも、複数の立体構造があり、異常な方が、ある意味で安定的です。ともかくも、立体構造が蛋白質・酵素の働きに重要なことが判ります。ここ5年ほどの間に狂牛病だけでなく、アルツハイマー病などの神経性疾患は、タンパク質の立体構造の変化が原因となって起こる疾患、フォールディング病 (またはコンフォールデイング病)と判ってきました。タンパク質の構造が変化し、その異常タンパク質が鋳型となり正常タンパク質の立体構造を次々と変化させ、その結果形成された凝集魂が病因であることが明らかにされてきています。フォールディングの仕組みやどのような遺伝的因子や環境因子によって異常タンパクが生まれたり、構造変化が伝播するのかなど研究されています。
 
 この蛋白質の立体構造は、遺伝子組み換え食品の安全性評価の問題点と関係する。と天笠啓祐氏は指摘しています。「蛋白質は複雑であり、・・最高で1兆もの種類があると見られている。・・蛋自質は、また他の蛋白質によって活性化したり、活動を停止したり、分解するため、蛋白質のわずかな変化が、有害なものに転化する可能性がある。
 
 遺伝子組み換え食品の安全性評価の基本は、この遺伝子やアミノ酸の配列をみて、・・評価している。・・蛋白質の構造にまで踏み込んで安全性を評価していない点は、欠陥であり、狂牛病は、遺伝子組み換え食品の安全性評価の方法がいかに問題があるかを示しているといえる。」確かに正常なプリオンと異常プリオンはアミノ酸の並び方、配列、つまり遺伝子は同じです。
 
有機農業と畜産

24日に巻町の長津さんを訪ねました。目的は、娘達を牛やヤギに触れさせることです。彼女らは、TVやミニ動物園などの見世物でしか、動物を知りません。においも知らないでしょう。長津さんは、新潟県の有機農業の先駆者で、有畜農業、畜産を取り入れないと有機農業にならないと考え実践されています。県内でも有数の腕の良いの肉牛の飼育者です。
 下の2歳になる娘は、ヤギの傍を離れず、帰りの車の中でメェメェとずっと鳴いていました。カミサンは、有機農業をやる人だから優しく動物に接しているのだろう、牛も犬(メロンちゃん)もヤギもみんな良い顔をしているとしきりに感心していました。
 牛は草食動物、草を4つある胃の中の微生物が食べて大増殖し、牛はそのアミノ酸などを多く含む微生物を腸で消化して栄養としています。人間でも普段は肉を食べない人が、大量の肉を食べると、腸内の細菌がこれに対応できず消化不良を起こし、最悪、ショック死してしまいます。
 有機農業はこうした自然、生物の営みの基本に従い、活用する農業。それで、牛たちが良い顔で生き、私達は安心の食べ物が得られるのです。
下記は 虹屋が興農牛などの牛肉を共に扱っているポラン広場の声明です。
ポラン広場は、より確かな畜産のあり方を生産者と共に追求してきました

  ポラン広場全国事務局代表 今井登志樹
  ガイドラインプロジェクトチーフ 関  信雄
                 
生命のための食物を生産する農業も、農薬や化学肥料に頼り生態系を無視すれば、そこに生きる人間の暮らしや健康を損なうだけではなく、自然環境に重大な汚染をもたらすことになる。
私たちは、あらゆるもののつながりのなかで生きていることを深く自覚し、他の人々や生き物、自然をできる限り損なわないような方法で「共生」するための持続可能な有機農業を行いたい。

ポラン広場の有機農業の基準・前文からの抜粋です。

          *

ポラン広場は有機農業を推進していくという立場から生産者とともに有機農業の有り様を模索し、「ポラン広場の有機農業の基準」を作り、実践を重ねて来ました。畜産についても同様です。
・・・すべての家畜に対して、それらの生命を尊重し、それらの生理的欲求と健康な生活環境を可能な限り確保することを基本目標に掲げています。

肉骨粉という動物由来の飼料を与えることは、草食動物である牛の生理的欲求を無視していることに他なりません。
ポラン広場は、今回の狂牛病事件は氷山の一角であり、食料生産に効率とコスト削減を最優先させている近代畜産の歪みが衝撃的に暴露されたものだと考えています。
欧州で狂牛病が広がった原因の一つは、早く安く肉をつくるために死んだ家畜を処理したものを飼料として食べさせたことです。
日本でも同様でした。今回の狂牛病をめぐる報道で、問題となった牛が検査結果の出る前に肉骨粉処理され動物性飼料として流通されていることが明かになりました。日本で狂牛病は発生するはずがないとして抜本的な原因の究明と飼料等の見直しをしてこなかった行政と、生産コストや畜産物価格のみを重視する流通業者・消費者ニーズが創り出した結果と言えます。
化学肥料や農薬を多投した農産物、粗悪な飼料や薬剤添加物に依拠した畜産物・水産物、安価な原料と添加物による加工食品など、すべて根っこは同じです。
ポラン広場は、畜産においても飼料の考え方や飼育環境など有機農業の基準の基本目標を軸に検討を続けています。
できる限り地域の有機生産者や製造者との連携で飼料用資材を利用したいという取り組みも遅々とした歩みですが追求してきました。
何よりも安全な飼料で健康に育てることが原則です。
産地の確認は基より、誰がどんな飼料内容でどのように飼育しているかという情報は全て公開可能です。

ポラン広場は、これまでも生産者との緊密な提携により、有機農産物をはじめ安全で素性が明らかな食品を的確な情報と共にお届けしてきました。これからもその姿勢は変わりません。
風評に惑わされず、賢明なご判断と変わらぬご支援を心からお願いいたします。
 
畑の便り  №01-41&40 2001年10月2日小針店で印刷・配布したもの 


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