SSブログ

母なる大地は、不潔で有害だから要らない! 増える野菜工場 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]

畑の便り  №04-43 2004年10月19日小針店で印刷・配布したもの
 
カゴメ(株)の野菜工場
カゴメ(株)とオリックス(株)は、和歌山市の加太(かだ)地区に「野菜工場」、コンピューターで温度や水、日照などを管理する水耕栽培のハイテク温室、を建設し「こくみトマト」等のカゴメブランドの生食用トマトを生産する新会社「加太菜園」を8日に設立しました。
 
 sera.jpg
 
  敷地は関西空港埋め立て工事の土砂採取跡地。所有する和歌山県土地開発公社は、ニュータウン建設とか言っていましたが、ほとんど売れ残り、438億円の借金を抱え、裁判所で棒引きの交渉中。その土地を和歌山県が1平米560円で借り上げ、カゴメらの加太菜園に100円で又貸する形で調達。それで、総事業費が47億円で済むので建設を決めました。
  第1期の温室面積は5.2ha、出荷開始は05年10月予定、年間出荷量は約1,500t、最終的には20.1ha、年間出荷量は約6,000t(国内産トマトの1%弱)を目指しています。
 
 現在、カゴメは広島県、高知県などの20余りの現地の農業生産法人に出資し「野菜工場」でトマトを生産、その法人からトマトを仕入れて販売するという形で生食用トマトを年間約7000トン扱っています。上のようなやり方で「野菜工場」を増やし2007年には約2万トン、国内産トマトの3%弱を扱いたいとカゴメは意気込んでいます。

増える水耕栽培、野菜工場・・そのルーツ
 
このような野菜工場は30余り。カゴメだけでなくセコムが宮城県でハーブ類、プロミスが北海道でレタス、サラダ菜、イチゴ、とまとなど、キュービーが福島県でサラダ菜、JFEステールが兵庫、茨城県などでレタス類など、殆どが大企業の系列です。また連作障害に悩んだ末に野菜工場ほど厳密に環境制御しない施設水耕栽培に取り組む農家も増えています。国内の水耕栽培面積は1000ヘクタール(2000年)。野菜全体の栽培面積はほぼ横ばいなのに、10年間で倍以上に増えています。
 
haipo.JPG
技術的には、昭和六十年のつくば万博で展示された「水耕栽培で一つの種から1万3千個の実をつけたトマト・ハイポニカ」の延長にあります。ハイポニカを鳥山敏子氏(賢治の学校代表)のように「生命体は、潜在的に無限の可能性を持っている。その生物の持つ可能性を、引き出した姿」と賞賛した方もいました。映画「ガイアシンフォニー第1番」にも取り上げられていましたから、ご覧になった方も多いと思います。

母なる大地は汚くて有害という思想
 
その発展形の野菜工場の技術思想は、母なる大地は雑菌が多く汚くて有害、大地から切り離した方が作物の持つ可能性を引き出せ、栄養の高い安全な食べ物を生産できる、「有機農業は雑菌にまみれた農業、野菜・植物工場こそ、食の安全、安心と安定供給を両立させる生産手法(高辻正基・東海大教授)」。
 
ST02.jpg
 
母なる大地は、菌類などの目に見えない微生物から様々な動植物が棲息しています。人間の目から見れば、兄弟分のこれらの生物には、病原菌や害虫のように害を及ぼす居て欲しくないものもあります。幼子が母を独占したがるように、人間も母なる大地が自分だけのためにあって欲しいと望みますが、母親がわが子全てを慈しむように、大地は人間に害を及ぼすものにも居場所を与えています。
 
 有機農業は、土作りなどで健全な作物を育て病虫害にかからないように工夫はしますが、害を及ぼすものを全滅しようとはしません。慣行農業は、化学農薬を使って皆殺しをめざします。温室などの限られた空間で同じ作物を育てる施設園芸は病虫害が出やすく蔓延しやすいので、露地に比べて1.4倍ほど使っています。
 
 施設中の土壌には有益な共生微生物もいますが病害虫が胞子や卵などで休眠して機会を窺ってます。また病害虫は換気の際や作業者に付着して侵入したりします。野菜工場では、土壌を排除し、養液・化学肥料を溶かした水で水耕栽培します。(日本での水耕栽培は、日本の農業が人糞を肥料としていたため不潔であるという理由で昭和21年に米国占領軍が大津市と調布市で始めました。)空調を行い外気は原則入れません。無人化=完全自動化はまだ無理で、現状では着替えなどで作業者をクリーン化します。このような閉じられた施設には微生物や害虫がいないので、高辻教授は「農薬もいらない」。

病虫害が一気に広がり全滅する悪夢
 
しかし完全に無菌状態ではありません。一般栽培に比べるとかなり低い数ですが菌が棲息しています。このため病虫害が発生します。例えば、カゴメ系列の高知県の野菜工場では、細菌による青枯れ病が発生しています。青枯れ病は根から病原菌が侵入します。ここの水耕栽培は養液・化学肥料を溶かした水が循環してますので、簡単に拡がってしまいます。それで3株ほど発生した時点で、3万5千株のトマト全てを抜き取り廃棄しています。このために生じた損失5000万円をカゴメは一文も負担していません。
 
 水耕栽培は養液を通じて病害虫が伝染し病気が蔓延しやすいという欠点があります。養液を使い捨てれば蔓延を防げます。そうするシステムもありますが、養液=液体肥料を捨てると環境汚染(富栄養化)を起こします。経費の面からも循環使用するシステムが多いのですが、それでは養液や栽培装置等を常時殺菌しています。紫外線や加熱など薬剤を使わない方法もありますが、効果の確実性や経費の点から何らかの薬剤を使うことが多いようです。栽培装置には、薬剤が使用されます。上の高知の野菜工場では、防除に農薬を使っています。
 
 04-5-1-08-21.jpg
 
設備費、電気・運転費など生産コストが高く、販売価格を高くしなければなりません。高値で売るための口実としての無農薬が選ばれています。露地栽培でも無農薬・有機栽培が可能なように、野菜工場、水耕栽培でも技術的には可能です。その代わり、病虫害で一晩で全滅の悪夢、多大な設備費を返済できなくなる悪夢にうなされますが・・

野菜工場は地球温暖化を激化する
 
また高辻教授は「最近、世界的に増えてきた異常気象。工場生産なので、天候に左右されない、季節に関係なく野菜の安定供給を可能にする。植物工場の普及は今後の社会では緊急に必要なことなのです。」 温度、湿度は暖房機やクーラー、光はガラス張りの天井から注ぐ太陽光が強すぎれば遮り、不足なら蛍光灯など人工光をともす、養液をポンプで循環させる。これらの機器はコンピュータによって自動制御。確かに天候、季節に関係なく栽培可能です。
 
 しかしこうした器機を動かすにはエネルギー、電気が必要です。茨城県の土浦グリーンハウス(JFEスチール系)ではグリーンローズ、ルッコラ、サラダ菜などに1株7~19円の電気代です。電気を食べて育つ野菜です。日本の電力の6割は火力です。野菜工場は普及し増えれば、その分石油、石炭を燃やして発電。つまり異常気象を増やす地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出がより増えます。また幾ら光や水分があっても、二酸化炭素がなければ光合成は行えず、野菜は育ちません。日を浴びるキュウリの葉10枚は1時間に1立米の大気中の二酸化炭素を必要とします。施設栽培では換気で流入する外気や土壌の微生物の呼吸で発生する二酸化炭素で補われてます。野菜工場では土壌微生物のCO2放出はありえません。外気も流入させません。それでプロパンガスや天然ガス、灯油を燃すなどして補います。こうして増えた二酸化炭素で異常気象が頻発し、野菜工場が増え、電量需要が増え、二酸化炭素排出がさらに増えて・・という悪循環、袋小路。
 
 それで頻発する異常気象の下で、野菜工場が建設できない貧乏国は、どうすればよいのでしょう?
 
7_2.gif
 

 
ノート 
2004年11月荷の日本植物工場学会のシンポジウムでの、小倉東一氏(植物工場普及振興会)の発表では、レタス、エンダイブなどの葉菜の生産費は、一株あたり100円前後。「ここ10数年ではっきりといえるのは、(温室など)施設栽培の2~3倍の売値確保が必要になるということ」
 
 調査は、振興会の会員企業からの聞き取り調査で、生産費の内訳は、電気代が28円、ほか肥料など直接的生産費が4円。販売経費が31円、人件費15円、設備の償却費が15円、補修、修繕費が7円、合わせて100円前後。
 野菜工場で生産された野菜は、ごみ、土が付着せず洗浄の必要が無いので、スーパーの売り場での下処理、外食店の調理場での下処理が不要になる。一定価格で安定供給が可能という特徴を生かして、書く野菜工場が外食産業と直接取引きしたり、洗浄の手間が要らない付加価値のついた野菜としてスーパーに直接販売したりして、一株150~200円の高値で売れる販売ルートを開拓しています。
 防除など運営実態は、企業秘密ということでほとんどわからなかったそうです。
 また、

水気耕栽培「ハイポニカ」 は協和(株)http://www.kyowajpn.co.jp/
発明者の現在は、野沢技研http://nozawagiken.com/
 「地球上の自然の阻害要因を取り除いた時、生命の高度な本質が見えてくる。」加太菜園はカゴメ(株)の発表 http://www.kagome.co.jp/news/2004/041013.html高辻正基・東海大教授の植物工場研究所 http://www.sasrc.jp/pfl.htm施設園芸の基礎知識は 岐阜大学、福井博一教授の講義内容 
 
以上  №04-43 2004年10月19日小針店で印刷・配布した畑の便り 



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 0