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種無しぶどうの余りに不自然な作り方(下) [有機農業/食物にする生命との付き合い方]

畑の便り  №05-42 2005年10月11日小針店で印刷・配布したものに加筆 

何故、バナナに種がないのか? 3倍体
単為結実 柿やみかん
以上は(上)

ホルモン剤による処理 種無しブドウ

植物ホルモン剤で人工的に単為結実を起こしてつくるのが種無しブドウです。ジベレリン(GA剤)、サイトカイニン(BA剤・ベンジルアデニン)などです。受粉と種子が出来るまでのプロセスは、大雑把に見ると、めしべの先端の柱頭に花粉がつきます(受粉)。やがて、花粉は発芽し花粉管をめしべの中に伸ばします。子房の中の胚珠に向かって花粉管が伸びてゆき胚珠の中の卵細胞の核と、花粉管の中の精細胞の核とが合体(受精)して受精卵になり胚珠は成長して種子になります。

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 ジベレリン処理は、2回行います。1度目は、種無しにする為に行います。2回目は果粒の肥大化と着色促進の為行います。1度目は、葡萄の花が満開になる2週間前、2度目は、開花10日後に行います。

 花が満開になる前の1回目は、受粉・受精がすんだとブドウの樹をだますためです。1度目のタイミングがとても難しく、早いと、実がつかなくなり(花ぶるい)、遅いと種が入ってしまいます。しかも処理後8時間の間に雨が降ると再処理になってしまいます。自然の状態では、受粉すると、めしべの中で植物ホルモンが盛んに生成・分泌されます。これら植物ホルモンや花粉・花粉管から分泌する酵素の働きで、次の段階へ進みます。受粉しないとこれらが働かないため、例えば花と茎の間に離層ができて、落ち葉のように受粉・受精していない花は落ちてしまいます。

 処理は、ジベレリン溶液(100ppm)をコップに入れ花房をよく浸します。こうして人為的にホルモンを投与して、受粉が済んだと騙すわけです。処理をした房としない房を見分ける為に 溶液に食紅で赤い色をつけておくので、ジベ処理の後は、顔や手が、真っ赤になり大変だそうです。

 受精した胚珠(種)の発育によって生成される様々な物質、特に植物ホルモンの働きで果実の発育が促進されます。単為結実の八珍柿では、種がないためこれらの物質ができません。それで開花後10日頃~20日にかけて大量の幼果が落ちます。生理落果といいますが、果実が大きくなる過程で大量の栄養分を必要としますので、本来は種子の出来ていない果実は速やかに分離するのが、種子を効率的に残す為に必要なメカニズム・生理なのです。

 種無しブドウでは、開花後10日位に2回目の処理で人為的にホルモンをあたえるのです。

余りにも不自然、味(栄養)が劣る

 昭和33年くらいに種なしデラウェアーのが、初出荷され 今ではデラといえば、種なしがあたりまえになりました。最近では、ジベ処理を行った種なしの巨峰や、ピオーネも出荷されています。出荷時期は、種ありに比べ1週間くらい早くなり 種なし巨峰は、お盆前に市場に出回っています。種なしにする方が、実がつきやすく栽培が楽なことから最近では、種なしが、主流になってきています。

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 食べやすさ、外観は、良いです。しかし味では、ジベ処理した葡萄(種なし)は、しないものに比べ、甘味が落ち やや味も薄い感じがします。いわば、成長させたというよりも、膨張させたという感じで、栄養としては今ひとつ。梨ではジベレリンを熟期促進にを使って15~5日ほど早めに出荷している産地もあります。その年の気候などによりますが、糖度不足や食味低下を指摘されています。

 もともと種ができる品種です。種を遠くに動物に運ばせるために、種の周りに甘くて美味しくて栄養のある果肉をつけるのです。肝心の種も作らせずに、果肉だけ作らせるとは、ご無体なという作物の声が聞こえるようです。

 ジベレリン、サイトカイニンはホルモンでも植物のホルモンです。それで、動物・人体にはホルモン作用は無いと考えられていますが、本当のところは不明です。植物ホルモンの農薬には、2-4Dなど製造過程で不純物でダイオキシンを含有するものがあります。

こうした物性、毒性は別にして、植物ホルモンをつかった種無し処理は、余りにも不自然です。

 農業は、不自然なものです。例えば、牛は1年中妊娠可能です。野生では仔の生育期に餌が豊富でなければなりませんから、そこから逆算される妊娠可能な期間はおのずから限定されます。家畜では、人間がケアするのでその制限がありません。また牛乳の生産を考えれば、年中泌乳=年中出産=年中妊娠可能の性質の牛のほうが人間にとって都合が良いのです。

 しかしその人間の都合を追求した不自然さが、ホルモン剤を投与しての肥育促進や泌乳量増大、はては肉骨粉による共食いに行き着いたら何がおこったでしょうか。狂牛病です。植物ホルモン剤による種無しブドウなどもそうではないでしょうか。栄養的にも問題があります。

  №05-42 2005年10月11日小針店で印刷・配布した畑の便りに加筆 


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