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温暖化と小麦 地球温暖化で、安価な肉の大量消費に赤信号 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]

2005年11月14日小針店で印刷・配布した「畑のたより」の再録

 11月の北海道の竜巻は、日本海の海水温が高く水蒸気の発生が例年より多く、低気圧に多くのエネルギーが供給されたからだそうです。

 地球温暖化と言うと、私たちは気温の上昇に目がいきますが、より温められた海水による影響に注目すべきです。太平洋の赤道域で海水温が上昇する「エルニーニョ現象」はよく知られていますが、それで日本のウドンの味が変わり、牛肉などの供給不安定になりそうです。

 エルニーニョで、讃岐ウドンの味が変わる?

 日本向けの牛肉が不足?

  米国でも飼料・穀物価格が上昇

  飼料を輸入に頼る日本で、エコロジカルな畜産とは?

 エルニーニョで、讃岐ウドンの味が変わる?

 太平洋の赤道域で海水温が上昇する「エルニーニョ現象」は、様々な気象変動をもたらしますが、過去にエルニーニョ現象が本格化した際には、豪州では東部を中心に深刻な干ばつに見まわれたケースが多く、今年も例外ではありませんでした。穀物や牧草などの質や量で大きな影響を受けています。小麦が前年度比62%減の955万トン、大麦が同64%減の359万トン、菜種が同69%減の44万トンといずれも前年度に比べ半分以下となっています。(豪州農業資源経済局(ABARE)10月27日発表)

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 菜種は搾油の中心地である豪州東部で被害の程度が大きくなっています。虹屋の扱っている缶入りのナタネサラダ油の原料は、非遺伝子組換えのオーストラリア産です。主な産地は南部のカンガルー島ですが、国全体、南オーストラリア州で干ばつ被害を受けているのですから、影響がないはずがありません。価格上昇や不足が懸念されます。

  オーストラリアは世界第二位の小麦輸出国ですが、今年は前年度比62%減ですから、世界の小麦在庫は25年ぶりの低水準となる見通し。国際価格は高騰して、10年ぶりの高値(5ドル/ブッシェル約35リットル、約27kg)、豪州では前年の約2倍になっています。年明けから、米国、イギリス、アルゼンチンなどから輸入するそうです。

  オーストラリア産小麦は日本の輸入量の約2割を占め、オーストラリアは在庫分を取り崩しても日本に輸出するといっていますが、どうなることやら。量は確保できたとしても、質的には部分的には影響は避けられない見込みだそうです。一番、懸念されているのが「うどん」への波及。日本のうどん原料は、大半がオーストラリア西部で栽培されるオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)小麦。うどん適性の高い品種をブレンドしたもので、歩留まりや粉の粘り具合がよく、白いのが特徴。100万トン近くのASWが日本国内で消費され、うどん業界によると、「他国産では代替できない」とされています。作柄が悪いとか、保存状態が悪いと小麦中のたんぱく質含有量が変化して、品質面で悪影響があるそうです。

日本向けの牛肉が不足?

  干ばつで餌となる牧草の量や質が低下し、羊の毛も細く弱いものになり羊毛の一割減産や品質低下を招いています。そのため中国産やインド産の毛織糸が2割程度上がっているそうです。豪州国内ではラム肉が値上がりしてます。

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  オーストラリアの肉牛は、牧草を餌とする牧草肥育が中心です。干ばつで牧草が育たず水も少ないため、やせ細るなど生育状況が悪化しています。家畜が飲む水もなく家畜を抱えきれず手放す酪農家が増えています。一旦破壊された牛・家畜群の再建には時間がかかりますから、将来は日本などの増大する牛肉需要も満たせなくなるだろうとみられています。

  また、日本向けには牧草肥育後、フィードロットで小麦などの濃厚飼料を与え、霜降り肉にし、大きくした牛が好まれます(枝肉で290kg程度)。ところが濃厚飼料になる穀物価格も上昇して、飼育頭数を減らしたり、肥育期間が短い米国・韓国・国内向けなどにシフトしています。日本向けの減少や価格上昇がおきています。価格は、現在前年比20%高。量的には20%減の見通し。
  日本のチーズは8割以上を輸入し、そのおよそ半分は豪州産。日本の乳業メーカーは世界的なチーズ原料高を受け、今年初めに相次いでチーズ製品を値上げしたが、豪州産の供給が滞れば一段の引き上げを余儀なくされます。
 
米国でも価格高騰

 このような異常気象の影響は米国でも起きています。中西部から平原地域にかけて干ばつ被害は、ここ数年来の大きな問題となっており、11月の中間選挙を前に米国農務省は9月に30州の生産者に総額7億8千万ドル(913億円)の緊急救済措置を実施しています。畜産関係では飲み水確保に要する経費や飼料生産の減少による飼料購入費などの生産農家への給付金です。
 また異常気象の影響で、トウモロコシの価格が急騰しています。1ブッシェル(約25・4キロ)当たり、去年は2ドル台、今年に入って2.5ドル台で推移していました11月にはいって3・5ドルを記録。アイダホ州で4000頭の牛を飼う畜産農家は、これまで年間飼料代が600万ドル程度だったが、今年は数十万ドル増加する見込みで、こうした畜産農家にとっては深刻な問題になっています。日本の畜産も同じです。飼料用トウモロコシの殆どを輸入していますから、卵や肉の生産費に直接影響し、価格に跳ね返ってきます。
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 「コーンベルト地帯」と呼ばれる米中部などの主要生産地にここ数年、日照り・干ばつが続いています。さらにブッシュ大統領が打ち出した新エネルギー政策でエタノールとガソリンを混ぜた燃料の普及を急ピッチで進めており、エタノール原料としての需要が拡大しています。地球温暖化が進み海水温上昇すると熱帯性低気圧、台風・ハリケーンが増大・強大化します。昨年のハリケーン・カトリーヌでメキシコ湾岸の製油施設が被害を受け、石油価格が高騰し、その後も様々な要因で石油価格は高止まりしています。この対策としてガソリンに代替する燃料としてトウモロコシを原料とするエタノール(エチル・アルコール)燃料の増産を打ち出したのです。自動車産業の父と呼ばれたヘンリー・フォードが初めてT型のフォードを設計した際、主な燃料としてエタノールを考えていました。しかし、エタノールはエチルアルコールつまりお酒の中のアルコール分ですから、には,当時高い税率が課されたことから,1919ー
年製T型フォードの燃料としての使用は断念されました。その後、1973年の第1 
次オイルショックを契機に再び脚光を浴び、90年代に空気清浄化改正法によって、排気ガスの一酸化炭素濃度を下げるなどの目的でガソリンにブレンドするエタノールの需要は高まりました。そして、今年になって燃料として本格的に注目されたのです。
 
 ガソリン価格とエタノール価格は連動しています。原油価格が高止まりしガソリン価格がこのままなら、エタノール原料としてはトウモロシ価格は4ドルまで上がりうるといわれています。
  このトウモロコシ価格急騰の影響で、来年の米国産大豆の作付けが減少すると見込まれています。従来、トウモロコシは大豆の40~30%くらいの価格で推移してきましたが、11月7日時点で50%前半になっています。トウモロコシと大豆の両方が作付け可能な地域では、割高になったトウモロコシを来春には栽培した方が有利です。日本が輸入する大豆の減少や価格上昇を招く可能性が大きいのです。大豆や油を絞った大豆粕は、飼料や醤油の原料になっています。

日本の畜産にも構造変化が必要

  11月10日の気象庁の発表では、太平洋の赤道域で海水温が今も1度以上も高い状態でエルニーニョが起こっています。温暖化が進めば、穀物不足・価格高騰は今後ますます頻繁になり、強度を増すでしょう。燃料用需要の増大がこれに拍車をか
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けます。金さえ出せばオーストラリア、米国などからの輸入で牛肉を大量に食べ続けられる大量消費の時代も長くは続かないでしょう。日本の畜産は、米国などからの輸入穀物=濃厚飼料を与える畜舎飼いが主流ですから、その影響から逃れることはできません。

  虹屋の畜産物は、飼育地で入手できる飼料を可能な限り与えるようにしています。例えば大月の宮尾さんの卵は、有機米、低農薬米のくず米などを与えています。北海道の興農牛は、牧草は全て自家農場の有機牧草。穀物飼料は、道内産を中心としたくず小麦、屑米、でんぷん粕、米ぬか、砂糖大根粕を混合した発酵飼料を作り、非遺伝子組み換えのトウモロコシを加えています。こうした取り組みは、飼料が有機認定品とは限りませんから、有機の畜産物にはなりません。有機畜産物にするには、輸入の有機飼料に依存するしかありません。

 虹屋は、家畜の生理・生態に無理をかけない飼い方で、飼育地で入手できる飼料を可能な限り与えるようにした畜産物の方が、輸入に依存する有機畜産物より日本ではエコロジーだと考えますが、いかがでしょうか?


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