SSブログ

低価格米のひみつ [有機農業/食物にする生命との付き合い方]

№07-43 2007年10月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録

  新潟「コシヒカリ」5kg1980円、秋田「あきたこまち」1580円・・スーパーではこんな安い価格で新米が売られています。今年の新米、平均では60kgで14397円、つまり5kg当たり1200円で、卸業者に売られています。卸の業者の袋代や配送など手間代などのマージンや小売段階のマージンを考えると、この消費者価格では、完全な赤字です。またドラッグストアやディスカウントストアではもっと安い、5kgで1300円程度のお米もあります。

  こうした安売り米では、一部の米業者の偽装表示も起きています。以前、中国からの輸入ホーレン草の残留農薬検出で名を上げた農民連食品分析センターは、安売りの米にどんな米がどのくらい入っているのか分析しました。粒径の小さいくず米や古米がゾロゾロ検出されました。

農民連食品分析センターの結果

 成熟してから収穫されたお米は、粒が大きい。逆に青米などで分かるように未熟なものは粒が小さい。粒径の検査は、三つのふるいを使って行われました。上から一・八五ミリ、一・八ミリ、一・七ミリのふるい、受け皿の順に積み重ね、全体で四段にしました。米穀検査では米の選別に使うふるいの最小の網目は一・七ミリ。この網目から落ちた米は網下米またはくず米として加工用の原料などに回ります。取引価格は一キロ七十~八十円。 
さらに米の鮮度を調べるために、米に判定液を加え検査。
 
 調査結果は、「おおむね千五百円以下で販売される米は、粒の小さい米、砕米、奇形米などの割合が高く、一番細かい一・七ミリの網目も大量に素通りします。また低価格米は鮮度も悪い傾向にあり、産年の記載のないものや、産地表記も『国内産』と書かれただけの複数原料米が多くなっています」(分析センターの石黒昌孝所長)、「一・七ミリのふるいで落ちるのが多い米は網下米を混ぜている可能性が高い。逆に千五百円以下でありながら粒ぞろいのよい米は古米のおそれがあります。『複数原料米』の表示は氏素性のわからない米と思った方がよいでしょう。『無洗米あきたこまち』は千七百円と価格の高いわりには、整粒も鮮度も悪い。無洗米は加工賃がかかるため、当たり前の原料を使えないのでしょうか」(農民連の横山昭三さん)と指摘します。
  くず米や、古古米のブレンドされた低価格米は、炊き上がり時点はともかく、ジャーで保温する間にみるみる食味が悪くなる。結果的に、食べない=お米の消費が減る事態を招きます。それで今年は、新米、新潟のコシヒカリでさえ価格が低落し、農家の方は困っています。
 
安売り米のブレンド用くず米の出所

 では、どこから 古米が出てくるのでしょうか?煎餅や味噌などの加工用のくず米(網下米)は、どんなルートで主食・飯用に化けているのでしょうか?
0743-03.jpg 
  網下米は農産物検査法で定められている1等・2等・3等・規格外という4段階の分類には該当しない低品位米です。この低品位米を買った業者は、加工原料米としてそのまま売るよりも、主食用として売る方が利益が大きい。だから再度ふるいにかけて主食・飯用にできる「中米」を選び出しています。そのままで主食用に販売すれば違法ですが、「中米」を敢えて検査法の「規格外」になるように検査を受けます。そのようにして『規格外米』という正規の検査証明を受けた中米は「19年・新潟県産・コシヒカリ100%」のように産年・産地・品種名を表示して販売することが可能となります。合法的に高品位な1等米と全く同じように「クズ米を由来とした規格外米」を袋詰めにし同じ表示をして、つまり消費者には区別できないようにして販売できるのです。通常は、1等米などにブレンド用に使われます。先ほどの調査では、1割から3割混ぜられていました。
 
回転備蓄米で、古古米を国が供給

 古米の供給元は、日本政府です。政府は、「万一に備えた保険」の備蓄米を持っています。備蓄ルールは、百万トン(消費量の1割強)を備蓄し、古米にして販売。年度ごとに売れただけ購入する回転備蓄方式。新米が収穫されるとそれと入れ替えに市場で備蓄古米の販売と新米購入をすることとなっています。
 
0743_01.jpg
  実際はどうでしょうか?平成15年産米は100万t不足の不作でした。それに対して放出された備蓄米の量は106万t。これだけを見れば問題になる放出量には思えませんが、政府備蓄米の他に、民間在庫が135万tもあったので政府備蓄米の大量放出は不要だったのです。数字では政府備蓄米を当初163万tから60万tに激減し、民間在庫は135万tから207万tと逆に増加しました。不足していたはずの15年産が大量に売れ残って、卸などの民間在庫になったのです。国は、ダンピング価格で平成8年産のような超古米の在庫整理をしました。万一に備えた備蓄と言う点では、政府備蓄の役割を民間が担う形になったわけです。
  この後も、平成17年、18年、19年も政府は回転備蓄で古米の放出・販売を4万トン/月以上のペースで行っています。卸業者は平成15年度産米の大量在庫を抱え込まされていますから、これを販売しています。こうした古米が安売り米に使われています。
  お米は、炊き上がったご飯を保温ジャーに7~8時間以上入れておくと、ご飯粒中の脂肪が空気で酸化されて酸化臭が発生します。その上、その酸化物がたんぱく質と結合してご飯を黄色くしてしまいます。
 
 常温での保管で考えると、籾のついた状態ではお米の中の脂肪の酸化はほとんど起こりません。玄米、精米と酸化し易くなります。搗き立てが旨いといわれる由縁です。
 
 備蓄米は玄米で、低温保管で酸化が遅くなっていますが、ある程度酸化しています。炊き上がり時点では食味が良くても、酸化臭・黄変が起こり易い。古古米・古古古米・古古古古米となれば、一層なりやすい、臭いが出るまでの時間が短くなる。しかしこうした米ほど安い。 
 
時給で200円程度で米作りは続くのか?

  今年の新米は平均では60kgで14397円。農水省の米生産費調査によれば、60kgあたりの米生産にかかる費用、肥料な
0743_02.jpg
ど資材費、労働費、地代・利子などは、16824円。単純には約2500円の赤字、流通経費などを差し引けば農家は60kg・一俵出荷するたびに5000円近く赤字が発生するという異常事態です。結局農家は、自分の労賃を削って、時給換算で1時間200円程度に削って対応することになります。
   このような時給で200円程度では誰もが嫌ですから、「いっせいに米作りから手を引くおそれさえあります。(農民連)」 
国際的には穀物価格は、上昇傾向にあります。国際的には、米の需要が増えているもとで、オーストラリア産の不作やアメリカでの作付面積の減少などにより、米の国際相場は五年間で二倍になっています。この状況の中で、唯一、自給可能な米さえ減産を強いるのは、賢いのでしょうか。
 
 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 0