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貧すれば鈍す?鈍すれば貧に耐えられる? 中国産餃子 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]

№08-06 2008年2月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録。

 先週来、中国産餃子で大騒ぎになっています。動物は縄張りのなかで食物を探します。いわば、彼らは何処の何を食べたかは知っている。人間と家畜は知らない。他の動物のように縄張り=餌場のものだけを食べているような食生活を送っていれば今回のようなことは起こらなかったのでは?動物としての基本線を外れた人間のあり方が根底にあると思えます。

  人間にも縄張り感覚はあります。動物には各個体がコアの核心的な狭い縄張りと共有する領域を含む広い縄張りなど様々な縄張りを持っていますが、人間では国民国家が広い縄張りと言えます。動物には縄張りは自己の支配・管理が及ぶ領域で、人間も同様です。ですから、食べ物例えば餃子の件で言えば、自己の支配・管理が及ぶと観念される自国のものなら安心できるわけです。実際今回のような件が日本産の餃子で起きれば、日本政府・厚労省や保健所などの迅速な調査・原因究明が期待できますが、中国では他国ですから日本の調査権限は及ばない。まして春慶節。この時季の中国は、国家機関も開店休業状態ですから動き反応が鈍い。

それでは、どんな対策が可能でしょうか 

「世界で最も強固な食品リスク管理体制」と評価されているEUでおきた事件
 
「世界で最も強固な食品リスク管理体制」と評価されているEU。欧州の各国、多数の国民国家を統合してその上位にできたEUの食品にかかわるリスク管理措置は、狂牛病や遺伝子組み換え(GM)作物の導入規制、トレーサビリティー強化など、「世界で最も強固な管理体制」と評されています。EU域内はもとより、EU市場に輸出する域外100以上の国にも検査チームを派遣、EUの品質・安全基準を満たすようなリスク管理措置を勧告し、その実施や強化にも協力しています。域内のみならず、海外の生産者も含むあらゆる関係者に対する教育・訓練の機会も頻繁に設けています。その結果、アジアでは日本はEUに売ることのできない、EU基準を満たせない”くず食品”を売れる市場と言われていることは以前お伝えしました。

  世界で最も強固、それでも昨年8月にスイスの食品製造企業・ユニペクチン(Unipektin)は、インド産グアガムから製造された食品添加物(増粘剤)の世界規模のリコールを行っています。この添加物にEU基準を超えるダイオキシンとPCP・ペンタクロロフェノールが検出、2~25倍、最大約500倍検出されたためです。
  PCPは除草剤、殺菌剤などとして使われ、製剤の副生成物、不純物にダイオキシンを含むことから日本では1990年に農薬登録が失効している農薬です。

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  グアガムは、パキスタンやインドで取れるマメ科グアーの種子・胚乳部から得られるガム状の水溶性の食物繊維・天然多糖類、類白~わずかに黄褐色の粉末または粒で、わずかに臭気があり。水・熱湯に溶かすと分散し、でんぷん糊の5~8倍の粘稠力の液になります。増粘剤、安定剤、ゲル化剤などの食品添加物として認められており、アイスクリーム、和菓子、水産練り製品、ドレッシング、タレ、スープ、ソースなどに利用されています。「整腸作用」、「血糖値の上昇を抑制」、「コレステロールを下げる」などといわれて、「おなかの調子を良好に保つよう工夫された食品です」などと表示された特定保健用食品が許可されています。

 インドのGlycols Limited社が製造したグアガムを元に、ユニペクチン社が増粘安定剤として食品添加に使われる、商品名「Vidocrem」をつくり、販売輸出しました。ユニペクチン社は「私どものリスク管理標準であるISO(国際標準規格)9001 とIFS(インターナショナルフードスタンダード)に基づけば、この物質は検査が求められる植物性低脂肪製品のカテゴリーに入っておらず、検査は求められていなかった。」
 
 グアガムは高度に希釈されて使われるため、この製品でも消費者に急性の直ちに顕れる健康リスクはないと規制当局は判断しましたが、このインド産グアガム製品はスイス、ドイツ、フランス、オーストリア、英国、フィンランド、スペイン、ハンガリー、チェコ共和国、ポーランド、オーストラリア、トルコ、日本で使われていました。日本ではほとんど注目されませんでしたが、昨年夏、欧州ではアイスクリームなどの回収が行われました。2ヶ月あまり工程中の処理水の汚染、梱包材の汚染、隣接する栽培地に撒かれた農薬などの調査が行われましたが、原因不明で、「外部認証検査機関による全ての原材料のPCPとダイオキシン類検査、外部認証検査機関による全ての最終製品の検査。検査結果が出るまで製品は出荷しない。」で幕を下ろしました。
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なお、問題の添加物の日本の総輸入元の双日食料株式会社によれば「日本に輸入されているものは、今回問題のものとは異なる。問題の製品名がVidocremBなのに対して、日本へ輸入のものは、VidocremA。ロット番号もちがう。」

”地球人”意識と地球全体の管理する組織

  このような食品の安全性や地球温暖化のように、国民国家の枠組みでは解決できない様々な問題を抱えています。従来の縄張り=国民国家=意識を乗り越えた、地球全体を一つの縄張りとし、その管理・支配を観念するいわば”地球人”意識とそれによる国民国家の上位に地球全体の管理支配を担う組織・統治主体の形成が必要ではないでしょうか。食の安全、農薬や食品添加物などの規制を定め、地球全体で執行する組織が必要ではないでしょうか。

  農薬などの規制の基準を共通化する機構はありますが、それを強制する組織はありません。EUがインドの栽培地、工場に強制的立ち入り調査や規制することはできません。インド政府だけです。中国の工場に厚労省は強制調査はできないし、罰することもできません。できるのは中国政府だけです。日本政府、インド政府、中国政府という国民国家の枠組みの統治機構では、有効に安全を守れないのです。

  今回の餃子やこのグアガムなど、より安価に販売できるものを求めて、より多く販売できる市場を求めて企業は、世界中、地球全体を一体として行動しています。企業は既にいわば”地球人”として行動しているのに、その経済活動を社会に人間に適正なものに規制していく地球全体の管理支配を担う組織・統治主体とそれを支える”地球人”意識の形成が遅れていることが真の原因ではないでしょうか。?それができるまで待っていられませんから、当面はEUや米国のように中国の規制当局に”協力”名目で口を挟んでいく事を日本にも中国政府に認めさせることと、今回の問題企業に出資して製造管理を日本のやり方で改善していくことはどうでしょうか??

  私たちの収入が、健康保険料・年金など公的負担の増大で目減りするなか、安価な中国産食品は家計のお助けマンですが、伝えられているような過酷な条件での労働や安全を削ることが、その安さの源泉では?そこがよくならなければ、同様のことが起きるのではないでしょうか。貧すれば鈍す、鈍したから貧に耐えられるで良いのでしょうか?

  中国国内でも、職場の食堂で出された昼食の青梗菜で農薬中毒により二十数人も入院とか、学習塾へいく途中の小学生らがインスタントラーメンを分け合って食べたら4人死亡とか中毒がおきています。中国は一人っ子政策ですから、たった一人の子供を亡くした親の心中を察するに、慰めの言葉も浮かびません。先の改善策は内政干渉、経済侵略とも受け取られますが、それで中国国民の食の安全も高まることも期待できます。日本に輸出される中国製食品の安全性が高めることは大事です。例えば輸入時の検査を厳しくやるとかも考えられますが、たまたま同じ時期に同じ星の上で生きているもの同士、たった一人の子供を農薬中毒で亡くす状態を改善もできる方策が、日本人が食べる物の安全だけを確保する策より良いのではないでしょうか。

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