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食糧自給とは(1) 青田刈りと飼料イ [有機農業と飢餓、食料自給]

2001年7月に虹屋小針店で配布した「畑の便り」の再録 
 
実りの秋が近づいてきました。イネが重たそうに穂を垂れています。豊作が伝えられる中、生産調整で青田刈りが行なわれています。せっかく出来たイネを、米を捨てるのはもったいない・・この生産調整が行なわれる原因の一つが貿易にある、世界貿易機関WTO交渉の結果、コメ輸入が行なわれている事ですが、根本的には日本の米の総需要が減少していることにあります。
 
 高齢化の進行は、多く食べる若年人口の減少です。お米大好きでも、老年になれば自ずと食べる量が減少します。輸入米がゼロであったとしても、日本の総需要量は水田面積全部に自由な作付けを許す状況にはありません。
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  飼料イネ    
  そんな中で水田の活用して飼料を栽培する取り組みが行なわれています。今井明夫さん(新潟県の新潟県妙法育成牧場勤務)によれば、
  「水田面積の30%を転作せよというが、大豆、麦は栽培収穫の不安定性に加えて生産コストが高く、輸入穀物と競争できる状態にはない。そこで注目されているのが「飼料イネ」である。
 
  コメの生産ができない水田においてイネを栽培し、水田としての機能を損なうことがない。併せて飼料の大部分を輸入に頼っている日本の畜産であるが、せめて輸入乾草に代わる牛の粗飼料として給与することができないかというのが大きな目的である。
 
  平成12年になってようやく飼料イネが水田転作の主要作物として認知されるようになった。良質米コシヒカリ一辺倒の新潟県で約20haの飼料イネが栽培され、ロールベールサイレージとして家畜に給与されることになった。一番大きな面積に取り組んだのが岩室村である。コメの生産集団と酪農家が手を結んで6ha余に飼料専用に改良された品種を栽培した。
 
  この品種はキリンビールが開発したもので、インデイカ種という種類で稲の姿は日本のこれまでの水稲と異なり、茎は太くて草丈は高く、まさにジャンボという感じである。
  10月のはじめに、この稲の収穫、つまりロールベールサイレージの調製に立ち会った。コンバインの脱穀部分がロールベールの成形機に置き換えられていて、刈り取った稲は茎葉も穂も一緒に直径1mの円筒形に梱包されるのだ。その梱包は直ちに薄いポリエチレンフィルムでラップされる。
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  こうすることで気密状態となり、水分の高いまま発酵した飼料として牛に給与される。この収穫機械を開発したのは三重県の浦川さんという研究員で、タカキタという農機具メーカーが制作した。私の職場である新潟県畜産研究センターにおいても、飼料イネの省力低コスト栽培、良質な稲サイレージの調製技術と牛への給与技術の開発に取り組むことになった。
  農業総合研究所の他のセクションと共同するだけでなく、国の草地試験場や埼玉県、群馬県、広島県などと全国的な共同研究を企画している。いままで稲の飼料化など新潟県で発言しても取り上げてもらえなかったことからすると大きな環境の変化である。
  日本には大きな無駄がいくつもある。その最たるものが何も作られていない水田ではなかろうか。そして作らないことに対して大きな補助金が支出されている。大豆も麦も飼料イネも一般水稲と一緒に考えていくことが水田という国家的な財産を維持し、食料の安定確保につなげることができるのだと思う。」楢山の歳時記(49)
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 イネ・米をめぐっては、よく自給論、自給率向上が話題となります。この問題は、需要を満たす生産と言う視点と逆に生産可能なものを食する需要構造という視点から、現状を見る必要があります。米飯給食は、後者の需要構造での取り組みですし、飼料イネは前者での取り組みです。
 
  ところで、日本の商社が開発輸入した中国産長ネギや椎茸の規制をめぐっての議論を見ると、何故に自給率を上げなければならないのか、その目的が社会的に曖昧になっています。よく、天災、戦争等による飢餓・食糧不足への備え、安全保障が唱えられますが、ここ40年余り飢餓を日本国民は体験していません。どうしても、現実味に欠けます。何故、私達は、地場物、国産で腹を満たす方が望ましいのか? 続く


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