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土壌劣化と食糧自給 食糧自給とは(2) [有機農業と飢餓、食料自給]

2001年8月に虹屋小針店で配布した「畑の便り」再録 
 
土壌劣化と食糧自給 食糧自給とは(2)

8月19日、新潟県有機農業研究会の夏期研修会がありました。簡単にご紹介しながら、食糧の自給を考えてみたいと思います。研修会で、新潟大学農学部で土壌学を教えてられる野中先生が、土壌から見た現代の農業生産について話されました。(虹屋のメモ、記憶によるものですので、内容の責任は 虹屋にあります)
野中研究室・新潟大学の公式サイト  http://www.agr.niigata-u.ac.jp/profile/nonaka/index.html
 
 
 地球上の全陸地の三割程度だけが、継続して食糧生産を行なえる土壌の土地だそうです。後にも先にもこの3割の土地で採れる食べ物を分け合って人類は生きていくわけです。
  今、開発途上国では原生林の開拓が盛んに行なわれ、耕地が拡がっています。ブラジルでは熱帯雨林を開拓して、コーヒー園や肉牛の牧場にしています。インドネシアでは首都の貧民層を強制的に開拓地に移住させてコーヒー園で働かせているそうです。
 
  しかし、持続的な生産は無理な土壌だそうです。開拓で変ってしまう。土壌の力は、窒素などの肥料物質、必須元素イオンを保持する化学的能力、水分を保持する団粒構造などの物理的能力、ミミズなど多種多様な生物が棲息する生物的な能力という三面から測られますが、熱帯雨林などを開拓して作られた耕地、農園などは原生林に較べ劣っている、原生林の約三割程度だそうです。こうした耕地に、耕作放棄や植林などでできる二次林でも原生林の半分位にしか回復しない。
 
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  つまり、今盛んに原生林を開拓して作られている耕地は、食糧生産を持続可能な土地ではない、先ほどの未来永劫に食糧を依存していく三割の土地には入らない。今行なわれていることは「限界的土壌・限界を超えた土壌の耕作による土壌の劣化」。
 
  他方、欧米や日本などいわゆる先進国では何が起きているか。こうした地域は、元々人口が多い、つまり土地が豊かで多くの人口を養える優良農地です。その優良農地が宅地化し、工場などが立ち減少している。野中先生は減反で耕作放棄された田畑のみならず、優良農地が産業廃棄物の処分地と化していると嘆かれました。さらに多肥・多農薬の集約的農業が営まれ、土壌的には不適切な管理が行われ、土壌が劣化している、特に日本では土壌の富栄養化が起きているそうです。海や湖の富栄養化は赤潮など「死の海」を起こすことはよく知られていますが、土壌の富栄養化ではどうでしょうか。
 
  それは、化学肥料の多投で、耕地の表面に塩類が析出し耕作不能になったり、硝酸態チッソがおおくなり、地下水に10ppmも含まれるようになり、その地下水を飲み水にしている住民にガンが多発する、塩素を含んだ農薬(現在ではその多くは除草剤)に不純物として含まれるダイオキシンによる汚染などの問題が起こっている。
 
  この事態に対し、野中先生は各地域の森林の土壌がその地域の土壌の基本。限界土壌の耕地は、森林として利用して回復・復元を図る、優良農地では土壌の潜在的能力を生かす適切な管理を行なうなどの対策を提言されました。適切な管理は、具体的には有機堆肥などの有機物の循環をはかるなどです。加工食品メーカーからでる生ゴミ・廃棄食品は堆肥にも飼料にも向かないとか話は別の機会に譲るとして、農業、食糧生産に対しては、全陸地の三割程度しかない優良農地を、安定した生産が持続可能な状態・土壌で次代に引き継ぐことを根本に置いた取り組みが必要ではないでしょうか。
 
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  問題の一つは、耕作放棄です。日本では米の減反が水田の耕作放棄となり、何の管理もされなくなると言う問題です。需要・市場の変化で、作物が売れなくなった耕地が何の管理もされなくなるという問題です。中国でも「米は毎年大豊作で国内の倉庫には余剰米が積まれ、政府にとって大変な負担になっている」という状況です。そこで中国政府が採った政策は、「生産される米の三分の一は、生産地域での消費向けに、三分の一は消費地向けに出荷し、三分の一は飼料」を基本戦略としています。飼料用の品種の普及も図っています。「中国では豚には五千年も前から、米を食わしている」ので日本ほど農家に抵抗感がないようです。
 
  一般に所得水準が上がると、穀物の消費が減り畜産物の多く食べられるようになります。こうした市場の変化に応じて、水田という生産基盤・耕地は維持したまま、栽培する作物を変えて行こうとしています。それは、飼料の生産・自給を進めることであり、大きな目で見れば国内での食糧自給を進めることです。
 
  これは、生産サイドでの話ですが、消費サイドでは何が求められうのでしょうか。平日半額の某ハンバーグを手がかりに考えてみたいと思います。 続く


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