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来世紀は遺伝子選別の世紀か? 1999年 [遺伝子技術]

1999年1月11日小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録

 今の日本社会は、生まれた子供を学力などで選別する社会ですが、来世紀は生まれる前から、遺伝子で選別し不合格者は誕生前に殺される社会になるのではないかという予感です。

 受精卵で選別、診断

 去年1998年、日本産婦人科学会は、体外受精のヒトの受精卵で、遺伝子を解析し、ある基準で遺伝的欠陥のある受精卵は廃棄する=受胎・誕生させないという遺伝子診断と治療の実施を決めました。遺伝病をもつ人々の反対を押し切って決めました。体外受精に限らず自然な妊娠でも、妊婦の健康診断で得られる血液から含まれる胎児の細胞を取り出し、遺伝子解析をする技術が金沢大学で開発されています。すべての胎児で誕生前に遺伝子を調べることは既に可能です。体外受精児で地ならしし、来世紀初頭には合格しない遺伝のヒトは誕生させない政策が遺伝子治療と称して広く行なわれるのでは?

ホロコーストを導いた優生思想
 
 今世紀初頭、「環境を改善しようと企てて、どんなに努力しても、遺伝病者や遺伝的劣等者の存在を放置していれば、あらゆる努力は水泡に帰すことになる」「すべての国民と国家は、劣等者たちがもたらす負担を可能なかぎり軽減する義務を有している」といった優生思想の、社会政治運動が行なわれました。遺伝的とみなされた病人や犯罪者に対して、断種・不妊化手術を行なう法律が、1907年に米国のインディアナ州で制定されたの始めに、各国で30年代に制定されました。
  米国精神医学会の「知恵遅れの子は『自然の犯したあやまち』だから殺すべきだ」ノーベル賞受賞した米国のカルレ博士の「犯罪者や精神病者はガスを使って安楽死」との主張は、敵国のナチス・ドイツで実践されました。対象の「生きる価値のない生命」がユダヤ人等まで広がり何が起きたかは衆知のことです。
 
  この優生思想が、来世紀は胎児での遺伝子診断・予防治療の名で実践されるのではないでしょうか。どのようにして、中絶するか否かの遺伝的基準をたてるのでしょう。血友病は遺伝病 ですが、今は血液製剤を使えば困りません。英国特有の脊椎での遺伝病は、その治療法が懸命に探求され一定の成果を上げていました。しかし妊娠段階で高い確率で、その遺伝病であるか否か判断できる診断法が開発され、生まれた遺伝病患者をケアする費用よりも、妊婦全員を診断する経費が安いという理由で普及されました。その結果、その遺伝病患者は生まれなくなりました。そして、治療法も消滅しました。今の時点で、この遺伝病は治療法がないから、誕生させないという事になれば、同じ轍を踏むことになります。アルツハイマー病は、遺伝子の異常が原因と見られています。発症するまでに治療法が見つかるかも知れません。誕生させるべきでしょうか。 
 
遺伝子選別で人間や社会はどう変わる?

 親が、子供に「成績が良いから愛している」と言ったら、その子は親の愛情を信じれるでしょうか。貴女は美人だから愛している、貴男が三高だから愛しているといわれて、信じれますか。容姿が衰えたり、リストラで稼ぎが減れば愛してくれないのです。人間関係の基礎には、無条件で慈しむ、愛することがあるのではないでしょうか。今の日本社会は、子供を学力などで選別し、「落ちこぼれ」とかいって人間として無価値・無力感を子供たちに植え付けています。それが、子供たちにどんな悪影響を与えているか。胎児での遺伝子診断・予防治療を行なうことは、ある遺伝的条件に合格したから、産んであげた、誕生させたということです。こんな条件付愛情を子供は信じれるでしょうか。
  また専門家は、就職の際、遺伝子検査を行ない、不都合な遺伝子を持つ人は採用しない。結婚相手も、まず遺伝子検査をしてから決める。不利な遺伝子をもつ人には、生命保険の加入を拒否するなどの差別を懸念しています。米国では、97年に、遺伝子情報による差別を禁止する法律が制定されています。日本では、遺伝子診断で、体質にあった、よくきく薬がオーダーメードで作られるなどの、美味しい話題・有用性は報道されますが、危険性はさっぱりです。日本のマスコミ・報道機関は、マイナスの情報をきちんと取り上げる姿勢(能力?)が欠けています。 
 
1999年1月11日印刷・小針店で配布したものに加筆
 
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