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遺伝子組み替え作物で拡がる、 細菌の抗生物質・薬剤耐性 2002年 [遺伝子技術]

2001年10月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録

昨年12月、厚生労働省の薬事・食品安全審査会は新たに3種類の遺伝子組換え体を承認しました。これが正式に発効すれば、認可品目は作物で40品目、食品添加物で9品目となります。ちなみにEU全体では作物11品目、医薬品と添加物7品目です。

 遺伝子組換えは技術的に未熟なもので、様々な問題があります。その一つが、遺伝子組換えに当たって抗生物質耐性遺伝子の利用が避けられないことです。遺伝子組換えは、目的の外来遺伝子を増やし、それを植物や細菌に挿入します。そして目的遺伝子が染色体に組み込まれた細胞だけを選択する必要があります。その選択・淘汰には抗生物質を使います。目的の遺伝子と選択のための抗生物質耐性遺伝子(通称、選択マーカー)を挿入します。その細胞に抗生物質を効かせれば、組換え・挿入が上手くいっていれば、その細胞は耐性を獲得していますので生き残ります。組換えが失敗していれば、死んでしまいます。

 今回、審査会を通った、害虫抵抗性トウモロコシ(MON863)に組み込まれた目的遺伝子は、いわゆる根きり虫やコガネムシなど土壌昆虫の幼虫を殺す殺虫蛋白質を作る遺伝子です。BT細菌からとられた遺伝子です。その他に選択マーカー遺伝子に大腸菌由来の抗生物質カナマイシン耐性遺伝子が使われています。組み込み操作を施したトウモロコシの細胞群にカナマイシンを効かせれば、失敗した細胞にはカナマイシンが効いて死んでしまいます。うまくいって、この二つの遺伝子カセットが発現可能な完全な形で入って、どちらの遣伝子も細胞中で発現されている、働いていていれば、カナマイシンが効きませんから生き残ります。生き残った細胞を培養して、トウモロコシの苗まで育てるわけです。

安全審査があえて無視している問題点

 安全審査では組換え体の中で挿入された遺伝子が作る蛋白質の人への毒性やアレルギー性だけが間題とされいます。勿論それは大切ですが、木を見て森を見ていません。その一つは組換え体細胞の遺伝子が、体内に生息する細菌などと遺伝子のやり取りをして伝播することです。遺伝子の水平伝達と呼ばれる「種の壁をこえた遺伝子伝達」は、ごく稀にしか起きませんが、必ず起こります。この場合は口腔内や腸内の常在細菌に抗生物質耐性遺伝子が伝播し、抗生物質耐性になる危険がある、病気になっても抗生物質が効かない、という事態が起こることになります。

 英国農水省の食品安全・基準合同会議の専門家N.トムリンソン氏は、抗生物質耐性遺伝子の水平伝達のリスクとして様々な事実を挙げています。組換え食品を食べた場合に起こる腸内細菌との遺伝子組換えだけでなく、口腔内細菌や気管内細菌も抗生物質耐性になりうるし、環境中のさまざまな他の生物にも伝播することを考えれば「抗生物質耐性マーカー遺伝子を持つ組換え体を広範に使用すれぱ、この遺伝子を生物圏に大量に増幅させることになる。これらの遺伝子が発現しようとしまいと、遺伝子組換え作物が大規模に栽培されたときに起こる増幅規模の大きさは、遺伝子の転移可能性が多いとか少ないとかいう議論を無意味にしてしまう」。世界保健機構WHOなども出来るだけ早く技術開発をして抗生物質耐性遺伝子の利用から手を引くように勧告しています。

生物多様性、環境に与える影響

すでに、他の遣伝子組換え作物の残骸による土壌細菌の抗生物質耐性獲得が起きています。今回の害虫抵抗性トウモロコシ(MON863)に組込まれた土壌昆虫の幼虫を殺す蛋白質をつくる遺伝子が、環境へ生態系に拡がれば影響はよりいっそう深刻になる。こうした懸念からアメリカでもまだ認可されていません。安全審査において、抗生物質耐性遺伝子やそれが作る蛋白質を黙認していることが、いつまでも問題を解決できない原因の一つです。

 さて、このように遺伝子組み替え体、作物の栽培は環境、とくに生態系への影響が懸念されます。また、栽培しなくても輸入され輸送の途中でこぼれて、繁殖することが心配されています。これまで外来植物や動物がこうした経路で侵入しています。それで生物多様性条約(野生生物や原生種の保護を目的にし92年の環境サミットで157カ国の署名で発効)で、組換え生物の国際取引に関する規制「バイオセーフティー議定書」が2000年に採択されました。日本は国内法への取入れを審議しています。米国は条約の批准すらしていません。         名古屋大学理学部の河田昌東さんの文章を虹屋が要約

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