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騙す方より、騙される方が悪いサプリの不当表示(不実証広告規制)(上) 2003年 [サプリメント・健康食品]

2003年11月11日小針店で印刷・配布した「畑の便り№03‐46」の加筆再録

 毎日のように、痩身や病気治療をうたう広告チラシが、通販や折込で届きます。大方は眉唾な内容ですが、こうしたチラシ、広告の規制はどうなっているのでしょうか。その辺を探ると、騙す方より騙される方が悪いという法のシステムが見えてきました。   
   公正取引委員会⇒http://www.jftc.go.jp/    消費者庁⇒http://www.caa.go.jp/index.html

倒産してから不当表示で処分、法を改正

「痩身効果」をうたう健康食品「茘枝減肥王」「鳳凰軽身痩」のチラシ宣伝を公正取引委員会は10月30日、不当表示の疑いで販売会社に警告処分を下しました。しかし、一ヶ月前の9月25日に販売会社は倒産しており、実質的に無意味な処分です。

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 この二つの健康食品は一点約7000円で今年の3月頃から販売を始め、約20億円売れました。下痢などの被害情報が寄せられ8月26日には東京都渋谷区保健所から「鳳凰軽身痩」には食品衛生法違反で回収命令が出されました。それなのに、公正取引委員会が処分するの、こんなにも時間がかかるのでしょうか?他の健康食品、特にダイエット関連で薬事法違反、食品衛生法違反が報じられますが、これまでその宣伝が不当表示で摘発されたことがありません。

 委員会は不当表示で摘発するためには、「公正取引委員会が専門機関を利用して調査・鑑定等を行い、表示どおりの効果、性能がないことを立証する必要があった・・行政処分を行うまでに多大な時間を要し」と言っています。それで景品表示法の不当表示の禁止条項を改正して、「委員会が必要があると認めるときは、事業者に対し、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、期限内に提出されない場合には不当表示とみなす」という条項を加え「不実証広告規制」を設けた、11月23日より施行するとしています。

チラシを撒く時の規制は?

 まずチラシ配布などの広告宣伝をする時です。先ほどのダイエット食品は「3カ月で体重が19キロ減った」などという体験談(写真つき)を載せたチラシを全国に1億1400万枚配布しました。後で詳しく見ますが、体験談は架空など、なんら効果に根拠がありません。こんな無根拠な効能をうたうチラシ宣伝自体を規制すべきですが、委員会はどうも違います。

 公正取引委員会は運用の指針の中で「商品・サービスの効果、性能の著しい優良性を示す表示を行う事業者は、裏付ける合理的な根拠をあらかじめ有しているべきである。」つまりチラシやCMなどを流す時には「3カ月で体重が19キロ減る」といった効果の「合理的な根拠」がなくても構わないのです。つまり全国に1億1400万枚のチラシを配布する段階での規制はありません。

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企業秘密の厚い防護壁

 それでは体験談などの効能の真偽を確かめるにはどうしたらよいのでしょうか。直接、業者に問い合わせたら効能の裏づけ根拠は開示されるのでしょうか。先ほどのダイエット食品では、激しい下痢をおこしていますから、問い合わせたら教える義務は業者にあるのでしょうか。今回の改正でも、業者は企業秘密を口実に公開を拒めます。自治体が設けている相談窓口などを経由しても、調査権限は公正取引委員会にあり、他の公的機関にはありませんから答える義務はないのです。その調査権限、強制力をもってしても根拠資料は、「事業者の秘密を含む場合がほとんどであると考えられるから、守秘義務の関係から基本的に開示されることはない」のです。

販売業者に新たな責務
 

 ただし、販売業者には「製造業者等が行った実証試験・調査のデータが存在するかどうか、及びその方法・結果の客観性等の確認を販売業者が自ら行ったことを示す書面等」を委員会は求めています。つまり輸入販売業者、ニッセンなどの通販業者、テレビショッピングの販売業者などに、そうした確認をしたかどうか確かめられます。靴の上から足を掻くようなものですが間接的に真偽を確認できます。その販売業者が信用できないのなら、無意味ですが。

騙す方は実損がない

 被害者が公正取引委員会の申し立てて「委員会が必要があると認め」提出を求めた時はどうでしょうか。先ほどのダイエット食品は、保健所から回収を命じられてから、ほとんど回収しないままに一ヶ月後の9月25日に倒産、破産しています。20億売った販売会社の破産管財人は、返品は受けられません。会社に資産がないので返金も不可能と告知しています。(20億円は何処へ消えたのでしょう?)

 委員会が提出を求めた日から、原則として15日後が提出期限です。その提出期限までに販売会社は倒産、破産してしまえば実質何の責任も負わずにすみます。つまり、やり得、騙し得なのです。株式会社は資本金1円で作れる時代です。別の会社を作って再開すればよいのです。鴨になりそうな人は、前の会社の顧客名簿で分かります。被害がなくなる、予防できるわけではないのです。

 騙す方も騙される方も悪いといいますが、このように騙す方は実損がないのですから、今日の法律では騙す方より「騙される方」が悪いのです。 

 2003年8月12日小針店で印刷・配布した「畑の便り№03‐33」の加筆再録

サプリの不当表示の手口(不実証広告規制)(下) 2003年に続く 

人はなぜ騙すのか――狡智の文化史

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