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貴方も私もモルモット、 遺伝子組み換え食品の国際規格 2002年 [遺伝子技術]

2002年4月小針店で印刷・配布した「畑の便り・№02-15」の再録

  食品に関する国際規格(基準)を決める国際政府間組織、コーデックスで植物由来の遺伝子組み替え(操作)食品規格、組み換えトウモロコシやジャガイモ、イネ(お米)など安全性などの規格が成立寸前の段階になりました。3月に横浜市で開催された遺伝子組み換え食品の規格などを扱う部会で案が決まり、来年の総会で承認されれば正式の国際規格になります。この国際規格と違うもの定めると自由貿易の制限したとして制裁を受けます。そのため、独自の安全基準などを設けることが、事実上できなくなります。その国際規格では遺伝子組み換え食品の安全はどのように確保されているのでしょうか。結論から言えば、「貴方も私もモルモット」です。

 コーデックスは国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で設立した国際機関です。FAO/WHO合同専門家会議は遺伝子組み換えで起こる変化を、大きく3つに別けています。一つは、殺虫毒素産出など目的の形質・性質が加わる意図的な影響、一つは意図したものではないが予測可能な影響、もう一つは意図しない予測しない影響です。

 現在、除草剤耐性の遺伝子を組み込んだ稲が開発されています。名古屋大学の松田幹夫教授の組換え実験では、目的の耐性という形質のほかに、米に含まれるタンパク質が変化すると意図しない変化が起きています。除草剤耐性は、除草剤の毒素を解毒する酵素(タンパク質)を新たに作り出すことで獲得されます。これまで作られ無かったものを生成するのですから、これまで作られていた蛋白質に何らかの影響が出ることは十分に予測できます。これは、意図したものではないが予測可能な影響です。

 問題なのは「意図しない」しかも予測できない影響

問題なのは「意図しない」しかも予測できない影響意図しない変化は従来の自然交配に基づく品種改良、育種でも起きます。それは、例えば雄親から、花が赤いという形質だけを導入したいとしても、それだけではなく様々な形質(背丈が短いとか)が子供に伝わります。両親のもつ形質が混じり合ってしまいます。導入を望んだ、意図した形質だけが伝わるわけではないのです。

 遺伝子組み替え(操作)では、合同専門家会議によれば「非意図的な影響が起こるのは、ランダムに遺伝子を挿入することにより、既存の遺伝子が破壊されたり、蛋白質(酵素)の発現が変化したり、新たな代謝物が生成される」といった事が起きます。

その結果「以前には見られなかった毒素の生成、環境からの有毒物質蓄積の可能性の拡大(例えば農薬や重金属)、養分の摂取に関する思わぬ変異などの望ましくない影響」が生じるのです。(いつも起きるわけではありません)

 この変化は予測できないのです。「(何が起きたか調べる)方法として考えられるプロファイリング技術は、・・まだ十分に開発や評価がなされておらず限界がある。」このような「意図しない」そして予測できない影響の安全性はどのように調べられるのでしょうか。

 食品中に微量に存在する判明している成分、たとえば食品添加物や残留農薬などについては、安全性試験の方法があります。高濃度から低濃度まで様々な濃度で動物に与え摂取量を調整して調べる毒性試験の方法があります。濃度・摂取量を変えるのは、毒物には"量-作用の法則"、二倍与えれば影響・害が二倍出ると考えられているからです。

実験動物は解剖され調べられます。その命を奪うのですから動物愛護の点からも、経費の点からもなるべく使用する動物数を少なくすることが望まれます。そのために実際には有りえない高濃度、大摂取量で、どのような影響が顕われるかなどを見落とさないようにして調べるのです。その毒性が顕われない量・濃度から人での許容量を評価する方法もあります。

 予測できない非意図的な影響、それにより変化した成分は、何があるのかが判りません。新たに生成される毒素、環境からの農薬や重金属など有毒物質の新たな蓄積など何が起きたか判らないのですから、これまでの毒性試験が使えません。そうした成分単体では検査のしようがありません。結局、組み換えられた食品そのものを検査するしかないことになります。

英国のローウェット研究所のブシュタイ(元)教授の実験のように、食品を食べさせて害・毒性が見出されたことがあり、科学的なアプローチば存在しています。しかし専門家会議は「安全性評価の過程のいくつかの点については、遺伝子組換え技術の発展に立ち後れないよう、適宜修正しなけれならない」としています。つまり微量でなく大量に摂取する食品そのものの毒性試験法は確立されていません。

 調べる方法が無いのですから、安全性が確立できない。それで実用化、販売を取りやめるのかというとそうではありません。販売はOK。 つまり、結果的に国際規格で組み換え食品そのものの毒性試験は、短期も長期も慢性も、いわんや遺伝毒性も、その一切を免除されました。安全性は未知だけど、まずは60億を数える人類全体で食べてみようということです。「貴方も私もモルモット」です。


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